表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/333

90話 配信視聴で楽しもう


 ある日の仕事終わり、アパートに帰ってきて配信を見ようとパソコンを立ち上げる。灰川は配信を見るのが好きであり、最近はシャイニングゲートやハッピーリレーのVtuberや配信者を中心に視聴していた。


 シャイニングゲートとハッピーリレーの配信者は既に全員を視聴者登録してあるし、暇な時や時間がある時は仕事のためにも見るようにしていた。



  今日は怪談配信!!    


  三ツ橋エリス 視聴者登録数 99万人


  同時視聴者数 11000人 


『それでさ、その場所は今も幽霊が出るって話なんだよねー』


コメント;マジか、怖いんだけど

コメント;良い怖さだった

コメント;俺の近所の土地もそんな噂あるな

コメント;都市伝説系か~


 エリスの怪談配信はかなり上達しており、それに伴って他の話の技術も上がってるようだった。 


 雑談配信やゲーム実況などにそれらは生かされ、状況や心境などを声色や話の内容で分かりやすく面白く伝えることに役立ってる。話を聞いた視聴者の脳裏には自然と風景や情景が浮かび、怖い話の時は冷えるような味わい、楽しい話の時は笑える状況を想起させる。


 これは『視られる、聴かれる』という事を生業とする者には重要な事だろう、元から高かったその資質をエリスは徐々に上げている。高校1年でこれだけ話せるというのは才能があるという事だ。


『まだまだこれからだよー、次の話に行くね! これは私たちみたいな配信者にまつわる話なんだけどねー』


コメント;配信者の怪談?面白そう

コメント;あんま聞かないジャンルだな~

コメント;これも新しい時代の怖い話か


 どうやらエリスが仕入れた怪談らしく、灰川は楽しく聞かせて貰うことにした。




  送られて来たDVD


 配信者グループに所属する女性の元にDVDが送られて来た、それを再生すると一人の男が殺風景な部屋の中で踊ってる動画が記録されていた。


「何これ? なんかウケルんですけど」


「ってかこの男の人は誰なの?」


 グループの女性仲間は動画を見て笑ってるが、DVDを送られて来た女性は震えていた。


「この部屋っ…私がこの前まで入ってた刑務所の部屋なの…」


「オメェ、ムショ入っとったんかい!!」


「お前の方が怖いわ!!」



 

『っていう話なんだけど、私すんごい笑っちゃったよー!』


コメント;有名な怖い話のパクリwww

コメント;刑務所の監房www

コメント;アホか!


 有名話の改造型ギャグ怪談だ、聴いた事あるなと思わせつつ重要な所が改造されてて笑い話にされてるお笑い怪談である。


「やるなぁ! 俺も配信で視聴者をこんな風に笑わせてみてぇな~」


 エリスの配信は今日も盛り上がってる、そろそろ視聴者登録も100万人に本格的に近づいており、100万人登録耐久配信なんかも考えてるそうだ。 

 

「おっ、ナツハも配信してるな~、見てみるかぁ」


 次の配信に移り、今度は自由鷹ナツハの配信を見る事にする。




  アザラシシティは至高のゲーム!


  自由鷹ナツハ 視聴者登録数 402万人


  同時視聴者数 120000人


『あっ! 双子のハイイロアザラシちゃんだ! あっちにはワモンアザラシの赤ちゃんが! みんなカワイイなぁ~~』


コメント;このゲーム、アザラシ多いな!

コメント;リアルだけど可愛い

コメント;コンセプトが狂ってるゲームだ

コメント;俺も買ったよナっちゃん!

コメント;誰得ゲーム?


 ナツハの配信はコメントが次々と流れて過ぎ去っていく、視聴者の数も10万人を超えててコメントの中には外国語も混じってるくらいだ。


 ナツハは配信ではかなり明るいキャラになり、それに釣られて視聴者も明るく元気な気分になれる配信が多い。ネガティブな発言などは殆ど無く、ゲームや配信を楽しみながら進めて行くスタイルが大人気を博してる。


『タテゴトアザラシちゃんがお腹叩いて威嚇してるよ~! 可愛い!大好きっ! あっ!バトルになっちゃった!』


コメント;バトルはトランプ勝負なんだ

コメント;シュールなゲームだなぁ

コメント;トランプ持ってる手もアザラシwww

コメント;色んな要素があるゲームだこと


『アザラシシティ流行んないかな~、他の配信者とかVtuberの人達にもやって欲しいな~、このゲーム流行れー!』


コメント;ナツハちゃんが壊れた!

コメント;このゲームはナっちゃんでも流行らせれるかどうか…

コメント;お前が流行らせるんだよ!

コメント;俺買うわ


『開発会社さん! アザラシシティ2作りましょうよ!? 今度はアザラシの種類も増やして欲しい! あとデート機能を強化して!』


コメント;2が出たら自由鷹ナツハのおかげだな

コメント;開発チームの人間だけど、明日にも2開発の話が上がるかもねー

コメント;このゲームに関わったアザラシ職人だけど、

     2があったらまた呼んで欲しい

コメント;開発者と職人が来てるじゃん!

     アザラシ職人が何かは知らんけど!



「ひえー、大盛り上がりだ。俺がやった時には誰も来なかったのになぁ」


 こんな変なゲームでも自由鷹ナツハがやれば大盛り上がりだ、試しにゲームのダウンロード販売のページを見ると、購入者数がうなぎ登りに上がってる。


 灰川がこのゲームを買った時は購入者数は23だったが、今は3万を越えそうな勢いだ。やはり一流のストリーマーやインフルエンサーの影響は凄いのだと思い知らされる。


「次はボルボル君の動画でも見てみるか」


 ハッピーリレーの動画投稿者のボルボルという灰川と少し仲の良い配信者の投稿動画を見る、内容はお勧めの商品の紹介のようだが企業案件とかではないようだ。




  俺の選ぶ最強面白マンガを紹介! 


  ボルボルチャンネル 視聴者登録数70000人


『こんにちわ~! 俺のファンもそうじゃない人も見てくれてありがとう!』


 当たり障りのない挨拶から動画が始まり、漫画作品をアレコレと紹介していく。ジャンルは女性受けしそうな作品が多いように見えるが、これは視聴者層に合わせた選び方なのだろう。


 顔もイケメンで性格も明るく話も流暢な配信者だが、以前は尖った下ネタなんかも言っており会社から注意を受けたそうだ。今は尖りを少なくするよう努めてるらしい。配信動画投稿者であり配信者で、流行に乗った内容の動画を出す事が得意なタイプの奴である。


 今は前よりは尖ったタイプではないため気軽に見れるし、動画の内容も当たり障りのないものだから安心感がある。しかしそれらは他の配信者や動画投稿者の影に埋もれやすいという弱点にもなり、彼は伸び悩んでる最中だ。


『やっぱアドバンスコミックは最高だし、ブレイクスナイパーも面白いよな!』


 面白い有名漫画や話題作漫画が紹介されていく、彼はアルバイトをしつつ配信者をやってるから、限られた時間の中で多くの漫画やアニメ、ドラマなどのサブカルチャー知識を詰め込んでるのだろう。


 話題作や有名作が分からないのでは視聴者に呆れられる事もあるし、彼の視聴者層はそういう人が多いようなのだ。だからこそ動画などで自分が好きな作品や知ってる作品をアピールして、自分への理解を深めてもらおうと動画を作ったのかもしれない。


 この動画はチャンネル登録者を増やすためというよりは、好きな漫画を紹介する事によって共感を持ってもらい、新たな視聴者に配信に来て貰うための導線の動画のようだ。


『という訳で俺の選んだ最高の漫画は以上! 皆も好きな漫画があったらコメント欄に書いてくれよな! またね!おつボルでしたー!』


 動画としては単に幾つかの漫画を紹介しただけだが、紹介した作品は子供向け作品や大人向け作品、女性向け作品と幅が広い内容だった。


 ファン層を広げたいと本人が語っており、その一環の動画なのだと思う。語られた漫画もファンが多い作品からマイナー作品まで色々だった。


 動画の出来も良くて見やすかったし、紹介された漫画を読んでみたいと思える内容になっていた。ボルボルは今もこの動画がバズれと思って過ごしてる事だろう、尖りに頼らないスタイルを目指して奮闘中だ。



「今度は小路の配信に行こうっと」


 次はシャイニングゲートの染谷川小路の配信に向かう、北川ミナミの配信に行こうと思ったのだが今は配信しておらず、目に入った小路の配信をクリックした。



【今日は】銀河鉄道の夜を朗読するよ~【宮沢小路】


 染谷川 小路 視聴者登録数251万人


 同時視聴者数 40000人


『みんなは銀河鉄道の夜って知ってる~? 私はすごく好きなんだ~』


コメント;宮沢賢治の代表作だね

コメント;著作権が切れてるから自由なんだよな

コメント;小学校の時に授業で読んだよー

コメント;自分は映画で見たな


 岩手県花巻市の生まれで学校教師にして農業研究者にして詩人で童話作家、更にはその他の顔も持つという異色の作家である。銀河鉄道の夜は著作権が切れており、自由に朗読などが出来る作品だ。


 彼の作品に影響を受けた漫画やアニメも多く、宮沢賢治自身へのファンも多くて宮沢賢治が登場人物として出てくる小説や漫画作品も多い。


『ジョバンニとかカムパネルラっていう名前とかも好きだな~、世界観も独特で大好きだよ~、みんなは好きかな~?』


コメント;世界観が独特だよね、俺も好き

コメント;月光〇例で出て来た時は泣きそうになった

コメント;ザネリっていう名前も好き、性格はアレだけど…

コメント;注文の多い料理店が好きかな

コメント;宮沢賢治の生涯が好きなんだよなぁ


『むふふ~、みんな好きそうで良かった~、じゃあそろそろ銀河鉄道の世界に出発するよ~』


コメント;安全確認ヨシ!

コメント;銀河鉄道発進!

コメント;娘がまた小路ちゃんと結婚するって言ってるww



 その後は小路が作品を朗読していく、優しい語り口と柔らかなゆったりした声に癒されながら視聴者を楽しませていく。


 その朗読は小路の語りもあって情景が匂いとして伝わってくるような、空へ駆け上る汽車の重力を感じるような、水素より透き通る天の川を感じ、120万年前のクルミから歌声が聞こえるような感覚を皆に感じさせた。


『はい、終わりだよ~、楽しんでくれた~? 少し悲しいけど良いお話しだよね』 


コメント;小路ちゃんの語りで泣きそうになった!

コメント;宮沢世界は今も生きている

コメント;かなりカットされてるね、原文だと意味が伝わりにくいしね

コメント;初めて聞いたけど感動した!


『いつか東北に行ってみたいな~、どんな所なんだろ~』


コメント;東北民だけど冬だけは来ない方が良いよ

コメント;気軽には行けない距離だなー

コメント;前に出張で行ったよ!


 朗読の後は雑談を交えつつ、イヤホンで拾ったコメントなんかに反応を返したりしている。暫く感想と雑談をしてから配信は終わりになるのだろう。



「俺も配信の形を変えた方が良いのかねぇ…」


 配信を見終わった後に一人で呟く、今の配信や動画を見ていて感じたのは『退屈する時間がどれも極端に短い』『面白い物が見れるかもという期待感が高い』という事だった。


 以前にミナミと配信について話をしてた時に彼女は、視聴者を途中離脱させない配信を心がけてると言っていた。


 その理由は途中離脱した人は寝たり別の事をしたりなどが多いからだというのは分かってるが、それは同時に『眠くさせた』『別の事をしてた方が有意義だ』と感じさせたからだと言ったのだ。


 面白い事を言えてない、興味を引くような話が出来てない、魅力のある配信展開を出来てないという事であり、離脱者が多いと感じた時は配信内で立て直しを測ってるとの事だった。


 灰川の場合はそれ以前の問題であり、誰かの2番煎じの言葉や、誰でも言える反応、一見の視聴者を楽しませる話やゲーム実況が全く出来てない。そもそも考えが甘すぎて配信の世界でやっていける器ではないのである。


「まぁでも何とかなるだろ、やっぱ俺もエリスやミナミみたいに視聴者いっぱいの配信してみてぇな~」


 物事なんて考えれば考える程に改善点や修正点が見つかるだろう、だからこそ深く考えたら負けという部分もある。現状で満足出来てる状態なら、それが一番良いのかもしれない。それに修正したからって面白い配信になるかどうかは別問題だ。


 灰川はパソコンをシャットダウンし、シャワーを浴びて寝ようかと思った時にスマホにメッセージが来てるのに気が付いた。 



花田社長

メッセージ

 明日の3時過ぎにミナミ君がアニメの

 アフレコがあるから、帯同してもらいたい



 明日はミナミがアニメ出演する声当ての仕事があるらしく、そこに付き添って欲しいとの事だった。これは少し前に頼まれてた事で、念のために花田社長がメッセージを送ってくれたようだ。


 ミナミは以前にゲームのキャラに声当ての仕事を頼まれてやったそうなのだが、スタジオで鉢合わせた若手俳優に言いよられて怖い思いをした事があったそうなのだ。


 それがあってからミナミは外部での仕事を頑なに断ってるそうで、今回の仕事は灰川を付ける事を条件にして受けたとの事だった。


 そういったトラブルを回避するためにもマネージャーは必要だと感じてたそうで、明日は灰川にとって初めての外部帯同業務になる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ