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132話 呼び寄せよ、天為の災厄3

「…っ、ここは…」


 そして視界が戻って最初に目に入ってきたのは、どこまでも続くかのような荒野の姿でした。


 私たちのいる場所からはかなり離れてはいますが、周囲を囲むかのように魔力が籠っているのがわかる青い炎が迸っており、明らかに先程までいた山の山頂ではないのがわかります。


 天災の発していた言葉からしてなんらかの領域ではあるとは分かりますが、ここは一体…?


「いきなり変わったが、ここはどこだ?」

『ここは、我の生み出した固有世界だ』


 クオンの漏らした言葉に私たち全員とは違う声が返されたので即座に視線をそちらに向けると、少し離れた位置に天災が存在していました。


 天災は余裕綽々な様子でこちらを見つめてきていますが、ここは言葉にしている通り天災による領域内なのでしょうね。


 固有世界とも言ってますし、前にサルファくんとの時に見た精霊領域と似た物とは感じますが、それとはまた別なものなのかもしれません。


『さて、ここからは先程までとは違って本気でゆくぞ。貴様らも、これに対抗してみるがよい!』

「…ここからが本当の戦いみたいですね。なら、全力でいきますよっ!」


 始まりは天災の放ってきた猛吹雪と落雷でした。私たちは即座にそれを横にズレることで避け、そこから攻撃を天災に向けて放っていきます。


 あ、後方にいたネーヴェさんとアリスさんは、アリスさんの呼びだしたユニコーンのハクに二人して乗っているようなので移動や回避については問題なさそうです!


 ハクは大きくなることが出来るスキルを持っているようで、女性が二人くらいなら問題ないみたいですね。


 っと、それはいいとして攻撃に移らないとですね。とりあえず、さっきと同じように私が天災の気を引くことにしますか。


「〈第一の時(アイン)〉!」


 私は自身に武技を撃ち込むことで動きを加速させ、そのスピードを活かして天災へと両手の銃を乱射しながら接近していきます。


『ふん、先程までの我とは違うぞ!』

「…っ!」


 ですが、天災は身体を震わせたと思った次の瞬間、身体中に生えている無数の銀色をした鱗が私や近づいてきていた兄様たちに向けて連続で飛んできました。


 私は加速した状態のまま、それらをゆらゆらとした動きで回避しつつ反撃の弾丸をお返ししますが、それらは片腕で防がれることであまりダメージにはなりません。


「くっ…!」

「厄介だな…!」


 それに兄様やクオンたちもそれらを自身の武器などで防ぎはしましたが、そのせいで足を止められているので私のように攻撃をすることは出来ていないみたいですね…!


『まだだ!』


 しかも続けて天災は青い炎を自身の両腕へと纏わせ、それを一番近くに寄っていた私目掛けて連続して振るってもきます。


 私は〈第一の時(アイン)〉を自身に再び撃ち込むことで加速した動きを駆使し、それらを細かい足捌きも活かしてなんとか回避していきます。


 が、両腕に纏っている青い炎のせいで僅かにHPが削れているので、やはりこれは厄介です…!


「青い炎が邪魔ですね…!」

「これのせいでHPが削れちゃってるしね…!」


 そこに兄様たちやセレネとクリアも攻撃を放っているのですが、青い炎によるダメージを少しずつ受けてますし、かなり面倒くさいですね…!


「〈ハイヒール〉!」

「ネーヴェさんですか!助かりました!」

「気張っていきなさい、レア!あなたがここでは一番大事なポジションよ!」


 しかしそんな声と共にネーヴェさんによる回復魔法が私へと飛んできたので、これならよほどのことがなければHPは大丈夫そうですね!なら、天災からの攻撃は避けつつも、反撃をしていきましょう!


『ふむ、なかなかやるようだな。では、次はこれでゆくとしよう。〈氷河天竜装〉!』


 少しの間攻防を続けてダメージを少しずつ与えていたそのタイミングで、一度私たちから距離をとった天災は先程までの青い炎を消し、今度は全身に氷製らしき鎧のようなものを纏います。


 さらに翼や尻尾、爪などには鋭利な氷が纏われることによって鋭さが増しているようで、かなり攻撃的な姿になっていますね。


「ここからは、また別の能力ですか…!」


 氷による鎧を纏っていますし、普通に攻撃するだけでは効かずらそうですね…


「…なら、炎によるダメージはなさそうですし、攻撃は兄様たちに任せますか。〈第七の時(ズィーベン)〉!」


 そう決めた私は分身を生み出す武技を自身に撃ち込み、現れた分身と共に今度は自分の方から天災へと踏み込んでいきます。


『喰らうがいい!ガァ!』


 そこに天災は無数の氷柱と猛吹雪、地面から湧き出てきた豪雪による雪崩れに氷のブレスなどを立て続けに放ってきたので、私は無数の氷柱は分身を囮兼肉盾にしつつゆらゆらとした動きで避け、吹雪は〈第三の時(ドライ)〉を撃ち込むことで打ち消し、雪崩れとブレスに対しては空中に跳ぶことで全て回避することが出来たので、そのままブレスを放っている状態の天災に向けて再び〈第三の時(ドライ)〉を放ちます。


『ふん、やはり貴様がこの中で一番の障害だな。ならば、我が力を受けるが良い!』


 その攻撃を受けて私へと意識が完全に向いているみたいですし、ここからは兄様たちにも頑張って攻撃をしてもらいますか!


 そうした思考を終わらせたタイミングで、天災は近づいてきていた私に向けて氷を纏っている両腕の爪で攻撃をしてきます。なのですぐさま自身に〈第一の時(アイン)〉を撃ち込むことでそれに対応します。


 振り下ろさせる右腕は横にほんの少しズレることで避け、続けて振るわれた左腕もフェイントを混ぜた動きで惑わすことでさらに避けます。


 そしてそこに薙ぎ払われた尻尾による攻撃も、空中に跳びつつ〈第零(ヌル)第七の時(ズィーベン)〉を使用することでさらに惑わしながら回避をしつつ、反撃として弾丸をお見舞いします。ですが、氷の鎧に阻まれてあまりダメージにはなっていません。


「くっ、鎧が邪魔です…!」


 攻撃に関しては意外と簡単に回避することが出来ているのですが、氷の鎧のせいでダメージが通りにくくて厄介ですね…!ユニークスキルは便利ですが、それでも入りずらいのならやはり皆で力を合わせる必要がありそうです。


 それにユニークスキルがなかったらここまで簡単に対処することも出来ていなかったでしょうが、それでも私のでは攻撃力に欠けてしまいます…!


『こんなもの、ガァアッ!』


 そんな状況を見て、天災は全身に纏っていた氷の鎧を崩したことで出来た氷の魔力によって波動みたいなものを放出して対応してきますが、その頃にはすでに私は後方へと跳んで距離を取ることに成功していたのでそれは当たりません。


 アレは嫌な予感がしてすぐに後方へと跳んでいなかったら間違いなく当たっていましたね。危なかったです…!


「やっぱりレアちゃんはすごいね!」

「そうだな。俺たちではアレらに対応は厳しそうだしな」

「たまたまですよ。それに、まだ終わってませんよ!」


 後方へと跳んできた私に向けて、寄ってきたソフィアさんとクオンからそのように声をかけられました。そばにいる兄様たちもソフィアさんたちの言葉に頷いていますが、そこまで見通していたわけではありませんよ。


 確かに最後に放ってきた氷の波動らしきものは初見では対処が難しそうですし、そう思うのも無理はありませんけどね。私もたまたま避けれただけですし。


 流石ワールドモンスターと呼ばれるだけはあり、かなり能力も多彩です。


『貴様らはやはり強いみたいだな。だが、我はそれよりも強い!〈暴走気流〉!』


 そう言って最初の時のように咆哮をあげると、その声を合図にこの領域内の空も元の世界と同様に暗い雲によって曇りだし、すぐさま大雨と強風がこの空間内に吹き荒びます。


「…ダメージは、ないみたいですね」

「だが、この様子だと天気は晴れそうにもないな」

「それに雨や風によって音や姿を捉えづらくなっているから、ここからは気をつけて行動をしないと攻撃を喰らってしまいそうでもあるね」


 最初の時の攻撃とは違い、フィールドが変化したくらいなのでそこまで問題点が出ているわけではありませんが、気をつけるに越したことはありませんね。


『貴様は、ここで倒させてもらおう!』

「キュッ!」

「…!〈第一の時(アイン)〉!」


 突如聞こえたセレネによる警戒の声を聞き、私は即座に自身に武技を撃ち込むことで加速した動きで咄嗟に後方へと跳ぶと、その直後に私のいた場所へと風を纏っている天災の右腕による攻撃が振り下ろされました。


 あ、危なかったです…!セレネによる【因果律予測】のおかげでなんとか回避が間に合いましたが、もしそれがなければ今頃叩き潰されていたでしょうね。


『ふん、避けられたか』


 どうやら天災は風を纏っているおかげでスピードが上がっているらしく、明らかに先程までよりも動きが早くなっています。


 しかも私のすぐそばにいたソフィアさんや兄様たちにも尻尾による攻撃を放っていたようで、防ぐことは出来ていたみたいではありますがそれによって弾き飛ばされているので、復帰には少しだけ時間がかかってしまいそうです。


「〈飛び回る氷柱(アイス・フリーゲン)〉!」

「〈破裂する人形(バースト・ドール)〉なのです!」

『む…』


 しかしそこに、アリスさんのテイムモンスターであるハクに乗りつつ放った二人による攻撃は、風や雨に紛れる形で飛んできたおかげでしっかりと命中し、天災の身体に少しだけ傷をつけることが出来ています。


 ネーヴェさんによるユニークスキルの魔法はともかく、アリスさんの操る人形は気づいたら無数に呼んでいたようで、今この瞬間にも続々と天災へとまとわりついて爆発を続けており、いい具合にダメージを与えられているのがわかります。


『こんなもの、ふん!』

「くっ…!人形さんたちが…!」


 ですが、その状況で天災は自身を包むかのように竜巻を発生させ、身体中に張り付いていた人形たちを細切れにすると同時に全て弾き飛ばしてしまいます。


『これで仕舞いか?ならば、今度こそ貴様を倒すとしよう』


 そしてそのような声と共に今度は無数の銀色の鱗と風の刃を放ってくるので、私は再度〈第一の時(アイン)〉を自身に撃ち込んだ後に加速した動きでそれらを全て避けつつ接近しますが、天災もそれをわかっているらしく近づけば近づくほどに攻撃が激しくなり、一定の距離からはどうしても近づくのが難しいです。


 このままではジリ貧ですね……なら、さらに加速させれば…!


「私をお忘れですよ!〈霧裂(ミスト・スラッシュ)〉!」

『グッ!?』


 私はそう考えてさらなる加速をしようとしたタイミングで、突如空間内に響いた声と共に天災の頭上に現れたジェーンさんがそのまま手に待つ黒色の短剣で天災の頭を深く切り付けます。


 攻撃を受けた天災はたまらずといった様子で声をあげましたが、即座にジェーンさんを弾き飛ばそうと暴風を纏いだします。


 しかし、ジェーンさんもすぐさま転移によって距離をとったので避けることが出来て当たることはありません。


「ジェーンさん、ナイスプレイです!」

「私にはこのくらいしか出来ませんからね。それとゼロさんたちもすでに連れてきましたし、ここからは貴方たちの出番ですよ。そして弱点ですが、それはなさそうです」


 その言葉を聞いてジェーンさんの示した先へと視線を向けると、そこにはすでに傷も治している兄様たちがいました。


「兄様!無事だったのですね!」

「なんとかな。だが、俺たちではタンクの真似事は出来ないから、レアに頼んでもいいか?」

「任せてください!」

「すまんな、レア」

「ごめんね、レアちゃん!」

「まあ、なんだ。頼むぞ、レア」

「任せるぞ、レア」


 兄様に続くようにカムイさん、ソフィアさん、ルベルさん、クオンとそれぞれが声をかけてきたので、私は自信満々にそう返します。


 私一人では間違いなく倒すまでにはいけませんが、ここにいるのは私だけではありません。兄様を筆頭にトップのプレイヤーが目白押しですし、皆の力を合わせればいけなくはなさそうです!


 ですが、ジェーンさんの言葉を聞く限りでは逆鱗などの目立った弱点はないようですし、地道にダメージを与えるしかありませんね。


『貴様らは、どいつもこいつも忌まわしい!』


 そんな言葉と共に憎々しげに私たちを見つめてくる天災を確認し、私は意識をこちらへと向けるために〈第一の時(アイン)〉を自身に撃ち、続けて〈第二の時(ツヴァイ)〉を天災目掛けて放ちます。


『ふん、そのようなものは無駄だぞ!』


 しかし〈第二の時(ツヴァイ)〉は天災の放った巨大な竜巻によって防がれ、さらにこちらへとその竜巻を飛ばしてきます。


「皆、散開!」


 兄様のあげた声を聞きつつ、私は〈第零(ヌル)第二の時(ツヴァイ)〉を自身に撃ち込んだ後に続けて〈第一の時(アイン)〉を使うことでここにいる全員に加速効果を付与してから直ちに駆け抜けることで飛んできた竜巻を避けます。


 私の使った武技のおかげで皆さんも特に傷は負っていないみたいですし、良かったです!


「では、〈第七の時(ズィーベン)〉!」


 攻撃は無事に回避したので、今度はこちらから攻撃に移るために再び分身を生み出し、そこから分身と共に銃弾を乱射しながら天災に向けて接近していきます。


『まだまだゆくぞ!これは耐えられると思うな!〈乱気流域〉!』


 その言葉と共に天災が咆哮をあげると、突然雨と風の激しい状態だった空から私たちに向けて乱気流の如き凄まじい風圧と風の流れが襲いかかり、思わず足を止めてしまいます。


 風がやばくて進めませんし、かなりの風圧もあって立っているだけでも精一杯です…!私の首元と肩にいるセレネとクリアも同様に辛そうにしており、少しだけ心配になってしまいます…!


『さあ、死ぬが良い!』

「キュッ!」

「…っ、しまっ…!」


 そんな状況の中、風を纏っているせいか俊敏な動きでまた私のすぐ目の前まで天災が来て、雨風にまぎれる形でそのまま風の力がこもっている右腕を振り下ろしきました。


 セレネは【因果律予測】のおかげか直前で気付いたようで私を引っ張ってくれて、クリアも私を引っ張りながら避けようとしてくれましたが、完全に躱わすには至らず、私の右半身を天災による風の爪が一気に切り裂きます。

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