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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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317話 出張後の仕事

「マジですか…」


「本当です、砂遊ちゃんのデビュー配信も話題になりましたし、佳那美ちゃんとアリエルちゃんのテレビ出演の反響、かなりありました」


「ま、まあ色んな所の力を貸してもらったんだし、反響があって良かったですよ!」


「それと英明さんから所長に、依頼の追加報酬として車を頂きました」


「!!?」


 灰川が居なかった間に色々な事が動いており、ユニティブ興行や他の2社も今は話題に上っている状態だ。


 まずは詞矢運モシィのデビュー配信で手風クーチェも事務所に所属していると明かし、そこにネットで話題になってる実原エイミと織音リエルも同所属だと言って話題になった。


 実原エイミと織音リエルのテレビ出演も上手いこと話題に上り、様々な問い合わせが事務所に来ていたらしい。番組ではVの2人も紹介されており、この効果も大きかったみたいだ。


 Vの2人の登録者は一気に増えて、今は2人とも30万人を越えた。ネットで話題になり、その話題がネットを越えてメディアに行き、メディア出演ではエイミとリエルが頑張ってくれて話題が強まったのだ。


 本人達の努力や持ち味、各種のスーパーサポートとスーパーラッキーが素晴らしく噛み合ってくれた。もしかしたらアリエルの聖剣の加護の力とかもあるかも知れない。


「他にも様々な事があったんですが、ユニティブ興行に入所したいという応募も来たので、少しだけでも目を通して見て下さい」


「入所希望!? マジすかっ、なんだか嬉しいなぁ! こんな小っさい事務所に応募してくれるなんて!」


「ですがユニティブ興行は色々な事情もありますし、入所者応募は出してないので、余程の掘り出し者だったら社長さん達や四楓院さんに相談という形が良いと思います」


「そうですね! 本音を言えばウチを選んでくれた時点で全員入所してもらいたいくらいだけど、まだ金もあんまり入って来てないから無理ですしね!」


 ユニティブ興行は本格始動して3日という事務所であり、まだ大した金は入って来ていない。職員も数が居ないし、入所者を多く増やすような余裕はないが、それでも逸材が居たなら入所して欲しいなぁ~、なんて気持ちもある。


「ってか、まず英明さんに車なんて受け取れないって連絡しなきゃ! いくら何でも額が大きいし!」


「そうですか、でも会社の車は欲しいですよ。所属者の移動とかにも便利ですから持っておくべきだと思いますが」


 そんな会話をしてから灰川は英明に電話を掛け、流石に受け取れないと言ったのだが、名前が上がりつつある事務所なんだから持っておいた方が良いと言われた。


 英明が渡したのはボックスカー1台と、乗り心地の良いSUV車で、仕事用と私用で使えるから便利ではある。


 結局は言いくるめられて灰川は車を受け取る事となり、強く感謝を伝えてから業務を進めることになったのだった。




 業務をしようとしたのだが、実際には灰川がする事はほとんど無かった。昨日までの時点で仕事の契約業務は、四楓院関係のプロとハッピーリレースタッフによって凄く良い形で終わらされており、今は仕事メールとかの確認などをしている。


 しかしそれは前園もしているため終わりが近く、灰川は時間が余りそうだったので入所希望者のPRメールや、芸歴やネット活動歴などに目を通す。


 そういう業務は灰川にとって凄く新鮮だった、4人のユニティブ興行所属者は素性を元から知っていたので、誰かのPRとか活動プロフィールとかを目にする機会は無かったのだ。


 もちろん三ツ橋エリスや自由鷹ナツハのPRとかも見た事ないし、最初は緊張してたとかの話も皆から聞いたけど、実感は伴わない話だ。


 ユニティブ興行は所属者募集の告知などはしていないが、それでも送って来た気合がある人達だと灰川は思う。


 とりあえずは送られて来た個人情報はしっかりと管理しつつ、目を通して行くのだった。




「う~ん、どうすっかなぁ~」


 事務所の中で唸りながらアレコレと灰川は考える、やがて前園も業務が片付いたので体を伸ばそうと窓際に行った。その際に灰川のパソコンの画面が目に入る。


「ちょ!所長!? 何があったんですか!?」


「うおっ! ビックリしたじゃないですか前園さん! ちょっと調べ物してただけですよ、人の見分け方とかの」


 灰川は送られて来た情報を元に、入所希望者の言い見分け方などが無いか調べていたのだが、その検索ワードが不穏だった。


『恋愛マスター自認者 ビ〇チ 見分け方』


『告白された回数を自慢する男 精神』


『加工した写真を送って来るモデル希望者 目的』


 なんていうワードが並んでいて、前園は柄にもなく驚いて声を上げてしまったのだ。


「いや、なんかPRで今まで50人と付き合った恋愛マスター女子大生の女優希望者とか、101回も告白された男のタレント志望とかがあったのでぇ…」


「どれも問題外じゃないですか! 絶対に数を盛ってますから!」


「そりゃそうですよね、でも最近の若い女性は2,30人と付き合ったり、モテ男なら2時間に1人くらいから告白されてんのかな~とか思って」


「50人と付き合って別れるとか逆に恋愛が下手でしょうに! 2時間に1人から告白される男が居たら異常事態ですよ!」


「ですよね~」


 恋愛マスターを自称する応募者は、私ほど恋愛を知り尽くした女は居ない、あらゆる男を落とす恋愛テクニックがあるから、恋愛系コメンテーターとして芸能界で活躍できると書いてあった。


 そもそも恋愛マスターって何だ?と灰川は思う、イメージでは異性の事を深く知って、恋愛に関する相談などを人から受けて成功に導くという感じだろうか。


 しかし、応募者の書いてる事は恋愛マスターと言うより、どちらかと言うと誘惑マスターみたいな文面である。


 添え付けられていた写真は自信に溢れた美人系寄りの顔立ちだが、あまり愛嬌がないタイプの美人顔である。あと背景に生霊が写ってる、心霊写真を送ってくんな!


「男の所属者はどうすっかなぁ~、シャイゲと関わるなら男の影は良くないだろうしなぁ…」


「2時間告白男ですか、この人はナシでしょうね」


 別に本人が2時間に1度の頻度で告白されてるなんて言った訳ではないが、ユニティブ興行での彼の呼び名がそう決まってしまった。


 恋愛に関する嘘は女の専売特許ではない、男だって普通にそういう嘘を付く。


 前園が言うには芸能事務所とかに送られてくる恋愛遍歴は、良い内容も悪い内容も嘘だと思った方が良いとの事だ。


 ライクスペースでは前園は入所希望者の面接などもやってたそうなのだが、彼氏が出来た事ありませんと言ってるけど、立ち振る舞いで明らかに恋愛経験アリと分かる女性とか普通に来たそうだ。


 男の場合も、女性経験が豊富で女心が分かると言っているけど、何度か面接してると『好かれやすいけど、付き合い始めたら嫌われるタイプだな』と感じたりしたらしい。


 別にそういった人達でも活動に関しては問題ないし、嘘が上手い人も歓迎の業界ではある。しかし嘘を付くなら上手く使わなければいけない、バレずに活動するというのが前提だ。そういう人を見抜く目を養いつつ、ユニティブ興行は慎重に人を見ていきましょうと諭された。


「モデル志望なのに加工した写真を送って来るのは意味が分からないです、今回は纏めてボツですね」


「所属者の募集は今はしてないんで、断りのメールも送らなくて良いでしょうね。またヒマになったなぁ」


 実原エイミと織音リエルの仕事に関しても先行きは良い形で決定しており、クーチェとモシィも予定はひとまず決まっている。


 これ以上は特にやる事も無く、今日は5時に上がれそうだなとか考えている。しかし所属者や職員を迎えてからは、早く仕事が上がると心の何処かで『このままで大丈夫か?』と思う心も芽生えていた。


 この先も業務をやって行くためには所属者を増やす事も考えなければならないし、そうなれば職員だって増やさなければならなくなる。今は業務にも余裕はあり、まずは今の状況をしっかり流せるようになってから考えよう、とか思っていると。



「あのね、ここはアポイントメントがある人と関係者以外が入っちゃいけないビルなの、王中華飯店さんは別だけどね」


「えっ? 私が関係者だって知らないんですかっ? 彼氏さんからのプロポーズを待ってるのに、なかなかタイミングが来なくてイライラしてそうな顔をしたお姉さんっ」


「うぎゃぁ~~! この子すごい(えぐ)って来るぅ! メチャ気にしてるのにぃ~! なぜ分かったぁ!」


「恋愛マスターの私にはお見通しですよっ、こんな小さな女の子に図星を突かれて悔しいですね~? アハハっ」


「うぅ~…弘八のバカタレ~…、時間が合わんの分かるけど、早よプロポーズしてやぁ~…ぐす…」



 どうやらSSP社の女性警護士の坂林がビルの入り口で誰かと話しているらしい。


「なんか坂林さんが野良の恋愛マスターと言い合いしてるっぽいですね、見に行ってみますか」


「野良の恋愛マスターって初めて聞きましたね、でもこの声って何か聞き覚えがあるような…」


 灰川と前園が事務所の外に出ると、そこには坂林ともう一人の人物が居た。


「こういうのは焦っちゃダメですよ。お姉さんは綺麗で優しいんですから、ここは信じて待つのが吉ですっ。良い女なんですから、過剰に不安になっちゃ損しちゃうだけです、アハハっ」


「うぅ…煽られて抉られたけど、なんか良い感じに諭された…。プラスかマイナスで言ったら結構なプラスっぽい…」


 「「………」」


 雑居ビルの入り口に居たのは乃木塚 愛純だった、元ライクスペース所属のVtuberであり、朋絵の後輩にあたる子である。


 現在は午後の2時くらいであり、どうやら愛純の学校は今日は早めに終わったようだ。家で着替えて来たらしく、年相応の可愛い感じの服装だった。


「あっ!灰川さんに前園さん! 朋絵先輩がテレビに出てたじゃないですかー!」


「ちょ! 愛純ちゃん!?」


「しかも最初は気付かなかったけど、雑誌の表紙でバズってた子って、よく見たらアリエ~~……」


「よ、よし! 事務所の中で話そう! 入って入って!」


 愛純はアリエルが初めて事務所に来た時に鉢合わせており面識がある。


 アグリットの表紙写真を見た時は、まさかアリエルだとは思わなかったらしく、テレビで実原エイミと織音リエルを見て、Vの2人の紹介VTRで手風クーチェを見た時に『アリエル君だ!』と気付いた。




「灰川さん! あんな大きな仕事がいっぱい受けられる事務所さんだったなんて、知りませんでしたよっ! 事務所の看板もコンサルタント事務所のままですし!」


「ま、まあ、それは後で変えれたら変えよっかな~、なんて」


「猫ちゃん達もバズってますし! ドラマ出演とかキッズファッションショーに出演決定とかっ、朋絵先輩とモシィちゃんもnew Age stardomに出演とか! そんなの聞いてませんでしたよ~!私も最初から入りたかった~!うえ~~ん!」


「ちょ!泣くなって愛純ちゃん! 恋愛マスターは泣いちゃダメだろ!」


「中学1年生で恋愛マスターを名乗るのは早すぎるわね愛純ちゃん、彼氏が出来た事が無いのも丸分かりだし」


 ユニティブ興行は灰川が思っているよりもセンセーションを起こしているらしく、実は今はそこそこに注目株の事務所として活動者たちからも見られてるらしい。


 灰川はSNSなどの検索の仕方が下手で、しかもあまり長時間は見たりしない。最近は遠出してたから尚更であり、ネットでの詳しい評判はそこまで見ていなかった。


 愛純が言うには『ユニティブ興行がVtuberとかモデルや俳優の募集を掛けたら即応募する』とかの声もSNSに多く上がってるらしい。


 実原エイミちゃんと織音リエルちゃんが出るドラマは絶対に見るとか、手風クーチェと詞矢運モシィのペアは良い感じがするとか、様々な声があるようだ。


「灰川さんって所長さんなのにっ、なんでそんな事も知らないんですかぁ!? ちゃんと所属者の活動とか見てるんですかっ!?」


「う…ここ最近は忙しくてさ…! あんま見れてないって言うか、ほとんど~…」


「所長!? 本当に全く見てないんですか!? 色々あったのは分かりますけど、それはちょっと…」


 灰川は自分の事務所の所属者を気に掛けてはいるのだが、色々あって活躍をあまり見ておらず、それは問題があるんじゃないかと今になって心に押し寄せて来た。


「所長、皆の活躍は録画やアーカイブで見れるので、今から見ましょう。流石に問題あります」


「で、ですよね前園さん、よしっ、ちゃんと見ようっ!」


「私も入所するんですから、所属者の活躍は所長さんがちゃんと把握してないと困りますっ! 自分が入る事務所の所長さんが情報パワー弱わ弱わとか、どうしたら良いのか分かりませんしねっ!」


「まだ入ってもないのに気が早いって! 愛純ちゃんなら歓迎だけど、親御さんの許可が下りないと入所は無理だからねっ!?」


 そんなこんなでドタバタしつつ、灰川と前園と愛純の3人で、ここ最近のユニティブ興行所属者の活動や業界の動きを、しっかり見ていく事になる。

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