表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

284/333

284話 内部の調査開始

 地下の扉を開けてライトを投げ込むと、そこには豪奢な大広間が広がっていた。


 五角屋敷城は長年に渡って清掃などはせず放置されていたと聞かされていたのだが、金色の襖や鴨居の彫刻などを見ると、とても放置されていたようには見えない。


「実体存在型だな、江戸時代の姿か豪商の理想が実体として空間に反映されているんだろう」


「みたいっすね、やっぱり悪念も酷いし」


「でもキレイだね、ジャパンのお城ってリアルで見ると凄い迫力だっ」


 古くて放置されていたものが綺麗で美しい様相になっている、これは心霊現象としては最悪レベルに危険な状態だが、その美しさに4人は息を飲んで驚く。


 地下なのに3m以上はあろうかという天井、多くの立派な柱に豪奢な飾り付け、綺麗な畳や木の床、どこに出しても恥ずかしくない造りだ。


 上座には御殿様が座しそうな上段の間があり、その場所に城の持ち主の豪商が座ったのだろうか。もしかしたら、豪商とはいえ商人がこのような造りの間を作った事も問題だったのかもしれない。


 平民である商人が謁見の間のような場所を作るとは何事か、そういう風に思われても仕方ない時代だったのは予想できる。


 普通だったらこれ程の現象など、まず起こり得ない。しかしここまで強い霊状態になって条件が整えば、このような事も発生させることが可能らしい。


「まずライトを置いて行きながら中の様子を調べましょう、早い解決が求められますから」


「そうしよう、手早く調べて進むぞ。当初の予定に変更は無い」


 凄い内装だが驚いてる暇はない、灰川たちは地底の城に立ち入って調査を開始する。目的は祓いを完了してダムに向かっている念を消す事だ。


「ジャパンの建物に靴を履いたまま入るのって、なんだか変な感じがするね」


 緊迫した状況ではあるが、アリエルとしてはこういった状況に慣れている部分もあり、タナカもサイトウも慣れているので特に注意をしたりはしない。


 むしろあまり緊迫感を持ち過ぎれば疲労が早くなるし、適度に気を抜く事は良い事だという説もある。まだ気配は大きくなっていないから緊張しすぎるのは悪手だろう。


「イギリスって家の中で靴を履くのが普通なのか?」


「家や場所によって違うかな、僕の家は自室だと靴を脱ぐよ。でも友達のアーシャの家だと部屋でも靴は脱がなかったんだ」


 文化の違いというのは色々な部分に出るもので、屋内で靴を脱ぐかどうかは代表例と言って良いだろう。


 アリエルは日本の文化に完全には慣れてない部分も多いが、靴に関しての日本の文化には慣れて来たらしい。


「このお城って、建てた人がお城に憧れてたから作ったんだよね?」


「そうらしいな、憧れる気持ちは分からんでもないけど、本当に作っちゃうってのが凄いよな」


 建てるだけで処刑されてしまうかも知れないのに、それでも作ってしまうくらい憧れたのだろう。


 現代だって金持ちが豪邸を建てるのは普通の発想のように思えるし、やはり大きな家とか城というのは、いつの時代も人々の憧れの対象のようだ。


 ライトを置いて1階層の大広間を調べつつ灰川とアリエルは会話する、悪念なども強いが2人にとっては危険はない程度の物だ。


「ヨーロッパのお城はね、今は民間で販売されている所もあったりするんだ。ボクの親戚のおじさんも買おうか迷っていたよ」


「あ~、なんか前に日本人の金持ちyour-tuberがヨーロッパの城を買ってたな。ああいうのって現地の人からすると嫌なんじゃないか?」


「嫌に思う人も多いみたいだけど、歓迎してる人も多いんだ。お城って実は維持が凄く大変らしいからね」


 ヨーロッパでは現在でも保存状態の良い城だけで3000はあるらしく、その中の一部の城は一般販売されてる所もあるらしい。


 城は歴史ある古い建物であり、その分だけ維持費や修繕費用、改修費も凄い金額になる。購入しても制約なども多いらしく、この場所は改修しちゃダメとか、この部分は必ず修繕するなど様々な決まりがあるそうだ。


 つまり滅茶苦茶にお金が掛かるらしく、購入したは良いが維持できずに手放す人も多いらしい。お城とは建てるのも持ってるのも金が掛かり、権力を見せつけるというのも楽じゃないようだ。


「ボクもお城に住んでみたいなーって思ったこと何回もあるよっ、ウィンザー城にエディンバラ城、ドイツのノイシュバンシュタイン城にフランスのシャンボール城、デンマークのフレデリクスボー城もステキだよねっ」


「大御所の城ばっかりだなぁ、流石にそういう所は売ってないだろ」


 アリエルは童話に出て来るようなお城に憧れてた頃もあり、今もその憧れは普通にあるらしい。


 家は確かにお城のような大きさだが、決してお城という訳ではない。それとこれとは別にお城に対する一般的な憧れは普通に持っている。


 城とは人々の憧れの対象であり、国の誇りであり、多くの人に愛される建造物だ。そこに住んでみたいと思うのは、子供なら一度は考えそうなものだろう。


「窓とか照明は無いな、江戸時代にどうやって視界を確保していたんだ? 下手すりゃ酸欠にだってなりかねないぞ」


「どうやら空気は柱に穴をあけて通したりしていたようですね、耐久性が落ちるので柱の数を増やして構造を保っていたようです。照明はロウソクや行灯(あんどん)をふんだんに使ったのでしょうか」


 タナカとサイトウも調査をしつつ疑問を口にしたりする。


 空調問題は柱の穴やその他の通風孔を確保していたらしく、照明は火を使っていたのではないかと思われる。


 火を使えば室温は上がり、冬ならば温かくて良かったのかも知れない。夏であっても地面の下は寒いくらい涼しい事があるので、温度的には悪くなかったのかもしれない。


 明るさに関してはロウソクや行灯の数次第だろうが、当時はロウソクも行灯油も高価な物であり、照明費だけで結構な金が掛かりそうな気がする。


 地下だから水の染み出し問題などもあるだろうが、そこは凄く気を使ったのではないかと思う。土地の厳選もしっかりやったのだろう。 


「確かに立派ではありますが、居住性の方はどうだったんでしょうね。湿気は強いですし、どんなに照明を使っても昼間の外と比べれば暗かったでしょうし」


「住みよさで言えばそこまで上とは言えんかもな、いくら通風があっても風通りは一定以上は良くならんだろうしよ」


 タナカが自動小銃を持ってサイトウの近くに構えつつ灰川とアリエルにも目を配り、それぞれに霊感を使って調査していく。


 城は素敵な建物ではあるが、現代では居住性を疑問視する声も大きい。現にデザイン重視で居住性は2の次という城も多数あるらしい。


 1階層の大広間は霊的には特に見るべきものは無く、やはり下の方に行かなければ解決の糸口は掴めそうにないという結論になった。




「階段も立派だけど、暗いからちょっと足元が怖いっすね」


「気を付けろよ誠治、暗い場所で足を踏み外して怪我をする事は軍人にも多いんだ」


 警戒に気を取られて足元がお留守なんて事は軍人とかでも起こるらしい、ライトで足元をしっかり照らしつつ警戒しながら4人は下に降りる。


 悪い霊気は1層目より強いが、大きく警戒するほどではない。タナカもサイトウも陽呪術で霊力が上がっているので、今の所は特に問題は無さそうだ。


「2層目は使用人部屋とか物置の階らしいな」


「3層目は客室などのようですね、茶室や奥座敷などもあったようです」


 建物としては大きいが、やはり城と言うには規模が小さく感じられる。


 そもそも日本の城は敷地内に幾つもの建物があり、それぞれに使用人や武士などが居て仕事をしていた。決して天守の一つで城塞機能が完結していた訳ではない。


 この五角屋敷城は城に憧れた商人が人づてに聞いた話を元に建造した城モドキであり、あまり実用に即した城という訳では無いようだ。


「とりあえずですが、この建物の5角形という形が霊的な力を増幅していますね。五行の力が主だと思うっすよ」


「ピラミッドパワーって奴か? 昔に流行ったらしいが、あれはガセって言う事で国家超常対処局でも結論が出たんだが」


「全くの嘘って訳でもないですよ、レナード効果がどうとか、寿命が延びるとかは嘘だったみたいっすけど」


 ピラミッドパワーとは昔に流行ったオカルトであり、ピラミッド状の立方物の中に入った物は生命力が活性化され病気を治すとか、精神集中を助け悟りに至るなどといったオカルト説が流行ったのだ。


 それらの力を発揮するのは宇宙エネルギーを受信するためであり、そのエネルギーが解明不可能な力を持ってプラスの効能を生き物に与えるという話だ。


 他にもレナード効果という、マイナスイオン学説に関する事も効果を及ぼしているという話もある。


 これらは疑似科学の信憑性のない俗説なのだが、割と真面目に研究された題材でもあり、それらの研究の成果として『効果ナシ』という事が分かったのだ。


 だが、それが分かるまでは真面目に信じていた人も多く、ピラミッドパワーを受けて受験勉強をするための5角形骨組みが売れたり、食品の腐敗防止のためのピラミッド型の被せ物が売れたりしたそうだ。


「五行思想とか五大元素思想だと5という数字に関りが深いですし、それらに対応する力が多く含まれるなら霊的な力は増幅される時があるっすから」


「それが逆さになってプラスの効果が反転してマイナスの効果になったんでしょうか?」


「そうかもしれないっすね、でも短時間で大きな影響が出るモノじゃないっすから、時間を掛けて力が溜まって、最近になって爆発的な霊力反応を起こした……とかっすかね?」


「条件次第ということか…とにかく分からん事が多いな、まずは調査を続けよう。目先の問題の解決が先だからな」


 なぜ突然にこれ程の悪い念を発するようになったのか、本当に電子霊能力を有しているのか、霊媒物などが存在するのか、そういった事はまだ分からない。


 とにかく調査を優先させて解決に進まなければならない、そのためには事の真相がどうとかは後回しだ。


 ライトを置いたりしながら2層目の探索と調査を続け、廊下を歩いて先に進む。この階も綺麗な状態であり、古い廃屋というような印象は湧かない見た目だ。


「この階は部屋が多いですね、使用人部屋や物置の階だから当たり前なんでしょうけど」


「怪現象が発生してるからかもしれんが、水捌けも良い土地なんだろうな。湿気はあるが浸水してそうな気配もないしよ」


 各部屋を回っていくが特に危険な気配もなく進む、解決の糸口はまだ見つからないし、悪念の気配が濃い下の階層に何かがあるのは明白だ。


 だが手を抜く訳にはいかない、ちょっとした見落としが成功と失敗を分ける時がある。それを知ってるタナカとサイトウは2層目でもしっかり目を光らせていたが。


「この階は時間が掛かりそうだな、誠治、アリエル、悪いんだが手分けして調査をしたい。俺とサイトウが3層目に先に行っても良いか?」


「えっ、でも危険なんじゃ…」


「確かに危険はありますが、それでも解決の方を優先したいのです。時間も限られていますからね」


 手分けして捜索というのはホラー映画とかだと死亡フラグだが、現実ではそうしなければならない事が発生するのは普通にあることだろう。今そうしなければならないとタナカが判断した。


 タナカとサイトウは危険度が高いであろう3層目に行き、灰川とアリエルは危険度と重要度が低いであろう2層目の調査だ。


「タナカさんとサイトウさんで大丈夫っすか…? その、なんて言うか…」


「それなら心配するな、危険だと判断したら戻って援護を2人に要請するし、誠治が霊力を込めた無線機だってあるからな」


「確かに私とタナカ隊長は灰川さんとアリエルさんの霊力には遠く及びません、ですがその差を埋めるために武装があるのですから」


 タナカとサイトウの装備は霊力付与を施した軍用装備であり、霊的な防御も攻撃も非常に強いものだ。しかも今は灰川の陽呪術の力も加わって、攻防ともに大幅に霊的な力が増している。


 正直に言うと灰川はタナカはともかく、サイトウはこの場所ですぐに倒れると思っていたが、それは間違いだった。彼らは装備を含めて強さを測るべきであり、装備があればサイトウは相当に強くなる。


 連射力が高く貫通力の高い弾丸を使用したアサルトライフル、取り回しが良く命中率も高いハンドガン、用途に合わせて使える大型と小型のナイフ。


 グリップ力が高く軽量で頑丈なタクティカルブーツ、戦闘任務に最適なタクティカルスーツとボディアーマー、暗視スコープの使用が可能な戦闘用ヘルメット、救急医療キットもポーチに入っている。


 それらに強い霊力が宿っており、その上で鍛え抜かれた強靭な肉体も有している。陽呪術ナシでも長時間とは言えないまでも、それなりの時間は耐えられた筈だ。


 しかもタナカに至ってはバレルを調整した戦闘用散弾銃も持っており、それらの装備を軽々と持ち歩いている。並大抵のモノに一発でやられるとは思えない。


「分かりました、何かあったら無線を絶対に送って下さい。必ず助けに行きますから」


「誠治たちも何かあったら必ず無線だぞ、最優先で援護に来る」


 緊急で喋れない場合の通信には無線の通信ボタンを押すと4人で決めており、ボタンを押せばイヤホンから『ピッ』という電子音が鳴るので緊急事態だと察する事が出来る。


 完全な緊急事態の場合は無線のボタンを連打であり、その際は隠密性などは考慮せずダッシュで向かう事になっている。


 場所の確認はGPSと確認端末を全員が持っており、階層の移動の際は必ず無線で連絡して互いに許可を仰ぐという形だ。


 この場では隊長はタナカだが、隊長を含め勝手な行動は許されない。それは自身と仲間の命を危険に晒す行為である。


「じゃあ無線を装着してと、ハイカワの服だと無線を装着できるショルダーベルトが無いね。ボクのコートにはちゃんとあるけど」


「あ~、俺は無線とかトランシーバーは胸ポケット派だから別に良いって、このスーツだと胸ポケットの内側にチャックもあるから落とす心配ないしよ」


「誠治は無線を使うような仕事の経験ってあったか? 局が経歴を軽く調べたが、特に無かった気がするんだが」


「ブラック企業時代に交通誘導警備の会社に行かされたんすよ、普通のトランシーバーから山越えの無線まで使い方は知ってますよ。機種にもよるけど」


「灰川さんってブラック企業のせいで大変な思いをしたようですけど、そのせいで知識が変に深かったりしますよね」


 国家超常対処局は灰川の経歴を調べており、その事は灰川もタナカから知らされている。最初は少し怒ったが、別に調べられて困るような経歴ではないので普通に和解していた。もちろんプライベートの事は調べようが無いので知らないそうだ。


 警備員経験者は大体は無線やトランシーバーを使った事があり、灰川もそれに漏れず幾つかのタイプの無線を使っている。今回の小型無線も操作は問題なく、チャンネル設定や通信はすぐに出来た。


 アリエルはMID7で無線の講習を受けているし、任務でも使ってたので問題なく使用可能だ。


「じゃあ我々は3層に行きますので、2層の調査はお願いします。30分後に合流しましょう」


「分かりました、念のため陽呪術も掛け直しておいたんで」


「アリエル、危険を察知したら迷わず聖剣を抜けよ。もっとも担い手に近寄れる存在がこの階層には居ないようだがな」


「はい、タナカ隊長も何かあったらすぐに言って下さいね。ハイカワと一緒に援護に行きます」


 こうして二手に分かれての調査が始まり、タナカとサイトウチーム、灰川とアリエルのチームに分かれる。


 最初はタナカと灰川チーム、サイトウとアリエルチームに分かれるかという案もあったのだが、聖剣のエネルギー充填は灰川しか出来ないため、この形となった。


 聖剣のエネルギーが即座に切れる事は無いが、それでも何があるか分からないのが現場というものだ。そのため、この形が最適という判断に至ったのである。




「前方クリア」


「後方クリア」


 タナカとサイトウは3層目に降りて調査を開始する、今の所は特に危険な霊体や超常存在には遭遇していない。


 黙って静かに廊下を進みつつ扉を開けて客室を見ていき、その際に霊視して何かが無いかを素早く調べて行く。


 その間に少し広い客室、恐らくは上客のための部屋であろう場所に差し掛かって中に入った。ここは少し時間が掛かりそうだ。


「それにしても、灰川さんの陽呪術は凄いですね。ヴァンパイアの時も凄さは実感していますが、今回も凄い効果ですよ」


「そうだな、俺達だけの霊力だったら悪念にやられて動けなくなっていたかもしれん。陽呪術、俺にも使えたら教えて欲しいもんだ」


「灰川家の秘伝なのでしょうから無理ではないですかね? それに修行だけで相当な時間が掛かりそうですよ」


 タナカもサイトウも灰川の陽呪術の効能によって五角屋敷城の内部で正常に動けており、今回も大きく助けられてると感謝している。


 2人とも灰川の陽呪術が無ければ、この中の悪質な霊気にやられて長時間の活動は無理だったかもしれない。少なくとも体力と精神力の消耗は今の比ではなかっただろう。


「聖剣の担い手も凄いものなんだな、見くびっていた訳では無いんだが、見立ては甘かったらしい」


「そうですね、ハッキリ言って私とタナカ隊長よりこの場所では頼りになるかも知れません。そのくらいの霊力です」


「あれで霊力の加護が他の聖剣の担い手より大幅に低いってんだから、霊能者やってるのが嫌になるぜ。はははっ」


 聖剣ファースの担い手たるアリエルの霊力だって非常に高く、灰川には及ばないが素晴らしい強さを持っている。


 あれなら悪霊に憑依される心配も無いし、呪いを掛けられても余程の事がない限りは全く問題は無い。運気も凄いし物事の視野も広く、その他の人間的パロメータも高いのが見て取れる。


 あんな子に矛盾の呪いというものを掛けたのは、余程に狙っていたという事なのだろうとタナカは思う。しかし今は関係ない事だ。


「ん? これは……」


「どうした? 霊媒物でもあったのか?」


「いえ、何か妙な気配を発している古い書物がありました」


 サイトウが持っていたのは江戸時代の誰かが書いた物を、中本という形に纏めたと思われる物が発見された。


 霊能力が有るからと言って何でもかんでも気配だけで全てを察せる訳ではない。


 目で見なければ分からない気配なども多くあるし、数cmまで近寄ったり、手に持ったりしなければ分からない質の気配なんかも多くある。サイトウが発見したのは正にそんな物だった。


 発見場所は上客間の部屋で棚の中に置かれていた一冊だ。今の五角屋敷城は内装や装飾品なども霊現象によって、完全ではないだろうが再現されている状態であり、この書物もそんな中の一つのようだ。


 2人はライトで照らしながら中身を確認すると、そこには予想外の内容が記されていた。




 夢を叶えた人は、それで満足するでしょうか?


 夢を叶えて満足して、後はゆっくり人生と仕事を楽しみつつ生きる人も多いかもしれません。


 でも、次の夢を目指したり、新たな欲が芽生えたり、自分より上の人に嫉妬して更なる上を目指したり、という人もきっと居るでしょう。


 その過程の中で、時には自分でも知らなかった本性が表になるかも知れません。


 夢を叶える事は本当に幸せですか?


 その夢は誰かを幸せにしますか?


 王様になった人が何を求めるか、きっとそれは人によって違うでしょう。


 お城もピラミッドも王様の象徴、その場所に足る器はどんな形で、どんな大きさなのでしょう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ