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112話 無人島サバイバル10

「それと石碑に書いてあった情報についてなのだが、そこにはこの無人島の中央に封じられた存在が眠っていると書いてあったんだ」


 ふむふむ、兄様の方ではその存在がどこにいるかが書かれていたのですね。私の確認してきた南の方は、その封じられた者の情報についても僅かにですが載っていましたし、これである程度の情報は調べ上げることが出来ましたかね?


 あ、私の見てきたことについてはまだ誰にも言ってませんでしたし、ついでにここで言ってしまいますか。


「…私も南の海で石碑を見てきたのですが、そこには封じられたという存在の情報が僅かにではありますけど書かれていたのですよね」

「ふむ…」


 そこから私は海の中の石碑に載っていた情報について説明します。


「なるほど、とある存在に時空に封じられていた者、か」

「それに、人の姿かぁ」


 私の見てきた情報を聞いていた兄様たちはもちろん、背後で幻獣たちと戯れていたアリスさんたちもしっかりと聞いていたようで、その瞳に真剣さを込めています。


「なら、次はこの島の中央を調べてみるのがよさそうかしら?」

「そうだね、東西南北にあるという情報については調べて終わったとは思うし、それがよいかも?」


 マーシャさんとサレナさんもそう呟いてはいますが、私もそれが良さそうには感じます。


 まあもう夜も遅いですし今すぐに調べに行くというわけでもないので、とりあえずは明日からの予定はそんな感じになりますね?


「あ、それとレア」

「はい、なんですか?」

「実はそこのモンスターとの戦った後にこんなのをドロップしたのだが…」


 ふと思い出したかのようにそう言って兄様が私へ渡してきたのは、一冊の本です。


 本の見た目はなんの変哲もない紺色の本ではありますが、モンスターからのドロップアイテムということはきっと何か特別なものなのでしょうか。


 あ、そういえば西のモンスターからのドロップアイテムは確認してませんでしたね。兄様と同様に何か特殊そうなものがあるかもしれませんし、本の確認の前に先にそちらを見ておきましょう。


「…こちらはなんだか怪しげな鍵、ですね」


 兄様から本を受け取ってから確認のためにインベントリを見ていると、そこには黒色をした鍵がひとつだけ入っていました。


 鍵、ということですし、きっとどこかで使うのでしょうが……まあ使う時になったらわかるとは思うので、一旦放置ですね。


「…それとさっきからずっと気になっていたが……それはテイムでもしたのか?」


 話が一区切りついたタイミングで、兄様が視線をアリスさんたちと一緒にいる幻獣に視線を向けるので、私はそれについても簡潔に説明します。


「幻獣……か」

「このイベントエリア内に出現しているのね」

「いいなー、私もテイムしたい!」

「しかもスキルがなくてもテイムすることが出来るなら、これは是非とも見つけたいな!」

「もしかして、レアが朝に見つけていた蛇もその幻獣なのか?」

「そうなんですよ、ジンさん。この子達以外にも色々といるでしょうし、探して見るのも良いですよ!」


 兄様たちもそんな幻獣たちを羨ましそうに見つめていますし、やっぱりこうして見ているとテイムしたくなりますよね!


 それでもこのエリアにはたくさんの幻獣がいるでしょうし、兄様たちも他にもいるらしい幻獣たちとは出会えるとは思いますけどね!


「っと、おしゃべりはこの辺にして、兄様たちもご飯にしませんか?」

「お、そうだな。お願いしてもいいか?」

「任せてください!今日はカレーを作ったのですよ!」


 私はそう言ってインベントリに仕舞っていたカレーが入っている大鍋を取り出し、そのままパンと一緒に準備をします。


 兄様たちもアリスさんたちと同じように、カレーと聞いて嬉しそうな表情を浮かべています。


 やはりキャンプといったらカレーは定番ですし、嫌いな人もほとんどいないのでその反応もわかります。しかも今回はスパイスから作ったので、現実で売っているルーとは違って本格的でもありますしね!


 アリスさんたちも美味しく食べてくれてましたし、味についても多分大丈夫でしょう。




「ご馳走様でした」

「レアちゃん、うまかったぜ!」

「そう言ってくれると、こちらも嬉しく感じます!」


 そうして兄様たちもカレーを食べ終え、セントさんがそのように感謝の気持ちを伝えてきてくれましたが、他の皆さんも同様なのか続けて言葉を返してくれました。


 兄様とセントさん、ジンさんはおかわりもしてくれたのでその言葉に嘘偽りはないのはしっかりとわかりますし、美味しく食べてくれるのは作ってる身からしても嬉しいです!


「さて、とりあえず今日はもう時間が遅いから、イベントエリアの中央を調べるのは明日からだな」


 兄様の言葉を聞いて私は腰元の懐中時計を確認しましたが、すでに時刻は七時を超えており、周りを見て分かる通り日も沈んでかなり暗くなっています。


 兄様からもらった本の確認もしたいですが、それは明日にでもしますか。それと、今もまだアリスさんたちのすぐそばにきる幻獣たちはそこから一切離れようともしていないので、テイムされるのを望んでいるのかもしれませんね?


「…なら、私は早いですがもう寝ましょうかね」


 まだ早い時間ではありますが、何故かすでに眠気がするのですよね。別にまだ起きていないといけないというわけではないですし、明日もまだイベントは続くのでそれに備えて寝ておこうと思います。


「お、そうか。じゃあまた明日の朝にでも会おうか」

「レアさん、おやすみなさいです!」

「おやすみー、レア!」

「はい、おやすみなさいです」


 皆からの声を背に聞きつつ、私は首にいるセレネと一緒にコテージ内の自分の部屋まで向かい、部屋に置いてあるベッドに横になって就寝とします。




「んっ……」


 そして気がついたら四日目の朝です。寝る前に思っていた通り眠気があったせいですぐに寝たようで、今の時刻は結構早めな五時くらいになっていました。


 ぐっすりと眠ったおかげで眠気は一切残ってませんし、私のそばで同じく寝ていたセレネも私が起きたタイミングで一緒に目が覚めたらしく、私におはようとでもいうように鳴き声をかけてきました。


「んー…っと、よし、時間も早いですし、朝ごはんの前に軽く剣での特訓でもしてますか」

「キュッ!」


 グッとベッドの上で身体を伸ばし、降りてからは現実世界と同様にストレッチも同じように済ませます。


 そしてその最中に考えていた通り、朝ごはんを用意するには早すぎるので最近はあまりしてなかった剣の特訓をして、皆さんが降りてくるのを待つとしょう。


「行きますよ、セレネ」

「キュゥ!」


 私は一度一声かけてから、昨日と同様に私の首元に優しく巻き付いてきたセレネの頭を優しく撫で、大きな音を出さないように気をつけつつ階段を降り、コテージの外へと出ます。


「ん?あ、レアちゃんか!早いな!」

「おはようございます、セントさん」


 コテージの外に出ると、今日も見張りをしていたようでセントさんが椅子に座っていました。


 なので私はかけてきた言葉に挨拶を返し、セントさんに向けてパパッとお茶を作って手渡します。


「お、レアちゃんありがとう!」

「いえいえ、このくらいは気にしないでください。では、私は軽く特訓でもしてますね」

「了解!俺はもう少ししたらゼロが代わりに来るし、それまではここにいるから何かあったら呼んでくれ!」

「わかりました!」


 よし、では早速双剣の特訓をしましょうか! 




「ふぅ…このくらいでいいですかね?」

「お疲れ様、レア」

「あ、兄様!」


 しばらくの間一人で剣の特訓をしていた私ですが、一区切りついたタイミングで息を整えていると、ふと兄様から声をかけられました。


 気づいたらセントさんもすでにおらず、いつのまにか兄様と交代していたようでした。ま、全く気づきませんでした…!


 それに時刻も六時を超えているようですし、特訓をするのはこの辺にして兄様とおしゃべりでもしてますか!




「…よし、朝ごはんも食べ終わったし、俺たちはイベントエリアの中央の森をしっかりと調べてくるが、レアたちはどうする?」


 そしてその後はたわいない会話を兄様としていると皆さんもコテージから出てきたので、すぐに用意した朝ごはんである木の実や野菜、果実などを食べ終わった後に兄様がそのように声をあげました。


 ちなみに、朝ごはん前の時に皆さんに昨日の幻獣について聞いて見ると、どうやらそれぞれがキチンとテイムをしていたようで、今は召喚石に戻しているみたいでした。


 まあそれについてはいいとして、兄様たちは早速森を調べてくるみたいですけど、私たちも特にやることはないので着いていきましょうかね…?


「私たちもそれに着いていってもいいですか?」

「ああ、大丈夫だ」

「じゃあ、私とリンはゼロさんと一緒に行くけど、五人も一緒に行かない?」

「んー、なら私たちも着いていこうかな!」


 他にやることも特にないしねー、と軽く笑いながら続けるルミナリアとそれに同意するかのように頷いているマキさんも、一緒に行くみたいですね。


 その上アリスさんとネーヴェさんも兄様たちと一緒に行くみたいですが、私は中央の森の調査は兄様たちに任せてここで待ってることにします。


 別に一緒に行ってもいいですが、人が多いと森の中では動きにくそうではありますし、兄様からもらった本についても調べたいですしね。


「じゃあ、行ってくるね!」

「はい、またお昼にでも帰ってきてくださいね!」




「とりあえず、中央に向かおうか」

「そうですね」


 ゼロさんの言葉に皆を代表してソフィアさんがそう言葉を返します。今中央の森の調査に向かうのは、レアさんの兄であるゼロさんとそのパーティメンバー、そしてソフィアさん、リンさん、ネーヴェさん、私ことアリスに、レアさんのフレンドらしいルミナリアさんとマキさんの計十一人です。


 なかなかの数がいますが、それだけ今からする調査が大事なのです。まあこの人数でも確実に情報を得ることが出来るというわけでもないと思いますが、それでも人手は大いに越したことはないのです!


 そんな中で唯一一緒ではないレアさんは、ゼロさんから渡された本を読むことで情報を得ようとしているみたいなので、あちらも大事そうなのは私でもわかるのです。


「やっぱり封じられた存在がいる場所だからか、邪悪なる断片が多いわね」

「ですね。ゼロさんの入手してきた情報に間違いはなさそうです?」


 森の中を調べるために歩き回りながらも、私の隣にいるネーヴェさんが時折出会う邪悪なる断片に後方から氷魔法を放ちつつそう呟いたので、私もそれに同意します。


 ここまでに邪悪なる断片以外にも虫や獣系のモンスターとも遭遇してますが、それでもちまちまと邪悪なる断片がどこからともかく現れてくるので、それの相手をしながら皆で森の中を歩いていますが、怪しげなものなどは一切見つかりません。


「うーん、何かないかなぁ?」

「出てくるのは邪悪なる断片くらいで、ろくなものがないわね」


 歩きながらソフィアさんとリンさんもそのように口にしており、私たち以外にも皆さんは少しだけ面白くなさそうに辺りを観察していってます。


 私は皆さんの反応に苦笑をしてしまいますが、気持ちは十分理解出来るので何かを言いはしません。


 なんでもいいから、何か起こったり発見したり出来ないですかね?


 私がそのような思考をしていたせいなのか、ふと私たちの耳に何やら争うかのような声が聞こえてきました。


「特に何も見つからないし、音のする方に言ってみるか」

「さんせーい!早く行こっ!」

「あ、待って、ルミナリア!」


 ゼロさんの発した言葉にすぐさま反応を返したルミナリアさんは隣にいたマキさんの制止を聞かずにずんずんと一人で音のする方へと走っていってしまいます。


 ちょっと、今は団体で動いているんですし、勝手な動きはしないでください…!?


 私たちも慌ててルミナリアさんの後を追っていきますが、第二陣のプレイヤーと聞いていたはずなのに足の速さがかなりのもののようで、魔法使いタイプである私とネーヴェさん、マーシャさんにサレナさんは皆よりワンテンポ遅れてしまっています。


「大丈夫か?」

「すみません、ゼロさん!」


 ですが、そんな私たちを見てゼロさんとジンさん、リンさんが私たちの速さに合わせてくれたので、少しだけホッとしました。


 …他の人です?それはですね、一番乗りに動いたルミナリアさんとそれを追いかけていったマキさんに続くように行ってしまったので、すでにパーティが分かれてしまっているのです。


 まあ何か問題があるというわけでもないのでいいですが、少しは落ち着いてほしいのです。


「あ、見えてきたのです!」

「なにかしてるわね?言い争い、かしら?」


 そんなことを思考しつつも私たちは走ってルミナリアさんたちを追いかけていきますが、少しだけ走ったところで視界の先にルミナリアさんたちが見えてきました。


 ここからでは詳しく聞こえませんが、リンさんの言った通り何やら言い争いのような声が聞こえてきてますけど、何があったのです?


「ルミナリア、どうしたんだ?」

「あ、ゼロ!」


 そうして私たちを代表するかのようにルミナリアさんにそう問いかけたゼロさんですが、ルミナリアさんは少しだけ困った様子です。


 なぜなら、ルミナリアさんから少し離れた場所には二つに分かれている十数名のプレイヤーであるパーティがおり、お互いにルミナリさんたちと背後から来た私たちに向けて警戒のような敵意のような、そうした感じの感情を顔に浮かばせてこちらに視線を向けてきているのです。


「お前たちも、この森の調査にきたのか」

「そうだが?」

「ここは俺たちの手柄だ。お前たちはどっかにいけ!」


 そう言って己の武器をこちらに構えて言い放つ男性プレイヤーですが、それに対して男性の反対側にいた他のパーティの人がそれに噛みつきます。


「いや、お前たちこそここからいなくなれよ!」

「んだと!?」


 男性プレイヤーの声で明らかに一触即発の状態になっており、なんだか剣呑な雰囲気が漂っています。


 この様子を見る限り、私たち以外にもこのイベントエリアで入手した情報を見てこの森の調査に来ているみたいですが、自分たちで手柄をあげたいようで争っている、ということですかね?


 うーん、こんな無駄なことで争わないで協力すれば良いとは思うのですが…


「ちっ、なら、今ここで……っ!?」


 言い争っている状況の中、一人の男性プレイヤーが我慢ならなかったのか武器を構えてこちらに襲いかかってこようとしたその瞬間、突如飛んできたナイフのようなものがその男性の首に突き刺さり、そのままポリゴンとなってしまいました。

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