103話 無人島サバイバル1
そうして最後に確認することは、EXスキルについてです。
私が獲得しているのは【心力解放】と【???の兆し】という名前のスキルで、【心力解放】はいつのまにか手に入れており、何やら戦闘中に使うスキルのようなので一度だけ確認のために使用はしていましたが、それで効果は把握してはいますけど、これは明らかにぶっ壊れのように感じました。
まあ、詳しい説明については使用した時にでも。
そして特に謎なのが【???の兆し】というスキルで、こちらも【心力解放】と同様に気づいたら獲得していました。
こちらは【心力解放】と違って説明もなく使用することも出来ないせいで詳しくは把握することが出来ていませんが、まあ悪いことは起きていないので多分大丈夫でしょう。
これで私のステータスの確認は済みました。なら、後はイベントの開始を待つだけですね。
『ただいまより、公式イベント『無人島サバイバル』を開始いたします。このイベントは七日間の間、このイベント限定のエリアでサバイバルをして生き抜いてもらうという内容です。それではご健闘をお祈りしております』
そこからアリスさんとソフィアさん、ネーヴェさんとたわいない会話をして始まるのを待っていると、突如広場内にシステムアナウンスの声が響き、そのタイミングで広場内でイベントの開始を待っていたと思しき無数のプレイヤーたちが転移の光に包まれて消えていき、それに続くように私たちに対しても光が集まることでイベントエリアへの転移が起こります。
よし、このイベントに向けて準備もしっかりとしてきましたし、張り切って行くとしましょうか!
転移の光が収まって視界が戻ると、そこはすでにイベントエリアでした。
私たちの視界に映るのは、どこまでも広がるかのような木々が無数に生えている森となっており、私たちがいる場所はそんな森の中でもかなり開けている場所のようで、そこには私たち以外にもたくさんのプレイヤーが存在しています。
「…では、まずはどうしましょうか?」
「サバイバルだし、まずは拠点制作と食糧集めじゃない?」
「それと持ち込めるアイテムも一つだけですし、皆さんは何を持ち込んだのです?」
私の発した言葉にソフィアさんとアリスさんがそう続けて声をあげたので、私たちはまず自身が持ち込んだらアイテムを教え合います。
「私は調理セットを持ってきました」
「私は魔除けのお守りだね!」
「私は木工セットにしたのです!」
「…貴方たち、結構しっかりとしたアイテムを持ってきたのね?まあ私もこのために用意した大きめのテントだけど」
ふむふむ、ネーヴェさんのいう通り、皆さんもしっかりと使えそうなアイテムを持ち込んだみたいですね。
私とアリスさん、ネーヴェさんはどういうものかわかりやすいアイテムではありますが、ソフィアさんの魔除けのお守りとはなんなのでしょうか?
「ソフィアさん、魔除けのお守りとはなんですか?」
「これは前に掲示板に載っていたアイテムで、近づいてくる魔物を追い払う力を持ったお守りなんだ!まあ遥かに強い敵には効果ないみたいだけどね」
なるほど、魔物避けの効果を持つアイテムでしたか。なら、今回のイベントではかなり相性がいい感じはしますし、そのアイテムを持ってきてくれたのはありがたいですね。
とりあえず、私たちの持ち込んだアイテムはこのような物のようですし、確認も済んだので早速行動と行きましょうか。
周りにいた他のプレイヤーたちもすでに動いてもいますしね。
「なら、私は【料理】スキルの〈食材の目〉で食べられる食材を把握出来ますし、食材の確保に動きますね」
「了解!じゃあ私はイベントエリアにもいるであろう獣系のモンスターを狩ってお肉でも集めてこようかな」
「それなら、私は【番匠】スキルで周りにある木から家でも作ってみるのです!」
【番匠】スキルは【木工】スキルの進化先ですが、木から家を作るなんてそんな簡単に作れる物なのでしょうか?あ、でもアリスさんは無数の人形を操れますし、それを使えばかなり早いスピードで出来上がるのでしょうかね?
「…アリスが家を作るなら、私はそっちの手伝いに回ろうかしら?」
「あ、お願いするのです!」
ネーヴェさんもそんなアリスさんの手伝いに向かうようですし、そちらは任せても大丈夫そうですね。
それじゃあ、私とソフィアさんは食料の確保に周りますし、一度ここで分かれますか
「では、私たちは行ってきますね!」
「レアさん、ソフィアさん、そっちは任せるのです!」
「じゃあまた後で!」
そう言って私は今いる広場から周りに生えている森の中に入っていき、そこから生えている植物や木の実などを〈食材の目〉のアーツでしっかりと判別して確保していきます。
というか、サンプルとして数個だけ確保した食材の中には、猛毒を持つ桃や麻痺効果のあるベリー、混乱効果を持つ木の実に衝撃を与えると軽い爆発を起こすドングリなど、実に危険な物が結構な数ありました。
他にも危険な物もありましたが、それでも〈食材の目〉のおかげで見分けることが出来ましたし、安全な野菜や木の実などはしっかりと確保することが出来ましたけど。
「それにしても、食べれそうな見た目をした食材の中に危険なものを仕込むなんて、本当に殺意が高いですね…」
私が数個確保した危険な食材は、見た目は瑞々しくていい匂いもするので美味しそうに感じますが、その実態は毒物ですしね。
きっとこれらのせいで死んでしまう人も出そうですね…
「まあそれはさておき、とりあえずはこのくらいあれば大丈夫そうですかね?」
森の中を散策すること数時間で、すでに結構な数の食料は集め終わりましたし、いい頃合いなのでアリスさんたちのいた広場へとそろそろ戻りますか。
あ、それと散策したおかげで出来たマップから見るに、このイベントエリアはかなりの広さを誇っているようで、私の歩いていた森だけでも結構な広さがあるみたいです。
それに、私たちが始めにいた広場にはたくさんのプレイヤーがいましたが、私のフレンドの人とかは特にいなかったので、おそらくはこの広いイベントエリア内に分かれているとも感じましたね。
なので、散策もし続ければここでもクオンや兄様たちとも出会えることでしょう。
そんなことを考えつつも私はところどころで見つけた食材を確保しつつ森の中を歩いていき、森に入った時と同様に長い時間をかけた後に広場へと戻ってきました。
「…なんか、明らかに目立つ物がありますね」
広場に戻ってきてすぐに私の目についたのは、明らかに無人島といえるこのエリアには似つかわしくない、とても立派なコテージようなものでした。
「あ、レアさん!戻ってきたのですね!」
私がそのコテージを眺めていると、そのコテージの入り口からちょうどアリスさんとネーヴェさんが出てきて、そのように私に向けて声をかけてきました。
「…もしかして、これがアリスさんとネーヴェさんの作った家、ですか?」
「なのです!どうです、立派ですよね!」
「た、確かにすごく立派ですけど、よくこんなすごいものを作れましたね…?」
「…まあレアの反応もわかるわ。私だって数時間でこんなものを作れるとは思わなかったしね」
私の驚いた表情を見て、アリスさんはニコニコと、ネーヴェさんは驚き疲れたのか軽くため息をついています。
「ふふん、私の人形さんたちを使えばこのくらいは簡単ですよ!」
「…あれは見てるこっちもやばく感じたわね…」
「な、何があったのでしょうか…?」
アリスさんたちの言葉から察するに、なんだかとんでもないことをしていたように感じますが、なんとなく聞かない方が良さげに思うので、それについては一旦置いておくとしますか。
「ではレアさん、こんなところで立ち話もしてないで早速中に入りませんか?」
「あ、それもそうですね、じゃあお邪魔させてもらいますね?」
「どうぞ!」
私はアリスさんの案内に従ってそのコテージ内に足を踏み入れますが、コテージの内装は外観通り立派な木製の作りのようで、結構な広さを持つ空間となっていました。
しかも最初に見た時にもわかりましたが、このコテージには二階もあるみたいで、二階にはそれぞれの個室があるみたいです。
本当に数時間でここまでの出来の建物を作るなんて、一体どうやったのでしょうかね…?
「それで、レアさん。食材はどんな感じだったのです?」
「それについては、結構いい感じに取ってくることが出来たので安心してください!」
結構な数があった危険な食材意外にも、食べても大丈夫なものもキチンと採取してきましたし、多分四人だけならしばらくは大丈夫でしょう。
「それならよかったわ。なら、後はソフィアを待つだけね」
そうネーヴェさんが声に出したタイミングで、外から何やら驚いたかのような声が聞こえてきました。
私たちはコテージから一度出て声の主を確認すると、そこには目をまるくして驚いているソフィアさんがいました。
「ソフィアさんも戻ってきたのですね」
「あ、レアちゃん!今来たばかりなんだけど、もしかしてそれがアリスちゃんとネーヴェが作った家!?」
「そうみたいですよ」
ソフィアさんも私と同様に驚いてはいましたが、それも無理はありません。こんな立派な家を数時間で作れていますが、普通はありえませんからね。
私たちはソフィアさんも一緒にコテージの中に入り、そこでソフィアさんの確保してきたお肉の成果を聞きます
「…中も立派なんだねぇ……まあ出来ているなら別にいいか。それよりも、お肉もしっかりと確保してきたよ!」
そう言ってソフィアさんがインベントリから取り出して見せてくれたお肉は、どうやら鶏や兎、牛に豚と結構種類はあるみたいです。
「あ、それとお肉の確保の時にあちこち寄ってきたんだけど、このイベントエリアの一番端は海になっているみたいで、魚も取れたよ!」
続けてそう言ったと思ったら、ソフィアさんはお肉だけではなく魚もインベントリから取り出してきました。
見せてくれた魚の種類はアジ、イワシ、サバなどのようで、塩焼きにでもしたら美味しそうと感じますね。
「結構取ってきたのですね」
「まあ時間があったからね!」
「なら、すでに暗くなってきてますし、満腹度回復も兼ねて早速これらを調理しますか」
「お願いしてもいいかな?私、料理は苦手で…」
「大丈夫ですよ、任せてください。このくらいはいつもしてますしね」
私は一度コテージから外に出て、料理が得意ではないらしい三人の代わりにインベントリから調理セットを出し、先程ソフィアさんから受け取ったお肉を使った料理を始めます。
イベントが始まったばかりの一日目ですが食材はたくさんありますし、験担ぎとして今日はこれらを使った料理である肉と野菜の炒めものにでもしましょうか。
ソフィアさんが取ってきてくれた魚の塩焼きもしてみたいですし、明日には海にいって塩の確保を済ませておきたいですね。
そんな思考をしつつも調理をテキパキと進め、特に時間のかかる工程もなかったおかげですぐに料理が完成しました。
「…よし、出来ましたね」
「もう出来たの?」
「あ、ソフィアさん。はい、出来ましたよ。まあ塩とかがないので簡単に焼いたくらいですけどね」
「…そういえば、持ち込めるアイテムは一つだけだったから調味料はなかったわね?」
そうなのですよ。調理セットは私が持ってきているおかげで料理をすることは出来ますが、それでも調味料がないので至急確保する必要があります。
「なので素材の味しかしないかもしれませんが、そこは許してください」
「…別に怒ってはいないわよ。それに私たちでは作れないから逆に感謝させて欲しいくらいよ」
私に向けてネーヴェさんはそう言ってきたので、私は思わずネーヴェさんのことを驚いて見つめてしまいます。
別に嫌われているわけではないのはしっていましたが、こうして素直に感謝の気持ちを伝えられるのは初めてなので、少しだけ意外に感じてしまったのです。
「ふふ、ネーヴェったらツンデレなんだからぁ」
「…ふん」
茶化すようなソフィアさんの言葉に、図星なのかネーヴェさんは頬を赤く染めつつ私から視線を逸らします。
「まあとりあえず、料理は出来ましたし冷める前に食べませんか?」
「あ、そうだね!じゃあ早速食べようか!」
「あ、なら外にもテーブルを出しておくのです!」
作った料理を調理を開始する前にアリスさんが渡してくれて木製の皿に移し、その間にアリスさんはすぐさまインベントリから木製の取り出して地面の上に置きます。
そして私がそこに料理を置いたら、全ての工程は終わりです。
「では、いただきましょう!」
「ですね!いただきます!」
そう各々で声を出した後、私たちは早速皿に盛った肉と野菜や炒め物を食べ始めます。
うーん、別に不味くはないですが、塩などがないせいで素材の味だけで薄いですね。やはり塩だけでも確保に動くのが良さそうです。
「薄めの味だけど、これでも十分美味しいね!」
「私が作るよりは遥かに美味しいので、ドンドン食べれちゃうのです!」
「…私も料理くらいは出来るようになった方がいいかしら?」
「あ、それならまた明日から一緒に料理でもしてみますか?」
「…そうね、年下であるレアに頼み続けるのも悪いし、少しだけ経験をさせてもらってもいいかしら?」
「もちろん大丈夫ですよ!ではまた明日から時間がある時にでも一緒にしましょう!」
そうしてワイワイと楽しげに会話を続けながら料理を食べていた私たちですが、料理は肉と野菜の炒め物くらいしかないおかげですぐに食べ終わりました。
この世界なら食べた後の片付けもすぐに終わりますし、なかなか便利でいいですね!
「じゃあもう時間も遅いし、そろそろコテージで寝とこうか」
「そうですね、特に急がないといけないこともないですし、明日に向けて寝ておきましょう」
私たちはそう言葉を交わした後、アリスさんとネーヴェさんが作ってくれたコテージの二階へと向かい、それぞれの部屋に移動し、そこに置いてあったベッドの上に移動して就寝とします。おやすみなさい。
そして朝、イベント二日目です。今のイベントエリア内での時刻は腰元の時計を確認する限り六時のようですし、ゲーム世界とはいえ早速起きてストレッチを済ませますか。
「んー…っと、よし、では行動に移りますか」
とりあえず今日の朝ご飯は森の中で取ってきた果物系を食べるとして、今日の予定は昨日も行こうと考えていた海へと向かい、調味料である塩の確保をしてきましょう。
塩がないと作った料理も素材の味しかしませんし、レパートリーも少なくなってしまいますしね。
そんな思考をしつつもコテージにある自分の部屋から一階に降りますが、まだ三人はいないようで今このにいるのは私一人だけでした。
ですので、私は皆さんが降りてくる前までの間に昨日のうちに果物と一緒に採取していた茶の葉で簡潔に作ったお茶を、アリスさんがお皿と同様に作ってくれていたらしいコップに入れてちびちびと飲んで待ちます。
「…シンプルですが、意外といけますね」
味はシンプルに苦味と甘味が複雑に加わったような感じなので、苦いのが苦手な私でも意外と美味しく飲めています。
それに、現実世界ではお茶の木は山などの山岳地帯に生えているはずですが、このエリアでは森の中に自然と存在していました。
まあゲームでもありますし、ファンタジーな世界観なのでそこまで気にしなくても良いですね?




