表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/232

136話 EXスキル

「…ひとまずは元いた場所に戻ってきましたし、さっきクオンの言っていた打ち上げに行きませんか?」

「俺は構わないぞ」

「我もだ」

「私もです」


 簡単に情報の整理を済ました後にそう皆さんへと声をかけてみると、カムイさん、ルベルさん、ジェーンさんも私の提案に問題はないようで参加するみたいです。


「私も予定は特にないですし、参加するのです!」

「私も行こうかな!」

「…アリスとソフィアが行くのなら、私も行くわ」


 続けてアリスさん、ソフィアさん、ネーヴェさんも同様に参加の意思を示してくれたので、私は最後に兄様にも参加しますよね?という言葉を込めて視線を向けると、当然の如く頷いてくれました。


 クオンも参加してくれますし、皆が行けるみたいですね!なら、早速打ち上げに行きましょうか!行くお店はもちろん、ムニルさんのところです!


 あ、その前に戦闘の観察をしていたであろうニーナちゃんにも一度声をかけておかないとですね。でも、今ここにはいませんし、どうしましょうか?


「レアー!」

「っと、ニーナちゃんですか」


 そう考えていたタイミングでちょうどニーナちゃんが転移で私のそばへと現れた、そのまま私に抱きついてきました。


 やっぱりこちらの状況は見ていたようです。でないとこのタイミングでは現れないでしょうしね。


「レアはすごいわ!あんな強敵を倒すなんて!」

「私だけではないですよ。皆さんの力添えがあり、勝てたのですから」

「それでもよ!やっぱりレアに頼んで正解だったわ!」


 そう言いながら私の胸元へとグリグリと押し付けてきているニーナちゃんを優しく撫でつつ、私は言葉を返します。


「ニーナちゃん、今から私たち全員で打ち上げに行くのですが、よかったらニーナちゃんも行きませんか?」

「あたしも?」

「はい。私はニーナちゃんともまだ一緒にいたいですしね」


 それにワールドモンスターと同じ名前らしいニーナちゃんたち精霊の主人である精霊王についても詳しく聞きたいですし、このタイミングがベストですしね。


 私の言葉にニーナちゃんは少しだけ悩んでいましたが、すぐに決めたようで、なら着いていくわ!と答えてくれました。


 よし、なら早速皆でムニルさんのお店へと向かいましょうか!もちろんセレネとクリアも連れて、です!




 ムニルさんのお店には再びニーナちゃんが転移を使ってくれたのですぐに着き、皆で中へと入っていきます。


 今の時刻はおよそ二時半くらいなので時間的には微妙ではありますが、それでも食事をしているプレイヤーらしき人が結構いるみたいでなかなか繁盛しています。


 その中で座れる場所は……ありましたね。私たちは合計で十人なので広さがある場所が必要ですけど、ちょうどよく空いていたので助かりましたね。


「さて、まずは注文とするか」

「そうですね」


 そうして兄様の言葉を合図に私たちはそれぞれ注文を済ませ、料理が届くまで会話を続けます。


「それにしても、レアちゃんはすごかったね!」

「そうですか?」

「そうなのですよ!レアさんがいたおかげで勝てたと言っていいほどですし、自信を持って大丈夫なのです!」

「そうなの?」

「ああ、レアがいなければ高確率で負けてただろうからな」

「そんなにだったのね!やっぱりレアはすごいわ!」


 ソフィアさんの言葉に続けてアリスさんからもそう言われ、ニーナちゃんの疑問にもクオンがベタ褒めしつつ皆に聞こえるように言葉を返しているので、私はそれらの言葉を聞いて少しだけ嬉しくなりつつも照れてしまい、素っ気なくありがとうございますと返してしまいました。


 そんな私の態度にここに集まっている全員からも微笑ましくに見つめられてしまっており、私はさらに頬を赤く染めてしまいます。


 うう、恥ずかしいです…!でも、自信を持っていいと言われていますし、その言葉はありがたく受け取りますが!


「そ、そんな私のことよりも、ネーヴェさんですよ!」

「…私?」


 私のあげた声にネーヴェさんは僅かに驚いた様子でしたが、私はネーヴェさんに視線を向けつつ言葉を発します。


「ネーヴェさんは私と同じEXスキルを使っていたじゃないですか!」

「そういえばそうだな。二人を除いた俺たちは皆持っていないが、取得条件は確定しているのか?」

「そうね…」


 カムイさんの問いかけにネーヴェさんは少しだけ思考をしているみたいなので、先に私の主観で立てた予測について皆さんへと説明をします。


「私の推測ではありますが、おそらく条件は二つだと思います」

「ほう、それで?」


 手始めに語った説明を聞き、ルベルさんが水を飲みながら続きを即してきたので、私は指を二本立ててさらなる説明を口にします。


 …それにしても、ルベルさんは少しだけ人見知り感が見えていましたが、すでに皆との関係も進んでいるようで普通に会話をしてくれるのでやりやすいですね。


 っと、それはいいとして説明をしましょうか。


「…その条件とは、おそらく感情の昂りとこの世界での経験の二つだとは推測出来ています」

「感情の昂りと経験、か…」

「簡単そうには見えるが、普通に取得することは難しそうだな」


 カムイさんとクオンが私の説明を聞いてそう呟きながら思考を巡らせているみたいです。


 クオンもそう言ってますが、この世界での経験はともかくとして感情の昂りが条件だとした場合はそう簡単には獲得出来なさそうです。


 まあ私の推測なので違う可能性もありますけど、そこまでズレている感じはしませんしね。


「ネーヴェは、どうなの?」


 私の説明を聞いて皆さん難しそうな表情をしていましたが、そこにソフィアさんがネーヴェさんに対しても聞いてみると、ネーヴェさんも答えが決まったのかすぐにそれに答えます。


「…多分だけど、レアの言っている条件で間違いないとは思うわ。けど、感情の昂りについてはそこまで激しい感情じゃなくても良いかもしれないわね」

「そうなのですか?」

「ええ、私はユニーククエストのボスとの戦闘時に気分が高揚したと思ったら獲得したしね」


 ふむふむ、ネーヴェさんの場合はそのような感じだったのですね。私は過去の記憶との訣別の後に獲得したので激しい感情が必要だと思いましたが、そこまで強くはなくてもいいのかもしれません。


「…レアと、そこのネーヴェ?は【心力解放】スキルを持っているのかしら?」

「はい、そうなんです」

「ここに二人の獲得者がいるなんて、すごいわね…」


 ニーナちゃんはそう呟いた後に何やら考えごとをしていますが、もしかしなくてもEXスキルについて詳しいことを知っているのでしょうか?


 それなら、ちょっと聞いてみましょうかね。


「ニーナちゃん、もしかしてニーナちゃんはそのスキルについて詳しく知っているのですか?」

「んー……詳しいというわけではないけど、知っているのについては否定しないわ」


 否定しないということは、やはり情報を持っているみたいですね。私とネーヴェさんの予測出来ていること以外には一切情報を持ってませんし、出来れば教えて欲しいですけど、どうでしょうか…?


「もしよければ、知っている範囲でいいのでそのスキルについて教えてもらってもいいですか?」

「……そうね、これからこのメンバーで獲得してくる人も出てくるでしょうし、あたしの知っていることは教えてあげるわ!」


 どうやら隠すことでもないらしく、ニーナちゃんの知り得る範囲で教えてくれるみたいなのでしっかりと聞いておきましょう!


「まず、レアたちの言っているEXスキルとは、主に三種類に別れているわ」


 どこからともなく出したメガネをスチャッとかけた後、ニーナちゃんは詳しく説明をしてくれます。


 …というか、いまどこからメガネを出したのですかね?まあ空間精霊のようですし、アイテムを仕舞ったり取り出したりはお手のものなのでしょうね。なら、気にしたら負けですか。


「まず一つ目がレアたちの言っていた【心力解放】。二つ目がそれの発展系である【深層解放】。最後に三つ目が、自身の有利な状況を作り出すことが出来る【領域解放】となっているの」


 一つ目の【心力解放】スキルについてはすでに知っていましたが、【深層解放】スキルは初耳です。


 そういえば、天災もそのような能力を発動してましたね。なら、私たち人だけではなく生きとし生けるものは全て獲得出来るとは予測出来ます。


 そして三つ目の【領域解放】スキルの方に関しては、前にサルファ君やナンテさんからも教えてもらっていたので大まかにはすでに知っています。まあ詳しくはないですし、この機会に聞いてみますけど。


「お待たせしましたー!」

「お、きたか」


 そんな説明を聞いていたタイミングで店員さんが料理を運んできたので、話すのは一度止めてそれらを受け取ります。


 私の注文したのはチーズハンバーグでしたが、ニーナちゃんが頼んでいたビーフシチューも美味しそうですね…!


「…とりあえず、説明の続きは食べてからにするか」

「そうね。冷ましてしまうのも料理人に悪いし、早速食べましょうか」

「だね!いただきます!」


 そんな言葉を交わした後、私たちはニーナちゃんの説明を後にして先にご飯を食べていきます。


 私はチーズのかかっているハンバーグをナイフで切り分け、フォークで刺して口の中へと運びます。


 んー!トロトロのチーズにパンチの効いたお肉の味、溢れ出る肉汁にこの柔らかな食感!これまでにも何度か食べることがありましたが、やはりムニルさんの作る料理はどれも美味しいです!


 セレネとクリアにもチーズハンバーグを分けていますが、二人も美味しいらしく嬉しそうにしているので、こちらとしても嬉しく感じます!


「これは、あたしたちの国の料理よりも美味しいわね…」


 私たちと一緒になってビーフシチューを食べていたニーナちゃんも、どうやらこの味に感動したらしくすごく美味しそうな表情をしながらも食べ進めています。


 ニーナちゃんのような住人の人からも好感を持たれていますし、やはりムニルさんはすごい料理人なのがはっきりとわかりますね!


「ご馳走様でした!」

「キュッ!」

「……!」


 そうして特に会話もせずに黙々と皆で食べ進め、いつのまにか食べ終わっていたのでそのような声を出して食事を終わらせます。


「じゃあ、さっきの話の続きをしたいが…」

「なら、貴方たちも一緒に精霊都市にこないかしら?」


 先程の説明を聞くため、兄様が少しだけ場所を変えたそうにしながらそう声を出すと、それにニーナちゃんが言葉を返します。


 精霊都市への招待をしてますが、いいのでしょうか?兄様たちの性格などは私からすると大丈夫だとは思いますが、そういうのには厳しそうに感じますけど…


「いいのですか?」

「レアの友人みたいだし、問題ないと判断したからね」


 私はニーナちゃんにそのように聞いてみましたが、特に問題もないと決めたようでそんな言葉を発しつつ、兄様たちへと視線を向けてどうするかを目で問いかけます。


 それを見た兄様たちはもちろんといった様子で、それな行かせて欲しい、と声に出します。


「よし、ならさっさとこのお店から出て向かいましょう」


 そう言ってテーブル席から離れていくので、私たちも会計を手早く済ませた後に一緒にお店を出て、そのままニーナちゃんの力で精霊都市まで転移で移動します。




「…よし、着いたわ」

「ここが、精霊の暮らしている場所なのか」

「森の中みたいで綺麗なのです…!」


 ニーナちゃんの転移の力ですぐさま精霊都市へと戻ってきた私たちでしたが、兄様とアリスさんは目に入ってきた景色を見てそう呟いています。


 それにセレネやクリア、他のメンバーも口にはしてないだけで驚きの感情を顔に浮かばせていますし、そうなりますよね。私も最初は少しだけ驚きましたもん。


「…とりあえず、ここの都市にあるあたしの家にでも行きましょうか。説明はそこで」

「わかりました。皆さんも、驚いているところ申し訳ありませんが、行きますよ!」

「了解!じゃあ行こうか」


 私の言葉にクオンが代表として言葉を返してくれたので、そのままニーナちゃんの案内に従って精霊都市を歩いていきます。


 ちなみに、私たちが最初にここへ来た場所は森のような精霊都市の広場辺りだったので、周りには精霊たちの家があります。


 なのでニーナちゃんの案内で森のような街中を歩いていると、物珍しいからか私たちに対して精霊らしき人影がたくさん駆け寄ってきました。


「ねえねえ、お姉さん!お姉さんがワールドモンスターを倒したの!?」

「あれ、なんで知っているのですか?」

「それはね、ニーナが教えてくれたからだよ!」


 寄ってきた緑髪の精霊の一人がそのように口にしていたので私はそばにいるニーナちゃんに視線を向けると、ニーナちゃんは目を逸らして誤魔化すかのように下手くそな口笛を吹いています。


 怒っていないので誤魔化す必要がありませんが、その反応に私は思わず笑みがこぼれます。


「ふふ、別に怒ってはいませんよ?ただビックリしただけですから」

「そ、そう?なら、いいわね!ほらほら、さっさとあたしの家に行くんだし、皆んなは後で!」


 そう言いながらニーナちゃんは集まってきていた精霊たちをパパッと帰らせ、私たちに行くわよ、っと言ってズンズン歩いていくので私たちもそれに続いていきます。


 そうして精霊たちの集まってきた場所からさらに歩き続けていると、一軒の家の前でニーナちゃんが止まったので目的地であるニーナちゃんの家に着いたのでしょうね。


 そんな一軒の家は最初に連れてこられた家とほとんど違いはないらしく、見た目からは違いがわかりません。まあ家の中は流石に異なる見た目をしているとは思いますが。


「じゃあ、入ってきて」

「はい。お邪魔します…!」


 外観を見ていた私たちへとニーナちゃんはそのように声をかけてきたので、それに素直に従ってニーナちゃんに続くように家の中へと足を踏み入れます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ