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127話 ラクダ狩り

「「ご馳走様でした!」」

「キュゥ!」

「……!」


 そうしてパクパクと食べ進めていき、互いに食べ終わったのでそのように言葉を発します。


「いやー、美味しかったねー!」

「ですね!こんな良い店を紹介していただきありがとうございます!」

「いやいやー、このくらいは気にしないでー!私も誰かと食べれたのは楽しくて良かったしね!」


 なははー、っと笑いながらもそう返してくるルイーネに、私はそれでもです、と言って感謝を伝えます。


 やっぱりこの世界で生きている住人はこういった良い店を色々と知っていますし、とても参考になりますね!


「それじゃ、そろそろ私は家に戻るかな!」


 会計を済ませた私たちはお店を出た後、ルイーネさんがそのように声をあげたので私もそれに続くように言葉を発します。


「なら、私もこの辺で元の世界に戻るとします!」

「じゃあここで一度お別れだね!」


 ルイーネさんの言う通り、今日はこの辺で解散ですね。今回の目的である本の解読もルイーネさんのおかげで終わらせることが出来ましたし、やり残したこともないので解散しても大丈夫でしょう。


「それじゃ、またね、レアちゃん!」

「はい。ルイーネさんも、キチンとお部屋の掃除をするんですよ!」

「あはは、出来たらするよ!じゃ、ばいばいー!」


 そう言って私に向けて手をフリフリしつつ、家に戻るようで人混みへと消えていったルイーネさんを見送った私は、セレネとクリアに一声かけてから一度送還した後にメニューを開いてログアウトをします。




 そして夜のやることを全て終わらせ、八時近くに再びゲーム世界へとログインしてきました。


「うぅ、寒いですね…」


 昼間から夕方は日除けマントが必要でしたが、夜になると一気に気温が冷え込んで少しだけ寒く感じます。


 と、とりあえず、どこかのお店で砂漠用の防寒着を買いますか。この姿のままではちょっと寒いですし…


「ありがとうございましたー」

「よし、これで大丈夫ですね!」


 その後はすぐに近くにあったお店に入り、そこで真っ黒な見た目のふわっとしたローブ、いわゆるアバーヤというものを購入して早速装備をすると、先程までの寒さがなくなってとても暖かくなりました!


 それに見た目も真っ黒ではありますが、意外とフリルや飾りなどが色々とついているおかげで見た目も可愛くて良い感じです!


「他にも踊り子みたいに露出の多い装備などが結構置いておりましたが、私が買うことはなさそうですね」


 私みたいにちんちくりんな人にはあまり似合わないかもしれませんし、わざわざ自分から肌を見せるのは少しだけ遠慮したいのもありますけど。


 ま、まあそれは良いとして、この時間は何をしましょうか?すでに時刻は夜なので長い時間はプレイしませんし、砂漠での目的は達成していますしね。


「おや、あんたは確かルイーネの連れていたお嬢ちゃんかい?」

「ん?」


 私がはてさてと悩みやることを決めかねていると、唐突に背後からそのような声をかけられたので振り向くと、そこにはルイーネさんと一緒に寄った宿屋の女将さんであろうおばあちゃんがそこに立っていました。


「えっと…」

「ああ、そういえばあたしの自己紹介はまだだったね。あたしはここ"砂漠の鳥"って名前の宿屋を経営しているアムナって言うんだ。よろしくね、お嬢ちゃん?」

「ご丁寧にありがとうございます!私は先程も言った通りレアと申します!」


 そうした自己紹介を互いに済ませた私たちは、ふと気になったことが出来たのでそれについて聞いてみます。


「アムナさんはこんな夜遅い時間にどこかへ行くのですか?」


 今はすでに八時を超えており、砂漠の暑さもなくなって寒さに変わっている状況でもあるのに、アムナさんは防寒着らしきものを着込みながらどこかへ行くかのような姿だったのです。


 そんな私の疑問に対して、アムナさんは特に隠し事もしない様子でそのことについて教えてくれます。


「実は、日の暮れた遅めの時間に出てくるという特殊なラクダの姿をしたモンスターがいるみたいでね、そのラクダの肉を狩ってこようと思ってたのさ」


 ふむふむ、夜にしか出ないラクダのモンスターですか。アムナさんの言葉からしてこの街に来る道中で見かけたラクダとは違うみたいですし、もしかしたらレアモンスターの個体だったりするのでしょうか?


「そうだ、よければレアも手伝ってくれないかい?」

「私ですか?私は特に問題はありませんけど、お邪魔にならないですかね?」

「その辺は大丈夫さ。今行けるのはあたしだけだし、人手はあるに越したことはないからね。それに手伝ってくれたのなら、そのラクダ肉で何か奢ってあげるよ」


 むむ、そんな魅力的なお誘いをしてくれるのならすごく興味が湧きますし、特にやることもないので私もご一緒させてもらいますか!


 それにレアモンスターらしきラクダの肉なら、前に食べたレアモンスターのステルススネークと同様にとても美味しいでしょうし、これは是非とも参加させてもらいましょう!


「では、私もご一緒してもいいですか!」

「くく、もちろんさ。じゃあ早速そのラクダが出るらしき場所へと向かうとするか」

「はいっ!」


 キラキラと目を輝かせている私を見てアムナさんはくつくつと笑いながらそう返してきたので、私たちは時間も惜しいとばかりにアムナさんの案内で目的のラクダが出るという場所まで向かいます。


 うう、ちょっと料理が楽しみすぎて子供っぽくなってしまって少しだけ恥ずかしくなっちゃいましたが、別にいいですよね!


 だ、だってそんな魅力的なお誘いを受けたら断る人はいませんもん!




「そういや、お嬢ちゃんはどんな武器を扱うんだい?」

「私ですか?私が得意とするのはこれですね」


 その道中の砂漠では、そういえばといった様子でアムナさんがそのように聞いてきたので、私はインベントリからいつもの双銃を取り出して軽く見せます。


「ほう、魔法銃か」

「見ただけで分かるのですか?」

「ああ、言ってなかったけど、あたしはこの国の女王とは親しくてね。その女王もお嬢ちゃんのように魔法の銃を扱ってたから知っていたのさ」


 なんと、アムナさんはこの砂漠の国のトップであろう女王様と知り合いだったのですか。それで見たことがあるから知っていたのですね。


 というか、普通の宿屋を経営しているアムナさんがこの国の女王様と親しいなんて、もしかして私のような暗殺者だったり…?…まあこの国にも暗殺者はいるかはわかりませんが、そうだと思ってしまうほどにはビックリです。


「お嬢ちゃんの想像してることは詳しくわからないけど、単にわんぱくでよく宮殿を抜け出してきた女王と昔から遊んでいたってだけで、特に何かがあったりしたわけではないけどね」

「…私の思考を読みましたか?」

「くく、お嬢ちゃんがわかりやすいだけだよ」


 むぅ、思ってたことが全部顔に出てたようでした。考えを見透かされたようで少しだけ恥ずかしくなってしまいますが……それはいいとして、とりあえずアムナさんは別段特殊な立場の住人というわけではなさそうですね。


 どうやら私の考えすぎだったみたいです。


「それと、あたしの武器はこれさ」


 私がそうした思考を少しだけしていると、アムナさんは指輪から取り出した二つの武器を見せてくれます。


 その武器の見た目は湾曲した刃を持つ、いわゆる砂漠などでよく使われるであろうシャムシールと呼ばれる武器らしく、その剣を両手に持つためなのか二振りが揃っていました。


「アムナさんはこの二本の剣を扱うのですね」

「ああ、これがあたしには一番あってたからね」


 ちなみにアムナさんの今の格好は黄緑色をメインとした露出が多めのベリーダンス衣装を纏い、その上に私と似たように焦茶色のクロークを羽織った姿をしています。


 なので、その見た目にアムナさんの武器であるシャムシールはとても似合っているので、すごくオシャレに感じます!まさに砂漠の民族って感じですね!


 というか今更ですが、宿屋の女将であるアムナさんも剣を持っているということは戦えるみたいですけど、どのくらいの腕前なのでしょうか?まあ足を引っ張ることはないでしょう。だって、本来は一人で狩りに行くつもりでしたしね。


「…お、アレじゃないかい?」


 そうしてたわいない会話を続けながらも砂漠を歩き続けること少し。


 アムナさんのあげた声に私もそちらへと視線を向けると、そこには普通のラクダよりも二回り近く大きめで力強さを感じるラクダ型のモンスターがいました。


「アレがターゲットですかね?」

「おそらくはそうだろうね。じゃあ道中でも話していた通りの手筈でね」

「わかりました」


 私たちは見つけたレアモンスターらしきラクダを狩るために早速行動に移ります。


 作戦は至ってシンプルで、アムナさんがタンクの代わりの前衛をこなし、それで出来た隙に後衛の私が攻撃を加える、といった感じです。


 では、美味しいご飯のためにいきますかっ!




「ムゥ…」

「よし、倒し終わったね」

「ですね」


 そんな感じで特に言及することもなく、二人だけでしたがしばらくの攻防の末、無事にラクダのモンスターを倒すことに成功しました。


 このラクダは最初に見た通りとても力が強かったのですが、ここにいるのは回避タンクのアムナさんとスピード特化の私です。ですので、全く傷を負うこともなく倒せたのです。


 まあラクダのモンスターが弱いわけでは無かったのですけど、私たちとの相性が悪かったので思ったよりは楽でしたね。


「うんうん、無事に肉の確保出来たね!」

「思いの外お肉がたくさん手に入りましたし、これはありがたいです!」


 私たちが呟いている通り、レアモンスターであるラクダは大量のお肉をドロップしたので、これはとても嬉しいです。


 前に倒したレアモンスターもそうでしたが、やはりレアモンスターはドロップアイテムが多めに設定されているみたいですね?


「さて、これで用事も済んだしそろそろ街に戻るとするか」

「あ、そうですね。もうこんな時間ですし」


 ラクダを見つけるまでと戦闘の時間が意外とあったせいで、今の時刻はすでに九時近くになっています。


 いつもなら就寝している時間なので少しだけ眠気を感じますが、ここでログアウトしては危険なのでさっさと街に戻らないとです。


「じゃあお嬢ちゃん。早速手に入れたばかりなラクダ肉で料理でも作るから、食べていくかい?」

「是非ともお願いしますっ!」

「くく、わかったよ。すぐに作ってくるから待っててね」


 そこからはラクダの狩りも終わったので私たちは揃って夜の砂漠を歩いて街へと戻り、アムナさんの宿屋へと着いたタイミングでそのように誘われたので、私は宿屋内にあるテーブルに座って料理をワクテカしながら待ちます。


 それにしても、すでに遅い時間だからか人が一切いませんね?まあそれはいいとして、お肉を軽く見た感じではとても柔らかそうでしたし、アムナさんの料理の腕前は信頼出来るので期待が高まってしまいますね!


 ラクダ肉はシチューで食べましたが、こっちのお肉はどんな料理で出るでしょうか…?


「待たせたね、ほれ、これが料理さ」

「うーん、匂いも相待ってすごく美味しそうですね!」


 そんな思考をしつつも待っていると、アムナさんのその声と共に出来上がったばかりであろう料理が私の元へと届きました。


 その料理はどうやらシンプルなステーキのようで、今もじゅうじゅうと良い音を立てながら食欲をそそる匂いが漂っています。


 それとアムナさんも私と同じように食べるからか、もう一つのステーキがテーブルに置かれています。


「それじゃあ、いただきますっ!」

「あいよ」


 私は早速とばかりにナイフとフォークを手に取り手始めにステーキを切ってみると、ステーキは容易に切ることが出来たのですぐに口の中に運びます。


 すると、噛むたびにお肉から溢れる甘い油の味にガツンとくるお肉の旨み、そしてシンプルな塩胡椒の味付けの風味が口いっぱいに広がり、私は思わず目をキラキラと輝かせてしまいます。


「すごく美味しいですっ!」

「うむ、これはなかなか美味だな。やはり特殊なラクダなだけはあるね」


 私と同じくステーキを食べているアムナさんは何やら食べながら考え事をしているみたいですが、私はそれを気にすることもなくステーキに夢中になっています。


 だ、だってすごく美味しいですし、こんな美味しいものは出来立てのうちに食べたいですからね!


「ご馳走様でした!」

「くく、美味しかったみたいだね?」

「はい!それはもうすごかったですよ!」


 そうしてステーキを食べ終わり、私はこんな美味しい料理を作ってくれたことに感謝を伝えます。


 それに対してアムナさんはカラカラと笑いながらこのくらいはいいさ、と返してきたので、私はほんのり笑みがこぼれました。


 やっぱりアムナさんといいムニルさんといい、料理を提供するお店の人たちの作る料理はとても美味しいので人気なだけはありますね!


 あ、そうだ!アムナさんだけではなく私にもレアモンスターであるラクダの肉が大量に手に入りましたし、ついでにムニルさんのところに届けちゃいましょうか!


 私も料理をするとはいえ作るっ 機会があまりないですし、よく作る人に渡した方が皆も食べれるので良いと思いますしね!


「…それでは、時間も良い頃合いなので、私はそろそろ帰るとしますね」

「おや、もうそんな時間か。なら、また寄ってきなよ。そん時はサービスしてあげるさ」

「はい、ありがとうございます!では…!」


 そう言って私はアムナさんの宿屋から外に出て、メニューを開いて再び現実世界へとログアウトをしました。

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