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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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329話 ユニティブ興行アニマルズの接待!

「ふおぉぉっ…! か…かわいいなぁっ…! それに凄い賢いし」


「にゃぁ~、なゃんっ」


「にゃん……にゃ~…」


 ユニティブ興行事務所にやって来た番組制作会社『株式会社 ムジー放送制作』の社員、有本(ありもと) 勝司(かつじ)、43歳のベテランだ。


 ムジ―放送制作は全国テレビ局であるOBTテレビの下請け制作会社で、事業内容はテレビ番組制作、ネットストリーミング番組の制作、芸能人が依頼した場合はyour-tubeの動画制作、といった事業を行ってる。


 OBTテレビが上に付いてるため安定的に番組制作の仕事がもらえるし、フリーの制作会社より経営は頑丈だ。


 富川の情報ではムジ―制作は黒い繋がりなども無くホワイトだと太鼓判を押している。しかし番組の出来自体は平凡なものが多いらしく、あまり大きく話題になるような番組は作っていない。


 ムジ―制作はほのぼの系番組や昼放送の番組を依頼される事が多く、安定感のある番組造りに信頼と実績があるとの事だ。


「デッカいオモチちゃんも人懐っこいし、尻尾マフラーのマフ子ちゃんも優しい子だし、凄い子達だな~」


「きゅー」「ゆんっ」


「にゃん」「にゃ」「にゃ~ん」


「テブクロちゃんと福ポンちゃんも、こんなにキツネとタヌキが人に懐くなんて思ってなかったですよ。可愛いなぁ」


「にゃ~ん、にゃにゃん♪」


「にゃー子ちゃんも可愛くて賢い子だなぁ、まるで人の言葉が分かってるんじゃないかってレベルですよ」


 有本は動物系番組を幾つかディレクターとして担当した事もあり、OBTテレビ制作の割と人気のある動物系番組のスタッフとしても参加している。


 当然だが動物好きであり、今まで国内外を問わず様々な場所に赴いて動物を撮影したり、飼い主やトレーナーに取材をして来た。


 そんな有本は43歳という立派な年齢の男性なのだが、気はあまり強くなく優しいタイプの男性である。そして動物は好きなのだが、あまり動物からは好かれないタイプでもある。


「オモチちゃんはお腹を触らせてくれる猫ちゃんなんですねぇ、モチモチでフワフワで可愛いなぁ~」


「にゃん、なゃ~」


「ギドラちゃん達はよじ登って来てくれるし、マフ子ちゃんの尻尾マフラーは気持ち良いし、テブクロちゃんと福ポンちゃんは~~……もう最高だ!」


 有本は灰川家の猫たちから『猫キャバクラ・超ウルトラ接待モード』の待遇を受けている。もちろんにゃー子の指示であり、猫たちは良い人間には優しくするのが好きなため、しっかりと接待をしていた。


「なかなか良い子達でしょう? 賢いし毛並みも良いし人懐っこいですし」


「そうですねっ、すぐにでも動物タレントになれちゃうくらいに躾が行き届いた子達ですよ、可愛いなぁ」


 その会話を聞きながら、にゃー子は『そんじょそこらのアニマルタレントには負けないにゃ!』と思いつつ、有本の座るテーブルの上で普段より可愛い余所行きの声で鳴きながら可愛いポーズを取っている。


 完全勝利、動物番組出演決定、映画出演で大人気アニマルタレントに!、その夢が叶うかと思ったのだが。


「ですがユニティブ興行さんは動物タレント業務はできません、個人的には凄く惜しいです…こんな可愛くて賢い子達が揃ってるのに…」


「にゃっっ!?」


「えっ、どうしてですかっ?」


 にゃー子は『なんで無理なんだにゃ!』と言ってるが、当然ながら有本には聞こえていない。


「動物タレント業務をするならば必ず“動物取扱責任者”の在籍が必要になります。その要件を満たしていないため、ユニティブ興行さんは動物貸出業務を行う事は出来ません」


「あっ…資格とかが必要になるのかぁ…」


「はい、獣医師資格がある人が居れば問題なしなんですが、他にも一定期間以上の実務経験と資格試験を受けたりなどでも取れますが、所長さんは受験資格なども満たしていませんので」


 アニマルタレントの事務所をする場合には資格が必要となり、灰川はその資格を持っておらず、その資格を取得するための要件も満たしていない。他の職員や所属者も同じだ。


 つまりユニティブ興行は動物タレント業務は出来ず、動物モデルやCMやドラマ出演などの仕事は取る事が出来ないという事だ。要するに動物の貸し出しによって金銭のやり取りは出来ない。


 渡辺社長や花田社長はその事を少し知ってはいたが詳しくは知らず、簡単に資格取得が可能なら灰川にアニマルタレント業務を勧めるという気だった。富川は仕事への慣れから法律の事が頭から抜け落ちており、有本に早まって教えてしまったのだ。


 有本は灰川はその事を知っているものだと思っており、誰かしら資格を持っているものだと思っていたが、話をしたらそうではないと感づいた。


 資格を持ってる人を雇ってアニマルタレント業務をするという手もあるのだが、アニマルタレントの報酬は基本的に安く、そこまで割の良い仕事とは言えないという現実もあったりする。


「いや、残念に過ぎますよ所長さん! こんな可愛くて賢い子達ならタレントになったら絶対に引く手数多だっていうのにっ」


「うわぁ、残念過ぎる…でも資格がないんじゃ仕方ないよなぁ…」


 そうこうしてる間にも猫たちは接待しており、有本は動物に好き好き攻撃されてる状況に最高にご満悦だ。


 だが猫たちは『撫で方がちょっぴり下手だね』と思っており、実はそれこそが有本が動物から好かれない理由だったりもする。


「でもネット動画投稿とかなら問題ないですし、あとは資格や貸し出しとならない形での出演であればテレビなどでも~~……あ、すいません、電話が来ちゃいました」


「あ、はい、お気にせずどうぞ」


 有本は会社から電話が掛かって来てしまい、事務所から一旦出て行ったのだった。


「にゃ~! せいちゃん、そんくらい調べとけにゃ! 資格とっとけにゃ!」


「無茶を言うなっての、俺だって業界歴は浅いんだからよ。それにアニマルタレントの収入は低いって言ってたし、ネット動画の方が良さそうだけどな」


「ネットだと、にゃー子はとっくにVtuberやって……なんでもないにゃ! テレビに出たかったにゃ…」


「でもよ、にゃー子はカメラに映ると心霊写真とか動画になったりするじゃん、陽呪術で何とか出来るけど普段から俺が一緒に仕事に着いてけるか分からんし」


「そこがネックなんだにゃ、にゃー子の猫叉陽呪術じゃ効果が短いしにゃ、今回は諦めるしかないかにゃ…大ヒット映画に出たお金で大トロ食べたいにゃ…」


「大トロの入手方法にも拘る猫叉って、なんか生々しいな…まあ大トロなら今度に買ってやるからよ、俺も収入は増えそうだし」


 スポットライトを浴びたい猫叉のにゃー子だが、そんな話をしてたら有本が戻って来た。


「は、灰川所長さん! 折り入ってお願いがっ」


「にゃ~ん、なゃん」


「きゅ~」「ゆんっ」


「うおおっ!可愛い! オモチちゃんもテブクロちゃんと福ポンちゃんも俺に懐いてくれて嬉し過ぎる! じゃなくて!」


 猫たちは接待モードは抜けておらず、そうでなくとも有本が動物好きなのは分かるため、普通に近寄って遊んでもらおうとしてる。


 だが会社から緊急の連絡が来たらしく、ソファーに座って猫たちを愛でつつ灰川に焦った顔で話をした。にゃー子は『とりあえず媚びを売っておけば得しそう』という気持ちから、まだ接待モード終了の合図は出していない。


「マフ子ちゃんの尻尾マフラー最高過ぎるっ…こんなの最高級マフラーでも満足できなくなっちまいそうだっ…! じゃなくてっ」


「にゃ~ん……にゃん…」


 ちなみに有本は中学生の息子が動物アレルギーを複数持ってるため、家ではペットを飼えない環境だ。それもあって動物を愛でたい欲が結構強かったりする。


 今まで夢見ていたスーパー動物モテモテタイムをもっと満喫していたいが、仕事のために心の中で号泣しながら話を移す。動物大好きだけど動物非モテ男はつらいよ。


「実は先程に流れた亮専建設の社長の家族が起こした大事件が、テレビ業界にも影響してまして~~……にゃー子ちゃんの毛並み最高っ、凄い撫で心地! じゃなくてっ」


 例のスキャンダルがムジ―放送制作が作った番組にも影響が及んだ。なんと今日にOBTテレビで放送予定の、人気芸人の冠特番『ヤンリーのアニマル大好きパラダイス』で流される映像に問題が発生したのだと言う。


 その番組では少し売れて来た芸人の出演者が動物園に行って、変わった動物を紹介するという部分があるのだが、その出演芸人が例の事件に何らかの形で関わっていた事が判明して使えなくなってしまったのだ。


「えっ、でもその番組って今日の放送なんですよね? 緊急ニュースとかで番組ごと放映されなくなるなんて事はないんですか?」


「夜までにはニュースの鮮度は落ちてますし、緊急特番は今に放映されているもので終わるでしょう。これだけ大きな事件だと、誤情報の流布防止のためとか、その他の理由で続報なんかも入って来にくいでしょう」


 夜には番組が予定通りに放送される可能性が高いらしいが、2時間特番の内の15分程が丸ごと使えなくなってしまった。その埋め合わせを急遽に行わなくてはならなくなった。


 ネット動画とかを適当に漁って使えば良いとも灰川は思うが、OBTのテレビ番組で流されるネット動画なんかは全て使用許可を製作者から買い取っているらしく、そう簡単に決められるものではないそうだ。


「しかも…今回の番組のセールスポイントとして視聴者にアピールしてるのが、全映像が新規映像という部分なんです。一回でも使われた映像は使用できないんですよ…」


「マジですか…」


 過去映像の流用は絶対にしないというのが番組の売りであり、そこだけは崩す訳に行かない。


 それを踏まえて有本に送られた会社からの命令は、5分で良いから新規映像を持ってこいというものだった。


「お願いします灰川所長! にゃー子ちゃん達を“ヤンリーのアニマル大好きパラダイス”の映像協力として動画を撮らせて下さい! 謝礼は致しますので!」


 そんなこんなで猫たちを撮影してテレビに緊急で出させてくれと言われ、灰川はどうすれば良いのか迷う。にゃー子は『チャンス来たにゃ!せーちゃん、ゼッタイに受けろにゃ!』と言っている。


 だが、その時に灰川はオモチ達は以前に空羽の実写チャンネルに出演した事があったのを思い出し、モーニングドンドンに少しだけ佳那美とアリエルのスマホに入ってる動画が映されてプチバズしていた。


 あの時にもネットでは自由鷹ナツハの実写チャンネルに映っていた猫たちじゃないか?いう声が上がっており、それはどうするべきかと思って渡辺社長に電話を掛ける。


『構わないさ灰川さん、あの時の事は契約書とかは交わしていないんだし、灰川さんの判断に任せるよ。でもナツハには話を通しておいた方が良いと思う』


「分かりました、じゃあちょっと聞いておきます。できたらこれで何か影響があれば良いんですが」


『うーん、今日は痛ましい大事件が報道された日だからね、タイミングは悪いけどチャンスではあるかも知れないよ』


 渡辺社長からは灰川の判断に任せるという話がされ、灰川は最初は渋られると思ったが今は3社の繋がりを今以上に匂わせたいという理由から問題ないと言われた。


 花田社長もこの話は活かした方が良いと言っており、恩を売るという名目でも話は受けるのが得策だと言う。


 空羽に電話をしたら『にゃー子ちゃん達がテレビに!? 私も撮影を見に行きたい!』と言ったが、配信があるからそれは無しになる。 


 空羽は今夜の番組を録画して、にゃー子達の雄姿を何回も見てやると意気込んでおり、撮影を見に来れないのが本当に残念そうな声をしていた。


「あ、それと一応ですが猫たちは少し前にOBTさんのモーニングドンドンに少しだけ姿が映ってプチバズしたんですが」


「問題ないですよ、たとえ他局の番組の出演だったとしても不義とかにはなりませんから」


 こうして緊急の動画撮影となり、カメラは灰川のスマホを使う事となったのだった。


「でも猫だけだと画面的に弱いですか? 近くにウチの子役タレントが居るんで呼んできて出てもらいます?」


「実原エイミさんと織音リエルさんですよね、うーん…でも編集作業とか間に合うかな…」


 今回はスピード命の案件であり、それと同時に動物がメインの番組なので、どうするべきか迷う。あくまでメインは動物の番組であり、人間が目立つのは良い事ではないだろう。


 灰川としては不自然に2人が出演したらゴリ押し子役とか言われてしまう可能性もあるかもが、そんなの気にしていたら芸能界でやっていけないとも有本には言われた。


「あとエイミさんとリエルさんを出すなら、ただ可愛いだけの映像だと弱くなっちゃいますね」


 有本の意見では、モーニングドンドンの時とは違ったインパクトがないと、視聴者にとって弱い印象になってしまうだろうとの事だ。


 様々な関係や繋がりが増え、活躍の場が広がれば制限やしがらみも増えてしまう。動きを増せば全場面で最良の選択だけを取っていく事は出来なくなっていくよう、世の中は出来ているのかも知れない。


 結局は時間もないし複雑な事を考えてる暇もないので、ユニティブ興行に居る動物たちの紹介という感じの映像にしようとなる。そこにユニティブ興行の所属者の紹介を少しだけ入れてもらうという形にしたのだった。


 カメラを向けると凄く良い感じのポーズを取ってくれるにゃー子ちゃん、いつも3匹一緒で仲良しのギドラちゃん、大きい猫で肉球とお腹をいっぱい触らせてくれるオモチちゃん。


 人に一切嚙みつかず楽しそうにジャレてくれる仲良し狐と狸のテブクロちゃんと福ポンちゃん、寒いなとか寂しいないう雰囲気を出したりするとフカフカの尻尾でマフラーしてくれるマフ子ちゃん。


 そんな映像をしっかり撮影し、後でナレーションを入れるとのことだ。今夜の放送に間に合わせるため本当に緊急で作業して、テレビ局に納品しなければならない。


「ありがとうございますっ、助かりました、にゃー子所長っ!」


「所長は俺ですって! にゃー子は猫ですから!」


「そうでした!すいません灰川所長さん! うあ~!帰りたくねぇよー! もっとユニティブ興行のアニマルちゃん達と触れ合いてぇー!」


「にゃん、にゃ~ん」


 有本はユニティブ興行の猫と狐と狸をいたく気に入り、凄く後ろ髪を引かれてる。


 スマホ動画は灰川がしっかりとムジ―放送制作に送り、ちゃんと受領したという返信が来て仕事は終了した。


「所長さん! また折を見て来所しても良いですか!? 俺に懐いてくれる動物がいっぱい居て癒されまくりでした!」


「ま、まあ、テレビ関係者だし富川Pの紹介ですし良いですけど、普段は事務所に動物は居ませんよ? アニマルタレントの仕事も出来ないって分かったし」


「ちくしょぉ~! また皆に会わせて下さいね! じゃあ今日はありがとうございました!猫ちゃんたちとテブクロちゃんと福ポンちゃん、また会いに来させてね! それでは!」


 結局はユニティブ興行は現状ではアニマルタレントの仕事は受けられないという事が分かり、有本は緊急の仕事を終えて会社に戻って行ったようだ。テレビ業界には日曜も祝日もないらしい。


「にゃー! せっかく猫女優になれると思ったのに、とんだ早とちりだったにゃ! 今からでも資格取ってこいにゃ!」


「無茶言うなって、まあ動画とかには出れるんだし、そっちで看板アニマルとしてやるってのはどうよ」


「にゃー…仕方ないにゃ、みんなも楽しいこと好きだし、たまにそういうのやってこうにゃ…」


「もしかしたら別の形で次の縁があるかもだしよ、とりあえずは今夜の番組一緒に見ようぜ」


「そうするにゃ! 知り合いの皆にも今夜の番組見るように伝えるにゃ」


 こうして今回の出来事は終わり、市乃たちに今夜のテレビ番組で猫たちが出演するとメッセージを送っておいたのだった。


 皆は一様に『絶対に見る!』と返事をしてくれて、灰川はレッスンの終わったアリエルを連れてアパートに帰った。




「うししっ、猫どもがテレビに出るぞぉ~、お兄ちゃん録画の準備してるか~?」


「おう! 有本さんも猫ども絶賛してたし、良い感じに編集してくれてるだろうなっ」


「ギドラも映ってるんだよね灰川さんっ、映ってなかったら恨みますからね!?」


「ハイカワのお部屋にアニマル大集合だねっ! オモチのお腹クッション気持ち良いやっ、くふふっ」


「にゃ~、なゃん」


「きゅぅ」「ゆ~んっ」


「にゃ…」


 馬路矢場アパートの灰川の部屋に砂遊、朋絵、アリエル、動物たちが勢揃いしている。今から始まるゴールデンタイム特番、ヤンリーのアニマル大好きパラダイスを視聴するためだ。


 砂遊は今日の配信は終わっており、朋絵は灰川家の動物たちの出番が終わったら配信を開始する予定である。


 ちなみに朋絵はにゃー子の声は聞き取れないが、人間の言葉が分かる猫叉だから秘密の話はにゃー子の前でしないようにと言ってある。これも朋絵は信じてくれて、絶対に他言しないと約束してくれた。もっとも誰かに言っても馬鹿扱いされて話は終わりだろう。


「アリエルは宿題とかはやったのか? 今時の小学校の宿題とか、休みの時の量って多いんだろ?」


「ボクはFridayの放課後に済ませたよっ、5分で全部やっちゃったさっ」


「アリエル君は頭が良いよねぇ~、しかもイケメン女児な上に運動も演技も出来るしな~」


「私もそんな才能の塊みたいな子に生まれたかったかも、まあ今は満足してるんだけどさ」


 雑談とかしつつ番組を見て色んな動物の姿に癒されたりして、遂にユニティブ興行の動物たちの出番が来た。


『お次は新しく発足した芸能事務所!ユニティブ興行さんに居るアニマルちゃん達を紹介しちゃうぜ!』


『ユニティブさんって話題になってたよな! メッチャ可愛い子役タレントが居るってよ!』


『あとVtuberさんも所属してるんだよっ、俺も注目度高いって思っててさ!』


 お笑いコンビのヤンリーが緊急で収録したと思われる映像が流れつつ、すぐにユニティブ興行アニマルたちが映された。


 映像にはしっかりナレーションも入っており、緊急に用意したにしては立派なものだった。多分あの後は相当に急ぎで編集作業とか声当て作業とかしたのだろう。


『さーて、どんな可愛いアニマルちゃん達が居るのか、見せてもらいましょう!』


 こんな入りで猫たちの紹介がされて、その中で手風クーチェと詞矢運モシィ、実原エイミと織音リエルの紹介も少しだけされる。


「あっ!私と砂遊ちゃんだ! 割と大きく映されてる!やった! ギドラもバッチリ映ってるじゃん!」


「にゃ」「にゃっ」「にゃん♪」


「うしししっ、テレビに映るの気分が良いなぁ~、主役はまた私たちVじゃないけどねぇ~」


「オモチも映ってるよっ、フカフカお腹もビッグな肉球もバッチリ決まってるね! カワイイなぁ、くふふっ」


「にゃん、なゃんっ」


「マフ子はテレビ会社の人に尻尾マフラーしてあげてる映像だな、テブクロと福ポンは仲良しな所が映ってるし、良い感じの映像だぜ!」


「にゃん……にゃぁ…」


「きゅぅ~っ♪」「ゆゆんっ」


 皆で楽しく番組を視聴していたのだが、その中に1人だけ、いや1匹だけ何やら変なオーラを出している者が居る。


「どうした? なんか言いたいのか、にゃー子」


「…………ないにゃ…」


「ん? どした、にゃー子? こんなに良い感じに編集してくれて嬉しいのかぁ、うしししっ」


「にゃー子っ、ボクも凄く良い番組だと思うよっ! 感謝感激だねっ、くふふっ」


 皆は満足の行く映像だったし、動物たちは自分たちに似たモノが機械の箱の中で動いて面白いとか感じている。にゃー子も満足しただろうと思ったのだが。


「にゃー子!自分で思ったより可愛くないにゃ! セクシーさもキラキラ度もぜんぜん足りてないにゃー! にゃ~~んっ!」


 「「!?」」


「えっ、にゃー子ちゃん何て言ってるのっ?」


 なんと、にゃー子はテレビに改めて映った自分を見て、自分に足りないものがいっぱいあると感じたようなのだ。


「にゃー子っ、自分じゃ可愛さはオードリー〇ップバーンのレベル、セクシーさはマリリンモ〇ローのレベルだと思ってたにゃ! 全く及んでないにゃぁ!」


「お前…2人とも世界的レジェンド女優じゃねぇか…」


「にゃぁ~、こうなったら猫専用エステと猫専用フィットネスクラブに通って自分磨きするにゃ! その金は誠治の事務所から出せにゃ!」


「そんなエステとスポーツクラブあるかー!」


 結局はそんなこんなで番組を楽しみ、その日は終わったのだった。にゃー子の野望は自分のレベルが低いと思った事により一旦は収まったが、まだまだ鎮火はしていない。


 灰川家の猫叉にゃー子はビッグになるため自分を磨こう!と思っている、まずは猫用顔面パックでも『耳可愛ニャン子チャンネル』の欲しい物リストに載せようかとか考えるのだった。そんな商品があるかは知らない。


 明日は月曜日で灰川は仕事で砂遊たちは学校だ、また1週間が始まっていくが頑張ろうと皆で思う。


 ちなみに翌日の朝に昨日の番組を見て辛抱溜まらなくなった由奈と空羽がアパートに来て、テブクロと福ポン、にゃー子とオモチに会ってアニマルパワーを充填して行ったりしたのだった。


「にゃー! 顔にバナナとかレモンとか乗せると美肌効果あるらしいにゃ!さっそくやってみるにゃ! でも猫叉にも効果ってあるのかにゃ?」


 にゃー子の美猫叉の道は理想もゴール地点も高いようだ、そんな灰川家の猫叉にゃー子は今日も元気です。


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