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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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323話 他人への嫉妬は程々に

 嫉妬という感情、人の持つ何かを羨むという感情だ。その何かというのは金銭や所有物などの物質的な物に限らない。


 社会的地位、精神性、境遇、生まれや家柄、偶然の幸運、情報や知識、その他いくらでも考え付く。


 誰かに嫉妬するのは時に苦しい感情だろう、だけど誰かに嫉妬されるのは快感という人も多い。心の中では皆、誰かに嫉妬されたがっている心があるかも知れない。


 誰かを悔しがらせたい、自分の力を見せつけたい、こういう心は表に出さないのが華というもの、出した途端に陳腐で矮小な心と捉えられやすいものだ。


「なるほど、高校生だった時に学詠館祭で立ち入り禁止になっていた場所に入ったんですか」 


「そうね、その後に学祭で立ち入り禁止の所に入ったら、仕事で酷い失敗するって噂を聞いたのよ」


 黒山はいつの間にか灰川に対しても敬語は使わなくなっていた、人間的に下の奴という見方に落ち着いたからだ。


 実はここに至るまで灰川は黒山に仕事は何をしてるのかとか、SNSを始めとしたインフルエンサー活動はしてるのかとか、そういう事を聞かれた。


 もちろん正直に答える事はなく、零細企業の下っ端とか配信者とかの活動はしてないと答えた。仮に配信者としての登録者数を答えてたら笑われてただろう。


 SNSなどでの社会的発言力も無く、金も権力も無い一般人、そういう評価に落ち着いて灰川は舐められた態度を取られている。好都合ではあるが気分が良いとは言えない。


「来見野ちゃん、今もその噂ってあったりする? 多真美はそういう噂とか詳しいタイプなんだよね」


「えっと、自分は知らなかったっす。オカルトとか最近は少し好きなんですけど、知りませんでした」


 来苑に関しては普通に喋ってるように見えるが、実際にはさっきからマウントを取られている。


「そもそも生活で何かオカルト的に困る事があったんですか?」


「うーん、他にも学詠館祭で立ち入り禁止の所に入って仕事でコケた人の話とか聞いたんだけど、それが25代半ばの時に来るそうなんだよね」


 確証のある話ではないが、その場所に入った他の者の話を聞いて行く。


 ソロ演奏家としてコンサートやネットで活動していた25歳のイケメンが、何やら性格が悪いという噂が広がって仕事依頼が減っている。


 海外で作曲活動していた女性が問題発言をしてネットで炎上、ヒット曲を何曲か出していたのに大幅に仕事が減った。


 他にも幾つかあるらしいが、どうやらその人達が学詠館卒で高等部の時に立ち入り禁止の場所に入ったという話があるらしい。同じ学校の卒業者のため、そういう話を何処かで聞いたそうだ。


 黒山も同じようにその場所、4階の奥にある学詠館祭の時に封鎖されている場所に入ってしまった。


 現状の黒山には名前に何らかのオカルト影響が出ており、その場所で何かしらの物か事があった可能性はある。


「私は今の所は何もないけど、ちょっと不安になって今年は来てみたってことなのよ。7万人もフォロワー居るし社長職だから、身バレが不安なんだけどね」


「4階の奥って何があったんですか? 怪しい物があったとか、変な事があったとかならオカルト関係の問題の可能性も上がりますけど」


 黒山が言うにはその場所で何か変な事は無かったらしく、霊感とかもないから何かを感じる事も無かったらしい。


「名前を変えろってどういうことなの? 流石にそんなの無理だけど」


 黒山は8年前の学詠館祭で立ち入り禁止の場所に入ったこと以外に、特にオカルト的なもので思い当たる節がないそうだ。


「黒山さんの名前に呪いが掛かっています。どうやら影響は呪いを受けた人や時によって変わるようですね」


「名前が呪われてる? それって証拠とかあるの? ってかアンタって一般人だよね、そんな奴が何か分かるの?」


 話してるだけでイライラして来る、見下し癖に嫉妬煽り性質、自慢癖にマウント癖、どれもこれも人の精神を逆なでするタイプの物だ。


 そんな中でも灰川は解析をしていき、少しづつ霊的な見極めていった。


 灰川が見立てた呪い効果は自意識を強くするという効果で、そこまで強い影響はなかったようなのだ。それが今は影響が強くなっている。


「一般人くらいの人だと分かんないかもだけどさ、勝ち組の人間って色んなこと知ってるの。自分の事は自分が一番分かってるし、普通程度の頭しかない連中とは~~……」


「ちょ、先輩っ!止めて下さいよ! そういうこと言うのがどんだけ反感を買うか分かんないんですかっ?」


「多真美も勝ち組になりたいなら付き合う友達は選んだ方が良いよ? 程度の低い奴と付き合うと嫉妬されるばっかで疲れるだけだし」


「先輩っ…! 本気で怒りますよっ…! なんでそんなことばっか言うんですかっ……!」


 正直に言うと灰川も来苑もムカっ腹が立っている、しかしそれは隠しつつ灰川は冷静に見ていき、来苑も話をしっかり聞いていた。


「に、兄さんっ、ちょっと向こうで話しようっ?」


「おう、そうだなっ」


 来苑が居たたまれない気持ちになり、灰川を連れて図書室の外に出て、少し離れた廊下で話をする事になった。




「な、なんすかアレっ!? あんなマウントして見下してくる人は初めてっすよ!」


「俺もあそこまで酷いのは初めてだな、でも明らかに霊的な影響を受けてるから怒らないように」


「それは分かってるっすけど…それでもムカムカして来ますって…っ」


 灰川は過去に仕事やオカルト依頼で嫌な人にも多数出会っており、その時の見識もあって平静は保てている。


「まあ今の所は上手く行ってるさ、あの人に掛かってる呪いは本来なら良い物だってのも分かったし」


「えっ? 自分はそんな風に思えないっすけど…」


「本来なら自意識を強くして、嫉妬とか悔しさをバネに心が成長することを促すって呪いだったみたいなんだよ」


 嫉妬も悔しさも人間が生きる上で当たり前に感じる感情だ、そういった感情を持った時にどのようになるか、そこが人生の分かれ目になる場合だってある。


 誰かが妬ましいから自分も努力して、その人を追い越せるようになろう。あの人に及ばないのが悔しいから、自分は他の方法で上に行ってやる。


 黒山に掛かっていた呪いは、そういう方面の心が持てるようになれるという呪いだった。


 その心があれば人生の壁に当たった時や、誰かを妬んでしまった時に努力という方法で人生を良い方向に向かわせるという性質のものだ。


 もちろん失敗する時もあれば絶対に人生が好転するという訳でもないものだ、しかし良い効果はあった筈である。


「そこそこには強い益呪(えきじゅ)だけど、精神的な影響はないし、あくまでお(まじな)いって感じで心が悪い方向に行かないようサポートするって感じだな」


「あれじゃサポートどころかマイナスしか無いっすよっ、本当にそういう呪いなんですかっ?」


「黒山さんの感情は多分、呪いが良い方向に変換できる嫉妬とか羨望の感情の許容量を大幅に超えてる。そのせいで呪いが悪い効果を発揮するようになってるな」


 あの呪いは絶対的な効果はなく許容量があり、それを超えるとマイナス効果を出すようになる。


 嫉妬や何かを羨む感情をプラスに向ける呪いだが、許容オーバー時に出る悪い効果も嫉妬や羨望に関わるものみたいなのだ。


 自意識の肥大化、嫉妬心の増大、羨望感情が歪む、そういった呪い効果が出る。


「それと嫉妬された時とか、誰かに羨ましがられた時に感じる快感が強くなるっぽい」


「嫉妬された時っすか? まあ…確かにそういう気持ちって分からないでもないっすけど…」


 嫉妬に関わる各方面の話はいつの時代も女の世界が主戦場、昔の怪談から現代のレディースコミックに至るまで、女の嫉妬に関する話は枚挙に暇がない。


 女性ホルモンが嫉妬心を増大させるとか、身体的な理由でイライラしてしまう時期がどうしてもあるとか、そういった科学的な理由もあるのだ。


 今も昔も女の嫉妬を金にする商売も多いし、漫画や脚本などの作家の中には女の嫉妬を描いて飯を食ってると言っても過言ではない人も割と居たりする。


 嫉妬や羨望とは強い感情であるが普通の感情であり、これらを感じないとなると精神が普通とは違うという事になるだろう。


「あの呪いはもう限界だな、許容オーバーで壊れる寸前だった。放っておけば今日中にでも壊れるくらいだったよ」


「灰川さんは祓わないんすか…? その…壊れて何が起こるか分からないかもしれないし、祓ってあげた方が良いんじゃ…、いけ好かない感じの人っすけど…」


「実はもう祓ったんだけどよ、まだ効果が完全には消えてない。まあ明日くらいには消えてるっしょ」


「そ、そうだったんですか!? 気付かなかったっす」


 来苑は霊能力があるから少し見れば分かるだろう、しかし効果は完全には消えていない。そもそも元の性格を知らないため、最初からあのような性格だった場合は他人にはどうしようもないだろう。


 今回は依頼を受けた訳ではないが、来苑の友達の先輩なこともあり、放っておくのも気が引けるため祓いはしておいた。


 しかし呪いの影響で黒山が振り撒いた悪印象まではどうする事も出来ないし、そこは灰川は関与するような事ではない。


 彼女は年商10億の会社の社長とは言ったが、正直に言うならそのくらいの会社は幾らでもあるし、赤字経営なのか黒字経営なのかも分からないし興味もない。


 灰川は少し調べてみたのだが、どうやら親の七光りで社長の座に就いたような感じで、業務内容は何かの小売りのようだった。社員は非正規雇用含めて120人くらいらしく、売り上げに対して多い気がする。


 経営手腕がどうなのかは分からないが、ネット情報を見る限りでは普通の会社といった感じだ。


 だがそんな事は今さら灰川たちには関係ない、正直言ってそこまで興味を引かれるようなことは無かった。


「後は4階の奥とやらに何があるかだよな、入れたら何か分かるかもだけど」


「4階は丸ごと部外者立ち入り禁止っすから、ちょっと難しいかもですよ」


「う~ん…まあ仕方ないか、後で考えるとしようぜ」


 その後は黒山には既に祓った事は言わず、特に気にする必要はないと言った。数日後にちょっと頭を抱えるような気持になるかも知れないが、適当に頑張って下さいと伝えたのだった。




「す、すごい人だったっすねっ…最後までマウント取って上から目線だったじゃないですか」


「俺もちょっと疲れたぞ…一般人と女社長って言葉を10年分くらい聞いた気がするな」


「先輩、あんな感じが続いたら会社が傾きますよ…早いとこ元に戻ってくれたら良いけど…」


 図書室には灰川と来苑と多真美が残っており、黒山は『今日もビジネスがあるから行くわね、皆も私みたくリアルでもネットでも勝ち組になれると良いわね』とか言って帰って行ったのだった。


 そんな事を言うなら来苑は視聴者登録250万人超えのVtuberで、SNSフォロワーも100万人超えなんだが?、と言ってやりたい気持ちになるが、言える訳がないので放っておくしかない。


「あの人っ、自分の力だけで登り詰めた気でいるんすかっ、それ流石に思い上がりっすよ! 腹立って来たっ、うぁ~!」


「気にするなって来苑、呪いだからしょうがない部分が大きいんだからよ」


 呪いと分かっていてもムカツクものはある、嫉妬煽りにマウント言動、私を羨めという無言の圧力、どれを取っても相対すれば嫌な感情になる。

 

「俺も前の仕事でも今の仕事でも傲慢(ごうまん)社長とか会って来たけど、やっぱ気持ちの良いもんじゃないよな」


「当たり前っすよっ、自分だってスタッフさんとか所属者で苦手な人が~~……あ、いや、音楽イベントのアレっすけどね! あははっ…」


 傲慢な人は田舎にも都会にも居るし、言葉や話題の端に『俺は凄い奴』『私は優れている』『お前は私の下だ』みたいなニュアンスを滲ませてる人も居るものだ。


 それらは無自覚で表に出ているものも多く、それを言葉にすれば『自分に酔ってる』ということになるだろう。


 そんなのが長期的に表に出たら大変に嫌われる事だろう、見境なしに人を見下してマウントする、嫌われない方がおかしい。


「黒山先輩って前はあんな感じじゃなかったんですよ来苑ちゃん、田中さん。悔しさとかをバネにして自分も上に行こうって頑張れる人だった」


「そうだったのっ? 自分は黒山先輩のこと知らないから、今とは違ったんっすね」


 やはり呪いの効果がプラスに働いていた時があったらしく、その時はマイナスの感情をプラスに変える事が出来ていたらしい。


「先輩が変わっちゃったのって、幼馴染の人が有名人と結婚してからって、お姉ちゃんから聞いたんだよね…」


「そうなの? 有名人って誰? ちょっと興味ある!」


「まあ、手間かけたんだし、来苑ちゃんなら話しても良いかな…」


 そこから多真美による黒山にあった出来事を聞いて行く。




  超絶嫉妬からの承認欲求オバケに!


 25歳にして女社長になった黒山、彼女は親の七光りではあるが社長職になり、親の助言を得つつ経営を学んでいたそうだ。


 そんなある日、黒山の幼馴染の女性が元男性アイドルにして現在は有名俳優と結婚すると、本人から聞かされた。


 その俳優はドラマや映画に何本も出ており、収入はもちろん名声も強い男性だ。そこそこ年齢差もあるが確実に優良物件なのだそうだ。


 多真美の姉もその事を知り驚いたそうだが、黒山はそこからどんどん変わってしまったらしい。以前から兆候はあったらしいが、決定的な性格の転換点は明らかにそこだったとの事である。


 それ以降の黒山は私は凄い人間という事を言葉の端に滲ませるようになり、会社の宣伝という名目でSNS活動に精を出すようになった。


 最初はSNSもそこまで変な内容ではなかったのだが、投稿内容に鼻に付くものが増えるにしたがってアンチなども出るようになり、ネットの一部ではヤバい女社長という事で名前が上がるようになったという。


 幼馴染の人が結婚相手の俳優と出会ったという港区に黒山も行くようになり、そこで人脈を広げるみたいな事をやってると聞いた。


 それを聞いて多真美も姉もすぐに勘づいた、『幼馴染への嫉妬で頭がおかしくなってる!』


 金持ちの有名俳優と結婚した幼馴染が羨ましい、誰もが羨む結婚相手を手に入れたのが妬ましい、その気持ちはどんどん制御不能になっていく。


 黒山は恐らくは幼馴染の事を心の何処かで見下していたのだろう、だから彼女がイケメン有名人と結婚した事にショックを受けた。


 自分は確かに社長をやっているが、その地位は自分で手にした成果ではない。豪華な住まいも生活も親があってこそというコンプレックスがあったのだと思われる。


 黒山はSNSに手を出して私って凄いでしょアピールをするようになり、成功者アピールや勝ち組アピールをどんどんするようになった。


 だがSNSは他の人も成功者アピールとかしている場であり、それを見て黒山の自己顕示欲と嫉妬されたい欲は膨れ上がっていく。


 


「そういう感じかぁ、今はSNSで輝かしい生活とかに憧れる人が多いもんな」


「自分はあんまりSNSとか見ないんすけど、そういうの多いらしいっすね」


「私はSNSとか見るけど、美智佳ちゃん達ほどハマってないかな~」


 ネットにはキラキラ生活アピールとか、一見すると普通の投稿に見えるが実は何らかの匂わせアピールだとかのポストがあったりする。


 そこには嫉妬されたいとか、私ってこんなに凄いんだぞという心が見え隠れする事もあるだろう。


 もしそれが表に大っぴらに出てきたら嫌な奴になる、それが長く続いてしまったら性格にまで染み込んで人格が変になるかも知れない。


「私も大勢に自慢できるような生活したいなぁ~、高校卒業したら本格的に頑張ってみるかなっ」


「あ、あはは…まぁ、程々にね多真美っ…」


「そろそろ行くか、じゃあそういう訳で」


 とりあえず図書室を出て多真美とは別々になる、やる事はやったのだし充分だろう。




「まず教員の人とかに4階の奥とやらの話を聞いてみたいな、どうにか出来る?」

 

「理事長とかに話せば聞けるかもっすけど、忙しいだろうし会ってもらえなさそうですよ」


「じゃあどうすっかなぁ、あんまり波風も立てたくないし、やっぱ放っておくか。問題になったらコトだしな」


 結局は放置するしかないという結論に至り、4階へは行かないという話になった。


「もし侵入して見つかりでもしたら大変な事になるしよ、それに本来は益呪術なんだから問題ないって思う事にしとこう」


「そ、そうっすね! それに4階って実は学詠館祭のカップルスポットだし、あんま行かない方が良いって自分も思うっす!」


 こうして話は終わり、真相究明や立ち入り禁止区域への侵入はしない事になった。


 黒山に掛かっていた呪いは明らかに現代には則さないものだった、ネットが発達した現代では嫉妬も羨望も昔より得やすい物となっている。


 現代で嫉妬や羨望といった感情の全てをプラスに変えるには、あの呪いでは許容量がまるで足りない。昔は余裕があったのだろうが、現代では通用しなくなっているのだ。


 あの呪いを現代でも通用するようにするためには呪いの補強と改善が必須だろう。


「あ、灰川さーん、来苑先輩とデート楽しんでるー? あははっ」


「市乃、皆も一緒か」


「はい、ですが佳那美ちゃんとアリエルちゃんは食べ過ぎで動けなくなっちゃって、保健室で休ませてもらっています」


「何やってんだか…まあ良いや、後で引き取りに行くか」


 史菜から聞く所によると佳那美はティラミスを食べまくってダウン、アリエルはシュークリームパフェという物を見つけて食べまくってダウンだそうだ。


「佳那美ちゃんはね~、“ティラミスおいしい!まだまだ食べちゃうよ!”って言って、10個くらい食べてたからね~、むふふ~」


「アリエルは“ボクならやれる!まだ食べれる筈だ!”って言って5個くらいパフェ食べてたわ! わははっ」


「マジかぁ、まあ2人とも育ち盛りだから仕方ないな。今日はチートデイなんだし調子に乗り過ぎちゃったんだな」


 そんな2人はしばらく休ませるしかないそうで、今は空羽が一緒に保健室で付き添っているらしい。人数も多いから全員で付き添うのも邪魔になるだろう。


「じゃあここからは皆で見回るか、流石にオカルトな事はもう起こらないだろうしなっ」


「えっ、幽霊とか居たの? ちょっと気になるかもっ」


「後で聞かせて欲しいな~」


 ここからは皆で見回って楽しく過ごそうと思っている灰川一行だが、その裏で発生している事を知る由はない。




「おい聞いたか…? なんか4階で迫田と長峰が掴み合いの喧嘩したらしいぞ?」


「田沢と小喜多もケンカしたらしいし他にも物騒なこと起こってるらしいじゃん、何かあんのかな…?」


 男子更衣室でステージに立つ用意をしている生徒が噂話に花を咲かせる。


 4階の学詠館生徒のスペースになっている場所で、楽しいイベントの日である今日に何故か生徒同士の諍いが連続してるというのだ。


「毎年4階なんてあんまり生徒は居ないし、そもそも陽キャのカップルがイチャイチャしたりしてるだけの場所じゃん」


「なのに何でそんな事になってんだよ、意味分かんねぇ」


「俺もカノジョが居ればなぁ~、そういやさっきスッゲェ可愛い子達が歩いてたんだよ! 色んな学校の制服着た子達だったから、誰かの友達グループなんだろうなぁ」


「見た見た! 白杖の子とツインテールの子とか居たよな! 小学生の子も居てスゲェ可愛かった、俺の好みはセミロングのモデルみたいな美人の子だな!同学年かもだぞ」


 4階にて何かが起こり始めており、それを察知した学詠館の理事長や教育長といった数名の者達が『早く対処しなければ!』と沸き立っている。


 マイナス感情は自分でコントロールが出来れば強い利点にもなり得る、しかし現実はそんなに甘くない。


 怒りで視野が狭くなる事なんて誰でも経験するだろうし、嫉妬で気が狂いそうになるような気持ちという物が本当にあると分かった人も居るだろう。 


 もしそういった心をコントロールして自分のためになるよう使えたら素晴らしい事だ、マイナスをプラスに出来たら最高だろう。


 今、学詠館高等部に隠された立ち入り禁止区域にて、何かしらの問題が発生している。


 それは本来なら良い効果をもたらすモノだったが、今は器が限界に達して何かが漏れ出しているようだ。灰川たちは今は気付いてないが、気付くのは時間の問題だろう。


 もしかしたら既に学園祭とは別の祭りが始まっているのかも知れない。


 ちょっと上手く書けてません!

 嫉妬に関する生々しい描写を入れようとすると文章が長くなり過ぎて、削った結果こうなっちゃました(泣)

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