表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
142/232

138話 砂漠で採掘

「とりあえず、元に戻しますか」


 ルルリシアさんがそう言って再び指パッチンをすると、宇宙のような空間が元通りになり、先程までいた玉座の間へと戻ってきました。


 宇宙みたいな空間は新鮮だったので少しだけ興味が惹かれましたが、おそらくはナンテさんのような簡易の領域でしょうし、気にしても仕方ないのでスルーですね。


「お願いもしましたし、私はこの辺で行かせてもらいますね」

「わかりました。再び会うこともあるでしょうし、その時にまた…!」

「はい、では」


 その言葉と共にルルリシアさんは転移らしき力で一瞬にしていなくなったので、私は今まで空気だったファムちゃんとそばにいたセレネとクリアに意識を向けます。


「これで用事は終わりですよね?」

「なの。おねえちゃんはもう行く?」

「はい、やることも済みましたし、そろそろ元の場所に戻ろうと思います」


 今すぐにやるべきことがあるわけではないですが、いつまでもこの国にいると攻略が進みませんし、私もこの世界を楽しみたいですからね。


「…わかったの。じゃあニーナのところまで送るの」

「わかりました」


 そうして私はセレネとクリアを連れて、ファムちゃんと一緒に大樹から外に出るために玉座の間から出て再び歩き始めます。


「…そういえば、ファムちゃんたちからするとルルリシアさんのことはどう思っているのですか?」


 道中で私はそのように問いかけてみると、ファムちゃんは一瞬だけ思考してましたがすぐに答えが出たようで、口を開きます。


「わたしたちからすると、すごい人って感じなの」

「すごい人、ですか?」

「なの。実力もそうだけど、なんと言っても人間性が優れているのが好ポイントなの」


 なるほど、人間性ですか。確かにさっき対面した感じからしても人柄が良さそうに感じましたし、精霊であるファムちゃんがそう褒め称えるのも納得です。


 それに、自身もワールドモンスターなのにいずれ自身の討伐を頼むというのも、よほどの覚悟がなければ出来ないとは思います。


 それほどまでに、あの人は私に頼んでいた願いについて決意を固めているのでしょうね。


「一度会っただけの私でも、それは感じれましたね」

「なの」


 初めての対面でしたが、あそこまでの強い心があるのなら自分の力だけでも願いとやらは叶えられそうではありますけど、自身がワールドモンスターになってしまっているのが足枷になっているんでしょうね。


 あ、それと前にサジタリウスくんから聞いた話ではワールドモンスターは神様の悪心が宿った存在と言ってましたが、精霊王であるあの人はどうやってそれを宿してしまったのでしょうか?


 明らかにその悪心が散らばったタイミングで生まれたというわけではなさそうですけど……もう少しだけルルリシアさんについてファムちゃんに聞いてみますか。


「ファムちゃん、ちょっと聞きたいことがあるのですけど…」

「ん、なに?」

「精霊王であるあの人は、昔に何かあったりはしたのでしょうか?」

「昔になにか…?んー…」


 私の質問に歩きながらも思考を巡らせていたファムちゃんでしたが、ふと何かを思い出したのか、あっという言葉と共にこちらへと視線を向けてきてから言葉を発します。


「…そういえば、かなり昔にだけど精霊王が空から降ってきた謎の光に包まれることがあったの」


 ふむふむ、間違いなくそれが神様の悪心だったのでしょうね。とすると、やはり生まれた時から持っていたものではないようです。


 私が倒した天災はどうだったかはわかりませんが、他のワールドモンスターたちも生まれつきではなく後天的に宿った個体もいそうですね?


 だとしても倒すことが目標で違いはなさそうなので、そこまで気にしなくてもいいかもしれませんが。


「っと、おねえちゃん、着いたの」

「待ってたわよ、レア!」

「あ、ニーナちゃん!」


 そうした思考を巡らせていると、いつのまにかお城代わりの大樹の出口についていたようで、目の前にはニーナちゃんが仁王立ちで待っていました。


 …まあニーナちゃんの身長は私より小さい身長110cm後半くらいで威圧感などは一切ないので、微笑ましい感じではありますけどね。


「じゃあファム、あとは任せなさい!」

「ん。ならわたしはこれで」

「また会いましょうね、ファムちゃん!」


 そんな言葉を交わした後、ファムちゃんは再び大樹の中へと戻っていくのを見送った私はニーナちゃんへと視線を戻します。


「レア、元いた場所へと戻すわね」

「お願いします、ニーナちゃん」


 その言葉を合図に、すぐさまニーナちゃんによる転移の力で最初にいた場所である初期の街まで戻ってきました。


 やはり転移系の能力はとても便利ですねぇ。まあ私の時を操るユニークスキルも戦闘以外にも使える機会が多いのでいいですけど、こればかりは隣の芝生は青く見えるものだと感じてしまいますしね。


「レア!これを渡しておくわね!」


 そう周りを軽く確認していると、突然ニーナちゃんから何かを手渡されたので思わず受け取ってしまいましたが、それは透明な水晶のようなもので出来ている手鏡の見た目をしていました。


「これは…?」

「それは、あたしたちの精霊都市へといつでも向える鏡よ!」


 思わずそのように聞いてみると、ニーナちゃんはそんな説明をしてくれました。


 この手鏡はどうやら精霊都市へと繋がっているらしく、魔力を流すことでいつでも精霊都市に行くことが出来るアイテムらしいです。


 そ、そんな貴重そうなものをもらっても大丈夫なのでしょうか…?明らかにレア度が段違いに感じますけど…


「レアなら大丈夫よ!それに、この手鏡がなければもう一度行くのにはちょっと面倒なことが多いしね!」


 ニーナちゃんはそう言ってますが、確かに精霊都市へと行けたのはニーナちゃんがいたおかげでしたし、私だけではまず向かうことが出来ないのでこの手鏡はかなり重要なアイテムになりますね…!


 なら、これはありがたく受け取っておくとしますか、


「手鏡、ありがとうございます!」

「ふっふーん、喜んでくれてよかったわ!じゃああたしはこれで行くから、またね!」

「はい!また会いましょうね!」


 その言葉を最後に、ニーナちゃんは再び転移でここからいなくなりました。


「今の時刻は……四時半くらいですか」


 色々とあって時間は経過してますが、夜ご飯にしてはまだ少しだけ早いので六時くらいまではもう少しゲームでもしてますか。ワールドモンスターを相手にしてたのでちょっとだけ疲れもあるので、ゆっくりと採取か採掘か…


「そうですね、前に砂漠を歩いていた時に見かけていた採掘ポイントで鉱石集めでもしますか!」

「キュッ!」

「……!」


 前に見た時はツルハシの持ち合わせがなかったのでスルーしてましたが、ちょうどいいので砂漠の街でツルハシを買ってから向かうとしましょう!


 今では出番がなく空気だったセレネとクリアも賛成のようですし、いざ採掘へ!




「ふむふむ、砂漠は鉱山とはまた違った鉱石が取れるのですね」

「キュッ?」

「……?」


 そうして砂漠都市サラメダに転移した後にツルハシを買って採掘に向かった私とセレネ、クリアでしたが、砂漠にある採掘ポイントでは鉱山とは違う鉱石が複数確保することが出来ました。


 その違った鉱石は全部で三個あり、一つ目が黒鉄といってかなりの重さを持つ金属のようで、二つ目が白鉄でこちらは黒鉄とは反対でとても軽い金属です。


 そして最後の三つ目がコバルトといい、耐久力と防御力が程よく高くて防具や盾に使えるますが、武器には向かない鉱石となっています。


「大量に確保出来たわけではありませんが、意外と手に入れることが出来ましたね?」


 今回砂漠で手に入れたそれらはやはりレア枠なのか、他に採掘出来た鉄や金、銀に宝石の原石などよりは多くはありませんでした。それでもある程度の数は確保出来たので、売りに行けばいい値段になりそうです。


 私は武器や鎧などには使わないので売り払うくらいしか使い道がありませんが、お金に変えれるのでこの鉱石たちは今度アイザさんへと売りに行きますか!


「…そろそろいい時間ですし、このくらいにして街に戻りますか」


 私は腰元の懐中時計を手に取って確認すると、すでに時刻は五時半を過ぎているところでした。


 今いる砂漠から街に戻るのには少しだけ時間もかかりそうですし、夜ご飯の支度のために一度ログアウトをするために街に戻りましょう。


「セレネとクリアも、いきますよ!」

「キュッ!」

「……!」


 私のかけた声にわかった!とでもいうかのように感情を伝えてくる二人を見てクスッと笑いつつも、私はツルハシをインベントリに仕舞った後に街に向かって歩き出します。




「夏祭り、ですか?」

『ああ』


 ログアウトした後はストレッチを済ませた後にパパッと夜ご飯の支度も終わらせ、その他諸々も一通り終わらせた後に部屋で宿題を片付けていると悠斗から電話がきました。


 そんな電話越しで、悠斗は近々あるという夏祭りとやらに私を誘いにきたみたいで、私は思わずそのように聞き返してしまいました。


『最近はゲームばかりで外に出ることが少なかっただろ?だから、ちょうど祭りがあるから一緒にどうかと思ってな』

「確かに最近はゲーム三昧でしたもんね。いいですよ、私も断る理由がありませんし、そのお誘いは受けさせてもらいます!」

『それならよかった。祭りがあるのは明日の午後六時くらいだから、そのくらいになったら向えに行くな』

「わかりました!楽しみにして待ってますね!」


 夏祭りがあるのは明日の午後六時からみたいなのでその時間ではゲームをしないでおきましょうか。


 それに悠斗とのお祭りなんて本当に久しぶりですし、これは楽しみですね!


『じゃあまた明日にな』

「はい、悠斗も体調には気をつけてくださいね!」


 そう言って私は電話を切って今の時刻を確認してみると、すでに時刻は八時半を超えていました。


「…とりあえず今日は寝るまでは宿題を進めて、ゲームはやめておきましょう」


 夏休みの宿題は早めに終わらせておけば楽ですし、この機会に一気に終わらせちゃいましょう!




 そうして次の日である火曜日です。今日の夜には悠斗との夏祭りがありますが、時間はたくさんあるのでお昼くらいまでは再びゲームでもしてましょうか。


「んー…っと。まずは朝の支度を済ませてきますか」


 私はいつものストレッチを終わらせて服を着替えた後、リビングへと降りて朝ごはんなどの諸々も済ませていると兄様が眠そうな表情をしつつ降りてきました。


「おはようございます、兄様」

「…美幸か、おはよう」


 うーん、兄様は遅くまでゲームでもしていたようで、結構眠たそうですね?まあキチンと起きてはいますし、気にしなくても良いかもしれませんが。


 欠伸をしながら返事を返してきた兄様に対して、私はすでにやることも終わっているので先に部屋に戻ってますね、と伝えてからリビングを出て自分の部屋へと戻ります。


 兄様もそれに返事をくれましたし、お昼まではゲームと洒落込みますか!




「…よし、ログインしましたね」


 部屋に戻った後は早速とばかりにヘッドギアを着けてゲーム世界へログインしてきた私ですが、今いる場所は昨日ログアウトした場所である砂漠の街でした。


「…アイザさんもログインしているみたいですし、ひとまず鉱石類を売りに行きますか」


 フレンドリストにはログインしていると書いてありますし、早速向かいます。レアそうな鉱石もある程度は確保出来ているので高く売れると良いですけど、どうなるでしょうか…


 そして砂漠から転移をして初期の街まで戻ってきた私は、そのままその足でアイザさんのお店へと歩きます。


「うーん……それにしても、装備が立派になっているプレイヤーも増えてきましたね」


 その道中ではすれ違うプレイヤーの人たちをチラリと確認しつつ歩いていましたが、すでに初期装備からは卒業しているらしくそれぞれがおしゃれで性能の良さそうな装備を着けていました。


 第二陣が来てからすでに結構経っていますし、皆さんも成長しているということですね!


「私も色々な装備を獲得していますし、これからはこのゴスロリだけではなく他の装備とかも使っていきたいですね」


 それに私の場合はNPCの振りが出来るアクセサリーも持っているので、それを使ってロールプレイをすればまた面白そうなことも起こりそうですしね!


「まあそれについては今度にして、さっさとアイザさんのところへ行きますか」


 そこからも街中をテクテクと歩き続けていると、すぐにアイザさんならお店であるアイアンスミスの入り口まで到着しました。


 私は躊躇なく扉を開けて中に入りましたが、内装は特に変わってないようで無数の金属製の装備が置かれており、お店の中にいるプレイヤーたちがそんな商品を見ながら立っているのがわかります。


「…カウンターにはいないみたいですね。あの、すみません」

「はい、なんでしょうか?」


 カウンターにはアイザさんではなく店員さんらしき男性の住人がいたので、私はその人に対して声をかけ、続けてアイザさんを呼んできてもらえるかを聞いてみます。


「アイザさんに話があって来たのですけど…」

「わかりました。ただいま呼んできます」


 店員さんは私の言葉を聞いてすぐさま裏へと向かったので、私はその間に軽く商品を眺めてみます。


「…やはり鍛冶屋でトップなだけはあって、かなりの性能の武具たちですね」


 軽く見ただけでもその性能に驚かされますが、これらを使う人たちにとってはとてもお買い得な商品ではありますね。


 まあその分値段は高いので、これらを買えるプレイヤーもトップ帯のプレイヤーのみでしょうけど。


 ですがその代わりとして性能は落ちますが安めの武具も置いてありますし、初心者や中級者くらいの人たちにとっても損はないお店です。


「待たせたな」

「あ、アイザさん。いえ、私が急に来ましたから大丈夫ですよ」


 そんな武具の観察をしていると、背後からそのような声と共にアイザさんが来たので、私はそちらへと振り向きます。…が、そのアイザさんの見た目に私は頬を赤く染めたうえ少しだけ視線を逸らします。


 なんとアイザさんは上半身に何も着ておらず、厚手のズボンらしき装備しか着けていなかったのです。げ、ゲームの中とはいえ流石にそんなに露出が多いと、見ているこっちが恥ずかしくなってしまいます…!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ