305話 朝の小学校で話題になった!
その日の灰川事務所こと灰川コンサルティング事務所、およびユニティブ興行事務所は沸き立っていた。
「やったよ前園さん! 佳那美ちゃんとアリエルがネットで話題になりましたっての!」
「良かったですね所長、仕事も幾つか大きめのものを取れてますし、安定して稼げるようになるかも知れません」
「灰川君、あまり浮かれすぎても危険だぞ。しっかりと考えて動いた方が良い」
事務所内には灰川、花田社長、前園の3名が居て、まずは初めての話題沸騰にお祝いの言葉を掛けられたりしていた。
所属者は今は学校に行ってる時間であり、バイトの藤枝も学校の時間だ。
「こりゃ早いとこ事務所のSNSとか開いて、2人のプロモーション動画とか作ってyour-tubeに~~……」
「動きは早い方が良いだろうな、ハッピーリレーも協力して取り掛かろう。事務所のサイト制作や手風クーチェの所属発表なども考えなければな」
「私は2人への仕事依頼の処理などをします、ここを疎かにすれば自分たちの首を絞めますから」
方針としては話題が冷めない内に広報を急ぎつつ、いつものように仕事をしていこうということになる。
しかしここで灰川達が思いもよらない事が起こる、それは1本の電話から始まった。
「はい、もしもし、え? 英明さん?渡辺社長と? はい、分かりました」
「灰川君、誰からの電話だったのだね?」
「それが、四楓院会長と渡辺社長が今からここに来るそうです」
花田社長は驚き、前園は会長という人が誰だか分からない。とりあえず説明を交えながら少し掃除をしておこうとなったのだった。
英明は今日の午前の予定の仕事は全て代理人に任せ、ユニティブ興行に話をしに行く事にしたのだ。こうして緊急の会議が行われる事になる。
「ねえ佳那美ちゃん! TwittoerXでバズってたの見たよ! すごいよっ!」
「えへへっ、ありがとう今里ちゃん! 私もすっごいウレシかったよっ!」
「アリエルちゃんもすっごい可愛かったよっ! あの写真すごいよねっ!」
「ありがとうキリカ! ボクも色んな人から褒めてもらえてウレシイよっ、くふふっ」
その日、渋谷東南第3小学校の4年生の佳那美とアリエルの居るクラスは、朝から2人の話題で持ちきりだった。
芸能活動やネット活動をしている生徒が多数在籍し、その中には佳那美とアリエルも含まれる。
渋谷は芸能事務所も多くあり、第3小学校には親が有名俳優だとか有名歌手、タレントだとか有名ネット配信者だとかを親に持つ生徒も多いのだ。
その影響から子供も、2世の子役タレント、ジュニアアイドル、ジュニアモデル、ネット活動者などが多く居て、佳那美とアリエルのような生徒は珍しくない。
そもそも渋谷区は総じて家賃とかが高く、会社経営者、有力銀行家、大手企業役員などが多く住んでいる。よって子供も金持ちの子とか多いし、特に第3小学校はその色が濃かった。
以前に怪人N事件が発生した際も騒ぎになりかけたが、国家超常対処局の尽力によって学校側の不手際という形で事は収まっている。だが裏では色々と後処理とかがあったのは生徒は知らない。
あれ以来は元から高かった防犯設備が更に強化され、公立小学校ではあるが防犯設備は有名私立小学校にも負けないものになった。この費用はPTA主導の保護者からの寄付金で賄われている。
「佳那美ちゃんっ、アリエルちゃん、一緒に写真撮ろうよっ! マネージャーさんとお母さんにSNSに載せて良いか聞いて良いっ?」
「うん良いよっ、私も所長さんに聞いて載せて良いか聞くねっ」
「ボクも? じゃあアカリをセンターにして、ボクとカナミがサイドになるのが良さそうだね」
2人に一緒に撮影しようと言ってきたのは、クラスメイトの徳嶺 朱莉だ。
朱莉は母親が女優で父親はタレントという芸能サラブレッドであり、彼女自身も今は子役俳優として劇団に所属しながら活動している。
仕事は主に舞台での活躍で、大人に混ざって劇舞台で演技をする立派な子役である。実力はそこまで高くないのだが、努力はしっかりしており着実に演技力が伸びている成長期である。
しかし魅力的な演技は上手く使えておらず、演技も上手いとはいえ子供の域を出ない技量だ。まだ完全には芽が出ておらず、親の威光や劇団への寄付金で舞台に立っている部分もある子だ。
子供時代に様々な経験をさせて、俳優や芸能活動者としての技量を育てつつ名前に箔を付けるという親の方針があり、本人は容姿は整っているが俳優としてはまだまだだ。
キッズモデルもやっており、ネット通販の子供服のアパレルモデルもやっている。しかし、それらの仕事の影響で少し慢心気味な心も年相応に持っていたり。
「じゃあ児成ちゃん、撮ってもらえるっ? お兄さんがカメラマンさんだから、写真撮影が上手いもんねっ」
「良いよ佳那美ちゃん、じゃあ撮っちゃうよ~! お兄ちゃん仕込みのフォトテクニックを喰らえっ! てやっ!」
朱莉を真ん中に置いて左右に佳那美とアリエルが付き、児成がスマホを構えてしっかりと脇を締めて手ブレと体ブレを抑えてシャッターを切る。
「ありがと児成ちゃん! 良く撮ってくれたっ? えへへっ」
「お…おうっ…、いや、スゴイ良いの撮れた…! こんな美少女が3人も並ぶと、背景がドブでも綺麗な写真が撮れそうだよっ…!」
「ドブなんかでお写真なんて撮らないよ児成ちゃん! でも褒めてくれてありがとう、えへへっ」
「うっ…! 1年生の時から佳那美ちゃんのこと知ってるけど、最近の佳那美ちゃんスマイルは破壊力高いなぁ~、前まで面白娘の枠だったのにね」
「良いから写真見せてよ児成、どんな感じなのよ?」
朱莉が児成に写真を見せてと言い、児成はスマホを返す。朱莉と児成は仲が良くて、良く写真を撮ったりお喋りしたりする仲だ。
「えっ…! あれっ…なんかすごく良い撮れかただよっ、児成ってこんなに写真上手だったっ?」
「う~ん、私は普段通りに撮ったつもりなんだけど、たぶん佳那美ちゃんとアリエルちゃんが写り方を工夫してくれたんだと思うね! お兄ちゃんから、そういう写り方の技があるって聞いたし」
その写真はいつも朱莉が撮影するものとは違いがあった。明らかにいつもより華がある写真で、それでいて朱莉の可愛さが普段より強く際立っている写りだったのだ。
もちろん佳那美とアリエルの写りも良く、爽やかで自然な笑顔が眩しく写っている。
朱莉も明らかにいつもの自分の写真より、自分が可愛く写っていると感じた。左右の佳那美とアリエルの可愛さも際立っており、小学校の朝の教室で撮影した写真が凄く良い一枚に仕上がっていた。
「これって…何かすごいっ…! 私ってこんなに可愛いのっ…!? 私って絶世の美少女だったんだっ、知ってたけどっ…!」
「おいおい朱莉ちゃん…、まあ朱莉ちゃんが可愛いのは確かだけどね」
佳那美とアリエルは他のクラスメイトに話し掛けられて写真を見れなかった、今は他のクラスからもバズった2人を見に来る野次馬生徒が来ているレベルだ。SNSで情報を見なくても、こういう噂は学校では一瞬で広がるものだ。
「この写真さ、佳那美ちゃんとアリエルちゃんは少しだけレンズから視線を外して、見た人の意識を中央の朱莉ちゃんに来るようにしてるよ。ポーズも中央が目立つようにしてくれてる」
「…!! そ、そんなのってっ、どうやるのっ!? っていうか写真なんて自分が目立たないとダメじゃん!モデルなんだしっ…!」
「うーん、でもサブで写るモデルの時はメインを目立たせる写り方が出来れば、カメラマンとしては助かるってお兄ちゃんが言ってたよ。意外とこれが上手く出来ないモデルって、大人でも多いんだって」
佳那美とアリエルは写真に写る際、中央の朱莉が最も映えるようにポーズや視線、表情を整えたのだ。
大人のプロモデルでもないのに、指示されもせず息を合わせて最高レベルの引き立てをしてくれた。
この時に朱莉の心の中で『超強力ライバル出現警報』が鳴り響く、容姿ヨシ、表情ヨシ、ポーズも良し、醸し出す雰囲気すら写真に写る明るさも良し。
正直に言えば今まで佳那美を格下だと思っていた、事務所に入ってるなんて聞いて無かったし、芸能活動をしてるとも聞いて無かった。
佳那美はVtuberルルエルちゃんだった時は周囲に明かしておらず、母親は劇団に所属しているが有名ではない。つまり生徒達からノーマークだったのだ。
それが最近になって凄まじく可愛くなり、事務所にも所属してると明かし、加えて海外からの転校生のアリエル・アーヴァスという、これまた凄く可愛い子も同じ事務所である事が分かった。
しかし所詮は無名の弱小事務所、ロクな仕事も取れやしないと芸能活動をしてる生徒からはタカを括られていた。
そんな時にモデル撮影の写真が大バズ、こんな勢いで話題になっているのは小学生としては稀である。
しかも話題は継続中、SNSでは2人が表紙を飾った雑誌が凄いと話題になり、早朝から開店してる本屋は『アグリット今月号は売り切れです』とSNSに続々と投稿、それらが話題を呼び今も勢いは止まっていない。
そもそも芸能やサブカルチャーに詳しい生徒なら、小学生でもアグリットにモデルとして出ること自体が凄いと分かる。
ここはそういったサブカル事情に詳しい生徒が多い学校なのだ、悪く言えばマセた子供が多い学校だ。
「明美原が美少女~? そんなわけねぇじゃん!1年の頃とか知ってるけど、笑ってばっかのバカじゃんよ! ぎゃははっ」
「むっ! バカって言う方がおバカなんだよっ、青田君! それにカメラマンさんも灰川さんも可愛いって言ってくれたもんっ」
「けっ、カメラマンもナントカって人もお世辞で言ったんだよ、アーバスだって男みたいな見た目だし、どこが可愛いんだか分かんねぇっての」
「カナミにもボクにも失礼だよアオタ君! カナミはカワイイさっ、今の言葉を取り消すんだ!」
佳那美とアリエルに茶々を入れて来たのはクラスメイトの青田という男子生徒、彼はいわゆる悪ガキタイプの男子で、あまり品が無い感じの子である。つまり何処にでも居るイジメっ子タイプだ。
青田は1年生の時に佳那美と同じクラスで、4年生になってから再度同じクラスになっている。人の顔はよく覚える性格で、1年生の時の佳那美のこともしっかり覚えていた。
先週まで何の話題にもなってなかった2人が一躍にバズったのが気に入らないのだ、青田は芸能活動などはしていないが、何となく気に入らない。
1年生の頃にバカみたいに笑ってた同級生が、ポっと出の転校生の奴がいきなりカーストの上に行きそうなのが、やっぱりムカツクと感じている。
「あははっ、アーちゃんスゴイ可愛いのにっ、青田君って意地っ張りなんだねっ、あははっ」
「はぁ? お前らみたいな変なのとか興味ねーの当たり前じゃん! ん…? あれ……?」
青田は同年代より年上の高校生アイドルや大学生年代の女優が好きで、同年代の子達への興味は薄い。佳那美やアリエルに対しても『どうでも良い奴ら』くらいの印象しか持っていなかった。
しかし、いま目の前で笑っている明美原が凄く輝いて見えた。1年生の時に一度でも笑いだすと止まらず笑い続けていた、あの明美原が今は何だか……凄くかわいい!
容姿は元から整っていた方だったが、周りの芸能活動してる子に埋もれてしまっていた。それに笑い過ぎる奴という先入観もあって、今まであまりロクに見てなかったのだ。
コイツってこんなに可愛かったか?、声も何だか凄く可愛い感じがする、よく見ると笑い方が可愛い、そんな印象が青田の心の中に一瞬にして広がった。
あんまり話してこなかった事を今更ながら後悔する、コイツがこんなに可愛くなるなんて聞いてない!、なんで俺は気付かなかったんだ!
「アオタ君! カナミに謝るんだ!ボクのことは何て言っても良いさ! 自分でも男の子っぽい感じがあるのは、もう気付いてる! でもカナミには謝るべきだ!」
「~~! ちょ!分かった!分かった! おぁぁ……っ」
軽く怒りの表情を浮かべたアーバスことアリエル・アーヴァスが青田にグイっと近づく、そうしたら今まで男っぽい女という目でしか見てなかった彼女が、凄い容姿が整った子だと一瞬で気付かされた。
透き通った美しい湖のような青い目、輝くように綺麗な肌、光を放つようにすら見える金色の髪、正直に言ってしまえば滅茶苦茶に可愛い。怒った顔すら可愛い、むしろ可愛くない部分が無い!
動きの一挙手一投足にもどこか品があり、少し男の子っぽい髪形に反して女の子っぽさが凄くある。
そんな子が自分に近付いて来る、少し怒ってる雰囲気があるとはいえ、なんだか胸の奥とお腹の奥が熱くなるような、顔も熱くなるような感覚がブワっと青田に広がる。
「あっ!先生が来たよ! みんな座ろう!」
誰かがそう言いうと教室の生徒達は自分の席に座り、あっという間に何事もなかったかのように静かになった。
この時の青田の心は『謝っておけば少しは印象が良くなったかも…』なんて思いつつ、『自分も2人が表紙の雑誌を買おうかな…』とか少し思う。でも買ってしまったら負けな気がしてる。
だが青田に限らず発行されているアグリットの書籍は今の所、入手が難しい状況になりつつある。増刷は決まったが、まだまだ書店からの発注が止まらない状況だ。
アグリットの表紙写真は誰が見ても別格の綺麗さであり、それは小学生にも分かるほどだった。
渋谷東南第3小学校の『生徒芸能活動カースト』が動く可能性がある、それは先程に一緒に写真を撮った朱莉を始め、多数の生徒が感じ始めている。
そんなこんなで1日が過ぎて行き、佳那美とアリエルは学校で1日中も話題になってクラスメイトやクラス外の子、他学年の子にまで声を掛けられた。
それでいて休み時間には佳那美の母親やアーヴァス家から本人達に電話があり、『○○の仕事を是非に受けるべき』なんて話が来たり、このような宣伝をして良いかという本人への確認の電話があったりした。
状況が変わった、帰りは今までほとんど使わなかったタクシーを使って下校し、すぐにユニティブ興行事務所に向かったのだ。
2人が到着してから程なくして、事務所には学校が終わって速攻で向かってきた朋絵と砂遊も合流する。もちろん事務所には灰川も居た。
前園は子供の迎えに行かなければならないので退勤しており、藤枝は少し前に事務所に来て打ち込み作業をしている。
「佳那美ちゃんとアリエルちゃん、凄い話題になってるよ! おめでとう!」
「ありがとうございます、朋絵先輩っ! 学校でもすごい色んなこと聞かれちゃったんだよっ、えへへっ!」
「うしししっ、ユニティブ興行で最初のバズりはロリっ子の2人かぁ~、こんなに早く話題に上れるなんて幸先が良いねっ」
「お……おめでとう…っ、明美原さんっ……アーヴァスさん…っ」
「サユとトモエさんから色々と教えてもらったおかげさっ、フジエダさんも祝福してくれてありがとうっ、くふふっ」
話題に上れたことを事務所の皆とも噛み締め、開所以来の初めての波を起こせた事に湧き立っている。
しかしここからは仕事の話をすると灰川が言い、皆で事務所の中央にあるソファーに腰掛けた。
「色々な事が決まったんだけど、それはスマホでのやり取りと、さっきまでの話で大体は分かってくれたよな?」
「うんっ! 公式サイトが今日の夜に出来て、私とアーちゃんがnew Age stardomで紹介されるんだよねっ!? やったー!」
「それと新聞を使った宣伝とか、歌の番組に出るとか、ドラマの出演時間の延長に、テレビCMの出演とかもあるんだよねっ? すごいやっ!」
これらの仕事は午前に四楓院 英明が事務所に来た時に、この波を利用して一気に駆け上がらせるためにグループが手を尽くすと約束してくれた結果だ。
英明は、2人が起こした波は非常に良いタイプの物であり、低いリスクで名を上げるチャンスだと灰川達に論じたのだ。
その上で佳那美とアリエルの芸能レッスンを撮影した動画を見て、その英明のその思いは確信に変わった。この子達は押せば押すだけ上に行くというのが見て取れた。
「それと手風クーチェと砂遊のVも、これを皮切りにしてどんどん押し上げる。その協力の伝手は既に出来てるから、備えておいてね」
「私もnew Age stardomに出演と、砂遊ちゃんもデビューしたら出演、それとネットCMとかの出演と、所属者の皆の交流動画とかですよねっ」
「私もCMとか出れるんかぁ~? もし私はナシって言ったら、お兄ちゃんのこと呪うぞ~、うししっ」
これにてユニティブ興行は本格始動となり、所属者の4名は一気に各所へ売り込んでいく事となる。
これも四楓院グループのおかげであり、数か月前に縁が出来た時の効果が今に最大になって発揮されようとしていた。
「それと、状況を見てシャイニングゲート、ハッピーリレー、ユニティブ興行での絡みをしていく方針も決まったしな」
「聞いたよお兄ちゃん! それもスゲー事だべ!あの自由鷹ナツハとネットで絡むとか、普通だったら絶対にムリだもんなぁ~、うしししっ!」
「これからは自由鷹ナツハや三ツ橋エリスとも、配信とかで絡む事があるって前提で意識してな。まだ話は纏まってないけど、これから忙しくなるよ」
「うん、灰川さん、色々と良い話を持ってきてくれて、私が思ってたより凄い人だったんですね。ユニティブ興行に入れてくれて、ありがとうございます」
朋絵はライクスペースで色々あった末に性格は以前よりは丸くなっており、現在は周囲のサポートあっての活動だと、前よりは感じるようになった。
砂遊は兄のことを信じてはいたが、ここまで上手いこと話が進むのは驚きだった。この状況はぶりっつ&ばすたーに所属していた頃より、遥かに先々への希望が持てる。
だが、灰川は同時に『決まったというだけで、まだ何も成功してないから気を抜かないように』と付け加え、次の話題に進む。
「それと、俺は出張で少し事務所を空けるから、何かあったら電話してね。ちょっと伝手とかコネを広げられる話が入ったから行って来る」
「「!?」」
実は灰川は午前に英明が来た時にオカルト依頼を受けており、それを解決しなければならない運びとなってしまった。
どの道だが、ここから数日間は業界に慣れた有能なビジネスマンたちが動かなければ波を高くする事は出来ず、灰川ではこっち方面は能力不足なのだ。
そのための人員は四楓院が手配してくれる事になり、何があっても事務所の個人事業主である灰川の財産とかに被害が及ばないよう契約も交わしてくれた。
灰川は伝手を広げるという名目で出張お祓いをする事になり、所属者には動いてもらいつつ、事務所の仕事はスペシャリストに任せる運びとなったのだ。
四楓院グループには優秀な人達やビジネスシステムが揃っており、その力を貸してもらい事務所の名前を響かせるという寸法である。
「まあ、何かあったら遠慮せずに俺に電話すること、夜中とかでも気にしなくて良いからね」
「分かったよお兄ちゃん、このチャンスはものにしようぜぇ~、うししっ」
「緊急で木島マネージャーさんも付いてくれるんだねっ、これなら安心だよっ!」
既に波は発生している状態だ、後はそれぞれに動きを取って進めて行く。
灰川としては、こんな時に所長が留守になるなんてどうかという思いはあるが、伝手を広げるのも大事な仕事だと諭されてオカルト依頼はしっかり受けた。




