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114話 無人島サバイバル12

「レアさん、その隠されているエリアの場所は分かっているのです?」

「はい、この本に特殊エリアのある場所が載っていたのですよ」


 ご飯を食べ終えてすぐさま行動に移った私たちですが、ふとアリスさんがそのように聞いてきたので、私はそう言葉を返します。


 本の内容を見ると、そこには二箇所だけではありますがそのエリアの入り口が載っていたのですよね。


 それにその場所についても、本を読んだ後に私のマップに記されてくれているのですぐにわかるのでとても楽でいいですね!


 ちなみに、その二箇所の場所は先程まで私たちのいた広場から北西の草原と東の森の中らしいので、以外とここからは近いようでした。なので私たちは、まずは一番近い場所である東の森へと向かっています。


「それにしても、この断片とやらが多く出てくるようになっているせいで、いちいち襲ってくるから面倒ね」


 その道中ではネーヴェさんの口にした通り、昨日などと比べると明らかに多く邪悪なる断片というモンスターと遭遇するせいで少しだけ移動に時間がかかってしまっています。


 しかも、今も三人がそれぞれ呼び出している幻獣である私のテイムモンスターのセレネに、ユニコーンのハク、青い小鳥のアズールの三匹が特に狙われてしまっており、結構警戒をしていないと危なかったりします。


 まあここにいるのはトップと言ってもいいほどの腕前の人しかいませんし、このくらいのモンスターに手を焼くことはないので全然問題はないですけどね。


「っと、この辺りみたいですね」

「…特に何もないです?」


 そうこうしているうちにマップに記されている場所に到着しましたが、アリスさんの口にしたようにそこには特にこれといったものは何もありません。


 うーん、マップを見るにここらしいのですけど、特に何もありませんね…?


 私たちは皆で手分けして何かないかと周辺を探していますが、それでも特に何も見つかりません。


「レアさん、本当にここなのですか?」

「そのはずなのですが…」


 私はアリスさんの言葉を聞いて確認のためにインベントリから本を取り出すと、突如その本が勝手に動き出してそのまま空中を飛んだと思ったら、本が急に光を発し、その次の瞬間には私たちの目の前に三メートルくらいはありそうなほど大きい、黒と白が混ざった色をした荘厳な扉が出現しました。


 どうやら、この本を取り出すのがトリガーだったみたいですね。その扉はほのかに光を発しているようで、少しだけ暗めの森の中にも関わらずかなりの存在感を出しています。


「き、急に現れたのです…!」

「これが、レアの見たという本に書いてあった特殊なエリアの入り口、なのかしら?」


 ネーヴェさんの言う通り、間違いなくこれが特殊エリアに続く扉でしょう。空中を飛んでいた本も私の手元に戻ってきましたし、インベントリに仕舞った後に早速中に入ってみましょうか!


「…開かないですね」


 いざ参らん、っと思ってワクワクしつつ扉を開けようとしましたが、この扉は開きませんでした。


 …押すだけではなく引いてもみましたが、全くと言っていいほどに開く気配がないのですけど…


「それ、鍵穴がついているわよ?」


 そんな私を見てネーヴェさんがそう声をかけてきたのでわかりましたが、なんとこの扉には鍵が必要だったようです。


 あ、それならモンスターを倒した時に手に入れた鍵が使えるのでしょうか?使う場所がわかりませんでしたが、おそらくここで使えと言うことでしょうね。


 私はアリスさんとネーヴェさんから受ける微笑ましそうな視線を、頬を僅かに赤くしつつもコホンッと咳払いをしてから無視し、気を取り直してインベントリから出した黒色の鍵を扉の鍵穴に差し込みます。


 その鍵穴には予想どおりこの鍵が合っていたようで、ガチャリという音と共に扉が開いたので、早速とばかりに中へと続く空間へ私たちは足を踏み入れます。


「ここは……部屋、でしょうか?」

「…なんだか普通な感じですね?」

「特に怪しそうなものは置かれていないわね?」


 扉を潜って中に入った後にその空間を確認してみると、そこはごくごく普通な部屋らしき空間となっており、特に変なものが置かれているというわけでもないようでした。


 ですが、その空間内には色々な本が置かれている本棚に小さめの木で出来た机のみは存在しているのがわかります。


 それと、普通な部屋といっても現実世界とは違ってファンタジー要素が入ってはいるので、少しだけ目新しくも感じはしますけどね。


「…とりあえず、本棚でも調べてみますか?」

「そうですね、本も結構あるみたいですし、そちらを確認しますか!」

「確かに、それが良さそうね」


 私たちは部屋の中を見渡してからそう決めて、三人で本棚に置かれている本を手に取って確認をしていきます。


 私の首元にいるセレネとネーヴェさんの肩にいるアズール、アリスさんのすぐそばにいるハクなど、この子たちも一緒にいてくれるので、私たちは思わず笑みがこぼれてしまいます。


 まあ手伝いといっても特に何かしているわけではないですが、それでも可愛らしく応援らしきことをしてくれているので、とてもやる気が湧いてきます!


 ですがアリスさんとネーヴェさんは【言語学】スキルを持っていないらしく、本の確認は出来ないみたいでしたので、二人にはこの空間内を調べるのをお願いしました。


 もしかしたら、今確認している本だけではなくこの空間にも何かがあるかもしれませんしね。


「うーん、特に必要な情報はなさそうな感じでしょうか…」


 そうして私はパラパラと手早く本の確認をしていってますが、書いてある内容は色々な料理のレシピだったり錬金や調合に使うであろうレシピなど、特に今必要としている情報ではないようで、あまり読んでいても意味がある感じはしませんね。


 まあレシピなどについては結果ありがたく感じるので、それらは確認のついでに私のインベントリに仕舞っておきますが。


「…本は特に何もない感じですかね…?」


 あらかた本の確認をし終わりましたが、特にこれといったものはなかったので少しだけ物足りなく感じてしまいますね。


 ここには特に何もないようですし、もう一箇所だけ調べるところがあるのでそちらに期待をするとしましょう。


「レアさん、こんなものが合ったのですけど…」

「ん、なんですか?」


 本の確認が終わったタイミングで見計らったかのようにアリスさんがそう声をかけてきて一冊の本を渡してきたので、私はこれについて聞いてみます。


 すると、どうやらこの空間内に置いてあった机についていた引き出しの二重底のところにこれが入っていたようで、アリスさんとネーヴェさんは読めないので私に渡してきた、というわけらしいです。


 なら、さっそく読んでみましょうか。


「……なる、ほど…」

「…なんて書いてあったのですか?」


 その謎の本を読み進めているとアリスさんからそのように聞かれたので、私は一度本から視線をあげてアリスさんたちにも書いてあった内容を簡潔に説明します。


「…この本はおそらくここに封じられている存在が書いていた日記のようなものらしく、そこには『何故この私が封印されなくてはならないのだ』や『我らが神の使命をこの命に変えても果たしてみせる』とか『私がなんとしても貴方様の力を解放してみせる』だの、まあなんというか、なんとも怪しげなことが書いてありました」


 我らが神とか書いてあるうえにファンタジアさんも言っていましたが、このエリアに封じられている存在は世界にとって害となる者の配下らしいですし、そんな存在の大元がなんらかの神様なのでしょう。


 私が知っている神様はクロノスさんとリンネさんが教えてくれた神様たちくらいですが、その中の神様たちが悪どいことをしているということはあり得なさそうですが……力を解放してみせるともこの日記には書いてありますが、なんとなく直感ではありますけど私の知っている神様ではないとは思います。


 それに前にユニーククエストで見た壁画やファンタジアさんの言葉から察するに、今まで倒してきた邪悪なる欠片や断片などもきっとその神様に関係がしているモンスターだとも感じますね。


 過去にもそんなモンスターはたくさんいたとは前にクロノスさんも言ってましたし、その神様の配下らしき封じられている存在も、その一人だったりするのでしょう。


 そしてこのイベントエリアやユニーククエストなどで手に入れた情報からして、思った通りイベントエリアだけではなく元の世界でもその神様がいるのでしょうね。


「封じられている者の日記、ですか」

「それに神様、ねぇ…」


 っと、いつのまにか思考に夢中になってましたが、アリスさんとネーヴェさんも私の言葉を聞いてその顔に真剣そうな表情を浮かべています。


 日記とはいえ、明らかに他の誰もが知っていなさそうな情報だとは思いますし、真剣な表情になるのも無理はありません。


 しかも神様という上位の存在までもがこの封じられている者と関わりがあるらしいので、はっきり言ってこれはかなり重要な情報です。


 とはいえ、今すぐにその神様と出会うというわけではないとは思いますし、これについても頭の片隅に置いておくのが良さそうではありますね。


「…とりあえず、ここで調べられるのはこれで終わりですかね?」

「ですね。置いてあった机以外には特になかったのです!」

「この空間内も特殊そうなものは見当たらなかったわ」


 アリスさんとネーヴェさんもそう言ってますし、これらの本と日記以外は特に重要なものはなさそうです。


 今確認した日記と無数の本は一度インベントリに仕舞っておいて、まだ時間もあるのでもう一箇所にも向かうのが良いでしょうか?


「なら、この辺でそろそろ戻るとしましょうか。それにまだ時間も結構ありますし、このまま北西の草原にも行きませんか?」

「そうね、まだ夜までは時間もあるし、それが良さそうね」

「では、また案内をお願いします、レアさん!」

「わかりました。ではそういうことでら一度ここから出るとしましょう」


 私たちはそう決め、未だに存在感を放っている白黒の扉を開けて外に出ます。


 すると、今潜ってきた扉は突然霞のようになって消えてしまいました。おそらく、また本を取り出せば現れるのかもしれませんが、特にやり残したこともないので、それは気にしないで私のマップに記されている北西の草原に向けて私たちは出発します。


「そういえば、アリスさんとネーヴェさんのテイムしたその子たちの種族はなんなのですか?」


 間違いなくアリスさんのテイムモンスターはユニコーンではあると思いますが、ネーヴェさんの子はどんな種族なのでしょうね?


 目的地に向かう道中でふと気になったので二人にそう聞いて見ると、特に隠すことでもないようでアリスさんとネーヴェさんは歩きながら答えてくれました。


「私の子は見ての通りユニコーンなのです!」


 アリスさんは隣で一緒に歩いているユニコーンのハクを撫でつつそう答えてくれます。


 やはりそうでしたか。幻獣であり角が生えている白い馬なんてその種族以外にはほとんどいないでしょうし、私の予想通りでした。


「私のはフォルトゥナって名前の種族だったわね」


 それに対して、ネーヴェさんの肩に止まっている青い小鳥はあまり聞きなれない名前であるフォルトゥナという種族らしいです。


 確かフォルトゥナとは幸運を意味する言葉、でしたっけ。なら、持っているスキルなどはそちら方面に偏っているのかもしれませんね?


「そういうレアさんのその子はなんて種族なのです?」

「私の子はケツァルコアトルという種族でした」

「ケツァルコアトル……確か、現実世界でも存在していた神様の名前だったかしら」

「多分それだと思います。持っているスキルも、それにちなんだもののようでしたしね」


 私も首元にいるセレネの頭を優しく撫でつつ、その問いに答えます。


 まあこの子たちがどんなスキルを持っていようがしっかりと可愛がるのは変わりませんが、それでもレアそうなこの子たちをテイム出来たのは結構嬉しいですよね!


 私の場合は元の世界に戻ったらもう一匹のテイムモンスターであるクリアもいますし、ケンカをしないで仲良くしてくれると嬉しいです!


 そこからも自分たちのテイムモンスターのことについてたくさんおしゃべりをしつつ、時折出会う邪悪なる断片を片っ端から倒しながら進むこと数時間。


 テイムモンスターもそばにいるからか、道すがらで遭遇した他のプレイヤーたちから可愛いものを見るかのような視線を浴びつつも、東の森から移動して目的地である北西の草原のポイントについた私は、早速インベントリから東の森と同様に本を取り出そうとしたそのタイミング。


「あれ、レアじゃないか」

「…クオン!?どうしてここに?」


 ふと声をかけられてそちらに視線を向けると、そこにはクオンのそのパーティメンバーであるメアさんにライトさん、ヴァンさんがこちらに向かってきているところでした。


「俺たちはここの草原の畑に作物を収穫しにきたんだが、レアたちもか?」

「んー…まあクオンたちならいいですか。実は…」


 一度話してもよいか悩みましたが、別に隠す必要もないので私は素直にここにきた目的についてクオンたちへと説明をします。


「なるほど、隠されているエリアの調査か」

「レアちゃんはそんなことをしてたんだ!」

「まあここが最後ではありますけどね」


 私たちが見た日記の情報については、今はまだ気にしていても意味がないので特に説明はしていないので、クオンたちは少しだけ調査が面白そうと思っているようです。


 まあ私たちも封印されている者となんらかの神様が関係しているという情報を知っておらず、第三者からの視線なら同じような反応にはなっているとは思うのでそれもわかりますけども。


「もしよかったら、俺たちも同行させてもらえないか?」


 そんな私たちの調査にクオンはとても興味津々らしく、そのように聞いてきました。


「私は構いませんが、アリスさんとネーヴェさんはどうですか?」

「私も大丈夫なのです!」

「私も問題ないわ。調査が目的だし、人数は多いに越したことはないしね」


 二人にも良いかどうかを聞いてみると快く許可をくれたので、私はクオンたちに向けて、では一緒に調査にいきましょうか、と答えました。


 聞いてきたクオンは当然として、メアさんにヴァンさん、落ち着いた性格であろうライトさんまでもがワクワクを隠さずに表情に出しているので、それだけ楽しみにしている様子です。


 まあ一箇所と同じでただの部屋となっている可能性があるので、そこまで面白いものがあるかはわかりませんが……まあとりあえず、さっさと本を出してみますか。


 私はそんな楽しげなクオンたちを尻目にインベントリから例の本を取り出すと、一箇所と同じように手に持っていた本が勝手に動き出し、同様に光ったと思ったら、先程見たのと同じであろう三メートルくらいの黒と白が混ざった色をした荘厳な扉がすぐさま出現しました。


「これが、隠されたエリアの入り口か…!」

「なんだかすごい迫力ですね…」

「ですよね。私たちも初めて見た時は驚きましたよ」


 クオンとライトさんがそう言葉を漏らしていますが、それにはすごく理解できるので同意を返します。よし、キチンと扉も出現しましたし、さっさと鍵を開けて中に入りましょうか!

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