144話 恋
「き、急にですね?」
私は、悠斗からの突然の告白に顔を真っ赤にしつつもそう返してしまいます。
で、ですが、嫌なわけではありません。それよりも驚きと嬉しさが込み上げてきますし、思わずそう返してしまいましたが、私的にも告白をしたいとは考えていましたしね。
…私からしようと思ってので、私よりも先に悠斗から告白をされてしまい私の顔は真っ赤に染まってしまってますが。
「そ、それは親愛ですか…?」
ちょっと、美幸!そんなことを聞いてはダメですよ!というか雰囲気的にそうではないとはわかりますが、思わずそう聞いてしまいました。
それを聞いても悠斗は落ち着いた様子で、顔を赤くしつつもその言葉に返事をくれます。
「いや、この気持ちは友人としてではなく、一人の女性として好きだ」
「……!」
悠斗から改めて言われたその言葉に、私は顔を赤くしつつも悠斗から視線を逸らしてしまいます。
ゆ、悠斗からの告白をされてすごく恥ずかしくなってしまいます…!と、とりあえず返事を返さなくては…!で、でも、いきなりのことで言葉が思いつきません…!?
「それで、美幸はどうかは聞いてもいいか?」
「わ、私ですか…!?」
そりゃあ告白をしてくるなら返事を欲しくなるのも当然です。喜びと驚きが入り混じったような感情がすごく湧き上がりますが……とにかく、私からの返事をしなくてはいけません…!
私の気持ちは、あの時からずっと変わっていません!なら、この気持ちを直接言うだけです…!
「…私も、悠斗のことがこの世界で一番好きです!…ですが、こんな私でも良いのですか?」
過去はすでに後悔し続けることはしませんが、それでもあの過去があった私で良いのかが不安になってそう言葉を返してしまいました。
しかし、悠斗はあの時と同じように顔を赤くしつつも優しげな表情で私に向けて言葉をかけてきます。
「もちろんだ。俺は、そんな美幸だから好きになったんだ。改めて言わせてもらうが、俺と恋人として付き合ってくれないか?」
「はいっ!こちらこそ、お願いします!」
私はそんな悠斗に向けて、おそらく今までの人生で一番の笑みを浮かべながらそう告白の返事をしますが、そのタイミングで自然と涙まで流れてきてしまいます。
「美幸!?」
「大丈夫です。これは、嬉しくて…」
悠斗が心配そうに声をかけてしましたが、私は大丈夫だと答えます。これは悲しさや後悔ではなく、嬉しさによるものですから。
だって、こんな私でも悠斗のような大好きな人と恋人になれたのです。なら、これくらいは当たり前とは言いませんが、そうなるのも無理はありませんよね。
あの過去は悠斗のおかげで克服することができ、恋人にもなることが出来ました。しかし、幸せが一気に押し寄せてきて不安になってしまいます。
「こんなに幸せで、いいのでしょうか」
「そんなの、当たり前だろ?美幸の心はとても澄んでいて綺麗だし、今までの帳消しとして幸せが訪れてきたんだ。だから、もっと幸せになっていいんだ」
「……はい!」
思わず呟いた私の言葉に、悠斗はベンチに座りながら私の手を取ってそう言葉を発してきます。
私でも幸せになってもいい、ですか……そんな言葉をかけてくれた悠斗は私のことを優しげな様子で見つめてきているため、私の心はとてもポカポカと温かくなっていくのがわかります。
「おっと、花火もちょうど終わるところのようだな」
そうして二人で笑い合っていた頃合いに先程よりも大きな花火の音が聞こえ、それで終わりなのがわかりました。
…花火、最初しかしっかりと見てませんでしたね。だとしても悠斗の恋人になることが出来ましたし、別に構わないですけど!それに恋人になれたのなら、また一緒に見る機会も間違いなくあるでしょうしね。
「じゃあ時間もいい具合だし、この辺で帰るとするか」
「そうですね!」
もう少しだけ悠斗と一緒に居たいという気持ちはありますが、これからはいつでも会うことは出来るでしょうし、帰る時間が遅くなってしまえばお互いの両親を心配させてしまうのでこの辺で切り上げるのが良いですね。
なら、花火も終わったので帰るとしますか!
その帰り道では、夏祭りに行く時よりも明らかに距離が縮まっているのを感じれました。
手を繋ぐのは当然として、精神的だけではなく物理的にも近づけており、恋人になることが出来たおかげで私の気分は最高潮です!
「それじゃ、俺はこっちだから」
「はい!また会いましょうね!」
そこからはすぐにお互いの家へ帰るために別れることになりましたが、私たちはそう言葉を交わしてから帰路に着きます。
ふぅ、今回の夏祭りではこんな私でも悠斗の恋人になることが出来ましたが、改めて一人で歩いているとそのことを思い出して頬を赤くしてしまいます。
「…まあ、悠斗から告白をされるとは思いませんでしたけどね」
悠斗も私に対して恋愛感情を持っていたとは気づくことが出来ませんでした。
顔を赤くすることは少なかったですが、それでも心のうちではそのことを意識してたりしたのでしょうかね?
「ただいまー!」
そんなことを考えつつも家に向かって歩いているとすぐに着いたので、私は玄関の扉を開けてそう声をあげます。
すると、何やらドタバタとした音が聞こえたと思ったら、すぐにリビングからお母様が出てきました。
「おかえりなさい、美幸!」
「ただいまです、お母様」
私はお母様に声をかけてからそのまま一緒にリビングへと向かいますが、リビングではお父様と兄様がなにやらテレビゲームをしていたらしく、それの片手間の様子でお帰りと言葉をかけてきました。
というか、テレビに移っている画面からしてお母様も一緒にやっていたみたいですね?だから少しだけドタバタとしていたようです。
っと、それはいいとして、手早く浴衣を脱いでお風呂に向かいますか。夜なので涼しいとはいえ、少しは汗をかいているとは思いますしね。
「それで美幸、夏祭りはどうだった?」
私はリビングに顔を出してからすぐにお風呂場へと向かおうとすると、お父様からそのように聞かれたので先にそれに言葉を返します。
どうせ隠してもすぐにバレるでしょうし、言ってはいけないことでもないと思うので付き合い始めたことも伝えておきますか!
「楽しかったですよ!そして、悠斗から告白をされて付き合うことになりました!」
「まあ!よかったわね、美幸!」
「おめでとう、美幸。これでもう心配することはなさそうだね」
「よかったな、美幸!」
お母様たちからもお祝いの言葉を送られたので、私は照れくさそうにしつつもありがとうございます、と返事をします。
しかも、それを聞いた三人は微笑ましそうな表情で見つめてくるので、私はますます恥ずかしくなってしまいます…!
と、とりあえずお風呂に行きましょうか…!なんだかこのままここにいては根掘り葉掘り聞かれてしまいそうなので…!
「わ、私はお風呂に入ってきますね!」
「わかったわ。夜ご飯はどうする?」
「お祭り会場で食べてきたので、私は大丈夫です!」
「なら、私たちは食べているからゆっくりとしてきて大丈夫よ!」
「わかりました!」
お母様たちはお祭りに行ったわけではないので今から夜ご飯を食べるみたいですね。私は今も言った通りあちらで食べてきてお腹は空いていないので、その間にゆっくりとお風呂に入ってますか!
「ふぅ…」
そして今は浴衣を脱いでお風呂に入り、ゆっくりと湯船に浸かって一息ついている状況です。
いやぁ、自分から告白しないと悠斗にこの思いは伝わらないかと思ってましたが、あちらも同じ思考だったようで助かりましたね。
「それに、無事に恋人になることも出来ましたしね」
ひとまずはこれで良いですが、この先は悠斗との関係ももっと深くなれるように頑張りましょう!し、将来的には結婚をして子供も作りたいと言う気持ちもありますし、そんな未来を作れるように頑張らなくては…!
そんな思考をしているだけでも、顔に熱が集まって恥ずかしくなっちゃいますね…
「…そろそろ上がりますか」
気づいたら結構な時間が経っていたらしく少しだけのぼせてしまっているので、このまま浸かっていないでお風呂から上がらないとですね。
「…よし、ではリビングへ向かいますか」
そしてお風呂から上がっていつも通りスキンケアを済ませ、もう外出する予定もないのでパジャマに着替えた後にリビングへ戻ると、すでに夜ご飯は食べ終わっていたらしく談笑をしているところでした。
「あら、美幸。上がったのね」
「はい、今さっき上がりました。なんの話をしていたのですか?」
お母様からかけられた声に返事をしてからそう聞いてみると、お父様がそれに答えてくれました。
「今は僕たちが外国で体験したことを玲二に教えていたくらいだね」
「そうなのですね!よければ私も混じって聞いてもいいですか?」
「もちろん構わないよ」
お父様もそう笑みを浮かべながら了承を返してきたので、私は早速三人の輪の中に入って談笑をしていきます。
そうしてそこからは特に何かが起きることもなく時間が経過して、今は夏祭りのあった日の次の日である水曜日です。
今の時刻はどうやら六時半のようですし、とりあえず朝の支度を済ませちゃいましょうか。
私はすぐさまそう決め、まずはベッドから降りてストレッチをして身体をほぐした後に着替えも終わらせ、リビングへと降りていきます。
すると、向かうまでの道中でいい匂いがしてくるのを感じとりました。それに微かな音もしてますし、すでに誰かが起きてご飯を作ったりしているのですかね?
「…お母様でしたか」
「あら、美幸。おはよう!今朝ごはんの用意をしているから待っててね!」
「はい。なら私は洗濯物を畳んできますね!」
「わかったわ!お願いね!」
私の予測通りお母様が朝ごはんを作っている最中だったようで、私より少しだけ大きめの身体でテキパキと支度をしていました。
いつもなら一番先に起きるのは私でしたが、今はお母様が帰ってきたおかげで一番ではなかったようです。別に競っているわけではないのでいいですけど、お母様の料理は久しぶりなので少しだけ楽しみですね!
それと昨日の洗濯はお母様がしてくれていたので、私は朝ごはんを待っている間に畳むのをしておきます。まあこれはすぐに終わりますけどね。
「ふぁ……おはよう」
「おはようございます、兄様!」
「玲二、おはよう!今朝ごはんを作っているから、待っててね!」
「わかった」
私たちがそれぞれの行動をしていると、そこに欠伸をしながらリビングへと兄様が入ってきました。昨日はゲームをしていなかったと思ってましたが、眠そうということはいつもの寝る時間にやっていたのですかね…?
「おはよう」
「お父様もおはようございます!」
「賢城もおはよう!もう少しだから待っててね!」
「わかったよ」
続けてお父様もその言葉と共にリビングへときましたが、こちらは特に眠そうではないですね。…やっぱり、兄様はゲームをしていたのは間違いなさそうです。
「よし、出来たわよ!」
「お、出来たか」
そして私がちょうど洗濯物を畳むのが終わったタイミングでそのような声が聞こえてきました。
兄様やお父様、そしてお母様がテーブルに付いているので、私も行かないとですね!
「今日は材料がちょうどあったから和食にしてみたわ!」
「おお、これは久しぶりに食べれるね。嬉しいなぁ」
お母様が作った料理は、だし巻き卵に味噌汁、魚の塩焼きとお米というザ・和風といったメニューとなっており、とても美味しそうです…!
「では、いただきます」
「いただきます!」
私たちはそう言って朝ご飯を食べ始めます。んー!この卵焼き、出汁がしっかりと効いていてとても美味しいです!それに魚もシンプルですがなかなか味があり、味噌汁もそれらに相性抜群でドンドン食べ進められます!
「ご馳走様でした!」
お母様の作った料理が美味しいのも相まって、私はすぐに食べ終わりました。兄様とお父様はそんな私よりも早く食べ終わっていましたが、私は久しぶりのお母様の手料理を食べることが出来て満足です!
「そういえば美幸、この前のワールドモンスターの情報が昨日の夜の内に出てたようだぞ」
「そうなのですか?」
夜ということは、私は多分寝ていた頃でしょうか。それにワールドモンスターについての情報が出ているなんて、やはり運営からしても討伐を目指して欲しいのが伝わってきますね。
「あら、美幸たちのやっているゲームのことかしら?」
「そうだ。俺は今から美幸と一緒に見ようと思っていたが、母さんたちも見るか?」
「いいわね!私も気になるからいいかしら?」
「僕もいいかな?」
「大丈夫だ。なら、美幸。パソコンでみんなで見ようか」
「そうですね!」
私は兄様の言葉を聞いて即座にリビングへとパソコンを持ってきて、そのまま教えてくれた動画を探してみると、それはすぐに見つかりました。
サムネとタイトルからして、おそらくは私たちによるワールドモンスターとの戦闘シーンについての映像と判断出来ますね。それに、動画の長さ的にもノーカットの映像なのかもしれません。
「じゃあ早速見てみましょうか!」
「わかったわ!楽しみね!」
私はお母様たちに声をかけた後に動画を再生しだします。
すると、すぐさまパソコンの画面に映像が流れていきますが、見た限りでは最初に天災が出てきたところから始まり、そこから一気に戦闘シーンの映像が流れていってます。
「このケモ耳と尻尾が生えているのが美幸かしら?」
「そうです」
私の場合はケモ耳と尻尾があって髪の長さがセミロングに変わったくらいで少しだけ現実とは違いますが、姿形は一切変わっていないので簡単にわかったようです。
ちなみに兄様についてはゲームと現実世界、どちらも同じ姿なので特に言う必要もないですね。
「あ、ここはネーヴェさんのEXスキルの場面ですね」
「本当だな。相変わらず凄まじいスキルだな」
私はすでに獲得していますが、兄様はまだなので少しだけ羨ましそうにしています。ニーナちゃんから説明を聞かされてはいますけど、条件的にそうホイホイと獲得出来るものでもないですしねぇ…
そんな言葉を交わしながらも動画を見ていた私たちでしたが、所々でお母様たちから聞かれたらしたことに答えながら動画を見続けていると、最後に私と天災による力比べが流れ、そのまま私の攻撃がそれを貫通して天災のHPがなくなったタイミングで動画は終わりました。
どうやら、天災の最期は映されていないようです。多分、そこの最後に関しては自分たちで倒すことで見れ、ということでしょうね。
それと最後に、今日の十二時から生放送もやるとも載っていたので、これも確認しないとです。ですが、その時間だとお母様たちは帰っているかもしれませんし、その場合は悠斗を私たちの家へと呼んで三人で見るとしますか。
美幸と悠斗の恋は実りましたが、物語はまだまだ続きます!ここから先も美幸の冒険は続くので、是非とも楽しみにして待っていただけると幸いです!




