139話 セレネのスキル
「…アイザさん、上の服を着ませんか?」
「お?こりゃあ悪い。今着るな」
私のかけた声で自身が上の服を着ていないことに気付いたようで、メニューを開いたと思ったらすぐさま服を着用したので、私は逸らしてきた視線を戻します。
ふぅ、流石に人の肌をハッキリと見えてしまうのは恥ずかしいですし、すぐに着てくれて助かりました…!
「それで、何のようだ?」
「あ、それはですね、砂漠にあった採掘ポイントから鉱石を取ってきたのでそれを買い取って欲しくて来たのです。今見せますね」
そう言いながら私はアイザさんへと取引メニューを開き、昨日のうちに採掘していた無数の鉱石たちを載せていきます。
「ほう、結構あるうえに黒鉄と白鉄、そしてコバルトか」
「どうでしょう、買い取ることって出来ますか?」
「大丈夫だ。俺からしてもこれらはたくさん欲しいし、ぜひ買い取らせてくれ」
よし、これでさらにお金を貯めることが出来ますね!まあ今のところはほとんど使う機会は有りませんが、お金はいくらあっても困りませんからね!
「そうだな……数も多いから色をつけて……ざっと300,000Gでどうだ?」
「おお、かなりの金額なのですね!私はそれで大丈夫です!」
「取引成立だな。じゃあこれで」
私は手に入れていた無数の鉱石を、アイザさんはそれと交換するようにGを取引メニューに載せて交換は成立しました。
ふふーん、今までよりもレア度が高いからかなかなか高く売れましたし、これは嬉しいです!とりあえず、使う機会が出来た時のために今は貯めておきましょう!
「要件はこれだけか?」
「はい、そのつもりでした」
「そうか、ならいつでも買取はするから、また良ければ鉱石などを持ってきてくれ」
「わかりました!私も毎日採掘をしているわけではないですが、集まった時はまた寄らせてもらいますね!」
「おう、頼むな」
今回はたまたま採掘をしたわけですが、普段は特に堀りにはいってないのでまた売りに来るのはいつになるかはわかりませんが。
それでもちまちまと掘りに行くこともあるでしょうし、その時には寄るのがよいですね。
「では、私はこの辺で行きますね」
「わかった。またな」
そうして私はアイザさんに別れの挨拶をした後、お店から出るべくカウンターから離れて扉へと向かいます。ですが、その時…
「キャッ!」
「おっと、大丈夫か?」
扉に手をかけようとしたタイミングで扉が開けられ、私は扉に軽くぶつかってしまいましたが、扉を開けた人物である黒髪の男性プレイヤーからそのように声をかけられました。
「大丈夫です。こちらこそすみません」
「いや、気にするな。じゃあ俺はこれで」
「はい」
特に怪我をしたわけでもないですし、お互いに不注意があったせいなのでどちらが悪いというわけじゃないので、すぐにその男性プレイヤーとは軽く言葉を交わした後に別れましたけどね。
「そういえば、天災を討伐した時の称号と報酬は確認してませんでしたね。それと今まで詳しく確認をしてなかったセレネのスキルについても詳しく見てみましょうか」
私はアイザさんのお店から出た後にふとそのことを思い出したので、そのままそこから街中を歩いていき、初期の街の外に広がる草原へと移動します。
初期の街は他の街と比べると小さめではあるので、すぐに街の外の草原へと到着しました。
すでに初心者帯を抜けているプレイヤーがほとんどだからか、周りには一切のプレイヤーはいないみたいですね。
「今から試すことには好都合ですし、このまま確認しますか」
そう呟きつつも私はメニューを開き、天災討伐の称号の確認ついでに自身のステータスについても確認します。
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名前 レア
種族 狼人族
性別 女
スキル
【双銃Lv27】【鑑定士Lv16】【錬金術Lv17】【採取士Lv20】【気配感知Lv27】【隠密Lv25】【鷹の目Lv25】【ATK上昇+Lv28】【AGI上昇+Lv28】【DEX上昇+Lv28】【体術Lv61】【気配希釈Lv25】【採掘士Lv15】【INT上昇+Lv24】【第六感Lv24】【飛躍Lv14】【夜目Lv50】【言語学Lv31】【魔力制御Lv22】【魔力感知Lv19】【魔力希釈Lv16】【MP上昇+Lv17】【HP自動回復+Lv16】【MP自動回復+Lv16】【栽培Lv3】【調教士Lv1】【STR上昇+Lv8】【料理Lv25】【細剣Lv9】【短剣Lv4】【生活魔法】【水泳Lv7】【闇魔法Lv15】
ユニークスキル
【時空の姫】
EXスキル
【心力解放】【???の兆し】
所持SP 65
称号
〈東の森のボスを倒し者〉
〈時空神の祝福〉
〈第一回バトルフェス準優勝〉
〈深森の興味〉
〈西の湿地のボスを倒し者〉
〈火霊旅騎士の魔印〉
〈時駆ける少女〉
〈蟲惑の暗殺者の弟子〉
〈南の平原のボスを倒し者〉
〈北の山のボスを倒し者〉
〈人業のお気に入り〉
〈世喰の玩具〉
〈天災を鎮めし者〉
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ワールドモンスターやサバイバルイベントなど、様々な経験を得てかなり成長していますね!それに【調教】スキルも【調教士】となって進化しているため、さらに強くなれてます!
そして【双銃】スキルが二十七になったことで、二十五の時に〈バーストバレット〉という爆発する弾丸を発射する武技を覚え、【料理】スキルでは二十の時に〈乾燥〉という食材を乾燥させることが出来るアーツを覚えたので、それぞれ使う機会はありそうです。
最後に確認すべきものは、〈天災を鎮めし者〉という称号ですね。
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〈天災を鎮めし者〉
ワールドモンスターの一角である天災のゾムファレーズを倒した者に与えられる称号。特定の住人などからの第一印象をかなり良くし、信頼されやすくなる。
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説明を見た感じでは前にも手に入れていた〈人業のお気に入り〉と似たような効果ではありますが、その強化の割合がそれよりも高そうに見えますね。
効くのは特定の住人のみのようですけど、〈人業のお気に入り〉と重複するとしたらかなりの効果になりますし、これはこれで便利と感じます。
「ステータスの確認はこのくらいですね。次は、今までは確認していなかったセレネのスキルの確認に移りましょう」
私はステータスメニューを閉じた後にセレネとクリアに声をかけて呼び出すと、セレネは空中を泳ぐかのようにスイスイと動いたと思ったら、いつもの定位置である私の首元へと優しく巻きつきます。
それに対して、クリアもセレネと同じように定位置の肩へと飛び移ってきました。
私はそんな二人を微笑を浮かべながら軽く撫でつつ、スキルの確認をするためにセレネへ問いかけてみます。
「セレネ、貴方のスキルの確認をしてもいいですか?」
「キュゥ!」
私の言葉を聞いたセレネはわかった!とでもいうように声をあげて返事をしてきます。
セレネもどうやらいいみたいで、私の首元から離れて空中に飛んでいき、私のすぐ前で待機しています。
「ではまずは、【人化】をお願い出来ますか?」
「キュッ!」
私のお願いを聞いて即座にセレネはそのスキルを使用したようで、空中にいたセレネの身体が真っ白に光っていき、そのまま蛇の姿から徐々に大きくなって人間の姿に変化していきます。
そうして光が収まると、そこには真っ白な髪にエメラルドのような翠色をした綺麗な瞳で、身長は私よりも小さめである130cmくらいであろう少女が立っていました。
「セレネ、ですか…?」
「そうです、ますたー」
「……!」
私の質問にその少女、セレネはそのように言葉を返してきました。
セレネの人化した姿はそんな少女のような見た目ですが、目の色と身長が違うくらいで基本的には私と似たような見た目をしているみたいです。
もしかして、人化する姿はテイムしているプレイヤーによって決まったらするのでしょうか?だとするなら、ここまで私と似たような姿なのなら納得出来ますが…
まあそれは気にしてもわからないですし、いいですね。とりあえず、次は【偽・創造】のスキルを見せてもらいますか。
ちなみに、クリアもそんなセレネを見てすごーい!とでもいうように私の肩で跳ねており、その感情がダイレクトに私へと伝わってきています。
「セレネ、次は【偽・創造】を使ってもらってもいいですか?」
「わかりました。【偽・創造】!」
私の指示を聞いてセレネは人間の姿のまま右手を突き出してそのスキルを発動すると、突き出された右手の先に光が集まったと思った次の瞬間。
その光が一点に固まることで黒色をした金属らしきものが現れました。
「これは……黒鉄、ですか?」
「……!」
「ふぅ、そうです、ますたー。それにクリアおねえちゃん」
セレネはそのスキルを使ったからか少しだけ疲れた様子ではありますが、その力はとてもすごいものだというのはハッキリとわかります。
今作り出されたであろう黒鉄は前に砂漠で採掘した時の物と同じようで、これがあればいくらでも物を生み出す方が出来るみたいです。
それでも明らかに消耗が激しいようで、連発は出来ないみたいですが。まあ当然ですね。これの消耗が低すぎれば作り過ぎてしまうでしょうし、それらを大量に売ればゲームの中とはいえ流通などがおかしくなってしまうでしょうしね。
「それと、ますたー」
「ん、なんですか、セレネ?」
そんな思考をしていた私に向けて、一息ついたらしいセレネが声をかけてきたのでそちらへと意識を向けると、そこには無数のスライムに囲まれてたらセレネがいました。
え、そのスライム、どこから出てきたのですか…?私の感知スキルには一切反応がありませんでしたが…?
「このスキルは生き物も生み出せるみたいです」
「生き物も作れるのですか!」
「はい。自意識は一切ないようで、指示がなければ動かないみたいですけど」
ふむ、そうすると、このスキルで生み出した生き物などは私の使ったりしているゴーレムたちと似たような運用がよいのですね。
前にも軽く見ましたが、改めて確認してみた感じ、セレネの持つそのスキルは生き物も含めてあらゆる物を自身の力を使って生み出せるみたいですが、使い道は基本的にちょっとした素材を生み出したり、ゴーレムの代わりにしたりなどに使うことになりそうですね。
「…そういえばセレネ、セレネはなんで今までは人の姿にはならなかったのですか?」
そんな確認をしている途中でふと気になったことが頭によぎったので聞いてみると、セレネは表情を変えずに素直に答えてくれます。
「私はますたーとずっと触れ合っていたかったのもありますが、人の姿はあまり好きではないのです」
「セレネ…!」
「……!」
私はそのようなことを言っているセレネに近づき、優しげにギュッと抱きしめます。
「セレネは私にとっても大切な家族のような者ですし、私も触れ合いたいですよ!」
「ますたー…!」
「……!」
「もちろん、クリアもですよ!」
今も口にした通り、私は二人のことをすでに大切な家族と同等に考えています。それにこんな可愛くて優しい子たちなのです。なら、嫌うはずがありませんよ!
私は少しだけギュッと抱きしめていましたが、少しした後に離れ、再びセレネのスキルに対して確認を進めていきます。
「では、最後に【占星術】というスキルについて詳しく教えてもらってもいいですか?」
「大丈夫です、ますたー」
これも他のスキルと同様に、以前のイベント時に簡単にではありますが確認はしてますけど、直接情報として聞いた方がわかりやすいですしね。それに今は夜ではないので使えませんし、知っておくことは大事でもありますので。
「【占星術】スキルは、星の見えるところで使うと色々なバフを一人の対象に付与することが出来るというスキルで、基本的な魔法によるバフなどよりも多彩な効果を持ち、強力なものも多いのです」
ふむふむ、前に確認した時とあまり違いはなさそうですが、バフの種類が多いのですね。それに効果も強力とはセレネが言ってますし、星が見えている夜ではかなり強めのスキルと感じますね。
「確認するのはこれで終わり?」
「そうですね。セレネも協力してくれてありがとうございました!また私の首元へきますか?」
「うん!」
そんな言葉をセレネに向けてかけると、セレネは嬉しそうな様子で人の姿から蛇の姿へと戻り、そのまま空中を飛んできて私の首元に再度巻きつきます。
セレネ自身も言っていた通り、私にくっついていたいみたいですし、これからは何か特殊なことがない限りはこの姿のままにしておきますか。人の姿になるのが必要な場面もないでしょうしね。
あ、でもNPCの振りをする時には人の姿でと頼むことがあるかもしれませんね?まあそれはその機会があれば、ではありますが。
「では、最後に報酬の確認ですね」
私は天災を討伐した時に直接インベントリへと送られた報酬を確認すると、どうやら報酬は一つだけのようで、その一つはなんらかの本みたいでした。
私の場合は本が報酬なのは嬉しいですが、普通のプレイヤーからすると微妙に感じてしまいそうですね…?
「…まあ私の場合はユニークスキルで本の記憶を読み取れますし、もし報酬を選べと言われてもこれを選ぶでしょうけどね」
今も口にした通り、私的にはかなり当たりの部類ではあるのでこれはありがたくもらいますけど。それと、中の確認についてはまた今度ゆっくりと済ませることにしましょうか。時間に余裕があるとはいえ、これは明らかに重要そうなのでしっかりと心構えをしてから読みたいですしね。
「…よし、これで済ませないといけない確認も全て終わりましたし、この後はまた【料理】スキルのレベル上げも兼ねて屋台をやりますか!」
「キュゥ!」
「……!」
今の時刻はまだ八時半で時間は結構ありますし、未だに進化もしておらず低めな【料理】スキルのレベルも早めに上げときたいですしね!
「そうと決まれば、早速初期の街に戻りましょう!」
そうやることを決めた後はセレネとクリアをそばに連れながら、今いる草原から街へと戻り屋台の準備を始めます。
そうそう、前には伝えてませんでしたが、屋台は商業ギルドで屋台をするためのアイテムをもらうことができ、それを使って好きなところで開くことが出来るのです!
まあ簡単にいえば、たまに使っていた調理セットの屋台バージョンって感じなので、特に難しく考える必要はありません。
なので、それは前に受け取っており、早速屋台を始めるということなのですよ!今回はセレネとクリアもいますし、私自身の知名度もあるので人がたくさん来てくれるといいですね!




