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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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80話 パーティー騒動 2

「しかし灰川先生がこのパーティーに参加してるとは驚きました」


「自分も英明さんや陣伍さんが参加してるとは思いませんでした、こんな所で再会するとは奇遇でしたね」


 そうこうしてる間にも周囲の大企業の重鎮たちに焦りや困惑が広がっていく、特に渡辺社長に話しかけられて自分の名刺を渡し返さなかったり塩対応をした者の焦りは相当な物だった。


 四楓院家はこのパーティーには付き合いのある会社が主催しており、それで参加したそうだ。本来はあまりパーティー等には行かず、食事は家族で摂ることが多いらしい。


「ところで灰川先生は何か目的があってのご参加ですかな? ワシとしてはお若い方が好んで参加する類の催しには思えませんぞ」


「陣伍さん、実はシャイニングゲートさんの誘いで来させてもらって、あわよくば仕事にありつこうと思ってましたけど、ちょっと無理そうですね」


 周囲のザワめきが強くなる『総会長をさん付けで呼ぶなんて!』『何者なんだ……』『木っ端企業だと思って名刺を返さなかったぞ…っ』と羨望の眼差しを向ける者や、恐れを感じる人、後悔に苛まれる者など様々な反応が繰り広げられてる。


 しかし灰川は会話に集中しててそこにまでは耳が回らない、それは社長もナツハも同じだった。 


「ふむ、灰川先生の分野は依頼も限られるでしょうからな、ですが芸能界進出を考えておる会社の相談役としての悩みもありますかな?」


 陣伍がそう言った瞬間に聞き耳を立ててる者達の芸能関係、メディア関係の会社役員たちに寒気を伴った緊張が走った。


 彼らは一様に、自分から彼らに挨拶をしておくべきだった、あの男の後ろに居る中小社長の挨拶を袖にしてしまった、そんな後悔の念が押し寄せてる。


 四楓院家に切られたら会社が傾く、自分のせいで会社が終わる、首を切られる、そう思わずには居られない。四楓院家は政財界では凄まじい力を持った家だ、そんな所に目を付けられたらお終いだと顔を青くする者が続出した。 


 灰川はやっぱり知ってたかと感じてる、事務所開設の祝電なども無かったから知られてないかもと思ってたが違ったらしい。自分はどうやら本当に凄い人達の重鎮になってしまったのだと改めて感じ、それに怖さを感じてた。


「そうですね、名ばかりですがコンサルタントですし、相談してくれた会社の力になりたいとも思っています」


「それならどうかご遠慮なさらず金名刺をお使いください、灰川先生には一生かかっても返しきれない恩があるんですから、何も心配なく後ろは四楓院に任せて下さい」


 そう言ったのは英明だ、彼は灰川の提案を最後の最後で躊躇し、危うく命より大事な娘を死なせる所だったという負い目があり灰川には絶対の信頼を置いている。


 それは陣伍も同じで、灰川が来てくれなかったら何よりも愛する孫は死んでいたと理解してる。灰川には自分の命より大切な者を救ってくれたという恩義を感じ、それは何をしようと返しきれない恩だと心に刻んでる。


 それを抜きにしても多額の報酬を断り、他人であるはずの八重香を救うために命懸けで全力を尽くしてくれた姿勢は大きな感銘を与えていた。


「金名刺はそうそう使えませんよ、もし使ったら英明さんや陣伍さんが八重香ちゃんと一緒に居られる時間が少なくなっちゃうじゃないですか、ただでさえ忙しい身のはずなんですから」


「大恩ある灰川先生の力の一添えになりたいのです、どうか遠慮なく使って下さい」


 冗談交じりだが少し本音の言葉で返すと、それすら本気と取られてしまう。かなり真面目な性格のようで何としても恩を返したいという、矜持にも似た心持ちがあった。


「灰川先生、四楓院を甘く見てもらっては困りますな、先生を(くすぶ)ぶらせ世の中から甘く見られては四楓院の名折れですぞ、特にここに居る上司に媚びへつらうだけが取り柄の連中に灰川先生を小馬鹿にされては許せんという物ですな」


「え、はは、いや~……」


 話の途中に付き人が陣伍に何事かを耳打ちしたのだ、その内容は先程の灰川一行に起こった出来事のあらましだったのだろう。陣伍の声に渡辺社長や灰川に話し掛けられた者や、ナツハに絡んだ者がビクンと震えた。


 灰川はお茶を濁すが陣伍の目つきは先程より険しく見える、英明も同様にイラつきを覚えてる様子でホールには緊張感が走った。


 四楓院の後ろ盾が無くなれば困る企業は多い、銀行からの融資が消える、大口の仕事や取引が消える、政治家や有力者との繋がりが消える、陣伍か英明が一言電話すれば自分など追い出し部屋行き、そうなったら……。


「ま、まあまあ陣伍さん英明さん、今日は楽しいパーティーなんですから硬い話は抜きってことで、あ、ビール飲みます? お注ぎしますよ、へへへ」


 とりあえず灰川は話題を変えようと酒を勧めてみる、ホール内の空気が冷えるどころか地獄みたいな重さになってて耐えられなかった。その行動に周囲の人達も四楓院家の機嫌が直る事を期待しながら見てる。


「おお、これは気が利きませんで申し訳ないですな。菅谷、用足しを頼みたいのだが」


「はい、何でしょうか?」


「この銘柄のビールはいかんな、灰川先生を冷たくあしらった会社の品だ。会場内の飲料は全てムーンリバー社の物に変えさせてもらえ」


「はい、すぐに申し付けます」


 この言葉に危うく気絶しそうになったのはジャパンドリンク株式会社の役員2名だった。陣伍の今の言葉、そして英明が何の異も唱えなかったこと、それはジャパンドリンク株式会社の株価大幅下落と飲料シェアナンバーワンからの転落、大幅な企業縮小を意味する言葉なのだ。


 良かれと思ってビールを注ごうとした灰川だったが、ホールの緊張が高まるだけに終わってしまい、藪蛇を突いた灰川は動きが硬くなる。


「おい、我が社で保有してるジャパンドリンク株の売り注文の準備をさせとけ……」


「あの人達に話し掛けられなくて良かった……」


「あの一行にスジが出来れば出世のチャンスだな……」


 様々な声が聞こえてくるが、可哀想なのはジャパンドリンク社の役員の2人だ。彼らは震えが止まらなくなり今にも泣きそうな顔をしてる、片割れは目の焦点が合っておらず死体ですらもう少し生き生きしてるというような表情だった。


 実質的にジャパンドリンクはビジネスの世界で死刑宣告を受けたような物だ、考えられる末路としては1年後くらいにムーンリバー飲料株式会社に吸収合併されて、ジャパンドリンク役員は即リストラという感じになるだろう。 


 灰川は心の中で『ヤバイ!!』と思い切りに感じてる、そうなったら会社消滅の真相を知った人達からどんだけ恨まれ呪われるのか分かったもんじゃない、お祓いは出来るが強い恨みの呪いは簡単には消えずキリが無い。


 それを防ぐには灰川が一言だけ添えれば良いようにも思えるが、陣伍と英明は灰川に対する態度以前に参加者の選民思想じみた特権階級意識を良く思ってないらしく、それを戒める目的もあるように思える。


 だが灰川はこの場を丸く収めたい、自分の前でこんな時代劇ドラマみたいな事が発生するとは思って無かったし、呪いとか以前に寝覚めが悪いし居心地も最悪だが、今の所は空気感的にどうしようもない。


「そ、そうだ渡辺社長っ、四楓院さんは各所で顔が利く人だから、名刺交換とかお願いしたらいいかもしれないっすよ、ははは……」


「そうですね、失礼いたしました四楓院総会長、私の名刺です。もしよろしければお納めください」


 もう苦し紛れの一言だ、悪いとは思ったが重い空気感を打破するために社長をダシに使わせて貰ったのだ。渡辺社長は驚いた様子だったが、咄嗟にビジネスマンとしての振る舞いに戻り陣伍に名刺を手渡した。


「ふむ、こちらこそ失礼しましたな渡辺社長殿、ワシの名刺も受け取って下され、英明も是非に名刺を交換させて貰いなさい」


「もちろんです総会長、よろしくお願いいたします渡辺社長」


「いっ、いえ、こちらこそ何卒(なにとぞ)よろしくお願いしますっ」


 渡辺社長は緊張から少し声が籠ってしまったが、無事に名刺交換は済ませる事が出来た。もちろん陣伍と英明が渡した名刺は金名刺ではなく普通の名刺だ。


「灰川さんも事務所を開いた事ですし名刺交換をされた方が良いと思いますよ、まだ灰川さんの名刺は総会長と会長にお渡ししてませんよね?」


「あっ、ごめんなさい! 人に言う前に自分からですよね! これ俺の名刺ですっ」


 渡辺社長にビジネスのマナーを指摘され焦って灰川も名刺を2枚取り出して差し出した、灰川の名刺は灰川コンサルティング事務所の名前が入れられたシンプルな物である。


「すみません灰川先生、こちらからお渡しするべきでした。私と総会長の名刺です、お納めください」


「ちょ! これ金名刺じゃないですか! 普通ので良いですって!」


「ははは、ご冗談を言いなさって灰川先生、当家が大先生と仰ぐお方に普通の名刺をお渡しするなどと言う無礼は、灰川先生の頼みでも聞けませんぞ」


 また金名刺を貰ってしまった、もう周囲は騒然としてるが陣伍も英明も気に留める事は無く、側近の人やお付きの人も何も言わずどっしり構えていた。


 やることなすこと全て注目を集めてしまう、ホール内の視線は今や灰川に最も集まってる有様だ。


「あの人は何者なんだ…四楓院家の金名刺なんて初めて見た……」


「あの若い男から目を離すなっ……絶対に取り入るぞ……」


 周囲の大企業の重鎮たちは完全に灰川にマークを付けてる、他にも自社の社長に身の振り方の指示を仰ぐ者や、スマホで盛んに連絡を取ってる者、どうにかして灰川たちに話し掛ける隙が無いか見てる者、様々な様相が見て取れた。


 そもそも四楓院家との名刺交換を切り出す事すら難しい彼らには、灰川一行のしてる事を信じられない面持ちで見据えてる。


「あ、そうだ、さっき八重香ちゃんとお話ししたんですけど、少し見ましたが予後は問題はありませんでした。むしろ元気が満ち溢れて幸せな気が立ち上って、元気過ぎるくらいでしたよ」


「おお!そうでしたか! それというのも灰川大先生のおかげですぞ、感謝してもし足りませんな」


 オカルトに関する事なので小声で言う、だが灰川の声は仕事の話をしてる時より少し真面目だ。


「八重香ちゃんがあの件を乗り越えたのは、両親や陣伍さんから執着ではない多大な愛と慈しみを受けて育ってるからです、もちろん八重香ちゃん自身が頑張ってくれた事も大きいですし」


「そうですか、灰川先生にそう言って頂けるのは、とてもありがたいですね」


「ふむ、ではあのような事はこれからは心配無いということですかな?」


「事故のようなものもあるので確率は0とは言えません、ですが少なくとも同例であれば対策は用意したのでほぼ勝てます。前も家に帰って用意する時間さえあれば、もう少しマシに対処が出来たはずですから」


 その後も少しの間は以前の怪異に関しての予後の状況などの話をしていく、特に供養は欠かさず行うよう言った。それに伴って陣伍と英明の機嫌も少し上向き、緊張感は多少は和らいだのだった




 怪異の話も終わり、頃合いを見計らったかのように陣伍が口を開いた。


「そういえば渡辺社長、貴社はどのような仕事に進出しようとお考えかな? 少しばかり詳しく話してもらいたいのぉ」


「は、はいっ、シャイニングゲートは芸能界へのVtuberの進出を真剣に考えておりまして、テレビ番組やCM出演などを目指して準備しております」


「そうか、ならば灰川先生との縁を大事にするんじゃぞ? この先、必ず灰川先生のお力は大いに役立ってくれる筈じゃて」


「肝に銘じます」


 次は四楓院 陣伍に突然に話を振られ渡辺社長は驚いたが、芸能界進出に向かって用意を進めてる事を詳しく話した。


 陣伍と英明は四楓院家でのエリスの活躍もあり、Vtuberに興味を示して割と調べたそうだ。ナツハの事も知ってるらしい。


 だが四楓院家の自宅では八重香が怪異にうなされてた時にエリスに助けられた事をボンヤリと覚えてたようで、八重香はエリスの配信は毎日のように楽しみに見てるとの事だった。


 一方で灰川を呼びに来たエリスの叔母は灰川メビウスの名を知ってたが、そっちは伝えてないらしく話題には上がらない。実はエリスの叔母が怪異解決後にひっそりと灰川の配信を見たが、つまらな過ぎて別人だと思ってしまったという事情があったりする。


「自由鷹ナツハさん、君はどのような仕事を得たいと思っとるのかね?」


「私は会社の意向に沿おうと考えてますが、いずれはCMやVtuberの番組が出来たらなと考えてます」


「陣伍さん、ナツハ…自由鷹さんは凄いんですよ。高校3年でVtuberナンバーワンで、三ツ橋エリスも尊敬してる先輩なんですから」


「なるほど、確かに配信を拝見させて貰いましたが凄い才能を感じました。ご本人も(ひん)があって嫌味を感じないし、若くして成り上がった人にありがちな見下すような雰囲気も感じられませんしね」


「ワシから見ても自由鷹さんは別格な雰囲気を感じるぞ、珠玉(しゅぎょく)の才とでも言うべきなのじゃろうな」


「ありがとうございます、まだまだ未熟な身ではありますが、これからも精進したいと思っています」 


 ナツハは一礼して頭を下げる、陣伍と英明は変な意味ではなくナツハを押し測ってる様子だった。そこにはメディア業界を含めた様々な業界を牛耳る辣腕者としての目があった。


 その二人の見立てとしては渡辺社長もナツハも評価は上々、英明は渡辺社長より年下だが人を見る目は父親以上と陣伍から既に太鼓判を押されてる。現に英明の息が掛かった人物は各業界で強く頭角を現し始めているが、この場には居ないようだった。


「そういえば灰川先生の業務は聞いた感じだとコンサルタントというよりは、外部総合デパートメントとでも言うような新しい業態のように思えますね」 


「デパートメントですか? デパートレスならやってた事ありますよ、百貨店のトイレ掃除係やってた時にそう呼ばれてました。結構キツイ仕事だけど、依頼が来たら俺やりますよ」


「いえ、そうではなく…Departmentとは本来は一区分という意味ですが、この場合はデパートと同じ意味合いで企業向けの何でも屋という意味合いです」


「何でも屋ですか、確かにそうですね。この前も運転手やりましたし、お祓いも請け負いましたしね~」


 英明と軽めの会話になり少し雰囲気が和らぐ、デパートレスはデパートのトイレという意味合いで、百貨店の掃除係の事をそう呼ぶ所もあるそうだ。


「でもコンサルタントは素人同然ですからね、シャイニングゲートとハッピーリレーにCMとかの大きな仕事を取って来れるのはいつになる事やらですよ」


「ははは、それはもうコンサルタントというより外部営業ですね、でも渡辺社長と自由鷹さんが居れば道は見えてるも同然ですよ」


 その会話を陣伍は傍から聞いて何かを決めた、そしてすぐに行動に移す。陣伍も英明も会話をしながら渡辺社長やナツハの人格や素質を見定めていたのだ。ちなみに彼らの灰川に対する評価は無条件で最高値を叩き出してる状態だ。


「うむ、やはり灰川先生が軽んじられたままではワシは耐えられん、それに自由鷹ナツハさんという逸材、それを見出した渡辺社長も手腕は足りておるじゃろ」


「お父さ…総会長、私も早い方が良いかと思います。何より大恩人の灰川先生に土産の一つも持たせず帰すというのは気が引けます」


「え? ど、どうしたんですか? 土産ならここの料理をタッパーで大量に持ち帰る気でいましたけど」 


 灰川の言葉は搔き消されて届かず、陣伍と英明の目つきが変わる。その目はビジネスの世界で大きな力を持つ者の目、絶対的な手腕を武器に生き馬の目を抜く世界で首位にあり続ける者の目だ。


「中原、ジャパンドリンクの金井と山田を呼んで来い」


「はい、少々お待ちください」


 中原と呼ばれた側近の人が歩いていく、ジャパンドリンクは先程に死刑宣告を受けた会社の名前だった。




「つ、疲れた……」


「僕もだよ灰川さん……」


「凄い事になっちゃったね……」


 パーティーが終わり最大限に疲れた表情で3人は車に乗ってぐったりしている。


 結論から言うとシャイニングゲートはあの後、陣伍の「ジャパンドリンクの新商品のCMに自由鷹ナツハ嬢を起用しろ」の一言で即座にナツハのCM起用が確定となった。


 ジャパンドリンクの2人の役員は「CM撮影と放送は近日ですが、何としてでも起用します!」と確約したのだ。


 その後がヤバかった、灰川は名刺交換責めに遭い、渡辺社長とナツハは仕事の申し込みが次々殺到した。これは陣伍がジャパンドリンクの2人にシャイニングゲートに仕事を回させて灰川の手柄とする事で無礼を許し、暗に『仕事を回せば許す』と示したのが大きな原因だ。


 それが無くても四楓院家と灰川の関係を見た会社から後に仕事は回って来ただろうが、救済措置という事もあって熱量が違ったのだ。


「パーティー終わりに八重香ちゃんが寝ちゃってて助かったよ、動く気力も残ってねぇや」


「灰川さんは四楓院家の娘さんに懐かれてるみたいだからね、今度会いに行ってあげたら良いと思うよ」


「考えときますよ、八重香ちゃんと遊んであげる約束しましたし」


 シャイニングゲートにはナツハ以外のVtuberの仕事も大量にゲットした、渡辺社長とナツハが上手い具合に推薦したり紹介したりして会社の名前と所属Vtuberの名前を売りまくったのである。 


 というよりナツハだけで捌ける依頼の数じゃないし、依頼してきた会社としては四楓院に関わりのあるシャイニングゲートに繋がりを作りたいというのが本音なのは透けて見える。その状態から継続的に信頼と仕事を勝ち取るのは社長やVtuber達の役目であり、灰川にはどうしようもない。


 新聞の中面に見開き広告を出させて欲しいと新聞社に言われたり、テレビ局から特番を作りたいと言われたり、車のCMにVtuberを起用したい、化粧品の広告にナツハが出て欲しい、ゲームのボイス起用、有名雑誌に特集、洗剤のCM、香水の広告塔、その他様々だ。


「プロ野球の始球式なんてVtuber出れるんすか? 他にも色々よく分かんない物とかありますし」


「仕事については精査が必要かな、とにかくとても大きな収穫とチャンスを得る事が出来た、全部灰川さんのおかげだ」


「私もこんなに仕事が来るなんて思ってなかったよ、まさか全国区のCMに出演が決まるなって考えてもなかったんだから、ありがとうございます、灰川さん」


「今度何か奢って下さいよ~、流石に疲れたっす」 


 陣伍と英明が言った土産(・・)とは、灰川にコンサルタントを依頼したシャイニングゲートへの仕事依頼という名の、新境地への進出の大きなチャンスの事だったのだ。


 これによってシャイニングゲートは名を広めるし、灰川コンサルティング事務所の功績にもなると踏んでの判断だったのだろう。 


「とりあえず今日は帰りましょ、ナツハも明日学校あるんだろ?」


「うん、でも明日は授業に集中できそうにないかな、疲れたけど嬉しさで寝れなさそうだしね」


「僕もだよ、大手企業からこんなに仕事が舞い込んでくるなんて夢みたいだ、出来過ぎてて幻覚見てるんじゃないかって思ってるくらいさ」  


 渡辺社長とナツハは緊張したし疲れたが、大きなリターンがあって大変に満足の行く結果となった。まだ疲れと興奮で実感は湧かないが、どれだけ凄い成果だったのかは明日になれば分かるのだろう。


「これは灰川さんに支払う依頼料も大幅に見直さなければならないな、こんな成果は本来なら1000万円出したって得られないリターンなんだから」


「あ、それは約束の金額で良いです、色々と怖いんで」


「今日はありがとう灰川さん、またエリスちゃん達と遊びに行きたいね」


 こうして疲れながらも大きな成果を上げ、灰川とシャイニングゲートは様々な企業に名を覚えさせた。


 その後は車で送って貰ってアパートに帰り、すぐに寝るかと思いきや配信をしたくなってyour-tubeで配信してたのだが、それを見たナツハから「早く寝た方が良いと思うな」とコメントで柔らかく叱られて就寝したのだった。


 今日は本当に色々あった、しかし本当に大変な事が待ち受けてたのは翌日だった。名刺を渡した企業から続々と電話が掛かって来たのだ。



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― 新着の感想 ―
[一言] >つまらな過ぎて別人だと思ってしまった ひでぇw
[一言] (´ρ`)オレノジンセイオワタ……
[良い点] エリスの叔母さんが灰川メビウスの配信を見てたがつまらなくて別人だと思ったというのにクスっとしました [一言] 思った以上に大変なことになって灰川の今後は如何に
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