89話 サッカーと陽呪術 3
長野が灰島勝機と1対1のサッカー対決を始める、その時に灰川はスポーツに詳しいVtuberの薔薇咲ロズに2人の事を聞いてみた。
「弟の卓哉は高校2年としても選手としても身長が高く高いフィジカルパワーを持ってます、卓哉にボールを持たせたら相手ディフェンダーが守るのは簡単じゃありません」
「弟さん、確かに凄い大きいよね、筋肉も凄いし」
ナツハも一目で長野のフィジカルが凄い事が分かり、正にスポーツに完全に適した体と言えるだろう。
フォワードとしての能力は非常に高く、高校生で彼の攻撃を止められる者は限られる。足も速くドリブルも高速で、多少のディフェンスアプローチなら力で押し勝ててしまう。
しかもテクニックが粗雑という訳でもなく、弾道が曲がるスイングキック、敵陣深くでのパスカットも成功は1度や2度ではない、総合的なボールキープ力も高い選手だ。プレー予測力も悪くはなく、ファール率も低く、相手からの意図的と思われるファールを回避する能力も高い。
だが現在の技量でプロで通用するかどうかは疑問が残る、これらの能力はプロ選手なら有してて当たり前の能力であり、育成年代選手としては優れてるがプロの試合でマークのディフェンダーが付いたら何もさせてもらえない可能性があるらしい。
「灰島選手は圧倒的なディフェンステクニックとアドリブ力、全体を見据えたディフェンスの強さでプロ入りした選手です。スタミナの高さも定評があります」
17歳で体格も小さく、加入当初はファンからも厳しい目で見られたが最初の試合で評価は覆った。好ディフェンスを連発して、あだ名まで付けられた。
試合で2点を取られて焦りが強くなっていた場面で、不調が続いてたセンターバックと交代する形で投入、敵チームは未熟な高校生のザコが経験作りに投入されたと予想して、敵選手の成長を崩すために優先的に灰島の場所を抜けてゴールを狙う戦略を取った。
するとフィジカルも経験も上である筈の相手選手から綺麗にボールを奪い、即座にカウンターに繋げさせて逆転勝利への道を作ったらしい。
「勝機って凄い奴なんだ…ぜんぜん知らんかった…」
「前にスポーツ番組でインタビュー受けてたよ、灰川さんは知らなかったの?」
「全く知らない、ナツハも知ってるレベルなんだな」
「私はスポーツとかも配信で話題になったりするしね」
厳しく険しいプロへの道を高校2年で歩き切った、それが灰島勝機という灰川の親戚の正体だったのだ。
「スランプ治ったみたいだね、卓哉君!」
「はぁ…はぁ…! またスランプになりそうだ……」
長野はさっきまではスランプ前より調子が良いと言ってたが、今は完全に息を切らして自信を再度喪失しそうな顔になっていた。
「卓哉君、完全に僕の戦術にハマっちゃってたよ、でもフィールドも広さも悪いからな~」
「やっぱスタミナ消耗を狙ったプレーだったんだね…はぁはぁ…! 凄い厄介だった…」
勝機は相手に体力を使わせたり視界不良を誘発させるプレーが得意らしく、長野は知ってた筈なのに策に乗せられてしまった。やはり総合的な技量は勝機が上なのだろうと灰川は感じた。
だがフィールドは公園の砂地面でパスを出す相手も居ない1on1勝負、ゴールも無いしシュートも打てない状況では攻撃選手は不利だろうから、公平な勝負とは言えないだろう。
しかしそれはどうでも良い事だ。目的は長野のスランプ克服であり、サッカーの上達でも無ければ誰かに勝つ事でもない。
「勝機、長野君のスランプは治ったって言えるか?」
「うん、スランプ選手に多い弱点とか突いてみたけど、そこは問題なく動けてたし、メンタルも前に向いてたと思う。治ったって言えると思うな」
これで灰川の仕事は終わりだ、長野のスランプ前がどうだったのか知らないが、とにかく本人も勝機も治ったと言ってるのだから大丈夫なのだろう。
「勝機君、もう少し相手してもらって良いかい?」
「うん、良いよ」
というやり取りをした直後、何名かの体格の良い男が灰川たちに近づいて来る。それを見た灰川と長野が勝機の前に出て立った。
「神奈川キングキマイラのトップチームの灰島選手ですね、ウチの長野に何か用ですか?」
「コーチ、勝機君…灰島選手は俺のスランプ克服に協力してくれただけです。マルビウスに何かしようって訳じゃないです」
「灰川と言います、自分は勝機…灰島選手の親戚なんですが、手違いでこの公園に呼び出してしまったんです。なにせプロサッカー選手になってた事を知らなかったし、色々と不運が重なって」
訝し気な目を向けられるが灰川は説明する、どうやら長野と勝機が一緒に居る場面がチクリ情報で伝わり、コーチ陣が本当に自チームの長野と敵チームの散々に苦汁を舐めさせられた灰島勝機と一緒に居るのが本当なのか見に来た様子だった。
ギャラリーの配信者やVtuberの連中はスマホを向けて動画を撮ってたり、何事かをヒソヒソ話してたりしてる。そんな中で一人の男が前に出てきた、彼はハッピーリレー所属の男性配信者で弁護士資格を持つ司法系配信者の宝利津 守だ。
「おうおう! こっちは公共の公園でサッカーごっこして遊んでただけだぞ、おい! なんか問題でもあんのかコラぁ!?」
「法的には問題ないですが、プロ選手は契約内容によっては他チームの者と関わる事が禁止されてたりする事があるんです」
法律を守ってなさそうな声を出しながら肩をいからせ詰め寄ってる、彼の配信スタイルはこんな感じだ。選手契約の内容によっては民事裁判などもありうるため、今の状況は勝機にとって良くないかも知れないとの事だ。
「灰島選手、まずはウチの長野のスランプ克服に協力して頂きありがとうございます」
「いえ、とんでもないです。卓哉君ほどの才能をスランプで失ったら、マルビウスだけじゃなくてサッカー界の損失ですから」
「そう言ってもらえるのは光栄です、まさかプロ入りした灰島選手に協力して貰ってるとは思いませんでした」
スポーツ界はスランプを克服できなくて引退に追い込まれたり2軍落ちしたり、成長が遅れて日の目を浴びずに消えていく選手も多いらしい。
華やかで競技者の誰もが憧れるスポーツ界の裏では、今日も誰かがスランプやイップスに涙を流し、道を諦めて去っていくのだろう。
スポーツ界ではスランプを克服して更に強くなった選手の感動的なストーリーが語られるが、その影にはスランプを克服できず、栄光を掴めず、絶望に沈んでいく選手たちの存在を忘れてはいけない。
「弟がお世話になってます、姉の長野楓です。お騒がせしてすみませんでした、もう帰りますので」
「初めまして、お噂は卓哉君から聞いてます。忙しい中来て頂きありがとうございます」
薔薇咲ロズもマルビウスのコーチ陣と話して事を収める、スランプ治療に関しては怪しげなオカルトについては話をボカして、会社の関連企業の灰川がスランプ治療が出来る人物で、たまたま灰島選手の親戚だったという話にした。
「灰川さんですね、お噂はかねが……いや、失礼ですが全く情報がありません。長野のスランプを治して頂けたという事で、どのように治したんですか? あんなに酷いスランプをたった数時間で治すなんて」
「自分はコンサルタント業をしています、スランプ治療については事情があって説明できません、すいません」
オカルトで治しましたなんて言ったら詐欺師かカルト宗教と思われるのは必至だ、適当に企業秘密みたいな感じにして切り抜けようと考えた。
周囲に居たギャラリーたちも事は解決したと感じて帰る者や、厄介に巻き込まれたくないと離れた者が多く、残ってるのはナツハと薔薇咲ロズと数人くらいだ。ツバサは配信があるので早恵美と美緒と一緒に帰ったらしい。
灰川ももう帰るつもりでいたのだが、その時になって薔薇咲ロズが話し掛けてきた。
「すいません灰川さん、スランプ治療の代金は幾らでしょうか?」
「えっ? ああ、え~と……」
依頼料については完全に頭から抜け落ちていた、スポーツ選手のスランプ治療の料金なんて考えた事も無いし、相場が全く分からない。ここで様々な要素を交えて素早く頭で考える。
今の時刻は18時30分で相談から解決に掛かった時間は3時間半、スポーツ選手はマッサージとか受けてる印象があり近所のマッサージ屋は30分3000円、しかし自分はマッサージ師の資格とか持ってないし長野にマッサージはほとんどしてない。
長野はプロ選手ではないし高校生で学割が効く年齢、自分のスポーツ陽呪術は完璧ではない、シャイニングゲートのVtuberの弟、この前やったパチンコは結構出たけどスロットで負けた、自分の配信者としての稼ぎは0円。
様々な事を考えて最後の方は頭が回らなくなり、多少は吹っ掛けた金額を言っても良いだろうと判断する。そこから導き出した金額は。
「今回は長野君は高校生なので少し割り引いて8000円ですね、高いと思うかもしれませんが難しい施術ですんでね」
「「8000円っ!!?」」
少し吹っ掛け過ぎたかと灰川は感じたが、先に金額を聞かなかった薔薇咲ロズや渡辺社長が悪いのさと心の中でニヤリと笑う。
8000円となればマッサージであればマッサージ師資格者の本格的な施術が受けられる金額だし、3時間くらいの時間で時給換算したら時給3000円行かないくらいと高額だ。
「あの、失礼ですが…普段からその金額でスランプ治療を請け負ってるんですか…?」
「これでも安い方だと思いますよ~? まだ俺の腕は未熟だからお試し料金みたいなもんですよ、腕が上がったら1万越えもしちゃうかもしれませんね~」
「長野のスランプを治しても完璧じゃないのですか……おい、ちょっとトップチーム監督に連絡しとけ…」
「はい…その方が良さそうですね…」
灰川としては良い小遣い稼ぎになった、さっそく薔薇咲ロズから報酬を受け取ろうと思い向き直る。
「あ、あのっ、流石に8000円では悪いと言いますか…せめて1万円お支払いします」
「良いんですか? 悪いですねぇ、またのご利用お待ち……いや、もう使わなくて良い事を期待してますね」
灰川と薔薇咲ロズの周囲はザワついてる、その理由が灰川には分からない。ちょっとボッタクリ過ぎたかと思ったが、そこまで非難される金額では無いと思ってる。
「誠治兄ちゃん…8000円はいくら何でも安すぎないかな? スポーツのスランプって2か月も続いたら絶望的な状況だよ、それを短時間で治したのに」
「そ、そうっすよ! プロ選手はスランプ脱却のためにバカみたいな金額を使って治療する事もあるんすよ!? 俺が高校生でプロ選手じゃないにしても安すぎますよ!俺と姉さんとしては凄く助かるっすけど!」
詳しく聞くとスポーツのスランプとは、選手のパフォーマンスの低下やメンタルの下降が引き起こし、原因は失敗や挫折感が尾を引いたり、精神的なプレッシャー、練習量やプレースタイルの変化、その他、原因は様々らしい。
スランプ克服法は人によって全く違うらしく、休んだら治った、練習に精を出したら治った、別のスポーツを気分転換でやってみたら治ったとか、他にも気の持ちようを変えたら治るなどだそうだ。
逆にスランプから全く抜け出せない人も居る、何をやってもダメ、気の持ちようなんて変えられない、極端な例になると自分がスランプである事に気が付けずスポーツ界を去ってしまう人まで居るそうだ。
プロやプロになろうとする人達の世界は厳しい、点を取れなくなったストライカーなど試合に出させて貰えない、相手を止められなくなったディフェンスなどお払い箱、ファンからも忘れられ酷い時には嫌われる事すらある。
スランプが長く続いたらどうなるのか?それはチームとファンから信用を無くし、自身の選手としての価値を下げる事になる。スランプとは真剣勝負のプロの世界では死活問題、素早く克服できなければ選手としては終わりの可能性が出る重大な問題なのだそうだ。
「長野君、そんな状態でよくスタメン取れたね、本当は大した事ないスランプだったんじゃないの?」
「違いますよ!3日後の試合が一戦しか無かったら自分は外されてた筈です、どうにかスランプになる前までの成績のおかげでメンバーになれたんすよ」
色んな事情があるようだが長野のスランプは深刻な物だった、判断の遅れや判断ミス、プレーの低下や過剰なファール回避、それらが影響してパフォーマンスが低下してメンタルもやられてたが、そこを灰川に助けられたのだ。
「灰川さん、なんか空気が変になって来たよ、帰った方が良いと思うな…」
「だよな…ナツハ、何かマズイ事になったら薔薇咲さんに間に入ってって頼んでくれよな…?」
妙な空気になった事を感じ取り、小さな声で話しかけてきたナツハに頼み事をしつつ長野にも声を掛けた。
「長野君、3日後の試合で活躍できるかどうかは分からない、出来れば集中力を上げる術とか大事な場面で全力を出せる術とか掛けてあげたかったけど、空気がヤバイから帰るわ」
「えっ? そんな、まだお礼もまともに…っ」
「マルビウスが俺を訴えようとかキナ臭い話になったら、長野君がどうにか言ってくれよな」
もう逃げる準備は万端だ、何か妙な事が発生したって呪術がどうとかの話だから証拠はない。
灰川はバスが来たタイミングでナツハと勝機を連れて、速足でその場を後にする。薔薇咲ロズは弟と積もる話もあるだろうから置いていく、女性を一人で置いてくのはアレだが成人してるのだから大丈夫だろう。
上手く抜け出せてバスに乗り込む事に成功した、追及もされたくないから逃げ出す事にする。
「勝機君だったよね、澄風空羽です。灰川さんにはお世話になってます」
「灰島勝機です、誠治兄ちゃんの彼女さんですか? 女子高生に手を出すなんてな~」
「違うっての、空羽は仕事の取引先の職員みたいな感じだよ」
「ふふっ、お付き合いしてるように見えたんだね、私は困らないよ」
空羽はまんざらでも表情をしながら笑う、その顔はまさにお姉さんといった感じだ。今は学校帰りで制服姿だから勝機はすぐに女子高生だと気が付いたのだ。
「それで勝機、お前って本当にプロサッカー選手なの? なんか凄い好守備連発とか聞いたけど」
「本当だよ、誠治兄ちゃんはサッカーに興味ないからな~、でも好守備連発は言い過ぎかもね」
勝機は実際には敵に抜かれる事もあるし、味方のカバーに失敗してピンチを作る事もあるらしく、プロとしてはまだまだだそうだ。今はスポーツ紙などが良い事を書いてくれてる時期だそうで、それが終わるまでに技量を上げなければと頑張ってる。
プロスポーツ選手の世界は厳しく、実力が無いと判断されたりスキャンダルがあったりした選手は即座に外される。プロになって満足する者はプロの世界で通用しないという。
「今回の事でサッカーちょっと興味持ったけどな、やっぱ契約金とか凄いのか?」
灰川が聞きたかったのはそこだ、高校生プロサッカー選手の報酬とか気になってしまう。
「僕は年で300万円行かないくらいだよ、凄い金額貰ってるって思った? 残念でした~」
「いや300万でも凄いだろ、高校生でそんだけ貰えるんだなぁ」
「私も凄いと思う、高校2年でプロ選手っていうだけで既に凄いと思うんだけど」
プロサッカー選手で何億円とか貰うような選手は全体でも20人から30人ほどの一握りだそうで、1級リーグの選手たちの報酬は平均すれば3000万円くらいらしい。
2級リーグ、3級リーグのチームになるにつれ収入は下がり、3級リーグの選手だとアルバイトをしながら選手をしてる人も珍しくないそうだ。
「他にもA契約B契約C契約によっても違うし、勝利給とか出場給もあるよ、有名選手だとスポンサーが付いてお金を貰えるみたいだしね」
「なんか凄い世界だな、説明されてもよく分からんや」
説明されてもカードゲームのややこしい効果説明みたいで灰川には理解できない、ナツハも理解しきれてなさそうだ。
どうやら勝機はC契約という枠組みだそうで、新人選手はまずここから始まるらしい。試合出場時間や活躍やプロ年数によって契約が更新されるかB,A契約に持って行けるか等が決まるそうだ。
灰川としては口では凄いと言ったが意外と安いなという気持ちもある、プロスポーツ選手なんて豪邸に住みながら高級車を乗り回してるイメージを勝手に持っていた。そんな事が出来る選手は一握りも一握りだ。
サッカー界だけで見ても日本人プロ選手は1,2,3級リーグを合わせて1700人くらい居るそうで、その殆どは普通の会社員かそれ以下くらいの給金らしい。サッカー人口からすればプロになるだけでも厳しいのに、難儀な話だと感じる。
実はB契約とC契約には年棒の下限が無く、酷いチームだとプロになりたいという心を利用してスター性やカリスマ性に欠けるが上手い選手を安く使い潰すなんて事もあるらしい。ブラック企業はどこにでもあるようだ。
「サッカーのお金の事って複雑なんだね、でも灰川さんは陽呪術を使って勝機君をプロにさせたの?」
「ナツハ、陽呪術だけでプロになれるんだったら苦労は無いって、出来るのはサポートって程度だよ、相性とかもあるから誰にでも使える訳でもないし」
「僕は元々はスポーツ陽呪術は父さんにしてもらってたんです、ほとんど実験台でしたね~」
陽呪術は魔法ではない、たとえ親子であっても能力や術の相性が悪い事もあるし、そもそも術者が使えない術もあれば、霊能力はあっても才能が無いことなんて割とある。
身内を陽呪術を使ってプロにするなど卑怯と言われるかも知れないが、勝機が重ねてきた努力の量を知ったら長野も驚くくらいの練習量なのだ。そんなに旨い話ではない。
しかもスポーツ陽呪術には短所もあり、使い過ぎると競技以外の事に対する注意力が散漫になったり記憶力が低下する事があると判明している。副作用は長く続く事もあり、スランプは抜けれても別のマイナスが出る可能性がある事を長野にも説明して了解を得た上で使用した。一回くらい使った程度では影響は少ないだろう。
勝機が呼び出された場所が敵地だと気付けなかったのは、短絡的な灰川家の血筋の他にそういう要因が絡まった結果かもしれない。その短所が発覚した時には既に勝機には副作用が出てしまってた状態だった。
私欲のために陽呪術を使うのは良くない事だが、こうも副作用が大きいのでは運気はあまり下がらないのも事実である。
「まぁ良いか、勝機は今日は術を掛けたら帰るのか?」
「うん、明日もトレーニングあるしね、本当は泊まって行きたかったんだけどな~」
勝機は今は亡き父が残したスポーツ陽呪術を大切に思っており、その力を自分に使ってくれる誠治を慕ってる。
それと同時にスポーツ陽呪術の発展のために、自分で色々と試して欲しいと申し出てるのだ。
「じゃあまたね灰川さん、勝機君もサッカー頑張ってね」
「ああ、また近い内にシャイニングゲートに行くからよ」
「お疲れさまでした澄風さん、誠治兄ちゃんを今後ともよろしくお願いします」
こうして空羽ことナツハは去って行き、灰川と勝機も歩いていくが。
「誠治兄ちゃん、シャイニングゲートってVtuberの会社じゃないよね?」
「え、言ってなかったっけ? 俺は今はシャイニングゲートとハッピーリレーっていう配信企業のコンサルタントやってるんだよ」
「ほ、本当っ!? じゃあさっきの人も!?」
「あ~、うん、まぁ関係者だな」
適当に誤魔化しつつお茶を濁す、実は勝機は自由鷹ナツハのファンらしい。だが顔出し配信や出演したテレビは見てないらしく声も配信時とは少し違いがあり、何より自由鷹ナツハか?思う訳もなく本人とは気付かなかった。
神奈川キングキマイラにもVtuberファンはそこそこ居るらしく、チームメイトや学校の友達の影響で勝機も好きになったらしい。
「詳しくは話せないからよ、取りあえず今日はアパートに帰って陽呪術かけるからな」
「うん、あとキングキマイラにも陽呪術に興味持ってる人とかも居るよ」
「それはパスだな、どうせ興味本位の冷やかしだろ」
そんな会話をしながらアパートに帰り、勝機に陽呪術を使ってその日は終わりとなった。
説明文が多くなりすぎて、文章が冗長になってしまいました。




