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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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315話 呪いの影響

 今回はホラー色が強めです、苦手な方はご注意下さい。

 今回は1人称視点が多めの書き方に挑戦してみました!

 外での食事が終わった後、悠燕はホテルの部屋に居た。9人とも同じホテルで、それぞれ3人部屋にしてある。


 悠燕は木村沢 金保志と三檜 剣栄との3人部屋であり、既にベッドに入っているが寝れずに居た。


 眠れぬ夜はあれこれと考えに耽ってしまう性格であり、今夜も同じように悠燕は真夜中に思考の中に居る。


(金が無い奴は価値が無いか…そう思ってるのは俺の方なのかもな…)


 悠燕は幼少時に父親が自営業に失敗して自己破産しており、そこから家族は転がり落ちるように貧しくなって施設に預けられた。


 破産すると借金が消えるとか、そこから立ち直った人も居るとか、無責任な他人は言う時がある。そんな都合の良い美談ばっかりな訳がないだろうが!


 借金は消えるけど、生活必需品以外の物も消えるんだぞ!、無一文の何もなしの状態から立ち直るなんて、簡単なことみたいに言うな!


 破産手続きの時とかに家に来た地元銀行の行員のゴミを見るような視線…父さんと母さんをそんな目で見るなと思ったよ!


 近隣にあっという間に広がる噂、憐れみと好奇心の視線…人の家の不幸を興味本位で探って笑いやがって!


 家も金も失って食事すらまともに摂れない生活…最悪だ、周りの満腹な連中が憎くて恨めしい気持ちになる感情。


(金が無いのがどれだけ惨めで辛いのか、本当の意味で知ってる奴なんか世の中にどれだけ居るんだ…)


 俺は金のためなら何でもやると小さい頃から決めた、そして今は何だかんだあって霊能者なんてやって食ってる。


 1回の依頼で50万から200万くらい稼げる、もう貯金は1000万を突破した。どうやら世の中には心霊現象とかで困ってる奴が多いらしくて助かる。俺はオカルトを信じちゃ居なかったが、稼げるなら文句は無い。


 良い金になる客はヤクザと仲の良い土建屋の社長とか、悪どい事をしてる消費者金融の取り立て屋、クソみたいな遊びをしてる金持ち、その他だ。


 連中が何をやってるとかどうでも良いが、中にはお喋りな奴が居て、聞きたくもない話を聞かされる事もある。


 土建屋は山奥に何かを埋めたとか、取り立て屋は債務者に臓器を売らせるなら○○の国が良いとか、金持ちは関東の裏遊びは生温くて退屈とか話しやがる。俺に聞かせるんじゃねぇ!


 そういう連中が嫌いだ、呪いなんてモノが本当にあるなら呪われちまえ!と思う。


 本音を言えばそんな奴らと関わりたくない、だけど金には代えられない。金が無い辛さは誰よりも知ってるつもりだ。


 でも、いくら稼いでも心は落ち着かない。不快な何かを見る度に嫌な気持ちになってイライラする。


 ネットには『投資をしない奴はバカ』『雇われるのが嫌なら自営業すれば良いじゃん』『金銭問題は自己責任なんだから人を恨むのは間違い』とか、そういった声がSNSとか動画のコメント欄とかに溢れてる。そういうのは他人をイラ付かせるのが目的な書き込みが大半だと思ってるが、それでもたまに本気で言ってそうな物とかも見かけるんだ。


 だったらお前たちはどのくらい稼いでる?、貯金額は1000万?5000万?、そんな金は何かトラブルがあったら吹いて飛ぶぞ。


 株か外貨の投資で稼げてる内は良いさ、それが大幅マイナスになって損切りする時が来たらどうする?その時は『投資をしていた私はバカです』とか思えるか?


 雇われるのが嫌なら~~なんて書いてる奴はイラつかせ目的の荒らしとかなのは分かる。でも見かける度に『現実と人の事情を知れ!』と言いたくなる。


 自己責任とか言う奴は金に困った事が無い奴なんだろう。本気で金に困ると、ありとあらゆる方面に理屈とか無しに恨みと憎しみが向くもんなんだよ!俺の父のように!


 金が無いのは怖い、その本質は『力が無い』って部分なんだよ。


 児童福祉施設に入った後は、困る原因が金から体力に変わっただけだった。俺が居た施設では体力が無い奴はお菓子とか食事を職員が見てない所で奪われた。


 体力がある奴が何かやらかした時は責任を擦り付けられ、職員からは問題児扱いされ、施設に入った後でも惨めな思いをし続けた。


 金とは何か?、俺は金とは力だと答えるね。力が無い奴は虐げられ搾取される、見下されて良いように使われる。


 じゃあ力とは何だ?と聞かれたら、金という力を作り出す元である知恵や技だと答える。俺の力は金ではなく、人に色々な事を信じさせる話術や、金を引き出す話に運ぶテクニックなんだよ。


 人間は自分より弱い奴を叩いて笑う生き物だ、自分は弱いと心の底では認めたくなくて、人を叩かない奴らですら不幸な奴や弱い奴を心の何処かで笑って見下す。


 俺は叩かれるのも見下されるのもゴメンだけど、だからと言って力が無い奴を虐げる奴は大嫌いだ。俺は力が無い人たちが味わう気持ちも知ってる。


 そして世の中の大体の『自分は強者』と思ってる奴らも、少しのミスやトラブルで弱者に転落する事があるのも知ってる。安泰なのは本当に力のある奴だけだ。


 そして……自分の中にも自分より金が無い人や稼げない人を蔑む心があるのが分かる、それが凄く嫌だ。


 俺にそういう感情は無いと言えるほどガキじゃないし、そういう感情を持たないような特別な人間でもない。


 自分の中にはどうにも解消できないイラ立ちが常にある、世の中へのイラ立ち、人間社会へのイラ立ち、弱者だ強者だという摂理へのイラ立ち、そういうものだ。


(あれ…? なんでテレビが点いて……? かっ…体がっ……!)


 体が動かない、テレビが点いている、そして何故か……昼間に聞こえた誰かの声が聞こえる。


 俺は昼間、除霊の真似事をしてる時に耳元で『お前のせいだ』という声が聞こえた。あれは気のせいなんかじゃなかった、それと同じ声が暗い部屋の中でブツブツと何かを言っているのが聞こえる。


 テレビからは音は流れてない、でも映像が流れている。男が狭いアパートの部屋の中で泣きそうになりながら怯えている映像だ。


 この映像はなんだ?、動けよ俺の体!、色んな感情が頭を回る。 


 怖い、この映像を最後まで見たらどうなってしまうんだ?、ブツブツ言ってる声の内容を理解したら、何かが起こる。そういうのが何となく分かる。


 心霊現象だ、同じ部屋で寝てる金保志さんと三檜さんは気付いてないらしい、誰か助けてくれ!


 テレビの中の泣きそうになってる男が画面側を向いた、いつの間にか無表情になってる。そして聞こえていた声が何を言っていたのか理解してしまった。



「おまえも……誰かに人生の最後を決められる怖さと悔しさ……味わおうな…?」


「!!!」



 ああ、この人は……この、かつて人だったモノは俺の客の誰かに酷い目に遭わされた誰かだ…。


 金の問題なのか、口封じとか、たぶんそんな理由で命を奪われた人だ。そんな事をする奴と関わって除霊なんて事をしたから、真似事だとしてもやってしまったから怒らせたんだ。


 その時に足を誰かに掴まれた、この声の幽霊じゃないのが分かる。なぜか分る。


「…笑うなよ……俺が死ぬところを見て笑うなよ……、呪ってやるからな……2度と笑えないようになるまで……お前の子供も妻も……」


 俺はやってはいけない事をしてしまった、少なくともこのモノたちにとっては絶対にやってはいけない事をしてしまったんだ。


 多分だけど俺には本当に幽霊を祓う力があったんだろう。俺はその力を金で売りながら、酷い恨みや未練を消して、邪悪な連中の助けになっていた。


 金は大事だ、でもそんなのは命あっての事だ。


 俺は金のために酷い目に遭ったけど、酷い目に遭った人達を金のために追い打ちで酷い目に遭わせていたんだ。それに気付いてしまった。


 これから俺はきっと酷い目に遭う、殺されるのか、殺されるより酷い目に遭わされるのか、それは分からない。


 怖い、助けて、そんな声すら上げられない。


 俺が酷い目に遭わせてきたモノたちは、生前にそういう声を上げても、誰にも聞いてもらえなかったのかも知れない。


 その恨みすら上乗せされた憎しみと怒りが俺に向けられる。



「灰川流陽呪術! 邪気霧消!」


「!!」



 その時、凄く力強い声と、体の芯を打つような何かのパワーが体を抜けて行った。


 その瞬間にこの世で最も暗くて黒い何かというような気配が薄まり、体が動くようになったんだ。


 完全に気配が消えた訳じゃないけど、とにかく動けるようになった!助かったんだ!



 


 夜中、私は同じ部屋の朱鷺美ちゃんと早奈美ちゃんの迷惑にならないよう、ホテルの客室階通路の奥の休憩所みたいな感じの所でスマホを触ってる。自販機とかが置いてあるような、ホテルにはよくあるスペースだ。


 見ているのはもちろんSNSで、SNSを更新したりエゴサーチしたりしてる。


 他にも動画サイトの自分の管理ページを見て収益の予測を立てたり、動画に使えそうな心霊スポットの情報を調べたり、ネットはもう私の生活からは切り離せない。


 私はネット動画サイトやSNSで稼ぐ霊能者系インフルエンサー、今はコスメとアクセのショップも東京で開いてる。


 ショップの稼ぎはそこまで大きくないけど、自分の店を持つのは夢だったから構いはしない。ショップをやってるのが楽しいから店を開いたんだ。


 ネットで名前が売れた後は除霊とかの依頼も来るようになって、そっちの稼ぎも今は凄く大きい。依頼1件で今は最低でも50万は稼げるし、動画にすれば広告収入とかも入って合計で最低でも100万以上を除霊依頼1件で稼げる。


 ホラー系動画投稿者とかオカルト系業界にも顔が知れてるし、コラボとかもガンガンやって名前が広がってる。


「あっ、栃木に良さそうな心スポあるじゃん、ここキープっと」


 私は幼い頃に心臓移植手術を受けてから霊能力が付いて、そこから幽霊とかが普通に見える生活になった。感知力はゼロに近いって言われたけど、正直言って困る事は無い。


 手術費用も凄い金額だったみたいけど、迷わず手術を受けさせると言ってくれた両親には感謝してる。そんなに裕福な家庭でもないのにだ。


 今は費用は私がネット活動で稼いだ収入で払いきって、私はネット活動で凄く稼げるようになった。でもそうなるまでには色んな事があった。


 小学校の頃は移植手術を受けたって周りの人に知られて、好奇心の目を向けられた。幽霊が居るとか言ってキモがられたりもしたんだ。


 中学からは普通に友達も出来たりして遊んだりしたし、高校は陽キャグループに入って学校生活やってた。


 でも陽キャグループって言っても、私の高校には色んなグループがあった。


 本当に仲が良くて男女ともワイワイやってるグループ、ここは男女ともモテる奴が多い気がした。


 グループ内リーダーの権力が強い女子のみのグループ、このグループはリーダーが彼氏作らないと、グループの者は彼氏作ってはいけないみたいな雰囲気があったグループ。


 一見すると仲が良いけど、実はマウント取り合いが凄くて内情は割とギスギスしてた女子のみグループ、私はここのグループだった。


「あっ、メンバーシップ加入者が減ってるじゃん! マジ最悪なんだけど!」


 内情ギスギスグループはSNSとかネットで、どれだけフォロワー数とかイイネの数が稼げるかとか競ってた。私は最初はそういうの興味無かったし、ダンスとか心臓に負担を掛けたくないから出来ないし、やりたくなかったけど結局は始める事になった。


 高校1年と2年は大してフォロワーも増えなかったし、3年になってからも変化は無かった。


 友達に昨日は20イイネ付いて嬉しかったとか言うと、私は30イイネ付いたとか言われてマウントを取られる。そして『10くらい変わんないって~』とか30イイネの子は言うけど、目の奥では優越感に浸ってるまでがワンセットだ。


 グループ内の友達たちも私が大して力を入れてネット活動してないのは分かっていて、私は言わば『グループ内で気軽に自慢できる子』みたいな立ち位置だった。それはそれで気軽で良かったし、それなりに皆と仲良くやれて楽しかった。


 友達に『昨日にダンス動画がバズって1000再生もしちゃった!』と言われた時には凄いと褒めて、『SNSに写真上げたらイケメンにリプされた』とか、そういう話を聞いて凄いね、スゲーと言って持ち上げるのが私の役目。


 マウントを取られつつも良い友情を持てたんだと思う、居心地は良かったんだし。


 だけど就職先が決まった3年後半の卒業近くになって、大して熱意も注がずやってた配信でスピリチュアル系の話がバズった。


「やっぱ心スポだったら最低でも自殺があった場所か、出来るなら殺人事件で、一家心中あったとかだと最高なんだけどなぁ」


 バズってからは精神の変化とか感情の変化とかスゴかった、友人たちから羨望の眼差しを向けられ、多くの人が私の動画や配信を見るようになった。


 なんて気持ち良い世界なんだ!、と感じた。過去の辛かった移植手術や奇異の目で見られた事なんて吹き飛ぶかのような快感!


 バズるというシンデレラストーリーの主人公になる心地よさ、ステージに立って注目を浴びるという高揚感、こんなのは一度でも体験したら抜け出せない!、少なくとも私はそう思った。


 収益化してからはもっと凄く変化した、とにかく収益が凄い。スーパーチャットも来るし、動画再生の収益も私の動画は長めの尺が多いから、広告収益も高い。


 しかも過去動画だって再生されるから、動画を出せば出すほど儲かる。無限に売却できる商品を並べてるのと同じだ。


 濡れ手に(あわ)のボロ儲け、稼ぎが1か月で100万円を超えた辺りで私は高卒で入社した会社を辞めた。確か入社して半年くらいだったと思う。


 今は動画編集は外部委託してるから、動画素材を作るための撮影活動とか配信をやりまくってる。除霊依頼とか占いの依頼も多いし、それがまた動画になって稼げる、本当に凄い世界だ。


 視聴者の中には私を詐欺だとか言う人も居る、そういう反応は普通の事だし実際に私は動画を面白く見所がある物にするため、誇張や虚実を入り混ぜた事を言ってる。


 その程度は動画界隈なら誰だってやってる、心霊系ならヤラセとか嘘なんて当たり前だ。


「あれ…? 前に上げた動画、編集ミスなんてあったっけ…?」


 私はアップした動画のチェックだって怠らない、委託してても編集ミスされた事はあるし、編集依頼の伝え方が悪くて思った通りの動画にならないパターンもあった。今だってチェックしていた最中だ。


 それでも私が編集するよりプロに頼んだ方が良い物が出来る、面白くて見やすい動画じゃないと視聴者は着いて来ないのよ。


 私は運が良かった、安くて腕の良いプロ動画編集者に会う事が出来た。その人が編集する動画は最低の出来でさえ、私が編集した最高の動画より良い仕上がりになる。これ以外にも運が良かったと思える部分は多くある、運が良くなかったら成功して無かったと思う。


 バズって注目される事の気持ち良さを知り、努力して大きな稼ぎを得て上に行く楽しさを知り、運が味方して上手く行った時のイレギュラーな幸福感も知った。本当に今は充実してる、高校時代の友達たちに感謝だ。


「なんだろう、この人…? 撮影の時にこんな女とか居なかった…はずだけど…?」


 多くの人に注目されて、除霊が出来て凄いと言われ、同級生の誰よりも有名になって大きなお金を稼いで、募金したりして優しくて素晴らしい人間性だと多くの人に褒められる。


 お金、名声、ステイタス、20代の女が欲しいと思えそうな物は手に入ってる。私は成功した、努力が実って運も味方した。


 ブランド物の服を買い揃え、高級なレストランで高級なワインだって飲めて、男のインフルエンサーが私に寄って来る。


 病弱だった過去なんて帳消しになる程の幸福、皆に羨ましがられる存在、女としての頂点の一つに立っている女なのに……。



  なんで私はこんなにイライラしてるのよ!!!


「はぁ!? 意味わかんない!コイツ誰だよ! こんな女なんか居なかったでしょぉ!!」



 私は充実してる!、でもこんな良い事が続くなんて思えない!、それが怖いのよ!

 

「誰だよこのバカ!? なんで人様の動画に映り込んでんのよ!撮影中だって分かんだろうがよ!」


 この地位を!このステイタスを維持し続けるには失敗なんて許されない!、なのに今回の除霊は明らかに失敗した!


 今回の失敗は良いわよ!、灰川さんが受け持つって言ったんだから!、3000万も払える顧客は惜しいけど仕方ない。


 失敗がリカバリーされたと思った矢先に何よコレ!、なんで前に上げた動画、『自殺者が絶えない山奥の一軒家、決死の除霊』の動画に知らない女が映ってんのよ!?


 ボロボロの階段を降りて来る知らない女!、真っ暗な部屋の押し入れの中に座り込む女!、あっちにもこっちにも映ってる!、最悪なんだけど!


 あの家に自殺者なんか居やしない!、自殺した人が何人も居るんなんて私が作った話だ!


 あの家で幽霊なんて見なかった!、だったらコレって放送事故じゃない!、なんで撮影の邪魔すんの!?、素人が何してくれてんのよ!


「死ね…死ね…っ! 死ねっ、死ね、死ね、死ねぇ!! 私の邪魔するな! 私のステージを汚す奴は死ね!!」


 イライラが止まらない、怒りが制御できない。


 まるで高校の時に私が心の中で密かに感じてた怒りが出てきたような、その内に人気が落ちて視聴者も収入も減るんじゃないかという不安のストレス、人気が落ちた時に笑い者にされるんじゃないかって恐怖、そんなマイナスの感情が怒りになって一気に出たかのようだ。


 なんで動画撮影の邪魔するんだよお前!、人気が落ちるかもって恐怖がお前に分かるか!?、視聴者登録とかSNSフォロワーとか、メンバーシップ加入者のファンが減る怖さと悲しさって分かるか!?


 お前に言ってるんだよ知らない女!!、なんで私の動画に映ってる!?、動画の構成が変になってつまらなくなるだろ!


 人気が落ちたら見下されるんだよ!、弱者とか落ちぶれって目で見られて差別されるんだよ!


 もう差別されるのは嫌だ!、体が弱いからダンス出来ないでしょって言われる気持ちを味わうのは嫌だ!


 なんで世の中に差別なんて物があるのよ!、いい加減にしてよ!、今まで差別されてきた分、私は幸せになりたいのに!


 なんでいつもいつもイライラが止まんないのよっ!!、なんで動画に映ってる知らない女が自動販売機の取り出し口からこっちを見てるのよぉっ!


羽犬(はいぬ)っ、世理呼さんを助けてっ!」


「うぉんっっ! うぉんっ!!」


「……え…? あれ…? 私…なにが…っ、朱鷺美ちゃんっ??」


 藤枝 朱鷺美、まだ高校1年生の15歳だが、高い霊能力を持った霊能者である。


 藤枝家は先祖が犬を使った呪術や祈祷をしていた家系であり、現在は普通の家だが朱鷺美は霊能力が高く、犬神使役の呪法や霊法が使える子だ。


 そんな藤枝は福岡県筑後市の伝承の羽犬という妖怪、その伝承が霊的な形になったモノを呼び出して使役したのだ。


 世理呼は木村沢家の除霊を請け負った事により、彼らに掛けられていた商業呪術の影響を受けていた。灰川が世理呼に憑いていた悪念は祓ったが、変化した呪いは再び憑りついたのだ。


 元々は現会長である永太だけに掛けられたモノだったが、悪質な詐欺霊能者や間違った対処によって変質し、効果が拡大したりするようになってしまっている。


 現在の効果は悪霊を呼び寄せた上で強くしたり、呪いの効果を受けた者にイラ立ちや怒りの感情を殺意と言える程まで増幅して、正常な判断を失わせたりするらしい。その事は呪いが変質し過ぎていたため、見ただけでは灰川も分からなかった。


 こうなってしまうと世理呼では力不足であり、悠燕は特殊な霊力と特殊な幽霊の影響で呪いを更に変化させてしまう恐れがある。彼らは離脱させるべきだろう。


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