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134話 呼び寄せよ、天為の災厄5



『貴様、いつのまに…!』

「まだまだですよ!」

「キュッ!」

「……!」


 私は背中にいる状態のまま続けてゼロ距離から〈第二の時(ツヴァイ)〉も再び撃ち込み、さらに動きを鈍くさせながらセレネとクリアからの攻撃も与えていきます。


『ちっ、ならば…!』

「レアさん…!?」

「レア!」


 すると天災は一気に翼を広げたと思ったら、そのまま勢いよく空中へと飛び上がってしまいます。


 って、私が乗ったままなのですけど…!もしかしなくても、このまま空中で振るい落としてやろうという魂胆がみえますね…!


「レアちゃん!」


 そこへ翼を広げてソフィアさんが追いかけてきますが、流石に手を出すのは無理とは感じます。


 なんと、天災は動きが遅くなっているとはいえ未だに雨と風の激しい状態の空の中で暴風と雷を出しながら暴れており、近づけないからです。


「ぐっ…キャッ!?」

「危ない、レアちゃん!」


 そうして風や雨などもあって捕まり続けることが出来ず、ついに暴れていた勢いのままに空中へと投げ出された私でしたが、すぐさま空中を飛んできたソフィアさんに捕まることでなんとか落ちずにすみました。


 っというか、お姫様抱っこで捕まえられたので少しだけ恥ずかしいです…!


「レアちゃん、大丈夫?」

「はい、ソフィアさんのおかげで無駄に怪我を負うことはなかったですし、助かりました!」


 私は一応空中をジャンプすることが出来るスキルを持っていますが、それでも連発は出来ないのでソフィアさんの手助けはとてもありがたかったです!


『ふん、貴様らはなかなかやるようだな』


 そうして岩の柱の上へとソフィアさんのおかげで戻ってきた私たちでしたが、そのような声と共に天災が一緒に空から降りてきたようで少しだけ離れた位置でこちらを警戒しつつ見つめてきています。


 HPもここまでの攻撃によってついに最後の四本目までいってますし、ラストスパートです!


「やはり、ワールドモンスターというだけはあって手強いな」

「レアがいなければどうなっていたか…」


 それと周りの岩の柱の上には、兄様やカムイさんが武器を構えつつそう呟いて待機しているので、私だけでなんとかしようと動くのではなく皆の力を合わせないとダメですね。


 ヘイトを私に集めるとはいえ、私以外も攻撃を出来ないとダメージを与えられなくて意味がないですしね。


『それにここまで傷をつけられたのだ。であれば、我の最後の力をお見せしよう!』

「ちっ、阻止に動くぞ!」

「ふん、言われなくても!」


 そんな兄様とルベルさんの言葉と共に、天災の周りに漂っていた魔力が当然活性化してきたのが私の感覚に伝わり、明らかに何かをしようとしているのがわかります。


 おそらくはここまでに使ってきていた特殊な能力だとは思うので阻止はしたいですが、たぶん厳しいと感じます。まあそれでも、阻止には動きますが…!


『さあ刮目せよ、我が孤高なる竜王の姿を!今ここに顕現するは真なる竜よ!〈深層開放・真なる竜は果てに至る(ライデン・シャフト)〉!』


 阻止するために今出来る範囲で皆の力を振り絞って天災へと攻撃を放ちましたが、地面から生えてきた無数の岩の柱に防御されて思ってた通り止めることは出来ず、発動されてしまいます。


 天災が口にしていた深層解放という能力が発揮すると、先程まで出来ていた岩の柱が行きなり全てなくなり、そのまま空中へと投げ出されてしまいます。


「くっ…!」

「なっ…!?」

「ちっ…!」

「おっと…!」


 岩の柱の上に立っていた私と兄様、そしてカムイさんにソフィアさんはすぐさま空中で姿勢を戻して地面へと着地しましたが、もちろんこの変化だけでは終わるはずがありません。


 続けて、この空間内の外周で燃えていた青い炎が一気に地面を走って空中に漂っている天災へと集まり、その青い炎に包まれることで吸収していってます。


「これは…」

「間違いなく、やばいと感じますね」


 近くにいたルベルさんとジェーンさんの言葉に、いつのまにか集まっていた皆さんが頷いて同意しています。


 天災は最後の力と言ってましたし、これが最終形態なのでしょう。ということはここを乗り切らなければ勝ちはありませんし、最後まで気を引き締めていかなくてはいけませんね…!


 天災へと青い炎が集まっている状態を警戒しつつ観察に徹していると、すぐに青い炎が弾けるように消えたと思ったら、そこには二回りくらい小さくなった天災の姿がありました。


 感じる威圧感や魔力からは先程よりも遥かに強くなっているのがわかりますが、青白いラインが身体中に走っており見た目からは小さくなっただけのように見えますね。


『ふん、この姿を見せるのは貴様らが初めてだ。ここからはさらにゆくぞ?全力で抗うがよい!』


 見た目は小さくても、先程とは比べ物にならないほどに強さを感じますね。


「…なら、ここからは私だけではなく兄様たち前衛組にも手伝ってもらいましょうか」


 私は再びの戦闘の開始と共に放ってきた青白い火球を〈第三の時(ドライ)〉を放って打ち消した後、すぐさま横に回り込む形で天災へと接近しつつ兄様たちに向けて声をあげます。


「…兄様!それに皆さんも、メインのタンクは変わらず私がやるので、サポートをお願いします!」

「了解、まかせろ!」

『ふん、何をしても無駄だ!我が力に滅されるがいい!』


 私の指示を聞いた兄様たちも即座に動き出したのを尻目に、私はこちらへと意識が向いている天災へと両手の双銃から弾丸を乱射して注意を惹きつけます。


 天災のステータスと能力はこれまでとは違って格段に強くなっているらしく、無数の業火や氷吹雪、雷撃に竜巻などの災害の如き規模の魔法を接近しようとしている兄様たちへと放ち、一番近い私へは暴風を纏うことで加速した凄まじい速度で腕を振るって攻撃してきます。


 天気が悪いとはいえここからは平らな地面ですし、ここなら戦いやすそうですね!


「…なら、やることは決まってます…!」


 私は攻撃を放ってくる天災を見て即座に自身へ〈第一の時(アイン)〉を撃ち込んで加速させ、さらにセレネやクリア、後衛であるネーヴェさんやアリスさんのサポートを受け、次々と飛んでくる攻撃を不規則な動きと細かい足捌きでなんとか肌をギリギリ掠めるくらいで捌いていきます。


 ですが、流石に素早さが速すぎて避けるのに必死になってしまっており、反撃にはどうしても移るのが厳しいです…!


「もっと、速さがあれば…!」


 ない物ねだりで仕方ないですが、そう願ってしまうほどです。ステータスがもっと高ければ、今も暴風を纏っている天災のようなワールドモンスター相手でもなんとか相手を出来そうなのですけど…!


 ーーしかし、今ここにいるのは私一人では有りません!


「〈秘剣・風断〉!」

『む?』


 激しい魔法の嵐から抜け出してきた兄様が風の刃を放つ武技を使い、それは私へと攻撃を繰り返していた天災の身体に命中してダメージを与えます。


「〈炎の豪剣(フレア・ソード)〉!」

「〈串刺し鮮血(ブラッド・ツェペシュ)〉!」

「〈落ちる霹靂(プレアルトゥス)〉!」

「〈狂獣の叫砲(ビースト・ハウリング)〉!」

『ふん、鬱陶しいな』


 兄様に続くように抜け出してきたクオンたちによる攻撃も天災へと放たれ、天災の意識が私から僅かに逸れることで一瞬だけ隙が生まれます。


 ほんのわずかな隙ですが、当然見落とすはずがありませんよ!


「〈第二の時(ツヴァイ)〉!」

『ちっ、またか!だが!』

「〈第七の時(ズィーベン)〉!」


 遅延効果持ちの武技を命中させて動きを鈍くしましたが、今度は暴風ではなく青色をした業火を纏ってから再び私へと攻撃を繰り出してきます。


 なので、即座に分身を呼び出す武技を自身に撃ち込むことで現れた分身と共に、〈第一の時(アイン)〉を付与してフェイントを混ぜながらそれらの攻撃に対応していきます。


『ガァ!』

「はぁ!」


 先程までとは違って暴風ではなく青い炎のおかげか、それとも分身のいるおかげか。〈第一の時(アイン)〉で加速させた状態ならスピードが同じくらいで躱して反撃に移れており、いい感じではありますね…!


「キュゥ!」

「……!」

「サポートするわ!〈飛び回る氷柱(アイス・フリーゲン)〉!」

「〈アクアアロー〉なのです!」


 それにそばにいるセレネやクリア、後方からネーヴェさんとアリスさんのサポートもしっかりと受けれているためかなりいい調子で戦えており、そこに兄様たちも隙を見て攻撃を与えてくれているので天災のHPをじわじわと削れています。


 このままいければ良いでしょうが、まず間違いなくこれで終わるはずがありませんし、油断は出来ません…!


『貴様らはなかなかやるようだな。ならば、さらに上げてゆくぞ!〈双魔武装覇気〉!』

「…っ、思ってた通り、まだ上がありましたか…!」

「キュゥ…!」

「……!」


 その言葉を合図として、天災は青い炎を纏ったまま、黒色をした雷までも纏い始めます。


 くっ、二つの属性を纏えたのですね…!雷は風と同様に俊敏性を高め、炎は攻撃力を上げる効果だとは把握してますし、ここからはさらに手強くなりそうです…!


「ちっ、やりにくいな…!」

「雷と炎が激しい…!」


 しかも攻撃が激しく、あたりに炎と雷が迸っているせいで兄様たちがうまく近づくことが出来ていないのです。


 なら、分身も消えてしまいましたし、状況を変えるためにここで一つの武技を使わせてもらいましょう…!


「〈第八の時(アハト)〉…!」


 私はその武技を自身へと撃ち込むと、その効果がしっかりと発動されて私を上に押し上げるかの如く、足元に巨大な大蛇…… 深森のアビシルヴァが現れます。


『そいつは…!』

「さあ、私からも攻めせてもらいますよ!」

「キュッ!」

「……!」

「シャアァ!!」


 天災も同じワールドモンスターだからか深森を知っているようで驚いていますが、効果時間は三十秒しかありませんし、一気に攻めさせてもらいます…!


「シャアッ!」

『ふん!』


 呼び出した深森と天災が互いに全力でぶつかり合っていますが、やはり本物ではないせいで徐々に深森が押されていってます。


 それに深森の頭の上から弾丸を乱射してますが、炎と雷が鎧の役目をしているのかそれらもあまりダメージにはなっていないみたいです。


 ですが、その分深森がヘイトも集めてくれているので攻撃に集中が出来ますね!


「ゼロたち!回復は私が担当するから攻めなさい!」

「了解!なら、遠慮なくいくぞ!」


 そんな言葉を聞いて深森の頭の上にいた私はともかく、兄様たち前衛組はネーヴェさんを信頼してダメージ覚悟で天災へと攻撃を放っています。


 攻撃をきちんと当てることは出来ていますが、兄様たちはどうしても纏っている炎と雷のせいで痛いカウンターを食らっていますし、戦いにくそうですね…


『これで、仕舞いだ!』

「シャァ…」

「おっと…!」


 そのタイミングでついに雷と炎の纏った爪による攻撃で深森がやられてしまい、私は足元にいた深森が消える前に跳躍することで地面へと移りましたが、案の定簡単にやられてしまいましたね。


 リキャストタイムは少ないので連発は出来ますが、これ以上やっても無駄だとは感じますし、ここからは生身の私で頑張るとしましょうか。


『貴様、このようなスキルを持っていたのだな』

「本物ではないせいで簡単に倒されてしまいましたけどね!」


 私は両手の双銃で銃弾を乱射しながら言葉を返しますが、その攻撃にも炎と雷を纏った両腕で相殺されてしまいます。


『当然だ。我はこの世界で最強の立場にいるからな。だが、少しだけ面白くも感じるな?』


 天災はそう言いながら暴風を起こして私たちとの距離を取った後、すぐさま私の元へと翼をはためかせながら突撃してきます。


 そしてそのまま青い炎と黒い雷を纏った両腕の爪や尻尾による薙ぎ払い、翼を震わせて飛ばしてきた銀色の鱗に氷の竜巻など、実に多彩な方法で私へと攻撃を繰り返してきます。


 が、私は〈第一の時(アイン)〉を使うことで加速した動きを活かし、それらをセレネやネーヴェさんたち、そしていつのまにか翼を使って空中に飛んでいたソフィアさんからの羽根による援護を受けつつそれに対処していきます。


「今のところは順調ですが、攻め手にかけますね…!」


 皆さんからのサポートをされているだけはあって回避しつつ反撃の攻撃も与えれていますが、やはり決定打に欠けているので、私もここで切り札を使わせてもらいますか…!このまま回避しつつ詠唱を進めましょう…!


「ーー森羅万象、時は移り変わる」

『むっ…』


 私は加速した状態を維持しつつ、反撃を一度止めて回避に専念しながら詠唱を始めます。


「刹那の流れは止まらず、この歩みも阻まれはしない」

『まさか……ではあれば、止めて見せよう!』

「おっと、邪魔はさせないぞ!」


 私の詠唱を止めるべく天災は大きく深呼吸をしたかと思ったら、一気に黒い雷の混じった青白い炎によるブレスを放ってきました。


 しかし、いつのまにか私のそばまで来ていた兄様たちの放ったユニークスキルによる攻撃がぶつかり合い、わずかに攻撃に隙間が生まれたのでそこをすり抜けるかのように移動してブレスをなんとか回避に成功します。


 兄様たちの援護もあって邪魔をされることもなく詠唱を進めることが出来たので、これで終わりです…!


「我が意志によって世界に刻め、刻の旋律!〈心力解放・時空より旋律を謳う者ザ・クロノス・ルーラー〉!」


 詠唱が終わり、私のEXスキルが発動したタイミングで前に使った時と同じように世界が一瞬白黒の世界になり、さながら時が止まった状態のようになることで発動したのがわかります。


 白黒の世界からすぐに色は戻りましたが、そのタイミングでこれまた前と同様に私のすぐ背後に私より少し大きいくらいである時計が出現し、私の手に持っている双銃に力が宿るかのように魔力が流れ込んでくるのが確認出来ました。


 今回は酷い怪我を負っている人は一人もいないので時の巻き戻しによる回復はきちんとされてますが、派手な演出はありません。まあそんなホイホイと怪我をされてはたまったものじゃないのでいいですけどね。


『貴様も、それを使えたのか』

「効果時間は決まってますし、この間に決めてやりますよっ!」

『…くくくっ、やはり貴様は忌まわしいが、楽しくも感じてしまうな。ならば、その力を正面から打ち砕いて我の力を示してみせよう!』


 私たちは互いにニヤリと笑みを浮かべた後、同時に地面を蹴ることで一気に踏み込んでいきます。


「〈第一の時(アイン)〉!そして〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉に〈第零(ヌル)第一の時(アイン)〉!」

「〈天乱暴風雨〉!」


 私はEXスキルのおかげで連発出来るようになっている武技を連続で自身に撃ち込み、そのまま天災の近くから両手の銃を乱射します。


 対して天災は今も纏っている青い炎と黒い雷を活かしつつ、さらに次々と風の刃と氷塊を私たちへと飛ばしてくるので、私はそれらをゆらゆらとした動きで避け、飛んでくる氷塊を加速している思考と動きをを活かして足場にしながら一気に天災へと接近していきます。


『なんと…!?』


 流石の天災もこの動きに驚いたみたいですね!なら、一瞬だけ動きが止まった今がチャンスです…!


「〈第二の時(ツヴァイ)〉!続けて〈第零(ヌル)第七の時(ズィーベン)〉に〈第七の時(ズィーベン)〉!」


 その隙を見逃さずに遅延効果持ちの武技を天災へとしっかりと撃ち込んだ後は、普段では出来ない無数の幻影を生み出す武技と分身を作り出す武技を同時に使用し、さらに惑わしながら双銃による攻撃を与えていきます。

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