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126話 本の内容は…

「私はレアと申します」

「あ、ご丁寧にどうもー、私はルイーネっていうんだ。よろしくねー?それで、私に何か用かな?」


 その女性、ルイーネさんはそのように言葉を返してきて要件を聞いてきたので、私は早速インベントリから本を取り出して会いに来た目的を伝えます。


「実はソロさんからこの本の解読をルイーネさんに頼むと良いと聞いて、ここに来たのです。あ、それとこれが紹介状であります」

「なるほど、ソロからかー」


 私はその言葉と共に取り出した本と紹介状を手渡すと、ルイーネさんは一度紹介状を軽く読み、頷いた後に言葉を続けます。


「…神代言語かー、それなら私に頼むのは正解だね。それにソロからの紹介なら断る理由もないし、解読は私に任せて!とりあえず、中に入ろっか?」

「わかりました、お邪魔しますね!」


 ルイーネさんはそのような言葉と共に家の中へと案内してくれたので、私はそのまま後に続くように中へと入っていきます。


 家の中に入るとわかりましたが、中はゴミなどがあちこちに落ちているせいでとても汚い部屋、いわゆる汚部屋となっていました。


「あはは……汚いけど、とりあえず椅子にでも座って待っていてね。すぐに解読してくるから!」

「あ、了解です」


 そう言って私たちのいたリビングらしき場所から部屋へと向かって行ったルイーネさんを見送った後、私は部屋を見渡します。


「…とりあえず、汚いですし勝手ではありますけど綺麗にしますか」


 待っている時間もありますし、ただ待つだけなのもすることがないのでちょうどいいですしね。




「お待たせー、ってすごい綺麗になってる!」

「あ、ルイーネさん、おかえりなさいです!」


 そうして部屋の掃除を済ませた私は、ついでに使われた形跡のないキッチンで軽く料理を作っていると、そのような声と共にルイーネさんがリビングへと戻ってくるところでした。


 ルイーネさんも戻ってきましたし、料理もちょうど出来上がるタイミングだったので時間はバッチリですね!


「軽く料理も作りましたから、先に食べませんか?」

「食べる食べるー!」


 私が綺麗にしたテーブルに手早く作った料理を置くと、ルイーネさんはすぐさま椅子に座って食べ始めたので、私もそれに続くように椅子に座りクリアとセレネと一緒にご飯を食べます。


「んー!美味しいよ、レアちゃん!」

「ふふ、それならよかったです」


 ルイーネさんは顔を綻ばせながらも美味しそうに料理を食べてくれるので、私もそれを聞いて機嫌が良くなります。


 こんなにも美味しそうに食べてくれたのなら、作った身としてもとても嬉しいので作ってよかったと感じちゃいますね!


 セレネとクリアも美味しいみたいなので、良かったです!あ、ちなみに食材は冷蔵庫に一切なかったので私のインベントリから取り出して使ってますよ。別にこういう機会でないと使うことが少ないですので。


「ご馳走様でした!」

「はい、お粗末様でした」


 そしてご飯も食べ終わったので、私はまずお皿の片付けを手早く済ませます。


「いやー、レアちゃんはいいお嫁さんになれそうだね!どう?もしよかったら私のところにお嫁さんにこない?」

「あはは、それはやめておきます。私には好きな人もいますしね」


 そのタイミングでそのように口説かれたので、私は苦笑を浮かべつつもそう返します。


 いいお嫁さんになる、という褒め言葉はありがたく受け取りますが、ルイーネさんのお嫁さんにはなりませんよ!


 わ、私はクオンのことが好きですし、ルイーネさんのお嫁さんでは色々と大変そうに感じますからね!


「うーん、残念!まあそれはいいとして、この本の解読が完了したよ!」

「あ、もう終わったのですね」

「ふっふーん、長年この文字の解読と遺跡の調査をしてきたし、このくらいは朝飯前だよ!それと解読してわかったけど、この本の内容は世界を揺るがすかのようなかなりヤバめのものだったんだよね」

「世界を揺るがす、ですか?」


 この本は港町でたまたま買った本ではありましたが、そんな簡単に手に入るものがそこまでなのでしょうか?


 ですが、ルイーネさんの表情からも真剣さを感じるのでそれは間違いないのでしょうね。どんな内容だったのかは気になりますし、早速解読して貰った本の内容を確認させてもらいますか。


「…なるほど」


 その本の解読された内容は、なんと神様に関することが書かれていたらしいです。


 具体的に言うと、前に見た壁画や絵本の通り、この世界のはるか昔に無数の邪悪なる欠片などのモンスターを引き連れた邪神が生まれ、この世界を飲み込もうとしてきた、という内容でした。


 これだけなら今までに見たり聞いたりしたことがあるのでまだわかりますが、それよりも重要なのがこの一言です。


 なんとそんな邪神は未だに生存しているらしく、今もこの世界を虎視眈々と狙っているらしいのです。


 前にサジタリウスくんからは神様は魂を砕かれることで倒されている、と聞きましたが、どうやらそれは間違いだったみたいですね?


「…確かに、これはかなり重要な情報ですね」

「だよねー、私もそれは初めて知ったよ。今までにした遺跡の調査である程度は知っているとは思ってたけど、それでもまだまだ知らないことばかりだったみたい」


 …この本はとても重要であり貴重な情報源なので、しっかりとインベントリに保管しておきましょうか。それとこの本では邪神と呼ばれているらしい神様についても、いずれクロノスさんなどの同じ神様に聞いてみましょう。


 すぐに会えるわけではないでしょうし、記憶の隅に置くのがいいですけどね。


 それに、この情報からして間違いなく絵本の邪神と同一人物であると感じるので、いずれはその邪神と戦うことになりそうですね。…その時は、絵本に出ていた四人の英雄みたいに戦えますかね…


「とりあえず、レアちゃんの用事はこれで終わりだよね?」

「あ、はい、そうですね」

「じゃあさじゃあさ、一緒にご飯でも食べにいかない?いいお店を知ってるんだよね!」


 軽くとはいえ、さっきご飯を食べたばかりなのによくお腹に入りますね…?まあ私もぜんぜん食べれますしすでに時刻も六時なので夜ご飯にはちょうどいいですし、ルイーネさんの知っているというお店についても気になるので行ってみますか!


「では、私もご一緒してもいいですか?」

「もちろん!じゃあ早速行こっか!」


 そう言ってすぐさま外に行こうとしたルイーネさんを見て、私は慌てて服装についての指摘をします。


 ルイーネさんの今の服装はダルダルのスウェット姿なので、流石にその姿のまま外に出すのは躊躇ってきまいますしね。


「…よし、今度こそ行こっか!」

「わかりました!」


 そうしてルイーネさんの服装もしっかりと外出用に着替えさせた後、私はルイーネさんの案内で食事をするためのお店へ向かいます。もちろんクリアとセレネも連れて、ですよ!


「そういえばルイーネさん、今からいくお店はどんなものがでるのですか?」


 その道中でふと気になったので私はそう聞いていると、よくぞ聞いてくれました!とでもいうかのような表情で教えてくれました。


「それはね、ラクダやこの街で育てられている家畜である羊の肉、そして立派なサボテンとかを食べられるお店なんだよね!」


 それにそのお店はこの街に来たのなら絶対に寄るべきお店ってくらい大人気なんだー!と続けてルイーネさんは教えてくれました。


 ふむふむ、そこまで人気なお店なら期待度はかなり高まりますね!しかもラクダや羊肉はともかく、サボテンまで料理として売っているのですか。


 確かにこういった街でしかそういうのは食べる機会はなさそうですし、これは楽しみになります!


 …それにしても、ルイーネさんはやはり見た目を整えればすごい美女に大変身しましたね。


 周りにいる男性からの視線だけではなく女性からも熱い視線を向けられていますし、普段の姿もキチンとすれば恋人くらいは簡単に出来そうではありますが……ルイーネさんはそういうのには特に興味はなさそうですし、気にしなくても良いですね。


「あ、見えてきたよ!」


 そんなことを考えつつもルイーネさんと共に歩いていると、いつのまにか目的のお店が見えてきたようです。


 ルイーネさんの示したお店は結構な大きさをした宿のような見た目の建物になっているみたいで、レストランとか飲食店とは違うみたいですね?


 私のそばにいるセレネとクリアもその建物から漂ういい匂いに少しだけワクワクしてますし、私も同じように期待が高まります。


 宿屋から漂う匂いからもすでに美味しそうなのが伝わってくるので、これは期待大です!


「おばちゃーん!食べにきたよー!」


 ルイーネさんはその宿屋のようなお店の扉を豪快に開け、開口一番にそう声をあげます。


「おや、ルイーネじゃないか!ちょうど席が空いてるから座りな!」

「うん!あ、それと今日はこの子も連れてきたんだけど、いいかな?」

「どうも、レアと申します!」

「あら、えらい別嬪さんだね!大丈夫だよ、今は空いているからね!」


 そんなルイーネさんに続くように私も挨拶を返すと、ルイーネさんより少しだけ小さめのおばあちゃんらしき女性がそう言葉を返してきたので、私たちはその案内のままにテーブルに着きます。


「オススメのお店ってこの宿屋みたいなお店だったのですね」

「そうなんだよねー、少しだけガッカリしちゃったかな?」

「いえいえ、いい匂いで釣られてしまったので、逆に期待が高まったくらいですよ!」

「キュゥ!」

「……!」


 私の首元と肩にいた二人も同様に楽しみらしいので、ルイーネさんと共に少しだけクスッと笑ってしまいました。


 それにお店の中もキチンと手入れがされているのかとても綺麗ですし、他のお客さんが食べている料理からして美味しそうなのでガッカリは全然しませんしね!


「あらあら、嬉しいことを言ってくれるじゃないか!」


 そんな会話を二人でしていると、先程のおばあちゃんがメニューを持ってこちらに来たので、私たちは渡されたメニューを見て注文を考えます。


「私はラクダ肉のシチューとサボテンステーキで!レアちゃんはどうする?」

「そうですね…」


 メニューにはルイーネさんの言っていた通りの料理などがたくさん載っていますが、どうしましょうか。どれも美味しそうなので手早く決めれなくて悩んでしまいます。


「悩んでいるのなら、ルイーネと同じメニューがオススメだよ」

「んー…なら、私もそれにしましょうかね!あ、それとこのデザートのチーズケーキをお願いしてもいいですか?あともう一つ、ラクダ肉のシチューをこの子たちの分もお願い出来ますか?」

「任せな!今作ってくるから待っててね!」


 注文を聞いたおばあちゃんは即座に踵を返して私たちのテーブルから去っていくので、それを見送った後にルイーネさんから話しかけられました。


「レアちゃんはこの後はどうするの?」

「私はご飯を食べた後は一度元の世界に戻ろうと思っていました」


 ご飯を食べた後なら現実世界での夜ご飯の時間にちょうどいいですしね。でも、今ご飯を食べてまたすぐに現実世界でご飯を食べるなんて、ちょっと食べすぎですね…?


 ま、まあゲーム世界の食事は現実には反映されませんし、気にしなくても良いかもしれませんけど。


「そうなんだ!私はレアちゃんの持ち込んできた本を見て意欲が湧いたから、さっそく遺跡の調査に行こうかな!」

「そういえばソロさんも言ってましたが、ルイーネさんは遺跡の調査を専門にしているのですよね?遺跡なんてここの近くにあるのですか?」


 ふと思った私の疑問に対して、ルイーネさんは軽い調子でそれについて教えてくれます。


「遺跡はすぐそこの砂漠にあるわけじゃないけど、ここから北に行って砂漠を超えると、そこに遺跡群があるんだよね〜」


 なるほど、砂漠エリアの先に遺跡があるのですか。だとすると、砂漠にあるこの街が一番遺跡に近めなのでここに住んでいるのには納得です。


 それなら私も砂漠を越えることが出来たら遺跡に行けますし、その時はルイーネさんのように探索してみたいですね!


「待たせたね!」

「お、きたきたー!」

「わぁ、すごく美味しそうです…!」

「キュゥ!」

「……!」


 そのような会話を続けていると、先程のおばあちゃんが出来上がった料理を持って私たちのテーブルへと来ました。


 おばあちゃんが持ってきた料理は出来立てホヤホヤらしく温かそうな湯気が立ち昇っており、見た目もそうですが、何よりも鼻腔をくすぐるいい匂いが食欲をそそります。


 私の頼んだラクダ肉のシチューはよく食べる普通のシチューとあまり変わっているわけではないようですが、サボテンステーキについてはかなり肉厚なようで分厚くて食べ応えもありそうです。


 そして一緒に届いたチーズケーキについては特にいうこともなく、普通に美味しそうですね。


「じゃあ、食べよっか!」

「はい!では、いただきます…!」


 そう言って私たちは届いた料理を早速食べ始めます。


 まずは、一番気になるサボテンステーキからいきますか…!


 サボテンステーキは肉厚ではありますが、ほとんど硬くはないようで簡単にナイフで切れたので、それをすぐさまフォークで刺して口の中へと運びます。


「んー!硬すぎず、けれども柔らかすぎないちょうどいい歯応えが楽しいです!それに味もお肉のようにジューシーでとても美味しいですね!」


 サボテンステーキは多分この街まで来る道中でも見かけた砂漠に生息しているものなのでしょうけど、こんなに美味しいのですね!私はサボテンを食べたことがありませんでしたが、これはとても美味しくて気に入りました!


「次は、ラクダ肉のシチューです!」


 続いてシチューも少しだけ冷ました後にスプーンで掬って口に運びますが、次の瞬間には私の口内で独特な風味が爆発します。


 その次にはじっくりと煮込まれているからか、とても柔らかくなっているラクダの肉の味と、一緒に入っていた野菜の旨みまで口の中で溢れることで私は目を輝かせます。


 うんうん、ちょっと風味が独特なので好き嫌いは分かれるかもしれませんが、これはこれでなかなか美味しいですね!


 私的にはこの風味も感じることでさらに美味しく感じれますし、おばあちゃんのオススメしてくれた通りこれは最高です!


「キュッキュッ!」

「……!……!」

「ふふ、セレネとクリアも美味しいみたいですね」

「でっしょー!ここの料理は本当に美味しいからねー!」


 セレネとクリアの反応を見た私たちは互いに笑みを浮かべつつ、ご飯を食べ進めていきます。


 あ、もう一つだけ頼んでいたチーズケーキなのですが、そちらも普通に美味しかったですよ!ただ、先に食べたシチューとサボテンステーキのインパクトが強かったので少しだけ影が薄くなってしまいましたけどね。

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