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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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253話 悪口で悪魔を乱せ!

 灰川とアリエルはルーザに連れられて、35階の廊下の先にある小休憩所みたいな所に行った。


 ホテルなんかによくあるような休憩所みたいな場所だが、やはり高級感があるスペースだ。


「この悪念の空気はお前が出してるの? 弱いって割に結構な嫌な雰囲気だと思うんだけど」


「弱いと言っても悪魔は悪魔ですからね、表に出ればどうしても魔のオーラは出てしまいます」


 どうやら35階に充満する悪い雰囲気はルーザが表に出てる影響のようで、悪魔である以上は最低でもこのくらいの悪い霊力オーラが出てしまうらしい。


 MID7のジャックが悪魔が居る場合は絶対に雰囲気を隠せないと言ってたが、どうやらその通りのようだ。


「ハイカワ、先にボクから悪魔のことを説明させて、その方が安全に話を進められるはずさ」


 アリエルは悪魔に関して知識がそこまで深くない灰川に説明するために、今まで学んで来た知識を話してくれた。


「まず悪魔は色々な種類が居て、聖書物が由来とされる悪魔、中東などのオリエントの神々に由来する悪魔とか、本当に数が多いんだ」


 しかし、アリエルが言うには宗教の書物に記されたような悪魔が現れたという話は聞いた事が無いらしい。


 たまに有名な悪魔に憑りつかれたと言って教会などに来る人も居るそうなのだが、そういうのは勘違いや思い込みが全てと言っても良いくらいだと言う。 


 たまに本当の悪魔憑きもあったりするが、名前を引き出せたとしても聞いた事もない名である事がほとんどらしい。そしてルーザなんて悪魔は例の如く聞いた事が無い。


 昔は異教の神は悪魔だとか、異教徒は悪魔の信者だから改宗させなければならないとかの思想もあったが今は違う。


「ボクが学ばされた知識では、基本的に悪魔は人を欺く、そして人が堕落する姿を糧にする存在なんだ」


 悪魔という存在が何なのかは完全には分かってない、地獄から来たなんて話が神話にはあるが信憑性は今の所は薄いそうだ。


 悪霊が悪魔と言える存在になった例だとか、人の念が作り出した怪異だとかの話があり、MID7の定義では悪魔とは『人の精神を率先して堕落させ、その者や周囲を巻き込んだ破滅をもたらすオカルト存在』との事だ。


 つまりは人を不幸にする怪存在だが、悪霊などのモノと違って力を行使する際には契約という形で代償を要求する事が多数なのだそうだ。


 契約は事の大きさや悪魔の力によって大きく左右されるが、基本的には悪魔は自分の可能な事でなければ契約は結べないとの事らしい。弱い悪魔に『世界征服させろ』と持ち掛けても契約は不可能である。


 もっとも、そんな大きな願いを成就させられる悪魔など想像も出来ないし、仮に居たとしたらどれほど大きな代償を払わされるか想像も付かない。


「聖剣だったら悪魔も斬れるけど、神話に出て来るような悪魔だったら、どうなのかは分からないよ」 


「そうか、なるほどな。俺も霊視と呪霊視で見たけど、そんな感じがするな」


 灰川もアリエルに、コイツから『ゆびもらい先生』の気配がする事なども伝えたが、アリエルもそれを感じ取ってたらしい。


 その上で下手に祓ったら被害が発生する特殊な怪異である可能性もある事も伝え、現状での情報交換は済んだのだった。


 やはり謎が多い、名前を名乗った意味や、わざわざ自分たちの前に出て来た意味も分からない。しかも力が弱く、灰川とアリエルからしたら祓おうと思えば簡単に祓えてしまう程度の霊力だ。


「ルーザって言ったよな、お前から別の怪存在の気配がするんだが、それは何故だ?」


「ああ、あの悪しき念の集合体ですか、あの存在は話をしたら私と一緒になりたいと感じて、自ら私に取り込まれました」


「そ、そんなことっ、ある訳がっ…!」


「私ではあの存在と張り合っても負けてしまうだけですからね、日本の怪存在は強いものが多いようですので」


 話し合いが出来る存在だったのか、怪存在同士だと話が通じるのかとか、そもそも嘘なのか分からない。


 灰川もアリエルも霊視を解いてないが、念などには全く怪しい動きが無かった。


「悪魔は契約で動くんだろっ、お前はその体の人とどんな契約をしたんだ!」


 アリエルが声を大きくして聞く、相手は悪魔、容赦など必要ない存在、だからこそ強く出て高圧的に脅して聞き出す……という風に見える。


 しかし灰川にはアリエルが奴の得体の知れなさを恐れてるように見える、だから声を荒げてるように見えた。理解不能なものを前にすれば人は大なり小なり感情が揺れるものである。


「どんな契約をですか、その前に少しばかりこの人の話をしましょう」 


「そんな話はしなくて良い、どんな内容の契約をしたのか教えろよ。悪魔のくせにもったいぶるな」


 悪魔は基本的に契約をしなければ人間に何かをしないとアリエルは言った、例外は多々あるそうだが。


「それはいけません、お嬢さんは別として貴方は物事の経緯や、そこに至った理由などを知らなければ納得には至らない性格ですよね?」


「そんな事は無いぞ、お前は人の心が読めるとでも言うのか? だとしたら金稼ぎ出来そうだな、ケチな悪魔らしく脅迫屋でもしたらどうだ?」


「いいえ、ただ感覚的に分かるのですよ、貴方たち霊能者が怪存在を認識できるのと同じような感覚だと思います。ですが契約した人間は様々な事が読めますけどね」


 灰川としては専務の話など聞く義理は無いが、迂闊に祓ったら被害が出る可能性が捨てきれないコイツの情報が少しでも欲しいのは事実だ。


 灰川の見立てではルーザは恐らく別種の怪異と融合する事によって、人を害する力を手に入れてる。それは多分だが『手指の喪失による激しい疼痛の感覚を与える』という物だ。


 被害を出さずに祓わなければならないが……罪を犯しておらず、明らかに弱い存在、人間に害をなす気はないと語るモノを灰川とアリエルが祓えるのかは別の話だ。


「こちらの体の専務、町崎さんは普通の人生を送って来た人です」


 ルーザが言うには専務の町崎は普通の家庭に生まれ、普通に勉強をして良い成績を取り、大学卒業後には外資系企業に入社して若くして日本のホテルにて専務にまで登り詰めた。


 性格はリーダーシップがあるタイプで昔からモテるし、精神的にも自信があるタイプでスポーツなんかも好きというタイプらしい。


「子供の時にはイジメなどにも加担してしまった時期がありましたが、高校生の時には改心してイジメなどを止める側になったり、被害を受けてる者に率先して声を掛けて友達になったりするような人間になってます」


 これも社会生活ではたまにある構図だろう、多くの人が何かしらのイジメの加害や被害の経験がある。加害、傍観、被害、そんな経験をしてしまった人は多く、町崎もそういった人物というだけだ。


 灰川は霊力を高めて隙を突かれないように構えており、アリエルもそのようにしてる。しかし今の所は何かの動きは見られない。


「やがて町崎さんは結婚して子供を設けます、今は男女1人づつの子供と妻に囲まれ、忙しくも幸せな毎日を送っているのです」


「それが何だって言うんだ、イジメは良くないから止めましょうくらいしか言えないぞ。それとも悪魔だからイジメ気質がある奴が好きなんて話か?」


「いえ、まだ話は終わってません。もう少しだけお聞きください」


 そんな幸せな家庭を持ちながら充実した生活を送っていた町崎だが、ある時に大きな不安を感じる出来事が発生する。


「町崎さんはある日、家族で出掛けてると昔の知り合いに出会ったのです。それは小学生の時にイジメてた同級生でした」


 「「!!」」


 家族でショッピングモールに行ってた際に、明らかに昔にイジメてた同級生と分かる人物に遭遇した。


 彼は現在は賃金が安くて激務と噂される会社の服を着て、小学校の時よりも陰気で不幸なオーラがあり、生活に困ってる雰囲気が見て取れたそうだ。


 同級生は町崎を見て笑った、凄まじい笑顔だった。怒り、憎しみ、嫌悪、嫉妬、あらゆるマイナス感情を極限に煮詰めた笑顔だった。


 お前は今は子供が居るんだな、奥さんも居るんだな、高そうな服に身を包んで、幸せな毎日を過ごしてるんだな。


 俺に小学校の時に何人もの奴らと取り囲んで棒で引っ叩いてたお前が、学校の机に酷い落書きをしたお前が、テストで0点を取れと命令してきたお前が。


 お前は自分たちがやった事など忘れてるだろうが、俺は忘れてないぞ……あの時のトラウマのせいで、今の俺はこのザマだ!


「同級生の視線からそんな感情が伝わって来たのです、同時に今が復讐のチャンスの時だ!という感情もです」


「まるでテレビかネットのスッキリ系ストーリーの挿入部分だな、どうせネットとかみたいに脚色してあるんだろ?」


「そんな事はありませんとしか言いようがありませんね、信じてもらう他にありません」


「ウソは付いてないけど拡大解釈は得意なんだろ、悪魔は廃業して脚本家にでもなるのか? 悪魔契約は出来ねぇだろうが雇用契約とかは出来るぞ、契約好きなんだろ?」


「なかなか良い口をお持ちのようで、では話を続けましょう」


 町崎はそれからしばらくしてマンションの周囲で不穏な気配を感じるようになった、あの時に部屋を見つけられたのだと思う。セキュリティもあるが不安だ。


 家に居ても誰かに見られてる気がする、きっと子供が通ってる幼稚園なんかも知られた、家族がどの時間に家に居るかなんかもきっと知られてる。


 不安は日に日に大きくなり、このままでは家族が殺されてしまうとまで感じるようになった。それ程にあの笑顔には悪意があった。


 引っ越したって仕事先が知られてるんじゃ意味が無い、警察に言ったって意味が無いのは分かってる。今さら謝ったって遅い、彼の人生を滅茶苦茶にしたのは俺達だ。


 町崎はあの笑顔が完全にトラウマになっていた、小学校時代に一緒にイジメてた連中に電話して全員で謝ろうなんて声も掛けた。しかし彼らからは『そんな昔の事を引きずるなよ』と一蹴されてしまう。


「そんな時に私ことルーザが町崎さんの夢に入り契約を持ち掛けたのです」


 彼は『アイツという脅威を消し去ってくれ!』そうしたら魂でも何でもくれてやると言った。


「改心してイジメをする側から守る側に変わったというのに、彼は家族という幸せを失う恐怖から、過去に苦しめた人物をまたしても苦しめろと言ったのです」


「そ…そんな…、そんなの謝るべきだっ! まず謝らなきゃ始まらないじゃないか!」


「そうですね聖剣使いのお嬢さん、ですが幸せを守るにはそうするしかないと彼は考えたのです」


 生まれもって正義感が強いアリエルは怒りを感じるが、それもまた人間である。家族という幸せは失いたくないと思うのが普通なのだろうと灰川は感じた。


「それでお前は契約を受けたのか? それで町崎さんの同級生に何をやった?」


「契約は受けました、しかし残念ながら町崎さんの望む願いは私の力では不足していましてね。今は何にも叶ってない状況なのですよ」


「悪魔が聞いて呆れるじゃねぇか、よくそんなんで町崎さんも契約したな、本当にエリートなのかよ。大学の卒業科目は馬科(バカ)学部ってか?」


「いえいえ、町崎さんは頭が良いお方でいらっしゃいますよ、ちゃんと物事の足し引きが出来るお方なのです」


「そりゃ契約したお前ならそう思うだろうな、足し算と引き算が出来るなら頭が良いって思えるんだろ? お前もバカっぽいしな、悪魔の学校と間違えて魔界の猿の学校にでも入学しちゃったんだろ」


「……、いえ、魔界などという所があるかは分かりませんが、とにかく契約はしたのです」


 何だか灰川の雰囲気がいつもと違う事にアリエルは気付く、ここまで口が悪い人ではないと思うのだがと感じていた。


 しかし霊視しても何も灰川には問題が起きて無いので、次はアリエルがルーザに質問を投げかかける。


「じゃあ契約でお前が受け取った物は何なんだ! 話が見えて来ないじゃないか!」


「契約で私が得た物は、何らかの際に体を貸して頂くという内容です。犯罪行為や自殺行為などは一切しないというルールの上です。それと回数も3度までという制限があります」


 悪魔と専務の契約の内容は、即効性はないものの家族に近付いてると思われる脅威を取り除き、ルーザは体を貸してもらうという物だった。


 アリエルはやはり迷う、町崎は過去の罪と向き合わず身勝手な願いをしてるように思ってしまう。イジメで心に傷を負わせたのに謝らず、それが元となって相手は不幸な人生を送ってる。


 その上で町崎は妻子に恵まれ幸せな家庭を持ち、エリートとして良い人生を歩んでる。それは不公平な事だと感じるし、彼がイジメを受けてる者を救う側になったのも過去の行いから目を逸らすような行為にしか思えなくなっていた。


「私は思うのです、この体の町崎さんは幸せになる権利がある、そしてイジメを受けた方にも幸せになる権利があると」 


「っ…! それはっ…そうだけどっ…!」


「ですが万人が平等に幸せになれる訳ではありません、人間の社会とはそういう物ではありませんか」


 恵まれてる者も居れば、そうでない者も居る。性格的に幸福を感じにくい人も居るし、時と場合によってはキャンディ一つで世界で最も幸せな気持ちになれる瞬間もあるだろう。


「今の世の中は、特に先進国は幸福を感じにくい社会になっています。心当たりはあるのでは?」


 生活水準の向上や情報過多によって満足のハードルが上がってる、ケーキを食べて美味しいと思ってたのに、SNSで超豪華で贅沢なケーキを食べたという誰かの情報を見たら機嫌が悪くなったりする人が居たりする。


 誰かがバズって話題になったら嫉妬、会った事もない誰かと自分の生活を比べて悲観的になる、そんな場面が増えてる社会だ。


 それと同時に掴んだ幸せを失う怖さも増えてるとルーザは語り、人間の社会がどんどん自分が望まぬ不幸な社会へと向かってるのだと語る。



「私は人間が不幸になるのを望みません、人間が幸せを感じる姿にこそ本質が~~……」


「お前、アリエルと契約しようとしてるだろ?」



 灰川がそう言った瞬間、場の空気が止まった。


「さっき町崎さんの夢に出て契約したって言ってたけどよ、アリエルの夢に出て来れるように強い印象を残そうとしてるだろ?」


「何を言ってるのか分かりませんね、大体にして私ごときでは聖剣の担い手と契約する事など出来ませんよ」


「普通ならそうなんだろうな、でもお前は繋がってるようで繋がってない話をして混乱させて、とにかく夢の中に入ろうとしてる。違うか?」


「違います、私はただ人間に幸せであって欲しい、悪意や悪念を糧とする悪魔に生まれたくはなかったという話を~~……」


「だったら幸せな人間を選んで傍観してれば良いだろう。なんでわざわざ人に干渉する、なんで聖剣の担い手の家系が関わってるホテルなんかに来た、それとお前は駆逐艦で噂されてた悪魔なんだろ?」


「そんな事は全て偶然ですし、何を言っても証明しようがないでしょう、貴方は極論信者ですか?」


 悪魔の証明という言葉がある、これは証明が困難な物事に使われる言葉だ。○○がないことを証明できないなら○○は存在する、みたいな極論、未知証明といった意味合いもある言葉だ。


 本来なら無意味な論法だが、現代ではよく使われる論法だ。俺が信じる○○がない事を証明したいなら証拠を示せという、そういった責任転嫁の方法を上手く使う人が頭が良いという評価をされる場合がある。


 だがこの悪魔の証明論法の目的は別の所にある、それは『論じる相手をイラつかせてボロを出させる』という使い方だ。


 そしてこの方法を使うには事前に種まきをしなければならない、相手をバカしにてるという雰囲気を滲ませ、言葉でもバカだと食って掛かってるという内容を匂わせて怒りで冷静さを欠かせるのだ。


 灰川は事前にそれをしていたが、テレビや動画で見る本当に頭の良い人たちには到底及ばない。これを本当に有用的に使える人はマジで頭が良いのだろう。


 現代では子供から大人まで、彼らの表面的な部分だけなぞって極論を用いる人なども居るが、それでも相手をイラつかせるという効果を望むなら十分だ。


「ハイカワっ…それって、どういうことっ…!?」


「アリエル、ここからは俺がコイツと話す。ちょっと下がっててくれ」


 こうしてる間にも灰川は目の前の悪魔のオカルト分析は欠かさない、こんな話をしてる間にも色々な事が見えて来た。


 コイツを迂闊に祓った場合は契約した者の手指に疼痛が発生、その呪いによる痛みは呪いを掛けた者にしか解けず、ソレが祓われて存在しなくなるため、実質的な矛盾の呪いとなって解呪に凄まじい時間が掛かる。


 指を切り落とされる痛みなど耐えきれるものじゃない事は想像が付くし、そんな痛みを何年も味わったのなら精神がどうにかなってしまうだろう。


 以前に実家に保管されてた文書で少し似たような事例が発生したという記録を読んだ事を思い出したのだ。


「お前、最終的には祓われて効果を発揮するのが目的だろ?」


「何を言ってるのか分かりませんね、祓われたらそれでお終いですよ」


「祓われたらお終いか、悪魔なのに謙虚なんだなぁ。人間に憧れてるって言ってたけどよ、陰湿なインテリっぽさと自分は策士みたいな勘違いしてる所は人間っぽいぞ、そういうの小悪魔って呼ぶのか?」


「……、ふふ…小悪魔ですか、確かにそうかもしれませんね、所詮は弱い悪魔ですので」


「いや、この場合の小悪魔ってのは自分を過大評価してるバカって意味でな、そんな可愛げのある言葉じゃないからな」


 その記録には呪いの力を有した存在が他の怪存在と迎合して、そのような性質になったという内容だった。


 人間だって誰かと出会って性格や考え方に変化が訪れるのと同様に、人知を超えた存在にもそういった性質がある。目の前の悪魔はそういった変化をしてる可能性があるのだ。


 その変化によって得た特性を発揮させる訳にはいかない、どのくらいの人数がこの悪魔と契約してるか分からないし、最低でも目の前の専務は契約してる。


 強さと厄介さは直結しない、弱くても危険な奴は居る


 まだ分からない部分もあるが、少しづつ読めてはきた。コイツはアーヴァス家の聖剣を陥れるために遣わされた存在だろう。


 アリエルに更なる呪いを掛けて精神を狂わせ、聖剣の担い手としての機能を完全に奪い取る。恐らくはゆびもらい先生を吸収したのも偶然なんかじゃない。


 コイツを遣わせた連中の目的はアーヴァス家の経済基盤か何かは分からない、加護を越えた呪いを更に掛ける方法を用意したのも長い年月を要しただろう。


「さっきからお前は論点をズラしたり回りくどく言ったりしてるよな、アリエルの質問をはぐらかして話を余計に聞かせたり、人間が興味持ちそうな話をしたりしてよ」


「………………」


「そういうの見るとよ、お前って完全に対アリエルのためだけに用意された存在じゃないのか? 人間が悪魔を作れるとか分かんないけどよ」


「まさかっ…! artificial(アーティフィカル) demon(デモン)…!? 人間が作った悪魔なんて居るはずがっ…」


 灰川が口汚い言葉を使ったのには、アリエルが奴の言葉に集中し過ぎない空気を作るためでもあった。子供というのは様々な事に興味を持ってしまう存在であり、それはアリエルも変わらない部分だ。


 特にコイツはアリエルの気を上手く引いたり、祓うのを躊躇させたりするのが上手かった。さっきの話で気を引けなかったら、恐らくはアーヴァス家に近い話のような更に気を引く話に上手く繋げようとしただろう。


 色々と灰川は考えてるが、普通にイラ付いてる。心の何処かで『コイツさえ居なければnew Age stardomをリアタイ出来るのに!』と感じてるのだ。だから悪口に拍車が掛かってる状態だった。


 コイツは弱そうに見えて危険な存在、安全そうに見えて悪意ある怪存在だと灰川は見抜く。ここで祓わなければアリエルに被害が及ぶ可能性がある。


 そして祓うためには本気で怒らせて冷静さを奪わなければならない、感情的にさせて術を破壊する。そのために罵ってる。


 その効果は既に出てるのが伺えた、35階に充満する空気に先程とは違ったモノが混ざってるのが感じられるようになった。

 悪魔が出て来るストーリーで好きなのは、某格闘ゲームの鉄○シリーズです。

 好きなキャラはエクソシストのクラ○ディオです。

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