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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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313/333

313話 ユニティブ興行の旗揚げ配信

矛地(ほこち)アナウンサーさんっ、ありがとうございました! インタビュー楽しかったです!」


「ボクもすっごく楽しかったです! 明日の放送、楽しみにしていますっ」


「こちらこそインタビューを受けてくれてありがとう、写真と動画で見せてくれたネコさん達も可愛かったわよ、ふふっ」


 火曜日の夕方、佳那美とアリエルは渋谷の喫茶店でOBTテレビの朝番組、モーニングドンドンにて『ネットで話題の美少女俳優!』としてインタビューVTRが放送される。


 その撮影は先程に終了し、この仕事も非常に上手く行ったと付き添いで来ていた花田社長と木島は確信していた。


 テレビ局スタッフ達は映像編集作業もあるため急いで局に戻って行くが、帰りの車内ではアナウンサーやスタッフ達が佳那美とアリエルについて話している。


「さっきの子達、スゴい良い子達でしたね~、こりゃ腰入れて編集してあげなきゃって思っちゃいますよね!」


「そうだな、ってかあれは可愛すぎだな。雑誌の写真も可愛いし良い写真だなって思ったけどよ、実際に生で見たら更に可愛さが強いって思っちまったよ」


「実際に会うと普通は写真とかより劣化する事が多いけど、あの子たちはまるで違いましたね。撮影してて、とんでもないのが現れたぞって思いましたよね!」


 音声、ディレクター、カメラマンといったスタッフ達が、2人は凄い可愛かった、とても良い子達だった、と絶賛して褒めている。


 カメラ映りも良くて声も凄く良かった、笑顔も雰囲気も見る者を惹きつける元気な輝きがある。ドラマやキッズファッションショーの出演も決定しており、これからが楽しみな子たちである。


「今夜の配信の動画の切り抜き使用許可も出たから、モーニングドンドンで使うぞ。ナレーションはyu-rinで行く、後は~…」


「コメンテーターの人達にも司会の高宮さんからコメント振りましょう、それと~…」


「インタビューシーンは笑顔の部分だけだと、エイミちゃんとリエルちゃんの良さが伝わり切らないな。笑顔7、悩んでる顔が2、ちょっと緊張気味な顔が1の配分で行くか」


 実原エイミと織音リエルはインタビュースタッフ達にすっかり気に入られ、凄く良い感じに編集してあげようと決意させた。


 彼らが特に2人を気に入った理由は、2人とも自分たちの仕事に凄く興味を示し、カメラマンや音声とはどういう風な仕事なのか、どういった事に気を付けて作業をしてるかなどを聞いて来た部分だ。その聞き方も良く、非常に答えやすい質問の仕方だった。


 ロケ仕事ではカメラマンは自分が任された角度に映る人が、最も魅力的や面白く見える角度を探して常にカメラを持っていると答えた。


 その返答を聞いた2人から尊敬の眼差しを向けられ、『答えてくれてありがとうございます!良く映れるよう頑張ります!』と、可愛いながらも真面目さが伺える笑顔で言われたのだ。


 若手カメラマンである彼には正直に言ってメチャ嬉しく、撮影中はどうしたらエイミちゃんとリエルちゃんが最も可愛く映る!?と本気で考えながら撮影していた。


 音声担当とディレクターも同じような質問に対し、同じように自分なりの答えをして同じように尊敬されている。


 しかもエイミとリエルは各スタッフの手の空いた所を見計らい、時間を掛けず好印象を強く残した。現場仕事という忙しい中でこの対応は評価の底上げをしていた。


 更に言うなら2人は各スタッフへの質問の答えをインタビューという短い時間の中で活かしており、不自然な目線をカメラに向けず、聞き取りやすく自然で可愛い声で、インタビュー質問にも凄く良く答えてくれたのだ。


 その結果、スタッフ達は『明日のモーニングドンドンで、あの2人が更に話題になれるようにしてやる!』と意気込ませている。あの2人の笑顔を曇らせる仕事などしてなるものか!と思えていた。


「立田さん、あの子達って凄い可愛かったよね? あんなキラキラした子達なら絶対に上に行くわね」


「そうですね矛地アナ、メイクの必要ありませんでしたよ。私が来た意味なかったですね~」


 アナウンサーの矛地とテレビ局スタイリストの立田が話しているが、矛地アナは2人の愛嬌を見て『あの子達は必ず爆発的に売れる』という確信を持っていた。


 矛地は非常に容姿の整ったアナウンサーだが、エイミとリエルの2人には大人の女では出せない魅力で勝負して来るだろうと考えている。


 2人は容姿が良い、声が良い、雰囲気が良い、周囲への接し方も良い、かなり多角的な良さを高いレベルで有していると感じた。


 リエルちゃんの方は少し人見知りっぽい所があるか?、とも感じる部分があったが、仕事ではそれが出なかった。


 エイミちゃんは笑いが止まらなくなりそうになった場面があったが、それらですら武器に出来る素養が2人はあると感じている。


「それにしてもですよ、メイクアーティストの名折れですよねホント、イヤになっちゃいますよぉ」


 エイミとリエルの2人は化粧や衣装調整の必要が無かった、というより既にされていたのだ。それも軽い最低限のナチュラルメイクで魅力を完璧かつ純粋に引き出し、明るさと可愛さを自然かつ存分に引き出すメイクだった。


 あんなメイクを誰がしたのか、衣装はアグリットの雑誌に掲載された時に着ていた服だったが、可愛さが更に上げられていた。スタイリストとして負けた気分である。


「そういえば近くの駐車場でレミアム・オーセンの車を見たんだけど、まさかね」


「いやいや、そんな訳ないですよ矛地アナ、ユニティブ興行さんて無名の事務所じゃないですか」


「やっぱり考え過ぎね、そういえばレミアム・オーセンが子供から20代くらいの若年層に向けた店を出そうかって話があるそうなのよ」


「本当ですか? ヤバっ、私も就職試験とか受けようかな~」


「立田さんが受かったら私がレミアム・オーセンの会員になれるように掛け合ってね、ははっ」


「そこは引き留めて下さいよぉ~、どうせ受かんないんだし~!」


 エイミとリエルは2人ともロケスタッフから最高評価を受け、明日の朝のVTR放映に向けて映像が作られていくのだった。




  【祝!】詞矢運モシィがデビュー!【重大発表!】  


 詞矢運(ししうん)モシィ 登録者数 4000人


        同時視聴者数3000人


「うしししっ! ようやくデビュー出来たぞぉ~! これから頑張ってくからよろしくねぇ~」


コメント:この声はクセになる!

コメント:デビューおめでとう!

コメント:キモカワイイ!

コメント:オメ!

コメント:おめでとう!


「私は詞矢運モシィだぜぇ、カワイイって言ってくれたら嬉しいね~、うししっ」


コメント:かわいい

コメント:カワイイ!

コメント:相変わらず笑い方が良いw

コメント:雰囲気が独特で可愛い


 その後も視聴者に向けて自己紹介をしつつ愛想がある所を見せ、アニメやゲームに詳しいとか、イケメンキャラとか可愛いキャラが好きとかも言っていった。


 配信にはハッピーリレーの事務所内スタジオを使わせてもらっており、花田社長や木島を始めとしたスタッフ達、英明が連れて来たプロがサポートしてくれている。


 四楓院 英明は他の仕事があるため近辺には居ないが、やるべき事や伝えるべき事は全て完了しているので問題は無かった。


 配信の形式は2Dモデルを使用して話す形であり、パソコンは灰川がサイトウに報酬でもらった物を使っている。設備はバッチリだ。


「うししっ、見に来てくれてありがとうだねぇ~、でも実は私って事務所所属のVなんだぜぇ、驚いたかぁ?」


コメント:そうなの?

コメント:知らなかった

コメント:シャイゲ?サワヤカ男子?

コメント:芸人事務所?

コメント:SNSにも書いてなかった気がする


「サワヤカ男子所属なわけないだろぉ~! こんな可愛ええ女の子が男に見えるってかぁ!? でもちょっと入ってみたい気はするなぁ、うしししっ!」


コメント:www

コメント:サワヤカ男子以外の事務所か

コメント:でも事務所も多いからなぁ

コメント:ぶりばすじゃない事は確かだろうけど


「さっきのコメントの人、シャイゲに入った?って言ってくれてありがとうなぁ~。私じゃムリだったぜ!うししっ!」


コメント:シャイゲとモシィちゃんじゃ空気が合わんてw

コメント:逆に入って欲しかったかもw

コメント:何処の事務所?宇宙風船事務所?

コメント:関西?関東?


 モシィの配信は順調に続いていく、Vモデルの赤と紫が入り混じる髪色やクセっ毛、性格に合わせて少しモサっとしつつも可愛さもある見た目は受けが良い。


 初配信という事で登録者の割に同時視聴者数が多いが、これはSNSで事前に前世を匂わせていた事が強いだろう。


 ぶりっつ&ばすたーは快く思わないかもしれないが、明言はしてないから規約的には問題ない。その部分はシャイニングゲートの顧問弁護士に確認してもらっている。


 それにぶりっつ&ばすたーは卒業者が匂わせ営業をしていても特に何も言ったりしないらしく、やはり問題はないとの事だ。


「それじゃあ事務所発表の前に、私の事務所V仲間にお出まし願うよぉ~。初配信で初コラボしちゃうぜ~、うししっ」


コメント:マジ!?

コメント:デビューでコラボって最近よく見るかも

コメント:誰が来る?

コメント:もう活動してる人か


「じゃあ先輩、来ておくれ~」


「こんにちは、Vtuber手風クーチェです。皆さん初めましてっ」


コメント:誰?

コメント:え、マジ!?

コメント:これって、ぶりばすとライスペの…

コメント:知らない…

コメント:クーちゃん!?知ってるんだけど!

コメント:見た事あるかも


「同じ事務所の所属の手風クーチェちゃんだぞぉ~、カワイイだろぉ? 欲しいって言ってもやらんぞぉ、うししっ!」


「私もSNSで告知してから次の配信で事務所所属ってリスナーさんにバラすけど、まず最初はここにしちゃおうって事になったんだ」


 事務所の意向で所属をバラせなかったとか、これからは本格稼働するから活動も増えるとかの話をしていく。


 手風クーチェは現在は登録者7500人という、活動期間に対して登録者は多い方だが有名事務所のVや配信者と比べれば少ない数字だ。

 

 前世はライクスペースの滝織キオンという事もあって知ってる人も居るが、当然ながら知らない人も多い。


 7500人という登録者は有名人とは言い難い数字だ、Vtuberに詳しい人なら知ってる人は居るという程度である。


「モシィちゃんとコラボとか、これからもやりたいよ。ゲームとかって何が得意なの?」


「ん~、BLゲーとか美少女ゲーとかが好きだなぁ~、FPSとかは何やっても面白プレイになっちゃうから、チームの人イライラするんだよなぁ~」


「キャラ攻略系のゲームはコラボ向きじゃないって! モシィちゃんの面白プレイとか興味ある!」


「歌枠配信とかだとキモキモボイスの歌でやると盛り上がりそうだぞぉ~、うししっ!」


「普通に歌えば良いじゃん!? でもキモ系の声ってどうやって出すの?簡単じゃないよね?」


「簡単だよぉ~、頭の中でイケメンとか可愛い子のこと考えてれば自然にでちゃうよぉ、うしししっ!」


「それ普通じゃないから! モシィちゃんが特殊なだけだから!」


コメント:このコンビ良いなwww

コメント:モシィちゃんとクーチェちゃんオモロイ!

コメント:クーチェさんも登録しとこっと

コメント:初見です

コメント:もう始まってる!


 現在進行形で視聴者も増えて行き、途中から見始めた視聴者にも2人が事務所に所属しているという事が分かるように配信している。


 これに関しては配信台本を書いた脚本家に『時折に“事務所”という単語を出しなさい』と言われたのが功を奏していた。


 モシィとクーチェの会話が続いて行き、視聴者を笑わせたりしつつ2人のキャラ性や雰囲気の周知、面白い話をするという認識を広めていく。


 スタッフたちはSNS投稿などをして話題性を上がりつつあった。そちらは英明が連れて来たプロの広告家や広報家が主導しており、SNSでも話題は広まりつつある。


「じゃあそろそろ事務所の名前の発表だねぇ、もったいぶりまくってスマンね皆~、うししっ」


「発表するんだけど、他にも所属者の子が居るから呼んで来るよ。みんな少し待っててね」


 ここで画面が切り替わり、一般的なVtuber配信画面から3D配信画面のような形の画面になる。


 全身が映るタイプの画面であり、場所は同じくハッピーリレーの事務所内スタジオだ。歩いて数秒くらいの距離に撮影セットを用意していたので、すぐに2人が3Dモデルのようになって登場する。


 使用しているカメラは、やはりサイトウが制作した『Vtuberを撮影するのに適したカメラ』である。これも灰川が報酬としてもらい、現在はハッピーリレーとシャイニングゲートに貸し出してい居る物である。


 このカメラは映った者がVだった場合は、モデルを検出してVtuberとして写すという謎性能のカメラだ。もちろん動きも滑らかで解像度も非常に高い。


 やがて間髪置かずにモシィとクーチェが画面に現れる、今度は上半身だけでなく自由に動いて問題ない全身像であった。


「はいどうも~、モシィ&クーチェでぇ~す! コントします」


「しないわよ!コントとか出来ないでしょうが!」


コメント:www

コメント:もう3Dモデル作ってあんの!?

コメント:うわっ、スゲェ綺麗なモデル!

コメント:さっきも思ってたけど

     モデルの質が高くないか?

コメント:クーチェの全身モデル初めて見た!

コメント:モデルの質、シャゲより高くない?


「モデルを褒めてくれてありがとなぁ~、でも初回は特別配信だから、今度からもこのクオリティだと思わんでくれよ~、うししっ」


「特殊なPC使ってるからね、今回は事務所のお披露目でもあるから特別ってことなの」


 クーチェのライトオレンジの髪やスタイルの良いモデルが映され、モシィの背は小さいが胸はそこそこ大きいモデルが映されて、視聴者たちのコメントも加速する。


 映像は特別製パソコンと謎性能カメラによって素晴らしい映り方であり、モデルや声の良さも引き立てられて視聴者を釘付けにしていく。


「じゃあご登場願おうかねぇ~、ウチらの事務所の所属者の2人、出て来ておくれ~」


「今から来る子達はVじゃなくて子役俳優とか、キッズモデルとかの方面の子だよ。そこは勘違いしないように視聴者さんたち頼むね」


コメント:V事務所じゃないの!?

コメント:Vtuber以外の所属者も居るんだ

コメント:何処の事務所なの?

コメント:まだ事務所の名前は出てない

コメント:少人数事務所なのか

コメント:新規事務所で大人数はムリっしょ


 まだ所属者の紹介があると知って期待感が増すが、Vtuberではないと言われて視聴者はそれぞれの反応を示す。


 モシィとクーチェが所属者は自分たちを含めて4人とか、新しく出来た事務所で今日が本格的に動き出す日とか説明を織り交ぜつつ、新たな2人が画面に登場する。


 その2人はVの2人が言った通り、CGモデルではなく実写の生身であり、まだ小さな女の子だ。


「こんにちわ! 実原エイミですっ、よろしくお願いしまーす!」


「こんにちはっ、ボクは織音リエルですっ、皆さん初めましてっ」


 ここで遂にユニティブ興行の所属者が勢揃いとなり、配信画面はVtuberの全身モデルと実写の女の子という特殊な画面になる。


 しかしサイトウPCの処理によって画面に違和感はなく、Vと実写が問題なく調和する形の背景が映し出されていた。


 2人の服装はエイミがスカートルックで、リエルがハーフパンツルックだ。どちらも可愛く格好良く決まっており、非常に映像映えする出で立ちである。


 背景は綺麗な部屋という感じのCGなのだが、これが違和感を打ち消しつつ皆の良さを引き立てている。


 ちなみに手風クーチェと詞矢運モシィには3Dモデルは用意されていないが、サイトウのカメラによってそこはクリアしていた。


コメント:メッチャかわいい!

コメント:この子達って何処かで見た気がする

コメント:この名前って話題になってる雑誌の子じゃない!?

コメント:バズってた子達じゃん!

コメント:ヤベェ!マジかよ!


 この子達が居る事務所なのかとか、凄い愛嬌あるとか、そういうコメントが多数寄せられる。


「私たちは総合芸能事務所ユニティブ興行の所属です! これからよろしくお願いしますっ」


「うししっ! ユニティブ興行はVtuberとか役者の事務所だぞぉ~、小っちゃい事務所だけどねぇ」


「まだお仕事した回数も少ないけどっ、これからガンバるよっ! えへへっ」


「カルチャー誌のアグリットのモデルをさせてもらったんだっ、知ってる人が居てうれしいな、くふふっ」


 ここからは詞矢運モシィのデビュー配信というよりはユニティブ興行の旗揚げ配信のような形になり、主役はモシィから全員となる。




「はぁ、明日の大学講義は出なきゃいけないコマはないな。WBLのデッキも上手く回せる形に組めたし、気分も良いや」


 和藤 才知は自宅の自室で寝転がりながらスマホを触り始める、時間は夜の8時頃であり明日はどうしようかとか考えながら過ごしていた。


 明日はショップに行ってカードバトルをするか、WBLのネットバトル配信でもするか、動画編集でもするか、魔法のメロディ少女・プリコーダーズの23回目の見直しをするか悩む。


「WBLの新情報は昨日出たばっかりだし、プリコーダーズの新商品はチェック済み、ユニティブ興行もさっき調べたけど何もナシだったしな」


 才知は特に変化のない日常を過ごしており、今日もWBLのカードやプリコーダーズを楽しみながら過ごしていた。


 情報は常に得ているが、それだって日常の事である。様々に情報を集めつつ、お気に入りとなったアグリットのモデルページを見たりもする。


 最近に凄く気になっている新人子役だかモデル的な子達、実原エイミと織音リエルが表紙を飾った雑誌のアグリットも購入できた。20冊欲しかった所だが、買えたのは1冊だけだ。


 それでも買えただけマジだし、アグリットの内容は非常に満足の行くものだった。表紙ポスターや2人がモデルを務めたキッズファッションのページは、穴が開くほど見返している。やはり電子書籍の他にも、紙媒体観賞用、サブ観賞用、保存用の3つは最低でも欲しい、増刷が掛かったという情報があるから絶対に入手するつもりだ。


 今日はもう新情報などは出て来ないと思っており、後は動画編集でもしてから寝ようと思っていたのだが。


「え…? ちょっ、マジか!? パソコン点けなきゃ!」


 スマホでSNSを確認していた所、まさかの情報を見て心拍数が跳ね上がる。


 なんとSNSでユニティブ興行と検索した所、事務所の立ち上げ配信が行われているとズラリと投稿が表示されたのだ。


 詞矢運モシィというVtuberがデビュー配信で事務所所属と明かし、そこに手風クーチェというVがコラボ相手として登場して、同じくユニティブ興行所属と明かした。


 更にそこから実原エイミと織音リエル、今バズってる子達が登場して同じくユニティブ興行所属と明かした、という情報を才知は見たのだ。


「なんて事だ! 俺とした事が!ユニティブ興行の初配信を見逃すなんて! ゲリラ配信するとは考えてなかった!」


 パソコンが立ち上がるまでの1分にも満たない時間が長く感じる、スマホで検索して見ようとしたのだが、キーボード操作もあるため上手く出来ない。


 興奮のあまり体が震える、決定的瞬間を見逃した自分に腹が立つ、何も注目して無かった名前も知らないVtuberがユニティブ興行だったなんて!


 苛立ちや自己嫌悪を感じもするが、同時にユニティブ興行が遂に表に出た!という嬉しさ、待たせてくれたなコノヤロウ!という嬉しさの籠った怒り、エイミちゃんとリエルちゃんが活躍してくれる!という期待感。


 その他にも色んな感情が乱れて涙が出そうにすらなっていた。


 やっとパソコンが完全起動したが、そこまで1分も時間は掛かっていない。それでも30分くらい掛かったような気持ちが才知にはある。


 そのまま急いでyour-tubeにユニティブ興行と打ち込んで検索、すぐに詞矢運モシィの名前を見つけて配信サムネをクリックした。



『ボクはジャパンのスウィートトリートのパフェが大好きさ! あんなに美味しい食べ物は世界を探したって、そうそう見つからないね! くふふっ』


『この前ねっ、リィちゃんがパフェ食べたあとねっ、頬っぺたにクリームが付いちゃってたんだよ! あははっ』


『うししっ、それ私も見たぞぉ、満腹笑顔で頬っぺたクリームのリエルちゃん、超かわいかったんよぉ~』


『私が水を取りに行ってる間に拭いちゃってたんだよね、私も見たかった! うあー!』



 才知は衝撃を受け続けていた、前に秋葉原で遭遇した時より、アグリットの表紙よりカワイイ!


 今のエイミとリエルは肌はアグリットの時よりツルツルで、剥きたてのゆで卵より輝いてるようにすら見える。しかも新品の高級シルクよりスベスベしてそうだ。雑誌の表紙と遜色ないどころか、前より可愛くなってる気配すらある!


 Vtuberの2人も良い感じだ、面白いし可愛いし声も聞き取りやすかったり特徴があったりで個性的だと才知は感じた。


 そして、それらの意見は視聴者も多数が感じている事であり、配信はまだまだ盛り上がりを増していく。同時視聴者数は2万人を既に突破している。


 現在の同時視聴者は1万人を超えており、まだまだ増える予感がしている。SNSにも投稿が止まらず、かなり話題が広まっているのが見て取れた。


 この話題の広まり方は実はネットメディア操作の力も働いてはいるのだが、事前にエイミとリエルがバズっていた影響も非常に大きい。


 モシィとクーチェの2人が画面に出ていた時はVtuberファンが視聴者の大半を占めていたが、今はSNSで情報を知った者達が続々と配信を見に来ていた。


 手風クーチェと詞矢運モシィの影響も決して小さくはなく、元ライクスペースの滝織キオンと、元ぶりっつ&ばすたーの丑獅子イオスが同じ事務所になったというのも明かされ、Vファンの間で話題になって人が集まっている。


 滝織キオンはライクスペースでの活動終盤は良くなかったとはいえ、界隈には名前はそこそこに広がっていた。そのため興味を持つ人は割と居て、丑獅子イオスも一回見たら忘れられないキャラだったため、知ってる人は見に来る者も多い。


 複合的に話題が広まっており、それを聞きつけて見に来たVtuber好きの有名人がTwittoerXに投稿し、それを見た他の人が~~……みたいな形で視聴者は増え続ける。


「…………」


 才知は嬉しさのあまり体が震えている、実原エイミちゃんと織音リエルちゃんが活動を始めたのだ!


 こうしちゃいられないけど、こうして居よう。この配信が終わった時こそが動く時だ、プリコダと同じ熱量で彼女たちを推して押して推しまくる!と決意する。


 もし2人がプリコダ関連の仕事をしたりなどしたら、嬉しさのあまり3日間は寝ずに作業が出来そうだとか本気で思ってしまう。


 無意識的にスーパーチャットをしようと思ってしまったのだが、詞矢運モシィのチャンネルは収益化しておらず投げ銭は出来ない。普段なら投げ銭など下らないと思う事も多い才知だが、今回は非常に残念だと思えてしまう。


 各所に話題を振り撒きつつ、今の所はユニティブ興行の初配信は成功だ。


 何やら所属者の魅力アピールタイムだとかがあるらしいが、才知はそれも楽しみだ。今の状態なら何でも楽しめる気がすると思いつつ、ユニティブ興行の配信を胸いっぱいの満足感と共に視聴していくのだった。


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