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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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308/333

308話 霊能力者の形

 灰川がお祓いは3000万円と言い放ち、木村沢兄弟は怒りを露にする。しかし灰川は言葉を続けた。


「正確には3001万と710円です」


「何故そんな値段なんだ! ふざけるのも大概にしろ!」


 灰川が詳細な値段を言って次男の銀上が声を上げた時、木村沢 永太が突如として立ち上がる。


「出て行け! そんな金額は払わん!」


「分かりました、ではそういう事で失礼します」


 永太は怒りながら声を荒くして言い放つ、しかしその声には焦りの色が混ざっていた事を知るのは本人しか居なかった。




「いや~、すいません、怒られちゃいました」


「灰川先生、何があったんですか? 木村沢会長は怒りっぽい人ですが、まさか四楓院の直接関係者である灰川先生に、そんな声を上げるだなんて…」


「マズイですよ三檜主任っ、これ聞いたら総会長と会長は怒っちゃいますよっ」


 木村沢の別荘から出されてワゴンハイヤーに乗り、博多の街に向かっている。


 お祓い依頼の話は決裂し、ある程度の事情を知る三檜としては、KMIグループは西日本共同開発機構と関係を深める可能性が高まったと考えた。会長や総会長に報告すれば、ビジネスの舵取りは変わるかもしれない。


「灰川せんせー、木村沢さん怒らせたのは痛かったかもですよ、九州の有力者なんですし」


「早奈美、灰川先生に大変に失礼だぞ。ですが灰川先生が3000万円を取ると言われたのには私も驚きました、もちろん理由があっての事だと分かってはいるつもりです」


「もちろん理由あっての金額なんですけど、う~ん…言っちゃって良いのかなコレ」


 三檜は以前に灰川にちゃんと適性の金額を取りなさいと言い含めた事があったが、今回は行き過ぎの金額ではないかと感じている。


 これまで灰川は高くても1万円とかでオカルト依頼を受けていたため、今回の金額は予想もしていなかった。


「木村沢さんは怒っていましたが、灰川先生はお気になさらず居て下さい。むしろ行き違いこそあったとはいえ、息子さん達が割って入って来た向こうに問題はあります」


「っていうか自分たちから呼んでおいて、ロクに理由も聞かず追い返すって失礼にも程がありますよー! 私たちまでバカにされた気分!」


 四楓院グループはKMIグループとの関係強化の他にも、九州のビジネス地盤を強める策は用意してある。KMIグループは現状では西日本共同開発機構との繋がりの方が強い。


 KMIグループ会長の永太は、次期を担う息子たちの意向を取り入れて西日本共同開発機構との関係性を深めているのだ。


 その一環としてKMIグループは亮専建設や、その傘下の株を大幅に購入して株価のつり上げをする役目を請け負い、向こうとの関係性を強めている。


 亮専建設はこの状態で新株を発行して投資家たちから金を募るつもりだったが、その動きは少し前から無くなっていた。


 亮専建設と傘下の株は数日後に暴落する、その事を木村沢たちは知らない。四楓院は既にこの情報を確証と共に掴んでいるため、大きな利益を生み出す準備が水面下で出来ている状態だ。というか既に情報を有効活用して利益は出ている。


 これだけでKMIグループが総崩れになる事は無いが、大ダメージは必至である。放っておけば20年くらいに渡ってグループの成長は阻害され、場合によっては弱体化する事も考えられるだろう。


「確かにお祓い料として取ったら問題のある金額ですが、3000万円っていう金額は、実は~~……」


「ん? すいません、電話が来てしまいましたので失礼します」 


 灰川が3000万円と言った理由を話そうとした時に、三檜に電話が来てしまった。相手は木村沢 永太の秘書の坂戸だった。


「灰川先生にお電話を代わる事は出来ません、大変に立腹されておりますので、私が代わりにお話をお伝えします。なるほど、はい、分かりました、ではそのように~~……」


 何かしらの話をしつつ、電話を繋げたまま灰川と藤枝に向き直った。


「詳しい事は話せないそうですが、木村沢会長から先程は大変失礼しましたとの伝言です。それと先程に何かしらが見えたりしたのなら、その事は絶対に他言しないようお願いしたいとの事です」


「あ~、はい、分かりました。じゃあ言わないでおきます」


「……はぃ……えっと…、私も…」


 灰川は金銭を受け取ったりしておらずとも、言うなと言われた事や、基本的なプライバシーに関わる事は誰彼構わず漏らしたりはしない。それは藤枝も同様であるし、そもそも藤枝は話す相手とかが居ない。


 三檜と早奈美は関係者だし、口止めもされていなかったので喋ってしまおうかとも思ったが、口止めの連絡が来たので灰川は喋らないようにした。


「それと、もし都合が付くならば、せめて明日か明後日まで福岡に滞在して頂けないかとの事です。滞在費用は木村沢さんが持つそうなので、好きにお過ごし頂ければとの事ですが」


「キープしておきたいって事ですか、分かりました。キープ料金も掛かりますけど、良さそうですかね」


「……私も……大丈夫です…っ…」


 永太は自分しか覚えているはずの無い金額をピタリと言い当てた事に驚き、何かがあった時のために灰川に福岡に滞在してもらえないか頼んできた。


 三檜や早奈美も、向こうのこの対応は何かあると感じ、特に何も言う事なく警護の続行をしていく事になる。


「とりあえず少し早めの昼ご飯でも食べますか、博多って飲食店も多いし栄えてるし良い街だな~」


「日本有数の大きな地方都市ですからね、活気も強いし産業も栄えていますよ」


 灰川たちは四楓院に代わって木村沢が滞在費用を支払う事になったため、遠慮なしに良い感じの物を食べようという話になった。


「午後はどうされますか? 仕事がありましたらホテルかワークスペースを利用する事をお勧めします」


「じゃあ少し本屋に寄ってからホテルへお願いします、ユニティブ興行の案件にサインを今日中に出して欲しいとの事でしたんで」


 昼食を摂ってから佳那美とアリエルが載ったアグリットと新聞を買って、その後に仕事という感じにしようと灰川は考える。


「そういえば灰川せんせー、後から来た2人の霊能者ってどんな感じだったんですか? 木村沢会長が話すなって言った事は私たちにも言わなくて良いですからねっ」


 灰川と藤枝の後に来た悠燕(ゆうえん)封凰(ふうおう) 世理呼(よりこ)という霊能者たちの事だ。名前は通ってるらしいと知らされたが、早奈美は全く知らない名前だった。


「うーん、少し見た感じだけど、男の悠燕って人は霊能力が無かったよ」


「えっ!? それって詐欺なんじゃっ」


 灰川は応接室にて永太を霊視していたのだが、その際に他の者達も霊視をしてみたのだ。その結果として金保志が連れて来た悠燕に霊能力らしきものは感じられなかった。


 世の中の霊能者の半分以上は嘘か勘違い、もしくは強い思い込みによって何かが見えているという説は昔から強い。現在でもニセ霊能者は沢山居て、それは霊能ビジネスの世界やネットにも多く存在する。


 しかしニセモノと証明することは難しく、ニセと指摘した方がニセ霊能者だとされてしまう事もあるから、本物の霊能者でも誰がニゼモノかを指摘する事はほとんどない。


「でもね、あの悠燕って人は霊能力はニセモノだけど、強い除霊の力を持ってるんだ」


「?? 霊能力が無いのに除霊が出来るってことですか?」


「除霊とかお祓いってさ、霊能力が無い人でも出来るんだよ。高度なお祓いだと難しいけど、悠燕って人はそれが出来る」


 早奈美としては灰川が言ってる事が良く分からない。


「たまにさ、風邪とかに罹っても2時間くらいで治っちゃう人とか、インフルエンザになっても半日で元気になったりする人って居るじゃん。そもそも風邪を引いた事が無い人とかさ」


「周りには居ないですけど、確かに聞いた事あるかも!」


「それの霊能力版みたいな感じって言えば良いのかな、どんな幽霊とか悪念であっても寄せ付けず除霊できちゃうみたいな感じ」


 先程に見た悠燕が正にそのタイプだった、霊能力が無いが生命力の強さなどで除霊が出来る人、この力で彼は霊能者として活躍しているらしい。


「でも、それだったらボロが出るんじゃないですか? 男の幽霊に憑りつかれてる人に、貴方は女の幽霊に取りつかれてますね、みたいな感じで」


「そこでホットリーディングとかコールドリーディングって呼ばれる物の出番だな、情報を仕入れたり会話の中で推理して当てて信頼を得るみたいなね」


 これらを元に相手の信頼を勝ち得て除霊する振りをして、その結果として本当に除霊されているから信頼も付いて来るという感じなのだろう。


 悠燕がどのようにして霊能者の道に進もうと思ったのかは知らないが、何処かで自分の情報を社長連中とかに広めてくれる太い客を掴み、かなり稼いでいるようだった。


「まあ、彼は割と良い線のパワーを持ってたよ、俺は幽霊とかは成仏してもらって穢れとかを祓う方式が多いから、強制的に霊とかを剥がしたり倒したりして効果を消す除霊が主の彼とはソリが合わないと思う」


「除霊とお祓いって違いがあるんですねー、知らなかった」


「除霊とお祓いの違いって人によっても考え方が違うし、俺とは真逆の意味で言葉を使ってる流派とか宗派もあるから気を付けてね~」


 これらの違いについては様々な意見があるが、灰川流では基本的には『お祓いは不浄を清めて霊を成仏させる』という考え方で、除霊は『霊力で攻撃して悪霊を霧散させる』というニュアンスで使っている。


 灰川にとって除霊は緊急手段であり、そこまで多用はしない方法だった。霧散させた悪霊は強ければ復活することもあるし、念が弱まっていればそのまま成仏する事もある。


 灰川としてはお祓いの方が霊に安寧を与えられる事が多いから、お祓いの方をよく使う。しかし必要に駆られれば除霊法を選択する事も普通にあり、その時次第としか言いようがない。


 除霊法しか通用しない悪霊や悪念もあるし、お祓い法しか通用しない存在もある。他にも、お祓いは効果が長く、除霊は効果が短いとかの説もあったりするのだが、これもその時次第だったりする。


 それぞれの良点もあるし、どちらが優れてるとかは一概には言えない。


「……あの人は…っ、…そういうのじゃないです…」  


 「「え……?」」


「…え、えっとっ……なんて…言えば…」


 藤枝は口足らずながらも説明してくれた、その内容は感知力の低い灰川では分からなかった悠燕の霊能の情報である。


 悠燕は生命力とでもいうものが非常に高いが、彼の発するパワーは霊にとって酷い毒のような効果があるそうなのだ。


 彼に近寄った霊は酷く苦しむ事になるため近付かない、よって除霊の依頼を受けたら彼が行くだけで除霊完了だ。


 去って行った霊は少なくともしばらくは帰ってこないだろうし、もう戻ってこない霊も多い筈だと藤枝は言う。


「……けど……凄く強い恨みを持った霊とかは…別です…」


 例えば殺人事件の犯人に被害者の霊が憑りついていたとして、その霊が犯人に対して非常に強い恨みを持っていたとする。そういう霊は恨みが強くて当人から離れるという選択肢が取れない場合がある。


 そういった霊は簡単には祓えないし、除霊だって難航する、そもそも強い霊能者でなければ対処できないほど強い念である事が多い。 


 しかし悠燕のパワーは、そういった霊に対しても有効で、近くに居れば最大でも1週間で霊は消えてしまうのだそうだ。


「えっと、だったら問題ないんじゃない? 灰川せんせー的にはどうですか?」


「俺としては好きな方法じゃないけど、生きてる人を守るためなら仕方ないって感じに思うかもなぁ」


 悪霊も被害も消せるなら灰川だって納得はする、何であれ生きている人間を優先するし、罪を犯していなくてもそういった霊被害に遭う事だってあるのだ。


 しかし藤枝の話はまだ終わっていない。



「……あの人の力は……幽霊を殺す力とでもいうような感じで…っ、…えっと……幽霊の幽霊とでもいうよなものに……憑りつかれていました……」


「えっ……?」


「…灰川さんなら……目に霊力をっ…、…全力で向ければ……見えると思う…です…っ、…あと…灰川さんなら……どうにか出来るかも……」



 人間の幽霊が存在するなら、幽霊の幽霊とでも言う存在もあるらしい。灰川は初めてその存在を知った。


 藤枝が言うには灰川程の霊力があるなら何とかなるかも知れないが、さっきの人ではどうにもならないと感じたそうだ。それも未知数だとの事らしい。



  感知霊力が高い人に見えるモノ


 あまりに酷い未練を残して亡くなった人が幽霊になり、幽霊になってからも未練を果たす事が出来ず消された場合、幽霊の幽霊とでもいう存在になる。


 かなり限定された状況でしか発生しないが、悪霊とは少し違ったパワーがあるらしい。


 生前の未練や恨みの念に重ねて、死後の恨みも加算され、その呪いは霊体を消した原因となる者に向けられる。


 通常の除霊やお祓いの力を寄せ付けず、経文浄霊、西洋式エクソシズム、毒性霊力、封印法も一切の効果が無い。


 感知力が低い霊能者では見えず、感知力が高い者でも見える者は少ないそうだ。藤枝も見える時と見えない時がある。


 無理矢理に消された幽霊が必ずしも幽霊の幽霊になる訳ではないが、これに憑りつかれた者は早々に死ぬか、少なくとも正常な人生は送れなくなる。


 

「…あの人は……2体もソレが憑いてた……、むり…です……」


 霊能家業とは完全な自己責任の世界であり、何があろうが他者に責任は転嫁できない。依頼を請け負って自身にどんな被害があろうが、自力でどうにかするしかない。


 


「では悠燕さんに依頼をして、もし除霊が出来なかったら世理呼さんに依頼するという事でお願いします」


「分かりましたよ金保志さん、俺がやるなら何があろうが大丈夫ですから安心してくださいって」


「全く、さっきの詐欺男のようなのは顔も見たくない! 父は前に詐欺に掛かった事があるから、私が気を付けて父の身の周りを見ているんですよ」


「先程の男は霊能力も無いのに霊能者と語っている詐欺師です、あんな高額を吹っかけて恥とも思わない男ですよ」


 KMIグループの会長である木村沢 永太は10年以上も前に詐欺に引っ掛かった事があり、それ以来は息子たちが父の金回りを気を付けて見ている。


 その時は先物取引に関係する詐欺だったのだが、最初は1000万円を渡して、次に500万、次に700万と取られて行き、最終的な被害額は1億円を超えていた。


 1000万円くらいの金額は木村沢 永太にとっては痛くも痒くもない、1億円ですら痛手にならないくらい総資産を有している。


 しかし詐欺の怖い所は人間の欲や焦りに上手く付け込んで、あれよコレよと金を引き出してしまう部分なのだ。1回だけ騙すのではなく、何回も騙して金を引き出される、それが長く続けばどんな資産家も干上がる可能性はある。


 しかも1回騙された後は情報が出回って様々な怪しい話が舞い込んだのだ、家族が警戒するのも無理はない。


 詐欺師は話が上手い、話を聞いたら不安感や興味や欲に付け込まれて心を引き込まれるかも知れない、ならば話をする前に排除しなければならない、金保志は断固としてそう思っている。


「じゃあ準備があるんで部屋を借ります、少ししたら除霊を始めますんでね」


「お願いします、ここでしっかり解決できれば次期会長の椅子に近付ける…! 弟に会長の座を奪われるくらいなら、死んだ方がマシだ…!」


 金持ちには金持ちの悩みや苦しみがある、後継者争いもその一つだろう。


 下に居ると思ってる奴に上に行かれる、これは本気で死んだ方がマシと思えるくらいに嫌なことだ。しかも会長の座に就かれたら実質的に巻き返しが難しい。


 一応は弟に会長になられてしまったら、引きずり下ろす手段は考えてはいるが、それは最悪の場合の手段である。弟が会長の座に就く事こそが最悪の事態なのだ。


 本来なら助け合って生きて行く家族で泥沼のような権力争い、こういう状況になったら幸福とは一概に言えない環境かもしれない。


「悠燕さん、何としてでも解決をお願いします!」


「分かりました、お任せください。では失礼します」


 悠燕と名乗る男は自信満々のまま準備をするための部屋に入る、彼は今までオカルト被害の解決の依頼で失敗した事が無い。


 多数の社長などから頼りにされ、今は高額な報酬を取って霊能活動をしている。彼は準備のための部屋に入って椅子に座った。


「はぁ~、世の中バカが多くて助かるわぁ、幽霊とか妖怪とか居る訳ねぇじゃん、バーカ」


 彼は幽霊なんてものは居ないと思っている、見た事もないが悠燕は見えると言って霊能活動をしているのだ。


 これだけ除霊とかやってきて一度も見た事が無い、彼が幽霊など存在しないと思うには充分な理由だ。


 彼が霊能活動を始めたきっかけは高校生の時に、同級生から『お前が家に遊びに来た時に悪霊が消えた!』と言い、その噂が変に広まったのが最初だった。


 そこから心霊スポットに行って憑りつかれたと言う先輩に除霊の真似事をした所、完全に成功して更に噂が広がる。


 しかし、その先輩はいわゆるヤンキー系の人であり、噂が広まった先はワルっぽい人達の間だったのだ。


 ヤンキーは交友関係が広く、高校生ヤンキーでも大人などにも知人を多数持つ人が多い。その知り合いの中には何かの商売で開業した元ヤンとか、中にはヤクザや、その関係者も知り合いが居たりする。


「さてと、今回もちゃちゃっと除霊ごっこして稼がせてもらいますかね」


 彼が除霊してきた社長とかは、実は主にグレーゾーンやブラックゾーンのビジネスをやってる会社の社長、人間的に相当に悪い社長などからの依頼なのだ。社長と一口に言っても色んな者がいる。


 だが彼の依頼成功率と顧客満足度は100%、かなり腕の立つ霊能者として頼られている。


 しかし彼は自分が持つ霊的な特性と自身の現状に気付いておらず、その特性が今回の依頼に宿る(ごう)により、酷い霊的トラブルが発生する可能性がある事を知らない。




 灰川たちが乗る車の中では、まだ話が続いていた。


「……世理呼さんは……霊力は強いけど……、…普通の霊能力じゃなかった……なんだか…2つの霊力が混ざったような感じ……です」


「2つの霊力? なんだろう?俺は気付かなかったし、よく分かんないかもだ」


 藤枝も灰川もyour-tuberの封凰 世理呼の動画はほとんど見ておらず、検索などもしていない。


 灰川はホラーや怪談は好きなのだが、お祓い動画とか除霊動画は興味が薄く、あまり見ていないのだ。世理呼の名前だけは知ってるという感じだ。


 封凰 世理呼は自身のチャンネルやSNSでは自分の事を色々と明かしており、除霊活動やスピリチュアル情報などの他にも、自分の過去のことなども視聴者に向けて語っていた。


 世理呼は子供の頃に病気が元で、とある手術を受けており、その時に霊能力が強く開花したのだ。


 その手術とは臓器移植、世理呼は子供の頃に心臓移植手術を受けており、その事はフォロワーに向けても話している。


 その際に臓器提供ドナーの霊力もある程度ながら世理呼に宿り、彼女は普通の霊能者とは違う特性がある状態なのだ。


 自身とドナーの霊力相性が良いため、相乗効果で高い霊力を宿しているのだが、霊的な弱点も増えてしまっている。その事は彼女自身は知らず、世理呼はそう言った事を知れる環境には居なかった。


 霊能力で身を立てるのは難しい事だ、お祓いや除霊が出来るだけの霊力、もしくは知識が必要になり、その上で信頼を得るためのトーク力や仕事を得るためのファクターも必要になる。


 それ故に専業で霊能者家業をやる者には、霊関連の事象を日常の物として普通に生活してる者、異常なレベルでオカルトに詳しい者、無い筈のモノをあると信じさせる事が出来る程の会話力を持つ者、そういった言わば変わり者が多い業界だ。


 その中には『普通とはまるで違う質の霊的生命力を持つ者』『普通人は一生涯に一度でも経験しないような事を経験して霊能力に目覚めた者』なども含まれる。

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