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113話 無人島サバイバル11

「な、なんだ…!?」

「ナイフ…!?」


 ポリゴンとなって消えた男性の仲間が突然のことに動揺していると、再びナイフが飛んできて、動揺しているプレイヤーたちに刺さりまくります。


「ジン!」

「任せろ!」


 それを見たゼロさんは即座に指示を出し、ジンさんはすぐさま襲われていたプレイヤーの盾になるように大盾を構えて防御の姿勢に移ります。


 迅速なジンさんの動きのおかげもあって、今まさに襲われていたプレイヤーたちはなんとか最初に犠牲になった一人以外は全員生き残っているようで、飛んできたナイフは全て大盾で防ぐことが出来ています。


 それに私たちの方にもナイフが飛んできましたが、それらはソフィアさんやゼロさんなどの近接組が全て防いでくれたので、それも相まって私たちの中にも怪我をした人は特にいないです。


「おうおう、生き残っちまったかぁ?」


 そんな中、そのような声が私たちのいる場所まで聞こえてきて、森の奥から五人組の男性プレイヤーが現れました。


 その五人組のプレイヤーは皆真っ黒な見た目のロングコートを羽織り、その下にも同様の漆黒色をしたシャツにズボンを履いている、まさに殺し屋と呼べそうな見た目をしています。


 というか、見た目はともかく言動からして先程攻撃をしてきたのはこの人たちで間違いなさそうです?


「お前たちは誰だ?」

「くくっ、俺たちはクラン凶手の死徒(ムルトリエ)だ。ここでトッププレイヤーと名高いお前たちを殺せるなんて、ゾクゾクするぜぇ?」

凶手の死徒(ムルトリエ)……まさか、あのPKクランか!?」


 襲われたプレイヤーの一人がそう言葉を漏らしていますが、もしかして知っている人たちなのでしょうか?


「知っているのです?」

「あ、ああ、掲示板で載っていたんだが、この世界で一番凶悪なPK集団なんだ」


 なるほど、PK集団ですか……PKをするプレイヤーと出会うのは初めてですが、こんなイベントエリアにまで出てくるなんて、結構めんどくさいのです…!


「さあ、その命、狩らせてもらうぜぇ!」


 その言葉を合図に、両手に二本の短剣を構えてこちらに迫ってくるPKプレイヤーですが、その背後からは仲間である四人のPKプレイヤーも自身の武器を構えてこちらに向かってきます。


 PKプレイヤーということは倒しても別に問題はなさそうですし、私たちもタダで殺されるわけにはいきません。なので、精一杯反撃させてもらいますっ!


「ジンはそのままそっちを頼む。俺たちはこっちをやる」

「了解した」


 ゼロさんは最初にダメージを受けていたパーティを守るように指示を出した後、ボスであろうPKプレイヤーに自身の武器である銀色の刀を構えて攻撃を開始します。


「ほらほら、死ねよ!」

「ふっ!」


 しかし、さすがはトップと言われるだけの腕前はあるようで、特に苦戦をせずに相手からの攻撃を捌いて反撃の攻撃を放ってダメージを与えていってます。


 っと、ゼロさんの方を見てないで私も他のメンバーの相手をしないとですね。


「〈人形の呼び声(コール・ドール)〉!さあ、行くのです!」

「サポートするわ、〈飛び回る氷柱(アイス・フリーゲン)〉!」


 私の呼び出した人形さんたちが私の指示で無数の魔法を放ってPK集団に攻撃を放ち、それをサポートするかのようにネーヴェさんも無数の氷柱を飛ばしてくれています。


 そのおかげでゼロさんが相手をしている一人を除き、四人のPK集団は前衛を兼ねているソフィアさんとリンさん、セントさんにマキさんの四人の協力で徐々にダメージが蓄積していき、HPがどんどん削れていってます。


 こちらの方が人数が多いので以外と相手を出来ていますが、それでもPK集団は結構な腕前のようで倒し切るには至れませんね。


「ちっ、数が少なくて分が悪いな…!なら…!」

「むっ…!」


 押し込まれている状況を見たボスであるPKプレイヤーはその言葉と共に懐にから何かを取り出したと思った、それを地面に力一杯叩きつけます。


 すると、叩きつけられたそれから突然黒色の煙があたりに噴出することで視界が一気に悪くなります。


「目眩しか…!」

「くくっ、これなら数が多くても無闇に手が出さないだろぉ!」


 黒色の煙の中で四方からそのような声が聞こえてきますが、常に移動しているようでどこにいるかか正確に把握出来ません。


 しかも、いつのまにか私たちが相手をしていたPK集団も煙に紛れるように消えていたので、手が出せなくなってしまいました。


 くっ、目眩しなんてずるいのです!私のユニークスキルも人形さんを操るものなので対処が出来ないですし、どうしたら良いでしょうか…


「ここは私に任せて!〈狂獣の叫砲(ビースト・ハウリング)〉!」


 ソフィアさんがそんな言葉と共にユニークスキルの武技を空目掛けて(・・・・)放つと、その衝撃のおかげで漂っていた黒色の煙が全て吹き飛ばされることでなくなりました。


 ソフィアさんの行動で視界の悪さがなくなり、ボスであるPKプレイヤーとその仲間である四人のPK集団を再び視界に捉えることが出来ましたが、それを見てPK集団は少しだけ苦々しい表情をしており、今の状況が悪いのがわかっているようです。


「ちっ、やっぱりそう簡単には殺せないかぁ!」

「お前たちはなぜPKをするんだ!」


 ボスであるPKプレイヤーの言葉にセントさんがそう問いかけますが、それに対してPKプレイヤーたちはニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながら答えてきます。


「そんなの、俺たちが殺したいからだなぁ?」

「そうそう、この手でプレイヤーを殺す感触!」

「ほんと、最高に気持ちいいからねぇ?」

「この味を知ったら、もう戻れないぜ?」

「特にトップに立つものを狩れたのなら、それはもう天にも登る感覚だろうしね?」


 …やはり、PK集団というだけあって性根が腐ってますね。殺す感触が気持ちいいなんて普通の人なら感じませんし、人の悪いところを煮詰めたかのような人柄のようです。


 なら、このまま放置していたら途中で邪魔をされそうなのでここで、倒しておく必要がありそうですね。


「さあ、ここからまた殺し合おう…」


 そうしてボスは再び武器である二本の短剣を構え、仲間のPK集団も己の武器を構えてこちらに向かってこようとしたその瞬間。


 突如ボスの首と胴体が離れ離れになることでHPが全壊し、ポリゴンとなっていきました。


「…ぜ?」

「え?」


 ボスも突然のことで驚いたかのような表情を飛ばされた顔に浮かばせており、これは意図したことではない様子です。仲間のPK集団も同様で、驚きに身体が硬直してしまっています。


 そして、そんなボスのいた背後にはそれを行ったであろう一人の男性プレイヤーが立っており、その手には黒色の短剣を持っていました。


 おそらく、あの短剣でボスの首を刎ねたのでしょうね。というか、あの男性プレイヤーってもしかして…


「…ジェーンさん、ですか?」

「ジェーンって、確かバトルフェスの時にもいたプレイヤーよね?」


 隣にいたネーヴェさんが私の言葉を聞いてそう聞いてくるので、それに首肯します。


 今把握出来る見た目も前とそこまで変わっていないようで、黒いボロ切れのようなものを羽織って白い仮面を付けた灰色の髪の男性ですし、多分間違いないはずです。


「…PKはダメですよ?」

「…っ、テメェ!」


 落ち着いた様子でそう言葉を発したジェーンさんへ、ボスとは違って攻撃をされなかったせいで残っていた四人のPKプレイヤーは昂った感情のまま、自身の持つ武器を振るって攻撃を放ちます。


「〈彷徨う殺人者(デア・ヴァンデラー)〉」


 が、ジェーンさんはユニークスキルらしき武技でPK集団の背後に一瞬で回り込むことで攻撃を回避して、そのまま手に持つ短剣を瞬時に振るい四人のPKプレイヤーの首をボスと同じように刎ねることでポリゴンに変えました。


「ふぅ、これで倒し終わりましたね」

「す、すごいのです…!」

「…PVで見た時よりもかなり強くなってる気がするわね」


 PKプレイヤーたちを倒し終わったジェーンさんは、即座に短剣をインベントリに仕舞ってこちらに向かって歩いてきます。


「援護はいらなかった様子ですね?」

「いや、ジェーンがいなかったらもう少しだけ時間がかかっていただろうし、助かった」

「それならよかったです。では、私はたまたま通りかかっただけですので、この辺で失礼させてもらいますね?」

「ああ、わかった」


 そう言って手をヒラヒラと振るいながら森の奥へと消えていくジェーンさん。


 たまたま通りかかったとは言ってましたが、明らかにあのPKプレイヤー狙いの様子に見えましたけど……まあ特に悪いことをされているわけでもないですし、そこまで気にしなくてもいいですね。


 それとジェーンさんに倒されたPK集団はどうやらこれで倒されるのが三回目なのか、PK集団のいた場所にドロップアイテムの如く色々とアイテムなどが落ちていますし、強制的にイベントエリアから出されてしまっているみたいです。


 この状況からして、今回のイベントではもう会うこともないと思うので少しだけ安心しました。PKは人の迷惑になるので、謹んでほしいのです!


「とりあえず、これでひとまずは終わりだな」

「そうだね、あとはこっちの人たちだけど…」


 ルミナリアさんはそう口にしてから、先程守ったプレイヤーのパーティともう一つのパーティの人たちへ視線を向けます。


「…俺たちは、もうここを去ることにする」

「リーダーもやられたうえに争っていたのに守ってもくれたし、ここでもう一度トラブルを起こす気はないしな」

「わかった。なら、気をつけて帰るんだぞ?」


 セントさんの言葉を聞きつつ、そのパーティメンバーたちは私たちの元から去っていきました。


 リーダーはまだ三回目の死亡ではないみたいなのでイベントエリアにはいるみたいですが、ここにはすでにいませんしね。


 まあ実力も微妙でしたし、それが良いとは私も思いますが。


「で、貴方たちはどうするのかしら?」


 そして残っているもう一つのパーティの人たちに向けてネーヴェさんがそう問いかけますが、その人たちは仲間同士で視線を交わしてから、口を開きます。


「俺たちも、このままここにいても邪魔にしかならないだろうし、調査はやめておくことにする」

「あら、それでいいの?」


 苦々しげな表情をしつつ答えたその男性プレイヤーにリンさんはそう言葉を返した後、さらに続けます。


「別に今はまだイベントの四日目なんだし、また別の時に調査にいけばいいわ」

「…俺たちでも大丈夫なのか?」

「それは知らないわ。でも、前に進まない限り答えは出ないわよ」


 リンさんの言葉を聞いた男性とそのパーティメンバーはその言葉に少しだけ考えているようで、なんだか悩んでいる様子です。


「じゃあゼロさん、私たちもそろそろ行きませんか?」

「そうだな。皆、行こうか」

「あ、はいなのです!」


 そんな言葉と共にスタスタと歩いていくゼロさんに、私はすぐに返事をしてから後を追いかけるように着いていきます。


 今はまだPKプレイヤーと遭遇したくらいで何も情報は得ることが出来ていませんし、時間もあるのでもっと散策をしましょう!




 皆さんが森の調査に向かうのを私は見送り、姿が見えなくなった後は首元にいるセレネと一緒にコテージの側においてある椅子に座り、インベントリから一冊の本を取り出してから読み始めます。


「ふむふむ…」


 その本は【言語学】スキルを持っているおかげで読むことが出来ましたが、書いてある内容はなんと封じられている存在の持つ力についてでした。


 その力とは、どうやら前に戦ったことのあるモンスターと同様に黒い瘴気を操る力を持ち、モンスターを生み出す力で数も揃え、さらには凄腕の剣士の技術まで持ち合わせているみたいです。


 ということは、いずれは戦うことになりそうなこの敵はきっと質も大事ではありますが、数も必要になるかもしれませんね…


 それに人型でもあると海の石碑の情報からわかっていますし、戦い方も工夫しないと大変そうではあります。


 そんな思考をしつつも本をじっくりと読み進め、気がついたら本を読み終わっていました。この本には封じられている存在の情報以外にも、このイベントエリア内に隠されているという特殊エリアについても何箇所か載っていましたし、午後にでもそこに行ってみるとしましょう。


「今の時刻は……もう九時半ですか」


 なら、残っているカレーと仕舞ったままで忘れていたローストチキンをお昼ご飯にしますが、時間もあるのでついでに夜ご飯の支度も今しちゃいましょうかね。




「戻ったよー!」

「ルミナリアですか。一緒にいた皆さんは?」

「それなら、すぐに来るよ!」


 私は駆け足で戻ってきただけだからね!と続けて言ったと思ったら、すぐさまテーブルの側に置いてある椅子に座り、そのまま私のことをニコニコしつつ見つめてきます。


「な、なんですか?」

「いやー……いいお嫁さんになりそうだな、ってね!」


 ルミナリア……その言い方、なんだか少しおじさん臭いですよ…?


 まあ褒めてくれているのでしょうし、素直に褒め言葉として受け取っておきましょう。


「ルミナリア、早いよー!」

「あ、マキさんもおかえりなさい!」


 そんなルミナリアのすぐ後にマキさんを先頭に皆さんも無事に帰ってきたので、ちょうどよく料理も出来上がる頃合いですし、これはインベントリに仕舞っておいて早速お昼ご飯のついでに調査の内容について聞いてみますか。




「調査の内容か?」


 そしてお昼ご飯のカレーとローストチキンを食べつつも私はそのことについて聞いてみると、兄様は今の段階で分かったことだが、と言ってから語ってくれます。


「今の段階だと、特に怪しそうなものは見つけられなかったな」

「そうなんですか?」

「ああ、だが中央の森は他の場所よりも邪悪な断片とかいうモンスターが湧いていた感じはするがな」


 ふむ……それならば、やはり情報通り中央の森に封じられた存在がいるのは間違いなさそうですね。


 しかし、兄様から聞くに特に怪しいものなどは見つけられていないみたいなので、そこが気がかりではありますが…


 あ、それと本を見て確認した情報についても兄様たちにも教えておきましょうか。


「… このイベントエリア内に隠されているという特殊エリア、か」

「はい、なので私は午後はそれを探しに行ってみようと思ったのです」


 兄様は私の言葉を聞いて少しだけ思考をしているようで、料理を食べている手が止まっています。


「レアさん、もしよかったら私たちも着いていってもよいですか?」

「もちろんいいですよ。ただ、面白いかはわかりませんが…」

「大丈夫よ、レアが見つけてきたものなんだし、きっと何かがあるでしょうしね」


 そのタイミングで、呼び出していたテイムモンスターであるユニコーンと一緒にカレーを美味しそうに食べていたアリスさんと、同じく青い小鳥と一緒のネーヴェさんがそのように声をかけてきました。


 私は特に断る理由もないのでそれに了承を返しますが、そこまで期待をされると少しだけ不安になってしまいますね。まあ確かに、何かはありそうではあると思いますけども…


「それなら、俺たちはまた中央の森の調査でもするか」

「そうだな、何か見落としがあるのかもしれないしな!」


 兄様とセントさんはそのように言葉を発しており、兄様パーティの皆さんはまた調べに行くみたいです。それなら、そちらは任せるとしますか。


「じゃあ私とリン、そこのルミナリアさんとマキさんの四人は食材集めにでも行ってこようかな!」

「あ、お願いします!まだ食材は心許ないわけではないですが、あって困るものでもありませんしね」


 ソフィアさんとリンさん、ルミナリアにマキさんはどうやら食材集めに向かってくれるらしいので、それについてもお願いすることにします。


 そんな皆さんはご飯を食べ終わり次第すぐさま行動に移るようなので、私とセレネ、アリスさんにユニコーン、ネーヴェさんと青い小鳥の三人と三匹もパパッとカレーを食べ終え、本で見た隠されたエリアとやらを探しに行きます。

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