111話 無人島サバイバル9
「じゃあレアちゃん、私たちは四人で東の森で木の実や果物を集めてくるね!」
「なら、私たちは西の畑に行こうかな!」
「了解です!では、また夜くらいにでも会いましょうね!」
ソフィアさんたちは東の森へ、ルミナリアたちは西の畑に行くみたいなので、全員がバラバラで動くみたいです。まあそれぞれ食材集めが目的ですし、とても助かるのでいいですけどね。
っと、そんな思考をしているうちに皆さんは早速行動に移っていくので、私もさっさと動くとしましょうか。
まずはここから森を抜けて海へ向かい、そこから海の底、ですね。では、早速出発です!
「…あ、その前にセレナのステータスを確認しておきますか」
そういえばセレネをテイムはしましたけど細かいことを確認はしていませんでしたね。すぐにでも出発しようと思いましたが、先にそっちの確認をしましょうか。
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名前 セレネ
種族 ケツァルコアトル
性別 女
スキル
【風魔法Lv15】【水魔法Lv15】【言語学Lv10】【魔法耐性Lv8】【占星術Lv4】【魔力操作Lv15】【豊穣Lv9】【MP上昇Lv10】【HP自動回復Lv13】【MP自動回復Lv13】
固有スキル
【精霊の血脈】【人化】【叡智の魔導】【偽・創造】【因果律予測】
称号
〈レアのテイムモンスター〉
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ふむふむ、セレネのステータスはこんな感じなのですね。色々と確認したいことはありますが、とりあえずは種族についてですね。
種族はケツァルコアトルというもののようで、これは確か現実世界でもいた神様でしたっけ。その神話と同じように見た目も羽の生えた蛇ですし、それを元にした子なのでしょうね。
続いてスキルについてですが、こちらで特に気になるのは【占星術】と【豊穣】、そして固有スキルである【精霊の血脈】【人化】【叡智の魔導】【偽・創造】【因果律予測】の七つですね。
まず【占星術】は、どうやら星の見えるところで使うと色々なバフを一人の対象に付与することが出来るというスキルのようです。
バフはその時の星の位置や動きで変わるようなので、少しだけ使いこなすのは難しそうに感じますね。
次は【豊穣】ですが、こちらはとてもシンプルで、使用した畑の作物をその名の通り豊かにして品質と量を増やすスキルのようです。これはいつか畑を持った時には使えそうなので、なかなか良いスキルです!
続いて固有スキルの【精霊の血脈】【人化】【叡智の魔導】【偽・創造】【因果律予測】の五つですが、これらのスキルはそれぞれの名前の通り、精霊としての性質を持つ、人間の姿に変化することが出来る、使用するあらゆる魔法を強化する、自身の見たことのあるあらゆる物や者を生み出すことが出来る、ほんの少しだけ未来を見れるといった効果でした。
ひとまず、気になったポイントはこのくらいですね。これらを見た感じからすると、セレネは基本的に魔法使いタイプの個体のようで、近接戦闘には向かなさそうなのがわかります。
まあクリアと同様に無理に戦闘に駆り出すことはしないので、とりあえずは元の世界に戻った後にクリアと仲良くしてくれると良いですね。
「よし、確認は済みましたし、そろそろ海へ向かいますか。いきますよ、セレネ!」
「キュッ!」
私は首元に巻き付いているセレネに声をかけた後、そのままセレネを連れて海に向かうために南の森の中へと入っていきます。
そうして道中では、初心者であろうプレイヤーたちから声をかけられたので言葉を交わしたくらいで特に何かが起きることもなく森を無事に抜け、草原も時々見かける兎や鶏などを狩りつつ歩いていると、やっと海が見えてきました。
「改めて見ると、このイベントエリアの海もなかなか綺麗ですね」
「キュッ?」
最初に塩を作りにここに来た時はそこまでしっかりと確認はしてませんでしたが、元の世界の海と同様に空から差し込む日差しを反射してどこまでも輝く海となっており、いくら見ても飽きがこなさそうです。
「っと、それはいいとして、さっさと石碑とやらを確認にいきますか。セレネは、一度戻っていてくださいね」
「キュ!」
私は一旦セレネを召喚石に戻した後に、ワンピース姿のままで海に入っていき、そのまま潜っていきます。
「(確かソフィアさんは海底辺りと言ってましたし、このまま深くまで潜っていきますか)」
そんなことを思考しつつも海岸付近から少しずつ離れながらも、私はどんどん深くまで行きますが、海がとても綺麗だからなのか下に潜って行っても特に暗くはなってきません。
まあ【夜目】スキルがあるのである程度は問題ないとは思いますが、それでも使わなくても良いのならそれに越したことはありませんしね。
「(あ、アレでしょうか?)」
そこからも徐々に深くまで潜っていき、海底が見えてきたと思ったら、何やらソフィアさんが言っていたと思しき黒色の石碑のようなものが見えてきました。
それは大体全長三メートルくらいの大きさをしているようで、真っ黒な見た目の石らしきものに東にあった遺跡や西の畑の樹皮と同様に、封じられた存在についての情報らしきものが描かれていました。
しかもこちらにはその封じられた者の情報についても僅かにですが載っており、新たな情報を得ることが出来ました。
「(っと、詳しく考えるのは後にして、そろそろ上に戻りましょうか)」
少しだけ息苦しくなってきてますし、まずは戻ってから情報の整理をしますか。それにモンスターも特に湧いてきたりはしないようなので、確認だけで済んだのは楽でよかったですね。
「…ふぅ、戻ってきましたね」
そして海底付近から海面まで戻ってきて、地上にも移動してから私はまず【生活魔法】の〈洗浄〉で身体の余分な水分をなくして綺麗にします。
「とりあえず情報の確保はこれで済みましたし、時間は早いですがもう戻っておきますか」
今の時刻はまだ三時くらいですし狩りをしてても良いかもしれませんけど、私はそれはやめて料理の仕込みをしておこうかと思います。
とりあえず調味料セットに複数のスパイスがついていましたし、それを使ってカレーでも作ってみましょうかね。
そんなことを考えつつも私は再びセレネを呼び出し、さらに海岸から続いていた草原を超えて森の中を歩いていましたが、私のケモ耳が何やら声のようなものを聞き取りました。
声からして人ではなさそうではありますが、一応そちらに向かってみます。もしかしたらファンタジアさんが言っていた幻獣が他のモンスターに襲われているのかもしれませんし、何かあってからでは遅いですしね。
「セレネ、少し走るので気をつけてくださいね」
「キュッ!」
そう決めた私はセレネに一度声をかけた後、すぐさま音のする方へと森の中を駆け抜けていきます。
その道中では獣や虫などのモンスターたちと遭遇をしましたが、いちいち相手をしていては手間取ってしまうので手元に出した双銃で自身に〈第一の時〉を撃ち、加速した動きでモンスターたちを無視しつつ移動をしていきます。
ちなみにセレネは私の言葉を聞いてしっかりと首元に巻き付いているので、結構激しく動いていますが余裕そうなので、心配はしなくても良さそうです。
「っ、〈第三の時〉!」
「ギガッ!?」
そして加速した動きのおかげもあってか、初めに音が聞こえた位置からすぐに音の発信源に着きましたが、そこでは今まさに獣型の邪悪の断片が幻獣らしきユニコーンに襲いかかるところだったので、私はそれを把握した瞬間に攻撃系の武技を放ち、モンスターをポリゴンへと変えました。
「ふぅ、なんとか間に合ったみたいですね」
もし〈第一の時〉を使っていなかったら間に合わなかったかもしれませんが、ひとまずはギリギリではありましたがなんとか助かるのに間に合ったのでよかったです。
「大丈夫ですか?」
「キュッ!」
「…ブルッ」
私はモンスターに襲われていた真っ白な毛並みをしたユニコーンらしき幻獣に優しく声をかけつつ近づき、その状態を確認をしてみます。
すると、どうやら木々を走った時に出来たと思しき軽い傷があるくらいで、特に大きめの怪我は負っていないようでした。
「…これくらいなら大丈夫そうですね」
ユニコーンであるこの子は私を少しだけ警戒をしていますが、首元にセレネがいるのを把握しているからか危害を与えてくる存在ではないと感じているようで、暴れたりするとはないのですぐに確認は済みました。
「特に怪我はないようですし、これなら心配なさそうです」
「キュゥ!」
「…ブルゥ」
「気をつけるんですよー」
この子は意外と賢いようでもう危なくないのはわかっているらしく、そのまま私から離れて森の中を駆け抜けていきました。
あの子もセレネと同じ幻獣ではあるとは思いますが、ファンタジアさんの言っていた通り今みたいにイベントエリアに出現しているようですね。
ですが、邪悪の断片に襲われたりもするみたいですし、やはり邪悪の断片は見かけ次第倒すのが一番ですね。
「…よし、では戻りますか」
「キュッ!」
その後は特に何かが起きることもなく、森を抜けて最初の広場に戻ってきた私とセレネでしたが、まだ時刻は早いので誰も戻ってはきていませんでした。
「では、早速カレーを作っていきますか!」
「キュッ?」
私はそう決め、インベントリに仕舞っていた調理セットの大鍋を取り出してカレーを作る工程を始めていきます。セレネはカレーを知らないようで不思議そうにしていましたが、きっとセレネも気に入りますよ!
それと今から作るのは無水カレーで、材料はトマトににんじん、たまねぎに鶏肉などです。
カレールーの代わりは調味料セットにたくさんついているスパイスで作るので、ちょっとだけ腕前には自信はないですが、出来る限り美味しく出来るように作っていきます…!
「あ、美味しそうな匂いがする!」
「本当なのです!」
「匂いからして、カレーかしら?」
「お腹が空く匂いね」
「ん、ソフィアさんたちですか。そうです、今日はスパイスからカレーを作ってみたのですよ!」
あれからじっくりコトコトとカレーを煮込んでいた私ですが、皆さんが帰ってくる前には出来上がっていたのです。
出来上がったカレーが入っている大鍋はそのまま寝かせてもいましたが、チョロっとセレネと味見をした限りでは、少しだけ辛くはありますがいい感じに出来上がっているとは思います。
ちなみにセレネも味見として少しだけ食べましたが、初めて食べたのもあるのかカレーの味がとても気に入っていたようでした。
「レアさん、スパイスから作ったのです!?」
「そうなんですよ。まあ味に関しては皆さんの口に合うかは分かりませんが…」
「それでも、こんなキャンプみたいなエリアで食べれるのならそれだけで十分よ」
「そうね、それにレアのことだし不味くはないでしょ」
「そうだね!レアちゃんの料理はどれも美味しいし!」
私がこぼした不安そうな言葉に、アリスさんたちはそのように言葉を返してきました。
確かにリンさんたちが口にしてた通り、味見した限りでは不味くはないので大丈夫だとは思いますが、それでも心配になってしまうのですよね。
「カレーの匂いがするっ!」
「匂いだけでお腹が空くなぁ…!」
そしてアリスさんたちとそんな言葉を交わしていると、そのような声と共にルミナリアとマキさんもちょうど帰ってきました。
「ルミナリア、マキさん、おかえりなさい!今日の夜はすでにわかっている通りカレーですよ!」
「こんなイベントエリアでカレーが食べられるなんて、いいねぇ!」
私の声を聞いたルミナリアは、ワクワクとした気持ちを隠さずにすぐさま私たちの元へとテテテッと走って近づいてきます。マキさんはそれをみて少しだけ苦笑をしてますが、マキさん自身も楽しみではあるようで少しだけワクワクしていそうなのが感じ取れます。
んー、兄様たちはまだ来てませんが、先にご飯の用意をしてしまいましょうかね?まだ時刻は五時くらいなので兄様たちが帰ってくるのはもう少し後だとは思いますが、別に先に食べていても問題はないでしょう。
なら、ご飯の用意をしますか。今日の夜ご飯は今さっき作ったカレーと大量に作っておいたパンで食べましょう。お米の方が良いかもしれませんが、ここのエリアにはお米がなかったのでパンになります。
「んー!カレー美味しいね!」
「レアさん、とても美味しいのです!」
「ふふっ、ありがとうございます」
そうしてすぐに用意した、夜ご飯であるカレーとパンを食べたソフィアさんとアリスさんがそんな感想を言ってきたので、私は少しだけホッとしました。
スパイスから作ったのであまり自信はなかったですが、この様子だとうまく出来ているようでよかったです…!
そこからも私たちは兄様たちが帰ってくるのを待ちつつカレーを食べ進めていると、ふと私のスキルに反応が現れました。
私は一度食べていた手を止めてそちらに視線を向けると、その視線の先にはここに戻ってくる前に助けたユニコーンがおり、カレーの匂いに釣られでもしたのか、トコトコと私の元へと歩いてきます。
しかもそんなユニコーンの背後には、幻獣らしき狐や小鳥、犬が着いてきていました。
「…食べますか?」
「…ブルッ」
ジッと見つめてくるその視線に負け、私は木のお皿にカレーを盛ってそのユニコーンたちの前に出してみると、やはりカレーを食べたかったようで幻獣の皆でパクパク食べていきます。
うーん、やっぱりこうして見るとこの子たちも可愛いですね…!カレーを食べていたセレネも十分可愛いですが、それはそれ、これはこれ、です!
「わっ…どうしたのです?」
「あら、私のところにくるのね?」
「うぉ、ベロベロ舐めないで?」
「わー、可愛いね!」
カレーを食べ終わった幻獣たちはその後はそれぞれ好きなように動き出したので、私はそれを尻目にまだたくさん残っているカレーを一度インベントリに仕舞った後、【生活魔法】の〈洗浄〉で綺麗にします。
幻獣たちは、ユニコーンがアリスさんに、青色の小鳥がネーヴェさんに、灰色の犬がソフィアさんへ。
そして最後の一匹である黄金色の狐がルミナリアの元へ向かっています。
様子を見る感じ、幻獣たちもそれぞれの人たちを気に入っているようで軽く甘えている様子なのがわかりますね。
「戻ってきたな」
「ふー、疲れたー!」
そんな幻獣たちをお茶を飲みつつも微笑ましそうに眺めていると、広場にそのような声が響きます。
声の主に視線を向けると、そこには兄様たちが戻ってきているところでした。
「兄様、それに皆さんもおかえりなさいです!」
「ああ、ただいま、レア」
「なんだかお疲れの様子ですね?」
私の口にした通り、兄様たちは何やら強敵とでも戦ってきたのか少しだけ疲弊している様子であり、装備についても前に見た時よりも傷がついているのがわかります。
「実は、北の山にある洞窟の奥にレアが最初に見つけてきたのと同じであろう石碑のようなものがあり、そこで出現したモンスターの相手をしてたんだ」
なるほど、兄様たちの向かった北の山にもモンスターが出てきたのですね。だとしても、兄様たちがそこまで疲れているということは、それだけ強力な敵だったのでしょうかね?




