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105話 無人島サバイバル3

「ご馳走様でした!」

「お粗末様でした」


 そうしてたわいない会話を続けつつも食べ進めますが、料理はステーキと魚の塩焼きだけだったのですぐに食べ終え、皆さんから感謝の気持ちを伝えられたので少しだけ恥ずかしくて感じつつも、私は言葉を返しました。


 それとこの間ですでに時刻は十二時になっており、サンサンとした太陽による日差しが私たちに向けて差し込んでいます。


「それじゃあ、俺たちはこのまま北エリアの山でも攻略してくるな」

「山ですか?」

「ああ、ちょうどここから北に結構な距離を移動すると、かなりの大きさを誇る山があるんだ」


 ついでに兄様が教えてくれた情報によると、私たちのいる場所は南で兄様たちは北東のようでしたが、北にはまた他のプレイヤーたちの拠点があるわけではなく山になっているみたいです。


 ということは、ちょうどここから北西である西の方にもプレイヤーたちの拠点がありそうですね?私の考えが正しいのなら、そこにはクオンたちが居そうに感じます。まあ今すぐにそこに向かうわけではないですし、記憶の隅に置いておくくらいで良さそうですが。


 っと、それはいいとして、兄様たちはそんな北の山に行くみたいですし、軽い軽食代わりとして私が採取していた安全な果物や木の実を分けておきますか。


 そして兄様たちのマップも私たちと共有をしてもらい、兄様は私から果物や木の実を受け取り次第北の山を目指して行ってしまいました。


「ゼロさんたちは行ったけど、リンはどうするの?」

「そうね……私もここを拠点にさせてもらうし、この間に私も狩りでもしつつマップを調べていくわ」

「了解、なら私も着いて行ってもいい?」

「別に私は構わないけど、あちらの三人はいいのかしら?」


 そう言ってチラリと私たちの方を見つめてくるリンさんですが、私たちは特に頼みたいこともやらないといけないこともないですし、大丈夫ですよ、とリンさんへと伝えます。


 ちなみに、リンさんはネーヴェさんと同じくらいの身長160cm前半で、茶髪に赤目をした女性となっています。見える限り装備は軽装のようですし、軽めの武器を扱うのでしょうね。


 それと食事中の時に互いに自己紹介をしましたが、性格もさっぱりとしていて親しみやすいので、リンさんとも仲良くなれるとよいですね!


「…じゃあ、ちょっとソフィアを借りるわね?」

「わかりました、ではまた夜にでも会いましょう!」

「いってらっしゃいです、ソフィアさん!」


 私とアリスさんの声を聞き、それならと西方面へと行く二人を見送った後、私たちは話し合います。


「では、私はまた東の森の散策でもしてこようと思いますね」

「私は六人もここに増えたので、今のコテージでは狭いので新たに建てようと思います!」

「なら、私も特にやりたいこともないし、南の草原で肉の確保でもしてくるわね」

「わかりました!なら、また夜前に戻ってくるので、また!」


 私たちもすぐにやることを決め、早速行動に移ります。昨日散策した森は北東なので、今日は東方面を重点的に散策していきます。


 それと、森の中には午前中にも見た通り色々なモンスターがいるようで、意外と警戒をしていないとすぐに見つかって襲いかかってきてしまいますね。


 出会ったモンスターは狼や蛇、熊と蜘蛛に鹿、狐など、実に多種多様なモンスターたちがいます。


 ですが、それらのモンスターたちの落とす素材は蜘蛛の糸や鹿の肉、熊の肉以外は特に目立って使いそうなものはないので、スキルのレベル上げ以外にはあまりメリットがありませんが、まあそれはいいですね。


 それに改めてモンスターなどを見るとわかりましたが、この森にいるモンスターたちはいつものゲーム世界の森とは違ってかなり辺りを警戒しているようで、なんとなく違和感を感じました。


 生態系の一番上に立つはずである大きめの熊まで辺りを警戒しつつ歩いていたので、それを見て変な感じがしたのですよね。


「うーん、何かこのイベントエリアである無人島には何かがあるのでしょうか?」


 そんなモンスターたちを見て不思議に思いつつも、道中で見かけた果物や木の実などを採取しながら森の中を散策し続けること数十分。ふと何やら私の耳へ水の音が聞こえてきました。


 私はすぐさまその音の発信源へと向かい、聞こえた位置からある程度の距離を周りを警戒しつつも歩いていると、それはすぐに見えてきました。


 聞こえていた水の音の正体はどうやら湖のようで、その湖はかなりの大きさを誇っているようで淵を一周するだけでもかなりの時間がかかりそうな程です。


「東の森にはこんな大きな湖があったのですね…」


 それに湖も結構な大きさですし、かなり綺麗な湖でもあるので見ているだけでもなかなか癒されますね!


「…ん?」


 そんな湖を眺めていた私ですが、何やら湖の中から何かが光ったように感じました。湖の水は透き通る程とはいえ、今いる湖の淵からはよくわかりませんが……もしかして何かがあるのでしよか?


「…よし、ちょっと潜ってみますか」


 私の【水泳】スキルのレベルはそこまで高くはありませんが、気になったものは仕方ないので私は変える装備がないのでワンピースのまま、その湖の中へと飛び込みます。


 湖の中は、外から見ていた通りかなり透き通るかのように綺麗な水質になっており、水で見えにくいということもなくはっきりと確認することが出来ます。


 それにこの湖には色鮮やかな魚も多数生息しているようで、かなり神秘的で美しく感じれます。


「(あ、あれですかね?)」


 グルリと水中を観察しつつも先程光ったと思しき湖の深い場所まで泳いで行くと、そこにはなんらかの金属製らしき通路を発見しました。


 どうやら、光ったように見えたのはその通路の金属が光を反射したからのようですね。


 とりあえず一度息継ぎをしてから、この通路の中を調べていきますか。




「(水の中ですが、中は思ったよりも綺麗なのですね?)」


 そうして再び湖の中へと潜っていき、すぐさま通路まで向かい中を調べつつ進んでいきます。


 私が今の口にした通り、中は水による劣化や汚れも見当たらず結構綺麗な状態を保っており、見た目も遺跡のようにも見えますね。


「(あ、水がなくなってきましたね?)」


 そんな通路をドンドン進んでいると、その通路が徐々に上に行っているのか途中で水がなくなっていき、空気のある場所まで着きました。


 そのまま水中から出て、未だに先へと続く通路を改めて確認すると、そこは特に薄暗くもなく適度に光を確保されているようでかなり見やすいです。さらには見た目も水中と同じで劣化を一切しておらず、埃一つ落ちていない綺麗な通路となっています。


「うーん、ここはなんなのでしょうかね?」


 私はそんな通路を確認しつつも奥へと進んでいきますが、およそ数十分近くでしょうか?そのくらいの長い時間をかけて歩いていると、やっと最深部に着いたのか不自然な金属製の扉を発見しました。


 なんだか怪しげな雰囲気をしていますが、ここで立ち止まっていても意味がないですし、扉を開けてみますか。


 そう思考して金属製の扉を押して開けますが、扉は金属製にも関わらずそこまで重くはないようで、私の力だけでも簡単に開ける方が出来ました。


 そして扉を開けて中に入ると、そこは結構広々とした空間となっており、照明などがないのに通路と同様に明るくなっています。


「ここは……なんなのでしょうか…?」


 私はその空間に足を踏み入れてそのまま空間内を調べようとしたその瞬間、この空間の中心付近から黒い瘴気のようなものが溢れ、すぐさまその瘴気が中心に集まることで前にも見たことのある黒色をした獣型のモンスターが現れました。


 ➖➖➖➖➖

 邪悪なる欠片 ランク E

 過去に現れていた邪悪なる欠片の一部。

 その力はあらゆるものを破壊し、生命を喰らう。

 状態:正常

 ➖➖➖➖➖


 鑑定結果からもわかると通り、このモンスターはやはり前にクロノスさんと出会った時に戦ったのと同じような個体のようです。


 しかし、今回のモンスターはその時よりも大きさも二回りくらい小さく、威圧感もそこまで感じはしないので強さ的には低めなのかもしれません。


 まあ油断はしませんし警戒もしておきますが、それても負けることはないようには感じますけどね。


「グォオオ!」


 そう私が出てきたモンスターの観察をしていると、戦闘の開始としてそのモンスターが最初に身体中に生えている触手をこちら目掛けて振り下ろしてきました。


「そんなのには当たりませんよ!」


 ですが、私はそれを横に僅かにズレることで避け、即座にインベントリから取り出した双銃をモンスターに向けて構え、弾丸を乱射します。


 それらの弾丸は、前に見た個体と同様にモンスターに無数に存在する瞳をしっかりと撃ち抜き、しっかりとダメージを与えます。


 前と同じでキチンとダメージも入ってますし、怪しげな敵とはいえいい感じです!


「グォオ!」


 しかしモンスターはそんなダメージを無視するかの如く身体中の触手を私に向けて振り回してきますが、それを見た私は自身に〈第一の時(アイン)〉を撃ち込むことで動きを加速させ、そのままモンスターに向けて駆け出します。


 飛んでくる触手による無数の攻撃は、接近しながらもゆらゆらとした不規則な動きで回避しつつ、細かい足捌きでフェイントを混ぜることによってすべて紙一重で回避していきます。


 危なげもなく回避を出来ているので、この調子なら問題なさそうですかね?


「〈第二の時(ツヴァイ)〉!からの〈第七の時(ズィーベン)〉!」


 そしてモンスターに向けて接近しつつ動きを遅くする武技を放ち、続けて分身を生み出す武技を自身に撃ち込むことで生み出した分身と共に私はモンスターのすぐそばまで一気に踏み込み、至近距離から弱点であろう瞳に向けて連続で弾丸を撃ち込みます。


「グォオ!?」

「やはり、瞳が弱点ですね!」


 流石のモンスターも、次々と瞳を撃ち抜かれることでたまらずといった様子で悲鳴のようなものをあげつつ触手を振り回します。


 が、もちろんそれに当たる私ではないので、それを易々と回避しつつドンドン瞳を撃ち抜いていきます。


「グルッ…ガァアアアッ!!」

「…っ、新技ですか…!」


 そして瞳を撃ち抜かれているタイミングでモンスターがそう雄叫びを上げたと思ったら、無数に生えている瞳から私と分身に向けて突如黒色の光線のようなものを飛ばしてきました。


 私はそれに驚いてほんの僅かに回避が遅れましたが、後方に大きく跳ぶことで軽く頬を掠めるだけでなんとか回避に成功します。ですが、その光線の影響なのか私に呪いの状態異常がかかってしまいました。


 油断はしてませんでしたが、突然のことだったので回避しきることが出来ませんでした…!


「〈第十の時(ツェーン)〉で治してもいいですが……呪いの効果はMPが減少していくだけですし、他にも使う場面があるかもしれないのでやめておきますか」


 私は状態を確認してそう呟きます。それに〈第十の時(ツェーン)〉を使ってもMPは結構減ってしまいますし、短くなっているとはいえリキャストタイムもあるので何かしらがあった場合に使うかもしれませんしね。


「…なら、短期決戦でいきますっ!」


 私はいつのまにか消えていた分身を再び出すために自身に〈第七の時(ズィーベン)〉を撃ち込み、続けて〈第一の時(アイン)〉も分身と共に付与することで準備をすぐさま仕上げ、離れている位置から両手の双銃で弾丸を乱視しつつ、一気に踏み込みます。


「グォア!」

「それはもう見ましたよ!」


 それを見たモンスターは再び身体中の瞳から光線を放ってきますが、すでにそれは見ているので当然のように私は回避して反撃として弾丸を瞳に向けて放ち、モンスターに生えている瞳を撃ち抜きます。


 そうしてそこからも攻防を続け、次々とモンスターの瞳を撃ち抜いていき、全ての瞳を撃ち抜いたタイミングで前の個体と同じように頭の中心付近が縦に裂けて他の瞳よりも一回りくらい大きめの瞳が現れました。


「前と同じ感じですか。なら、あの瞳を撃ち抜けば良さそうですね…!」


 この段階ですでにモンスターのHPは二割くらいになっているので、あれを撃ち抜けばまず間違いなく倒すことを出来るでしょう。また光線を放ってくるかもなので、油断はしませんが!


 私はそれを確認した瞬間に即座に分身を生み出し、その分身と共に〈第一の時(アイン)〉で加速した状態を維持しつつモンスターの瞳に向けて弾丸を連続で撃ち込みますが、モンスターは無数に生えている触手でそれらを弾き、さらに私と分身に向けても攻撃を繰り出してきます。


「やはり普通に戦うだけでは、少しだけジリ貧ですね…!なら、〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉!」


 私は即座に切り札の一つである動きを超加速させる武技を分身と共に自身へと撃ち込み、〈第一の時(アイン)〉と組み合わさった私の使える最高速度で一気に空間内を駆け抜け、その状態から最後の瞳に向けて弾丸を撃ち、それは素早い動きをしていたせいで反応が出来なかったようで、残っていた最後の瞳を見事に撃ち抜きました。


 私と分身の放ったその攻撃をもって少しだけ残っていたモンスターのHPは全て削れ、ポリゴンとなっていきました。


「ギ、ガァア…」


 モンスターはHPを全て削られてポリゴンとなっていく最中にも関わらず、まだ足掻くかのようにこちらへ触手を伸ばしてきますが、私はそれを当然の如く回避します。


 触手を回避されたモンスターは未だに抵抗をしようともがきますが、すでに全身はポリゴンとなっているので、抗うこともできずに消えていきました。


「…よし、これで倒し終わりましたね」


 私はほんの少しだけ警戒をしてましたが、スキルなどにも特に反応がないのをキチンと確認した後、ゆっくりと構えていた武器を下げて戦闘の姿勢を解きます。


 そしてその戦闘態勢を解いた瞬間、この空間内の奥の方から当然床に壁、天井を徐々に白色の光のようなものが波のように侵食するかのように走っていき、先程までの灰色で単純な景色が綺麗な大理石のような真っ白さに変わっていきます。


「これは…」


 しかも、変わっていくこの空間の壁一面には何やら壁画のようなものが描かれていい、真っ白になる前のシンプルな壁から変化することでなんらかの情報を伝えるかのように、私の視界へと訴えかけてきます。


 描かれているその壁画とそこに書かれている文字などを全て見た限り、どうやらこのイベントエリア?にとある存在を封じ込めているようで、この無人島の東西南北にそれについての情報が隠されている、といった感じの壁画でした。


 東西南北ということは、東は今の私がいる湖の中の遺跡のような場所でしょうし、他の方角は多分北が兄様の言っていた山だとは思いますが、西と南はどこにあるのでしょうか?


 それに、前にクロノスさんと出会った時の壁画による情報と出てきたモンスターについてなどは少しだけ似ていますが、今回のこれもそれに関係するのですかね…


 まあ詳しいことはわからないのでそれは一旦置いといて、先程空間が変わっていくのと同時に出現していたらしい宝箱の確認ですね!


 宝箱はこの空間と似た感じの白色を基調とし、そこにアクセントとして金色の装飾が飾られた見た目をしており、なかなか期待が高まります!


「では、オープン!」


 私はワクワクを隠しもせずにその宝箱を開けますが、中は金銀財宝が入っているというわけでもなく、一冊の本と銀色をした髪飾りの二つのみが入っていました。


「うーん、別に宝石とかが欲しいというわけではないですが、宝箱の中身としては少しだけ残念に見えてしまいますね?」


 まあ私的には本は嬉しいのでいいですが、一番気になるのはこの髪飾りです。この髪飾りはバレッタのような見た目をしており、シンプルですが綺麗で結構オシャレでいい感じには見えますね。


 ➖➖➖➖➖

 シルバー・オブ・バレッタ ランク C レア度 稀少(レア)

 DEF+10

 MND+10

 耐久度 100%


 ・共有強化 自身の操る者の性能を自身と共有して強くする。

 

 謎の素材で作られた銀色の髪飾り。その髪飾りにはとある思いが込められている。

 ➖➖➖➖➖


 鑑定結果ではそう出ました。が、私は基本的に頭につける装備はローゼがありますし、スキルも私には特に使えるものでもないので、これは誰かに渡したりでもしましょうか?


「っと、確認はこのくらいでいいですね。今の時刻もすでに四時近くになっていますし、そろそろコテージまで戻りましょう」


 私はここでやらなくてはいけないことを全て終わらせたのを確認した後、すぐさま踵を返してくるこの空間から出ていき、そのまま先程も通った通路を戻っていきます。

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