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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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266話 危険グループの情報

「さて、配信だな!」


 史菜と佳那美とアリエルと秋葉原に行った後の土曜の夜、灰川は配信を始める。


 最近は全く登録者が増えておらず50人くらいで止まっており、スパムアカウントすら寄り付かなくなってきてるが気にしない。いつか俺だって登録者100万とかになりたいな~と、懲りずに思って活動してるのだ。


「こんばんは! 灰川メビウスでっすぅ! 今日は雑談配信やってくぜ!」


 いつもの配信画面を開いて汎用背景を表示して雑談を配信していく。雑談と言っても誰も来ないから1人でベラベラ喋るだけ、しかもトークは止まったり内容が飛んだりするから話に魅力が無い。


「そんでさぁ、ボールペンがさぁ~~」


 誰が聞いても面白くない話を、誰も来てない配信画面に向かって話し続ける。面白くない話を面白く話す技術も世の中にはあるが、もちろん灰川にそんなものは無かった。


 土曜の夜なんて配信の激戦タイムだ、馬路矢場アパートの2階に住んでる朋絵こと、Vtuberの手風クーチェも今は配信中だ。


 SNSで滝織キオンの転生だと流れたのがプラスに働き、朋絵は既に視聴者登録が5000人を超えてる。


 本人は滝織キオンだった事は明言はしてないが、視聴者の質問に対して強めの匂わせ発言をして、『言わないけど分かるよな?』という感じでアピールしてるのだ。


 朋絵は滝織キオン時代から長時間配信が多いVtuberで、そのスタイルを変える気は無いと言ってる。


 ライクスペースの時から学校より配信を優先させる生活で、学校の成績はボロボロだ。


 灰川は登録者数とかより学校を優先しろと言ってるのだが、朋絵は早く稼ぎが欲しいという理由から配信を優先させてる。他にも問題は抱えてるのだが、今は置いておくしかない。


「1時間くらい喋ってるけど誰も来ねぇな~、俺って面白くないのか? そんな訳ないしなぁ」  


 今は自由鷹ナツハや竜胆れもんといった一線級Vtuberや有名配信者も配信してる時間で、無名の3流配信者の灰川の所に新規の視聴者が来る可能性は低い。


 ちなみに妹の砂遊は今日はゲームのし過ぎで疲れて寝てしまっており、アリエルは買ってきた漫画を灰川に読み方を教えてもらって今は自室で読んでる。


 先程にギャグ漫画を読んで『コンドルがめり込んどるだって! あははははっっ!』とダジャレがツボに入ってしまい、腹とクマのぬいぐるみを抱えて大笑いしてた。


 笑い過ぎて苦しかったらしく、灰川に笑いを止める薬を買ってきて!とか言ったが、そんな物は無いから紅茶でも飲んで落ち着けと言う。


 しかしアリエルは紅茶を飲んでる時に漫画のコマを思い出してしまい、笑って紅茶を盛大に噴き出したなんて一幕があったのだった。


『マリモー:メビウス、こんばんは!』


「お、マリモーさん、いらっしゃい」


 しばらく配信してるとマリモーこと飛車原 由奈がやってきた。どうやら配信が終わって灰川の配信を見かけて遊びに来てくれたらしい。


「今日は雑談配信やってるよ、誰も来てなかったけどな! がははっ!」


『マリモー:そうだったのね、どんなお話してたの?』


「ボールペンを買ったんだけどポケットに入れっぱなしで洗濯しちゃって、一回も使わずオシャカにしちゃった話してたぞ」


『マリモー:やっちゃったわね! でもありがちな話だと思うわ』


「マジかぁ、俺としては面白いやらかしだと思ったんだけどな、でも確かに今まで何回かティッシュとかでやらかしてるな」


 ポケットに物を入れたまま洗濯なんて誰しも通る道だ、しっかり話を組み立てなきゃ面白い話にはならないのが現実だろう。


「マリモーさんはポケット洗濯やらかしって、何かある?」


『マリモー:私はスカートのポケットに絵具を入れたままで、洗濯物が真っ赤になっちゃったことがあったわ』


「やっちゃったねぇ、誰でもそういうやらかしってあるよな~」


『マリモー:そうよね! 気を付けててもやっちゃうわね』


『仕込み杖:やっほ~、お邪魔しますだよ』


 そのまま由奈のコメントとタイマン雑談をしてると、染谷川 小路もやって来て雑談は続く。コメントしてくれる人が居れば雑談は捗る物だ。




『マリモー:そういえばね、近くの学校で生徒が捕まったって話を聞いたわ、何があったのかしら』


「捕まった? マリモーさんと同年代ってなると万引きとかか? ニュースにもなってないようだし、まあ大きな事件じゃないだろうけどさ」


『仕込み杖:万引きはダメだよ~、クセになるって聞くよ』


 中学生が起こす事件など高が知れてると灰川は思う、万引きくらいが関の山だという認識だ。万引きは悪い事ではあるし総計の被害額は大きいだろうが、ニュースになるほど大きな事件ではないだろう。


 由奈は近所に住む親戚の真奈華という子が住居不法侵入で逮捕された事があったが、それは体調不良で混乱して入ってしまったという感じで片付けてもらったと聞いてる。前歴は残るが、有罪判決履歴である前科は残らないという感じだ。


『マリモー:それが何だか噂が広がっちゃうくらいの事件らしいの、よく分からないけど』


『仕込み杖:私も最近は危ない事件が多くなってるから気を付けろって言われてるよ~』


「マジか、世も末だよなホント。あっちも事件、こっちも事件って嫌になるぜ」


 昨今の犯罪はネットの更なる発達によってバレにくい犯罪も多くなっており、重大な事件の犯人を捕まえたら主犯は10代だったなんて話も珍しくなくなって来てる。


 もしかしたら近所の中学校で犯罪に関与してた生徒が居たのかもと思うと良い気持ちはしない、もっとも由奈から聞いた噂に過ぎないから気にしてもしょうがないだろう。


「何か怖そうな奴とかに話し掛けられたとかってなったら、ちゃんと話してくれよな。危ない奴も多い世の中なんだから」


『マリモー:わかったわ! 頼りにしてるわね!』


『仕込み杖:ありがと~、何かあったら絶対に相談するね~』


 そんな話をしつつ雑談配信は続き、その日は終わりになったのだった。




「誠治、かなりヤバイ連中が幅を利かせるようになってるから気を付けろよ」


「タナカさん、お茶のおかわりあるよ」


 翌日の日曜日、タナカが馬路矢場アパートに来て灰川と話してる。灰川に頼んでた浄霊の御札と清めの塩を受け取りに来たついでに情報交換もしていた。


 オカルト関係の話もしたのだが、話題は逸れて最近に勢力を伸ばしてる危険グループなどの話になっている。


「ヤバい連中って、どんなのですか? ってか繁華街なんてヤンキーとか普通に居るじゃないっすか」


「ヤンキーとかも最近の連中は加減ってものを知らねぇからな、悪事に対する罪悪感も昔より低いし危なくなってるぞ」


 そのままタナカは話を続け、最近のアウトロー事情の説明をしていく。最初に話されたのは昔と今のヤンキーは明確に違いがあるという話だった。


 昔と今とでは不良のやる悪事の悪質さや重大さが上がっており、ニュースになってないだけで実は相当の被害が生まれてるとの事だ。


 カツアゲをするにしても金を奪うだけでは飽き足らず、その場のノリと勢いだけで大怪我をさせたり。


 ヤクザ等の上位暴力組織に言われて破滅を伴う依存性のある薬物をバラ撒いたり。


 上位暴力組織に教えられた監視カメラの無い場所や、手を組んでる店などに人を拉致して何かをしたり、何処かに引き渡したり。


「そういうのはヤンキーとは言わんさ、もはや犯罪組織の構成員同然だ」


「ひったくりとかネット詐欺とかも、若い奴がリーダーだったとかの話もありますもんね」


「元締めが居るにせよ居ないにせよ悪質さが増してるのは変わらん。警察にも内通者が居て、捜査が来る頃には逃げおおせてるって話だ」


 その他にも警察や政治家の身内が関与してて捜査打ち切りとか、権力者が弱みを握られたり、もしくは繋がってたりして手が出せないとか、そんな話も実際にあるらしいと聞く。


「誠治、四楓院さんに口利きして少しでもそういう連中の排除とかしてもらえんのか?」


「いや、まぁ…前に聞いた話だと、そっち関連の事は簡単に尻尾を掴めないから難しいって聞いたっすよ」


 ○○がアウトローと繋がってるとかの情報はガセも多く、誤った判断で動けば大きな損失が出る。それどころか善良な者を追い出したりするような事に繋がりかねない。


 少し頭の働く奴なら誰かを隠れ蓑にして別人が疑われるよう仕向けたりするそうで、本当の黒幕や後ろ盾が誰だか分からないよう仕組んでるそうなのだ。


「あー、そりゃそうだよな、四楓院家でも簡単には裏が取れないのか、ちょっとアテが外れたな」


「そっち方面で俺をアテにしないで下さいよ、オカルトなら協力を惜しまないっすけど」


 主犯格であっても、ヤクザに捕まえられてバックが誰なのか吐かせて、聞いた名前の奴を問い詰めたら全く関係ない人だった、なんて事が闇霊能者時代にあったとタナカは語る。


 捕まえようと思って簡単に捕まえられるんなら悪は栄えない、権力や捜査力や情報人脈などを駆使しても楽には突き止められないのが現実だ。


 四楓院家は大きな権力も財力もあるし、ほとんど私設軍隊と言っても良いような人達を警備会社名目で有してる。


 今までには合法とは言い難い事もやった事はあるだろうと灰川は思ってるし、逆にそういう被害も受けて来ただろう。


 そんな裏と表のノウハウを多く有する人達でも御しきれないし、全容なんてとても掴み切れない世界になってしまってる。


「ヤバい連中って言うっすけど、どんな奴らなんすか? 大した事ないなら一番良いんすけど」


「渋谷とか池袋で派手にやってる連中は何組か居てな、地下格闘技に居た何人かが集まって作った影武神(かげぶしん)、元は中高生のヤンキーの集まりだった東京カオスランナー、後は~~……」


 タナカは複数の危険グループに関する情報を灰川に教えていく、その内容は想像以上のものだった。




  影武神


 街のゴロツキやヤンキーという喧嘩自慢が、街のクラブなどに作られた即席で簡素なリングで戦う地下格闘技というものがある。


 出場するのは高校生ヤンキーだったり格闘技経験のある人だったり、体力を持て余した奴だったり様々だ。不良グループが縄張り争いのために代表戦争をしたりする時もあるらしい。


 基本的には血気盛んな連中が集まるため熱気も強く、流血試合なんて当たり前、プロではない素人の喧嘩だから有耶無耶な結果で終わる事も普通らしい。賭け試合も場所によってはある。


 こういう所には『日本一ケンカが強い』『プロ格闘家を一発で倒した最強素人』なんて豪語する者も居るが、大体はフカシだとのこと。


 そこからプロの格闘界に憧れて努力を積んでプロになったりする者も居るが、そんな者は一握りだ。それどころかシャレにならないアウトローを生み出す事もある。


 その1つが影武神という、元は5人くらいの地下格闘技に出てた格闘技経験者が作った不良グループで、今は準構成員を含めて200名以上が居る。


 かなり過激な地下格闘技リングに上がってた者達がリーダーや幹部で、暴力への呵責が非常に低く、しかも執着心が強いため狙われたら厄介。


 その暴力性に目を付けた何者かが彼らを飼いならして利用しており、警察なども代理出頭などの犯人隠蔽を容認するしかない状況だとの事だ。


 信憑性の高い裏の話では、拉致、脅迫、殺人、死体処理、ドラッグやレ〇プゲームの斡旋などをしてるらしく、全容は掴めないが非常に危険。


 タナカが言うには『コイツら全員ぶっ殺してぇくらい嫌な話を聞いてる』との事だ。




  東京カオスランナー


 中高生年代の不良少年少女のグループで、3年ほど前に名乗りを上げ始めたようだ。構成員の数は不明だが、最低でも200人以上が関わってると見られてる。


 当初は10名くらいが街でたむろして夜まで遊んでただけだったそうだが、すぐに段々と人が集まり始めて遊ぶための金を得るために、恐喝行為やひったくり等をする者が出始める。


 悪事に手を染めて金を得る事の楽しさを覚えた少年少女たちは、どんどん行為をエスカレートさせていった。


 何人からカツアゲ出来るか競ったり、振り込め詐欺をしたり、あまりに酷い悪質さとなる。


 しかし本職の暴力団や犯罪グループは彼らを追い込んだりせず、むしろやり方を教えてる所まである始末だ。


 彼らは警察や権力者に捕まらない構造があるらしく、今は最高潮の波に乗ってるという状況らしい。


 今では特殊詐欺、暴力、脅迫、少年年代への薬物の拡散、闇ウェブでの商売、考えつく限りの犯罪に手を染めて多額の金を稼いでる。


 遊び感覚で犯罪に手を染めてるため犯罪への抵抗感が薄く、犯罪行為がいかに悪い事なのかの自覚も無い。


 未成年が大半を占めるグループだが非常に危険で、金や環境によって感覚が狂ってる分、むしろそこらのヤクザより危険だという話もある。


 タナカが言うには『とても話せたような内容じゃない事もやってるイカレたガキども』だそうで、胸糞悪いと語ってる。




「他にも元暴走族の構成員で作られた奴らとか、配信者事務所だったのがいつの間にか犯罪グループになってたとか、色々あるみたいだぞ」


「マジすか…もう滅茶苦茶やないすか…」


「渋谷は芸能事務所とか多い区だから、誠治も気を付けろよ。もっともお前には警護も付いてるから大丈夫だろうけどな」


「俺はともかく皆が心配っすよ、大丈夫かな…」


「確かにアウトローの数は増えてるとはいえ、そう簡単に的にされる事は無いだろうよ。もし何かあったら俺に相談しても良いからな、すぐに対処してやるからよ」


「マジすか!? 心強い!」


 東京は世界に名だたる経済都市で、そこには多くの欲望が渦巻く。


 大きな商業施設のビルが数え切れないくらい在り、大きな金の世界に繋がる芸能事務所も大量にあり、それと同時に裏社会に繋がる者も多い街である。


 昔から映画に漫画にアウトローに関する格好良い話は多いが、それと同時に怖い話も後を絶たない、それは現代でも同じ事だ。


 罪悪感が麻痺してる奴、頭のネジが飛んでる奴、後先など考えず遊び気分で悪事をする奴、知らないし関わらないだけで街を歩けばそういった者とすれ違ってるのだろう。


 現実は漫画とは違う、暴力を振るわれれば後遺症が残ったり最悪では死亡する事だってある。カツアゲとは言い変えれば強盗であり、その恐怖は人によっては生涯のトラウマになる。


 昔はワルだったとか、昔はヤンチャしてたなんて言う人も居るが、その影には彼らに殴られて後遺症を負った者や、大切な金を奪われて人生が狂った人が居る可能性も忘れてはいけない。


「じゃあ俺は行くからよ、何かあったら電話しろよな誠治。御札と清めの塩ありがとな」


「タナカさんも気を付けて下さいっすよ、ガタイ良いから絡まれる事ないかぁ」


「逆に絡まれてみてぇな、別にケンカが好きな訳でもないけどよ、はははっ」


 そんなやり取りをしてタナカは帰っていき、今日はしっかり休もうかと灰川は考えるのだった。

令和7年7月7日!


すいません、メモ書きを消し忘れてました、忘れて下さい、

言い訳をさせてもらうと、自分では消したつもりだったんですが、なぜか消えてませんでした

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これらを書く時は描写を相当にソフトにする もしくは別案を考える あしたは新台より客づき良い台狙う、からくりかグール んん?
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