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129話 精霊たちの声

「それじゃ、さっそくあたしに着いてきなさい!」


 そう勝手に決めたと思ったら、私を置いてくかのようにズンズンと奥へと向かって行くので私は慌ててその女の子を追いかけます。


 ちょっと!少しくらいは説明が欲しいのですけど…!?それにここはどこなのですか…!?


「貴方は何者なのですか?」


 慌てて走ったのですぐに女の子の元に着きましたが、私の問いかけて質問に対して、女の子はふふんと自信満々そうな表情をこちらに向けながら言葉を返してきます。


「あたしは空間精霊のニーナよ!」

「空間精霊……ということは、ここはまさか精霊領域ですか?」

「少しだけ惜しいわ。似ているけど、ここはあたしの領域ではなく精霊都市なのよ!」


 なんと、ここは前にサルファ君やソロさんが言っていた精霊の国だったみたいです。


 なるほど、道理で初めに街のように感じたのですね。だとすると、ここはソロさんの言ってた通り元のゲーム世界とは違う空間なのでしょう。


 サルファ君と出会った時はここでは精霊都市までは開けないと言ってましたが、もしかしてニーナちゃんは空間精霊というものだからサルファ君とは違ってここに来れたのですかね?


「…そんな国に連れてくるなんて、私に何かあるのですか?」

「そうね、あたしが気になったのもあるけど、用事があったから強引にこっちに引き摺り込ませてもらったわ。そこは謝るわね」


 まあそれは別にそこまで気にしてませんけど、私に対しての用事とはなんなのでしょうか?


 あるのかはわかりませんが、精霊に関するクエストとかも特にやってないですし、何故ここに連れてこられたかがわからなくて少しだけ不安になってしまいますね…


「っと、着いたわ。入ってきて」

「あ、はい」


 そうしてちょっぴり不安になりつつもニーナちゃんに着いていっていると、しばらく歩いた後に一軒の家の前で止まったので、そのままニーナちゃんと一緒にその建物の中へと入っていきます。


「おねえちゃん、久しぶりなの」

「ファムちゃん!久しぶりですね!」


 ニーナちゃんの案内のままに一軒の家の中へと入ると、そこに私の見知った人物である精霊のファムちゃんがいました。


 それにファムちゃん以外にも数名の精霊らしき人物が私に向けて視線を送ってきており、その人たちも私たちが来るのを待っていたようです。


「待たせたわね。きちんと連れてきたわよ」

「ああ、ありがとう、ニーナ」


 そんな集まっている精霊たちを代表するかのように、私より少しだけ小さめである白髪をした男の子がニーナちゃんの言葉にそう返します。


 周りにいる人たちの反応からするに、どうやらこの人が私に何か用事があるみたいですね?


「あの、私は何故ここに連れて来られたのですか?」


 私の不安そうな言葉を聞き、白髪の男の子は一瞬ジトっとした視線をニーナちゃんに向けましたが、すぐにこちらへと視線を戻した後に理由を教えてくれます。


 …ちなみにその視線にニーナちゃんは目を逸らしていたので、本当は先に教えてくれる手筈だったのでしょうね。


「それはね、この子がとある未来を見てね」

「未来、ですか?」


 っと、それはいいとして理由についてですが、白髪の男の子はそう言ってファムちゃんに視線を向けるので、それに釣られて私もそちらに視線を向けると、ファムちゃんが軽く頷いてからそのことについて説明してくれます。


「わたしは、時精霊という存在なの。それで、その力でごく稀に未来を見ることが出来るの」


 そこからさらにファムちゃんが説明をしてくれたのを聞く限り、その未来を見るのは自身で行えるわけではなくて勝手に発動するらしいです。


 そしてそれで見たものというのが、なんと初期の街の北にある山の山頂にワールドモンスターである天災のゾムファレーズがあらわれる場面だったようなのです。


 …なるほど、だから精霊と関わりがある私をここに連れてきて、それを教えてくれたのでしょうね。だとするなら、すぐに元の場所に戻ってそれを皆さんに伝えて協力を頼むのが良さそうに感じます。


 それに、これはまたとないチャンスですし、初のワールドモンスター討伐として頑張ってみましょう!


「…それはどのくらいの時間で起こるかはわかりますか?」

「…太陽の傾きからして、多分今から一時間後だと思うの」

「一時間後ですか…」


 それなら、すぐにそれに対しての準備をしないといけませんね。それと私の知っているフレンド全員にもこのことを伝え、対処に向かわなくては…!


「それにしても、精霊であるファムちゃんたちもワールドモンスターの討伐を望んでいるのですか?」

「そうなの。実はこの国の王である精霊王が一番それを望んでいて、全精霊たちに向けてしっかりと協力をするように言っているの」


 ふむふむ、それでこんなにもワールドモンスターの討伐に力を貸してくれるのですね。


 というか、前にソロさんからもらった本に精霊であるワールドモンスターが書かれていましたし、それと精霊王とやらは何か因果関係などがあったりするのですかね?そうだとしたら、そこまでワールドモンスター狙いなのは理解出来ますけど…


 "霊庭のルルリシア"。これがその本に載っていた名前でしたが、一体何者なのでしょうか。あ、もしかしたらファムちゃんとかも知ってたりしますかね?ちょっと急ぐ用事はありますが、先に知っておきたいのでちょっと聞いてみますか。


「ファムちゃん、ワールドモンスターの一人である霊庭のルルリシアという人について聞きたいのですけど、何か知ってたりしますか?」

「えっ、それって…」

「まさか…」

「皆、落ち着いて……その人の名前だけなら、皆が知ってるさ」


 この家にいる皆が私の言葉でざわつきますが、白髪の男の子の一声で落ち着きを取り戻し、男の子が私の質問に対して真剣みを帯びた表情で言葉を返してきます。


「ルルリシア……その名前は、この国の王である精霊王様の名前だ」




「とりあえず、ここに連れてこればいいのね?」

「はい、今手の空いていてログインしているフレンドの皆さんにはすでに伝えてありますし、お願いします」


 そうしてその後は早速とばかりに行動に移り、今はニーナちゃんの力を借りてすでに山の山頂まで転移で移動したところです。


 やっぱり空間精霊というだけあって転移の能力が得意らしく、今も私のお願いを聞いて私のフレンドの方々を連れてきてくれるので、とてもありがたいです。


「じゃあすぐに連れてくるから待ってて」

「わかりました」


 そう言ってすぐさま転移でいなくなったニーナちゃんを尻目に、私は少しだけ思考を巡らせます。


 白髪の男の子である光精霊のレイスくんは、ワールドモンスターである霊庭のルルリシアが精霊王と同じ名前と言ってました。


 流石に同じ名前なだけで別の人というわけではないとは思うので、おそらくは精霊王の正体がワールドモンスターなのでしょうね。


 なら、何故自身を含めたワールドモンスターの討伐を自らお願いしているのでしょうか?何か目的があるのか、はたまた単に遊んでいるだけなのか……ハッキリとは分かりませんが、きっと何か大きなものがあるとは感じます。


「まあ、いつかはその精霊王とは出会うこともあるでしょうし、その時に聞いてみればいいですね」


 きっとワールドモンスターの討伐を進めていれば自ずと対面するでしょうしね。


「うぉ!?」

「きゃっ!?」


 そんな思考をしつつも皆さんがニーナちゃんの力でここにくるのを待っていると、突然私の背後から声が聞こえてきたので、思わず悲鳴をあげてしまいました。


「いてて、いきなりかよ…」

「く、クオン!?」

「あ、レアか。悪い、驚かせてしまったか?」

「い、いえ、私は別に大丈夫ですけど……どうやってここに来たのですか?」


 先程まで影も形もなかったのに突然現れたのには間違いなくニーナちゃんの仕業でしょうけど、一体どうやってきたのですかね…?


「ああ、なんか灰色の髪をした女の子が現れたと思ったら、『貴方がレアのフレンドかしら?』って聞いてきたからそうだと答えたら、『なら一名様ご案内ね!』とか訳のわからんことを言ったらすぐにここに落とされたんだ」


 に、ニーナちゃーん!しっかりと情報を伝えるのと案内を丁寧にしてくださいよー!ホウレンソウは大事って学ばなかったのですか…!?あ、この世界にはそんな言葉はないですか、そうですか。


「っと」

「ふぎゅ!?」

「っ、危ないわね?」


 そうしてクオンが最初に来たのを合図に、続々と私のフレンドの皆さんが空中から投げ出されるように現れ、それぞれが違った反応を見せながら地面に着地した後に私の元へと近づいてきます。


 そこに皆さんの転移を済ませてきたニーナちゃんもドヤ顔をしながら近づいてくるので、私はその脳天にチョップをかまします。


 ニーナちゃん、私の時と同じように少しは丁寧に運びませんか?あ、そんな義理はない、ですか。


「そんなことよりもレア、早く情報を皆に伝えなさいよ!時間がもったいないわ!」

「…ニーナちゃんが転移と一緒に説明をしてくれれば早かったのですけどね。コホン、まあとりあえずは、皆さん、急な呼びかけに答えてくれてありがとうございます」


 ニーナちゃんの手伝いもあり時間にはまだ余裕があるので、そう言ってから集まった皆さんに今回のことについて説明を開始します。


 ちなみに、今集まってくれた人はクオン、兄様、カムイさん、ソフィアさん、アリスさん、ネーヴェさん、そしてイベントの時に実はこっそりとフレンド交換をしていたルベルさんとジェーンさんの合計八人です。


 このメンバーは第一回のバトルフェスで目立った人たちなので、実力も信頼出来るので頼りにさせてもらいますよ!


 それとクオンと兄様のパーティメンバーや、ルミナリアにマキさん、イベントの時にフレンドになっていたリンさんとアオイさんなどはたまたまログインしてなくて都合がつかなかったので、今回はいません。


「まず今回呼んだ理由なのですが、それは今からここにワールドモンスターが現れるからです」

「なるほど、それの討伐を目指すためにここに俺たちが集められた、ということか」

「話が早くて助かります、カムイさん。なので、是非とも皆さんの力を貸してもらいたいのです!」

「あたしからもお願い!これはとても重要なうえにこんなチャンスは滅多にないの!」


 私とすぐ横にいたニーナちゃんは一緒になって頭を下げますが、それに対して皆は全然気にしていないようで、むしろこのことに呼んでくれてありがとうと感謝を返されました。


 いきなりだったので少しは文句を言われるかもしれないと思ってましたが、皆さんは特に気に留めてないようで、すでにやる気十分なようで張り切っているのがわかります。


「それならレアちゃん、そのワールドモンスターについての情報とかあったりする?」

「安心してください、しっかりとありますよ!まだ時間の猶予はあるみたいですし、今のうちに細かい情報の共有をしておきましょうか」


 ソフィアさんから受けた質問を聞き、私はインベントリからワールドモンスターについて書かれている例の本を取り出し、そのまま皆で揃って戦闘の仕方やワールドモンスターの対策についてなどの話し合いを進めていきます。


「…やっぱりレアを頼って正解だったみたいね。交友関係も広いし、これはもしかしたらもしかするかも…!」


 何やらニーナちゃんが呟いているのを私の耳が捉えましたが、特に話しかけてきているわけではないようなので、それはスルーしておいて皆で話し合いを続けていきます。




「では、こんな作戦で良さそうだな」

「そうね、ここにはトップのプレイヤーが揃っているし、相手の戦闘スタイルもある程度は把握している。なら、よほどのことがなければ負けることはなさそうね」

「でもネーヴェさん、相手はレアさんが言うにはワールドモンスターと呼ばれる超強い敵ですし、油断はダメなのです」

「ふん、わかっているわよ」


 最終的にそんな感じで話し合いも終わり、私たちはここに現れるというワールドモンスターである天災のゾムファレーズを待ちます。


 それにしても、ワールドモンスターの討伐を目標にはしてましたが、未だに出会ったことのない対象と戦うことになるなんて少しだけ予想外でしたね。


 まあ全てのワールドモンスターの討伐はしたいですし、順序が違ったとしても問題はないのでそこまで気にしてはいませんけど。


「レア」

「ん、なんですか、ニーナちゃん」


 そんな中、ふとニーナちゃんから声をかけられたので返事をすると、ニーナちゃんは真剣そうな表情をしつつ言葉を続けます。


「あたしには応援することしか出来ないけど、無事に倒してきてね!」

「ふふ、任せてください!ニーナちゃんは何かがあったら危険なので、一度ここではなく精霊都市で待っていてくださいね!必ず、無事に帰ってきますから!」

「わかったわ、約束だからね!」


 その言葉と共に転移でここを去っていったニーナちゃんを見送り、私は皆さんのいるところへと向かいます。


 あ、それと今のうちにセレネとクリアも呼び出しておきますか。

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