表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/232

125話 砂漠の街

「〈第二の時(ツヴァイ)〉!そして〈第七の時(ズィーベン)〉に〈第一の時(アイン)〉!」


 私はゴーレムに意識が向いている巨大ワームに対して動きを遅くさせる武技を撃ち込み、続けて自身に二つの武技を撃つことで分身を生み出して動きも加速させます。


「中に効くとするなら、このまま上から…!」


 分身と共に辺りにいるゴーレムたちを次々に足場にすることで上空まで登ってきた私は、手始めにそのまま巨大ワームの頭部へと〈第三の時(ドライ)〉を撃つことでダメージを与えつつこちらに意識を向けさせます。


 その行動は見事に注意を惹きつけることができ、巨大ワームは空中にいる私を喰らおうとその口を大きく開いて突っ込んできたので、それに私はニヤリと計画通りといった表情の笑みを浮かべます。


「そうくるとは思ってましたよ!」


 こちらへと向かってくるその口の中目掛けて私は分身と一緒に手に持った合計四丁の銃で銃弾を乱射するのと同時に、本体である私はインベントリ内に仕舞っていた多数の毒ポーションも投げ込みます。


 そしてそれらの攻撃を連続して放ち、巨大ワームがギリギリの距離まで近づいてきたタイミングで即座に〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉を使用して空中を蹴ることで巨大ワームの喰らい付きを回避します。


「ふふ、苦しいですよね?それらは私特製の毒薬ですからね!」


 口の中に放った銃弾による攻撃で巨大ワームのHPはかなり削れ、毒ポーションの効果も発揮することでしっかりと毒状態にすることにも成功します。


 ふっふっふ、悶え苦しんでいる今がチャンスですし、この間に畳み掛けましょう!


「ギイイイイッ!」

「…っ、うるさいですね…!」


 そうして巨大ワームのHPがやっと半分を削れた頃合いで、突然巨大ワームが歯軋りのよう不快な音の鳴き声をあげます。


 私は思わず顔を顰めてしまいましたが、それも無理はありません。そう、例えるなら黒板を引っ掻くかのような音みたいな感じです。


 私のそばにいるセレネとクリアは特に気にならないのか平然としていましたが、人間である私などとは違う聴覚なのでしょうか?


 まあ、私も人間ではなく狼人族ですけどね。


「キャッ!?一体何が…!」

「キュッ!」


 そんな取り止めのない思考をしていると、突如地面が揺れたと思ったら、その地面がぐにゃぐにゃと変形していき、次の瞬間にはその地面から飛び出た岩らしき槍のようなものが飛んできました。


 私はイベントの時と同様にセレネからの警戒した声を聞き、すぐに横に大きく跳ぶことでそれは回避出来ましたが、周りにいた無数のゴーレムたちは当然躱わすことが出来ずに岩の槍で貫かれることで全てが破壊されてしまいます。


「…ゴーレムは壊されてしまいましたか」


 うーん、今までに使った時もそうでしたが、私が使ったゴーレムたちはすぐに破壊されてしまいますね…


 別にゴーレムは簡単に量産出来るのでよいですけど、それでも使い方が悪いのかすぐに壊されると少しだけ悲しくなってしまいます。


「ゴーレムは全部が壊されてしまいましたし、ここからは私たちの力だけでどうにかしないとですね」


 とりあえず口の中が弱点であるのはわかっていますし、攻撃の隙を見てそこに攻撃を放つのが良さそうです。


「ギィイッ!」

「…っ!」


 観察に回っていた私に向けて、巨大ワームは一気に地面を削るかのようにこちらへとその大きな口を開いて迫ってきたので、私はそこに銃弾を撃ち込みながら横にズレることでそれを躱し、さらに続けて身体に向けても銃弾を撃ち込みます。


 それにセレネによる魔法やクリアの吐いた棘のようなものによる攻撃も加わる事で巨大ワームのHPを削りますが、弱点である体内よりかは効いている様子がありません。


「くっ、普通の攻撃では効きずらいですね…!」


 やはり、外皮が頑丈で効きずらいみたいです…!それならば、ゴーレムもいなくなってしまいましたし今度は幻影で惑わしながら攻撃を与えます!


「〈第零(ヌル)第七の時(ズィーベン)〉!」


 自身に使用した武技の効果が発揮されることで周囲に私と同じ姿の幻影が無数に現れたので、幻影には巨大ワームの撹乱に動いてもらいます。


 それと最初にするのを忘れていましたが、今のうちに鑑定も手早く済ませて情報を確認しておきますか。


 ➖➖➖➖➖

 アースワーム ランク E

 荒地などの乾燥した地域に生息している巨大ワーム。

 土魔法を操る力を持ち、その食欲であらゆるものを食らう。

 状態:飢餓

 ➖➖➖➖➖


 鑑定結果ではそう出ましたが、ここに書いてある通り土魔法も使ってましたし、納得です。


 それと状態が初めて見る飢餓というものになっていますが、これはなんなのでしょうか?そのまんまの内容だとすると普通にお腹が空いている、と感じれますけど…


「まあ気にしてもわからないですし、それは置いといていいですね。とりあえず、さっさと倒しちゃいますか」


 鑑定はすぐに済ませたのでまだ効果時間が続いているようで、無数の幻影が巨大ワームを翻弄してますし私もそこに混じって攻撃を加えていきます。


「ギィイイイイッ!」


 そうして効果時間が切れて幻影が消えた後も、適度に分身を生み出したり幻影を出したりとして攻撃を加え続けていると、巨大ワームのHPが残り一割を切ったタイミングで再び歯軋りのような雄叫びをあげます。


 すると、突如巨大ワームの全身に赤色のオーラのようなものを纏わされます。


「これは……前にも見ましたね」


 前にボスゴブリン相手で見たのと同じように感じますし、これも自身の力などをあげる効果持ちなのでしょう。


 なら、HP的にあと少しですし、先程よりも警戒を強めつつ戦いましょうか。


「ギィイイッ!」

「…っ!先程よりも早くなってますね!」


 赤いオーラの力はどうやら力をあげる効果とスピードを速くするという純粋な強化のスキルのようで、先程よりも早く、力強く、耐久が上がっているのがわかります。


 ですが、巨大ワームの様子がなんだかおかしく感じたので攻撃の手を止めずにではありますが観察に回ってみると、なんだか口元からは唾液のようなものを撒き散らしており、その唾液が触れた箇所からは白い煙が立ち上がっているのでアレは危険そうです。


 それに赤いオーラを纏う前よりも理性が飛んでいるようにも見えるので、おそらくは本能のままに動いているのでしょうね。


「であれば、これ以上苦しませないように素早く倒してあげます…!」

「ギィイイッ!」


 こちらに迫ってくる錯乱した巨大ワームに向けて両手に持った双銃を構え、そのまま真正面から攻撃系の武技である〈第三の時(ドライ)〉を口の中へと照準を定めて撃ち、それはそのまま奥へと進む事で身体を一直線に貫いて激しい赤いポリゴンを周囲へと撒き散らします。


 そしてその攻撃で見事巨大ワームのHPを削り切って倒しせたようで、私のすぐ目の前に倒れ込んで来る頃にはすでにポリゴンに変わっていくところでした。


『ストアード荒野のエリアボス〈アースワーム〉を討伐しました』

『ストアード荒野のボスを討伐した事により、次のエリアが開放されました』


 アースワームがポリゴンとなっていくのを見ていた私の元へ、そのようなシステムメッセージが流れてきました。


 んー!少しだけ苦戦はして精神的に疲れましたが、無事に勝ててエリアの解放も出来ましたし、なかなか良い結果になりました!


 ゴーレムはまたもや全てが破壊されたのですでに残ってはいませんが、それのおかげもあって無事に勝てたのでよしとしますか!


「セレネとクリアも、ありがとうございます」

「キュゥ!」

「……!」


 私の言葉に二人も嬉しそうに私へと擦り寄ってくるので、それに少しだけ頬が緩んでしまいます。


 今回のボスは二人がいなくても勝つことは出来たかもしれませんが、それだともっと時間がかかってしまったでしょうし本当にありがたいです。


 やはりテイムモンスターは可愛いだけではなく戦闘においてもとても頼りになるので、テイムが出来たのは幸運でしたね。


「…じゃあ時間もまだ結構ありますし、早速砂漠へと向かいますか!」

「キュッ!」

「……!」


 エリアボスの元まで向かうのにと戦闘時間で結構な時間が経ったかと思ってましたが、今はまだ三時くらいなので時間にはかなりの余裕があります。


 ですので、私はセレネとクリアを連れたままエリアボスのいた広場から奥へと向かっていきます。


 ここからでもすでに砂漠は見えていましたが、ほんの少しだけ距離があるので歩くのに少しだけ時間が経ち、砂漠に着く頃には気温なども高くなっているみたいで結構な暑さを感じます。


「ここからは、この日除けのマントの出番ですね!」


 私は職人都市で買っておいたマントを取り出し、さっそく装備として着用します。するとすぐさまゴスロリドレスの上から焦茶色のマントで覆われ、フードもあるおかげで先程まで感じていた暑さが結構和らぎました。


 それと装備を整えたタイミングで気づきましたが、砂漠の入り口付近には転移ポイントらしき水晶の石碑のようなものが置いてあったので、私はすぐに登録を済ませます。


 これがここにあるのなら、一度街に戻ったりも出来そうですね?まあ私はしっかりと用意は済ませていますし、特に戻らなくても大丈夫なのでこのまま砂漠に行きますけど。


「では、いきますか!」

「キュッ!」

「……!」


 準備を整えた私はクリアとセレネを連れて早速砂漠へと足を踏み入れます。


 砂漠は意外は高低差のようなものが結構あるうえ、砂に足が取られてしまうせいで結構歩きずらいですね?日差し対策の装備は準備していましたが、足元はおろそかになってました。


 それとこのエリアは『エリトア砂漠』と言って、どこまでも砂が広がっているのがわかります。


「それでも歩いたりは普通に出来るので、気にしなくても良さそうではありますけどね」


 それよりもまずは、砂漠にいるモンスターですね。この砂漠には今見えている範囲ではありますが、ラクダやサソリ、オオトカゲにエリアボスと似た見た目であるワームなどが生息しているようで、ラクダを除いたモンスターたちは砂漠を歩いている私たちへと襲いかかってきたのです。


 それらは倒したらドロップアイテムを色々と落としましたが、特にいうこともないので割愛します。あ、でもサソリからは毒を手に入れることが出来たので、これは今度毒薬にするかもしれませんけどね。


 そうして出会うモンスターを倒しつつ砂漠を奥へ奥へと適当に歩き続けていると、何やら私の感覚に何かを感じとりました。


「この反応は……地面からですかね?」


 反応的にモンスターではなさそうですが、何か特殊そうとは感じます。


 私は反応のあった地点に対して、セレネにお願いして風魔法で砂を吹き飛ばしてもらいます。すると、砂がなくなった場所には一つの石像のようなものが埋まっていました。


「これは、なんでしょうか?」

「キュゥ?」

「……?」


 首元にいるセレネと肩にいるクリアも不思議そうにしており、首を傾げるかのような仕草をしていて少しだけクスッと笑ってしまいましたが、とりあえずはこれの確認をしないとですね。


 私は石像を砂の中に埋まっている状態から起こすと、その石像の目元が突然青く光った次の瞬間、私の頭上から何かが突然落ちてきたようで頭に衝撃が走りました。


「いてて、一体なんですか…?」


 私は落ちてきたものの正体を確かめると、それは小さめの青い宝石がついた金色の鍵でした。


 うーむ、突然鍵が落ちてきましたが、これはなんでしょうか…?確実に石像が関係しているでしょうけど、当然のことで少しだけ首を傾げてしまいますが……まあ別に悪いことでもないですし、特に気にしなくても良さそうですかね?


 とりあえず、この鍵はインベントリに仕舞っておいて保管しておきますか。


「…石像はこのままでいいでしょうし、また砂漠の街を目指していきますか」


 私はなんとなく石像に一度お参りをしてから、またもや砂漠を歩いていきます。




「…あ、見えてきましたね!」


 そうして砂漠内を歩き続けること数時間。目的地である砂漠の国がやっと私の視界の先に移りました。よーし、すでに街は見えてますし、あそこを目指しましょう!


「ふんふふーん」

「キュッキュゥ!」

「……!」


 私たちは鼻歌を歌いつつも出てくるモンスターたちを倒しながら歩き、最初に街を見つけた地点から街を目指してしばらく歩いていると、ついに街の入り口付近まで到着しました。


 砂漠の街も入り口は他の街と同様に門と門番らしき人がいるようで、怪しいものがいないか目を光らせているのがわかります。


 別に怪しい人物でもない私は門番さんをチラリと見つつも、門を潜って街の中へと入っていきます。


 街中はやはり砂漠の国だからなのかアラビアンのような雰囲気を醸し出す建造物となっており、全体的に白っぽい見た目もしているみたいです。


「それに、この街の住人も人間は少ないようでダークエルフらしき人が多いですね」


 この街は今まで行ってきた国や街とは違ってみたところダークエルフの種族が多めに感じます。


 今までの町ではプレイヤーなども含めて結構雑多にいましたが、ここでは違うみたいです。まあ私以外に後続のプレイヤーが徐々に来るとは思うので、その種族だけしかいないということにはならなそうではありますけどね。


 それにほんの数名ではありますがすでにプレイヤーらしき人も見かけるので、その予想は間違いなさそうです。


「…街並みを見るのはいいとして、先に転移ポイントの解放を済ませ、ソロさんの友人の元へと向かいますか」


 そういえばこの街のどこにいるかは聞いてませんでしたね。まあこの街の住人に聞けばわかるでしょうか?遺跡の調査を専門としている人物とソロさんは言ってますし、それを加えて聞けばわかるはずですね。




「ここが、その人の家ですか?」

「そうだよ。じゃあ私はこれでいくね」

「はい、案内ありがとうございました!」


 そしてその後は街の中心に存在している巨大なオアシスのそばにあった水晶の柱に触れることで転移ポイントの解放を終わらせ、街中の住人に目的の人物の居場所について聞いて回っていると、どうやらその人を知っているらしい人、ダークエルフ?が案内をしてくれたので無事にそこまで辿り着くことが出来ました。


 あ、お礼としてそのダークエルフの人には前に森で採取したブドウやアプリの実を渡しましたよ。木の実系はこの砂漠ではとても貴重らしく、喜んでくれたのでこちらとしてもよかったです。


 っと、それはいいとして、早速ソロさんの友人らしき人に会いましょうか。


「すみませーん」


 そう考えた私は早速扉をノックして声をかけますが、反応が返ってきません。うーん、今は留守なのでしょうか…?だとしたら、また別の時に来るしかないですかね…?


「はいはーい、ちょっと待ってねー」


 そんな思考をしていると家の中からそのような声が聞こえてきたので、私は一度扉の前で待つことにします。


「はーい、って、どちら様ですか?」


 その言葉と共に扉を開けて出てきたのは、身長170cmはありそうな程の大きさでボサボサの灰髪をしたダークエルフの女性でした。服装は現実世界で言うところのジャージのようなものを着ているため完全にズボラではありますが、それでもしっかりとわかるくらいにはスタイルの良さが目立ちます。


 見た目をキチンと整えれば男性などにはとてもモテそうな女性でありますが、服装や髪型などがそれを全て台無しにしてますね…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ