247話 親睦が深まるタウンキャンプ会
誠治、砂遊、佳那美、アリエルはクロススクウェア内にあるスウィーツ店に来てパフェを食べていた。
「やっぱりジャパンのパフェって美味しいなっ、すごい発明の食べ物だよ、くふふっ」
「アーちゃん、ほっぺにクリームついてるよっ。あははっ、かわいいっ」
「東京のパフェは一味違うなぁ~、うししっ」
それぞれにチョコパフェやフルーツパフェ、和風パフェとかを楽しんで過ごしてる。3人とも美味しそうに食べており、特にアリエルは日本のパフェが余程気に入ったのか、笑顔を絶やさず食べていた。
誠治も普通に一品を注文して食べており、やはり甘い物はたまに食べると美味しいなと感じてる。
「お兄ちゃん、私らのプロデュースとかって考えてるのか~? なんか伝手とかあるんでしょ~?」
「おう、ここからは稼いでいかなきゃいけないからな、もう俺一人の問題じゃなくなっちまったし」
砂遊に話し掛けられて誠治は自覚を新たにした事を明かす。今までは過度に金を稼ぐのが怖くて金銭の事は大きく考えずにやってきたが、これからはそうは行かない。
朋絵、砂遊、佳那美、アリエルが入所し、事務員やマネージャーとして元ライクスペースの前園とバイトで藤枝を雇う事になってる。
ここからは事務所に居る人達に相応の給金や報酬を支払わなければならないし、そのためには稼がなくてはならない。そしてシャイニングゲートとハッピーリレーと同じように上がって行かなければならないのだ。
稼ぐためには名を売らなければならないし、そのためには伝手や後ろ盾の力を使わせてもらうつもりだ。
もちろんただ使わせてもらうだけじゃなく、相応の利益を協力者にもたらさなければならない。ここで言う利益とは単純な金銭の事のみではなく、法や公序良俗に抵触しない形の何らかの利というものも含む。
「まあ、どのくらいの依頼料が適正なのかとかは社長達に聞いて教えてもらいつつだな、安い金額を提示して損したら元も子もないからよ」
「そうだねぇ、お兄ちゃんは昔からお金稼ぎを怖がるからね~、うししっ」
誠治は自分の家が没落した話から過剰な金銭を持つ事を恐れて来たが、人を雇っていく以上は稼いでいかなければならない。
それに東京の生活は何かと金が掛かるし様々な付き合いや見栄だってある、今までのように金が怖いですと言ってばかりも居られない。どうにか割り切って慣れなければならないのだ。
ここの所は周りの人達を見てきて、金を稼いでも欲に溺れずやっていく生き方も何となく分かってきた気がする。前ほどには金銭を恐れてないが、それでも事務所の仕事で法外な金を稼ごうとは考えずやって行こうと思ってる。
「そうだ、3人とも仕事の話で悪いんだけどさ、テレビに出る心の準備とかしといてくれよな」
「うんっ、前にも言ってたもんねハイカワっ」
「私はいつでもいいよっ!」
佳那美とアリエルは本人の才能と灰川の伝手でテレビ出演がほぼ決まってるようなものだ、しかし砂遊が『ええっ゛!?』と反応を示した。
「new Age stardomって番組が放送される事は砂遊も知ってるだろ? お前もその内に出てもらうからな」
「ちょ!うぉ兄ちゃん! こんなモジャモジャ頭の、何処に出しても恥ずかしいオタクの妹をテレビに出すんかー!? キモイって言われるに決まってんべやぁ!」
「お前なぁ、new Age stardomはVtuberが主に出る番組だっての!」
砂遊は凄いクセっ毛で、モコモコした感じの髪である。真っ直ぐ髪を伸ばせばベリーロングヘアなのだが、今の状態だとロングとセミロングの中間くらいの髪の長さになってる。
「うへぇ~、おっぱいが大きいからテレビ出せば売れるって勘違いしたのかと思ったぞぉ~、焦ったぁ」
「お前なぁ、胸が大きいって言ったって中学3年生ではって話だろ、芸能界で通用するかっての。まぁ、オタクっぽさを取り繕えれば割と良い線行くかもしんないけどな」
身内の贔屓目もあるかも知れないが砂遊は割と顔立ちは整ってる、しかしそれを打ち消して余りあるキモさが滲み出ている。
「私のキモさを取り繕うのはムリだなぁ~、それに市乃ちゃんと桜ちゃんの方がおっぱい大きいし、あっちを売り出すかぁ~」
「あっちもVtuberだっての! あと外でセンシティブワード言うんじゃないよ、軽めワードだけど控えろっての!」
「うしししっ、可愛い妹がこんな感じになって悲しいだろぉ~、キモさもセンシティブ度も上がってるぞぉ~。あと女の子って男が思ってるより意外と下ネタトークとかするんだぞ~」
誠治の記憶の中の砂遊は割と普通の子だったのだが、あまり会ってない数年ですっかり変わってしまってる。
しかしよくよく考えてみると、元から何かこんな風になる予兆はあったように感じた。
誠治は大学に行ってた時に夏休みなどで帰省すると、部屋に残してきた漫画のお色気シーンのページや、イケメンキャラが大きく描かれた部分が強く開かれた跡があったりした。しかもあらゆる漫画にだ。
他にも帰省した時に誠治の部屋の隣の砂遊の部屋から、『んはぁ~!このキャラ最高だぁ~!』とか聞こえて来たが、声のトーンが違かったからスマホで動画でも見て音が聞こえてるんだろうと思ってた。
今考えれば、それらは砂遊がオタク化していってるシグナルだったのだと思う。しかし別にアニメやゲームが好きなのは悪い事じゃないし、誠治としては別に構わない。
「あのっ、砂遊さんも霊能力者なんだよねっ? 灰川さんよりスゴイんですかっ?」
「うしししっ、お兄ちゃんの遥か格下だよぉ、お兄ちゃんに霊能力で勝てる人なんてメチャ少ないぞぉ、佳那美ちゃん」
「ハイカワはすごい霊能力を持ってるよ、特に調整術は超一流さ」
佳那美の言葉で話がオカルト方面に向き、誠治が周りの席に人が居ない事を少し確認する。
「やっぱり灰川さんって凄いんだっ、また私がオバケとかで困ったら助けてねっ、約束だよっ」
「もちろんだぞ佳那美ちゃん、任せとけってんだ」
「ボクもカナミに何かあったら助けるよっ」
「私も何かあったら相談乗るよ~、でもオカルトはお兄ちゃんの方が頼りになるけどねぇ~」
そんな話をしてから、おやつのパフェを楽しんで店を出る。まだ少し時間があるから散歩でもしながら戻ろうという事になった。
店を出てから散歩を始め、佳那美とアリエルは2人でワイワイと話しながら歩いてる。
アリエルが日本の学校はヨーロッパとは全く違うとか言ったり、佳那美が小学校で誰が仲が良いとか、そんな話だ。
そんな2人を見守りながら誠治と砂遊は並んで歩き、こちらも会話をしながら渋谷の街を進んでいく。
「そういや砂遊、なんでぶりっつ&ばすたークビになったんだ? 本当の所を教えてくれても良いんじゃないか」
「うへぇ~、お兄ちゃん鋭いねぇ、やっぱお兄ちゃんには隠せてなかったかぁ~」
砂遊が隠し事をしてる時は誠治には分かる、兄妹として親や友人とは違う立場で一緒に居たから、兄妹だけに分かる雰囲気のような物で分かるのだ。
誠治は時には霊能力を使って相手が嘘を付いてるかどうか分かる時もあるが、そういった事をしなくても砂遊の事は分かる。
もちろん霊能力で全ての嘘が見分けられる訳でもないし、嘘を付く事に慣れてる人や演技が出来る人なんかは見抜けない事が多い。あくまで分かる時もあるという程度であり、日常生活でそんなに便利な力という訳でもない。
「実はねぇ~、ぶりばすはオタ系のVが多かったんだけどさぁ~、だんだんと所属してる人達が陽キャ化したり、そもそも陰キャのフリしてるだけだったりとかでさぁ~」
「あ~、本物の陰キャは居づらくなったってパターンか」
ぶりっつ&ばすたーはオタク系カルチャーに強いVtuber企業で、所属者はアニメやゲームの深めのオタク系コンテンツに詳しい者が多い。
所属者は陰キャ気質が多く独特な雰囲気に見えるが、実は活動してる内に陽キャになっていく人達も少なくないらしい。元から陰キャの演技をしてただけの人も居るらしく、ガチ陰キャは少なくなってるそうだ。
やはり配信に向いてて視聴者を集められるのは陽キャ気質の人が多いらしく、砂遊が入所前に思ってたのと違う感じだったと語る。
「今は裏で所属者同士で付き合ってるとか結構居るしねぇ、コラボとかしても反りが合わないって思うことばっかだったぜ~、うししっ」
「なるほどな、視聴者は掴めても会社の風潮が思ってたのと違った訳か」
「しかも内部で丑獅子イオスはまだ中学生だし、口滑らせて内情とか言っちゃいそうって思う所属者も居てさぁ、それが元になってクビ卒業さ~、うしししっ」
実際には砂遊の卒業は親バレとか地方在住で動きが取りにくいとか、そういった様々な理由があるし、それは本人も分かってる。会社とも円満で卒業という形にはなってるのだ。
しかし所属者の中には本当に反りが合わない先輩なんかも居たらしく、そういう人から拒否感を露にされてたそうだ。
砂遊に拒否感を示したのは主に元々は結構なオタクだった数名で、誠治が思うに過去の自分を見てるようで嫌だとか、同族嫌悪とかそういった感情なのではないかと思う。
だが仲が良かった所属者も居るし、内情暴露とかはする気はないと言う。誠治としてもそんな事をされたら今後の活動に響くから、そうしてくれと頼んでおいた。
オタク系のVtuber事務所だが内情は少しドロついてるようで、やはり配信企業だって普通の会社と同じく、そういう部分は何処かしらあるようだ。
砂遊は中学生で入所して1年では立場も弱かったろうし、そもそも配信内容もキモさに定評のある尖り気味配信だったから、仕方ない面も多々あるだろう。
「あ~あ、私も彼氏が欲しいぞぉ~、超絶イケメンかショタかロリが良いなぁ~」
「お前なぁ…まあ良いや、付き合うとしても変なのに引っ掛かるなよな」
灰川事務所は恋愛禁止とかは無いが、出来る事なら活動の方も真面目にやって欲しい。しかしその辺は理性や感情だけではどうにもならないから、実際に恋愛とかが発生したなら都度に方針を考えるしかないだろう。
何らかの活動をしたり、何処かの集団に属したりすれば、それに伴った人間関係や方向性の違いトラブルは年齢関わらずあるものだ。
砂遊もそれに当たったというだけであり、さして特別な事という訳ではない。中学生だろうが学校での人間トラブルとかだってあるし、準芸能界とも言えそうな配信界に飛び込んだならそういう事だってある。
中学3年生で企業系Vtuberになれたのだから行動力も才能もあるのだろうが、灰川家特有の変に尖った部分は砂遊にもあり、これからが少し心配だ。
今まで砂遊にそんな才能があったなんて知らなかったし、世の中は分からない物だと誠治はしみじみ思う。
「ところでお兄ちゃん、さっきの“ゆびもらい先生”だけどさぁ…」
「ああ、ちょっと変だなコレ…」
砂遊と話をしつつキャンプ地の展望デッキに戻って行き、とりあえずはオカルトから離れて今日は過ごそうと誠治は思う。
「うわぁ! すっごっ!」
「テントって色んな種類があるんだね、驚いちゃったな」
誠治が戻って来て少ししてから皆も戻って来て、既に設営が終わった中央ヘリポートやデッキに敷かれた芝マットに設営されたテントを見て驚いていた。
「リビングルーフ付きのインナーテントっ、雨音防止の大容量テント! 中でダンスも出来そうな広さのトンネル型テントっ、すごっ!」
「朋絵さん詳しいね、俺が思ってたより凄い感じのが来たな」
アウトドアに詳しい朋絵が驚きながら、こういうのに泊まってみたかったんだよねと言ったりする。
「ハイカワっ! このテント広いよっ、テレビで見たのと違う感じがするっ!」
「むふふ~、バーベキューもやるって聞いて楽しみだよ~」
「夕食の時は私が桜ちゃんの分も焼くわっ、お料理は得意だものっ!」
「好評みたいで俺も安心したっての、眺めも良いし最高だなコレ!」
ここは地上50階の高層ビルの屋上展望台、当然ながら眺めも最高である。天気が良い日には富士山も見えるレベルの高さであり、現に今も遠くの空に大きな山が見えてる状態だ。
「じゃあ6時くらいになったらバーベキュー始めるか! それまで皆はテキトーに楽しんでてくれ」
「灰川さん、私もお手伝いするよ。1人じゃ大変でしょ」
「いや、空羽は皆と親睦を深めてくれ、その方が有意義だしよ。あと良かったら砂遊とか朋絵さん、桔梗さんとコバコの話し相手なんかにもなってくれると助かるよ」
「空羽先輩っ、砂遊ちゃんから灰川さんの昔の話とか聞きましょうよー、面白い話とか聞けるかもですよっ」
「灰川さん、準備をよろしくお願い致します。お片づけは手伝わせて頂きますので」
「ありがとうな史菜、まあ最初からほとんど準備されてるし、片付けなんかも放置してても業者がやってくれる話になってるからよ」
今回はフルオートキャンプであり準備も片付けもほとんど必要ない状態だ、しかしバーベキューの火起こしなどはしなければならないから誠治が担当する。流石に着火剤を使って炭火を起こすくらいは誠治も出来る。
「お風呂とかどうすれば良いっすかね…ちょっと匂いとか気になるっていうか…」
「来苑ちゃん、クロススクウェアのすぐ近くにテラピアード渋谷っていう温泉あるから、バーベキュー終わったら行く? 着替えとかも買えるよ」
「渋谷駅近くに女性専用サウナバスのラグスチームっていうお店もあるよー、私とゆーちゃん行った事ある」
「渋谷って入浴できる所が割とあるんすねっ! 後で行きたいっす!」
「じゃあ他の人達も誘って行こう、ハッピーリレーの人達もお風呂に入りたいだろうしさ」
来苑たちがお風呂の話をしていて、そういえば今夜の入浴とか考えてなかったとか誠治が思ったり。
「桔梗さんって大学生なんですね、私も来年は大学なんですよ。どんな感じなんですか?」
「空羽さんも大学進学ですか、私はあんまり熱心な学生ではないんですが~~…」
「市乃ちゃんと史菜ちゃんって学校違うのかっ! 同じ学校だと思ってたぜっ」
「違いますよー、でも高校行く前に知り合ってたら同じ学校に行ってたかもっ」
それぞれに親睦を深めつつ過ごし、夕方の貸し切り展望台という豪華なロケーションでテンションも高めだ。
こういう特別感のある場というのは仲が深まりやすいらしく、顔合わせや親睦会にはもってこいの環境のようだ。イベントに応募してジャンケンに勝って良かったと思える。
バーベキューもつつがなく終わり、誠治はゲストをもてなすホストに徹して肉を焼いたりして過ごす。
流石は四楓院が用意してくれた食材だけあって肉も野菜も良い物ばかり、普段は偏った食生活が多い誠治も美味しく頂けた。
渋谷のビルの屋上で夕日に照らされた東京の街を見ながらのバーベキューは眺めも最高で、全員の親睦を深めるのに一役買ってくれたのだった。
参加者はそれぞれに会話したり誰かに仲を取り持ってもらって顔合わせをしたりして、同じ業界で頑張る仲間という意識が深まった気がする。
極端にコミュニケーション能力が低い人も居ないし、砂遊も朋絵も割と普通に会話が出来ていて安心だ。
「じゃあ灰川さん、また後でね」
「おう、俺も風呂に入って来ないとなぁ」
火も使ったから汗もかいたし、せめてシャツくらいは変えておきたい所だ。
皆はサウナバスと広めのスパ施設に2組で別れて行くらしく、佳那美とアリエルも皆に連れられて入浴しに行く事となった。
誠治も近場の入浴施設に行って汗を洗い流す事にして、すっかり暗くなった7時過ぎの街に繰り出す事にする。
「ご一緒します灰川先生」
「えっ、三檜さん?」
展望デッキからビル内に入ると、警護のために控えていた三檜が何処からともなく出て来た。
「まさか一晩中付いてるんですかっ!? そんなの大変ですよ!」
「いえ、私は先程に交代で来ましたのでご安心ください」
ビルの屋上とはいえ渋谷の街中で寝泊まりするのだから警護は必要ということらしく、SSP社の人が誰かしらは今日は付いてると言う。
「渋谷に関わらず最近は物騒な事件があちこちで発生しています、ニュースになるような事件だけじゃなく、様々な事件が水面下ではあるんですよ」
「そうなんですか…やっぱり危ない所ってのはあるんですね」
暴力、薬物、反社会的勢力事件、脅迫、SNS詐欺、ネットもリアルも問わず今は様々な事件が発生してる。
特に渋谷は昔から少年不良グループやヤクザ、暴走族や半グレなどが勢力争いをして来た地区であり、最近は海外のグループなども金の匂いを嗅ぎつけて街を回ってるという話がある。
一時期は不良グループが一般人を突然に後ろから殴りつけて一発で気絶させられるかのゲームをしてたとか、暴走族が警官隊と激しくぶつかったとかの話もあり、渋谷は東京の中では治安が悪い街なのだ。
今はSNSを使った犯罪が多くなり、危険さは見えにくくなってる。警察の中にも内部から情報を漏らしてる奴とかも居るらしく、逮捕はままならない状況が続いてるらしい。
「皆さんの方にも警護は付かせましたが、恐らくは大丈夫でしょう。街の安全な歩き方も知ってるようですし、目立たず遊ぶ方法も身に付いてるようですから」
「ありがとうございますっ、もしヤバイって時はお願いします! いや本当に!」
「もちろんです、もし手を出してくるような奴が居ても皆さんには指一本も触れさせませんよ」
市乃たち一行は容姿が整ってる者が多く、悪質な目的を持った者が近寄って来ないとも考えられない。
今も東京の繁華街では悪意ある目的を持った者達による被害は多々発生しており、狙われやすいのは警戒心が薄い未成年代の者が多い。
漫画などでは格好良く描かれるアウトローも、現実では金や享楽のために人を害する存在の者が多い。正義の不良なんて全体の数パーセントという所だろう。
「我々は依頼者や警護対象、時には準警護対象の方達の安心と安全を守るのが仕事です。なのでご安心ください」
今日は多数のストリーマーが集うイベントであり、それを見に来た人達を狙う奴らも動いてるそうだ。そういう奴らは言葉巧みに人を狙う。
『あのストリーマーと俺って超仲いいんだよ、この写真見てよ。会わせてあげるから着いて来なって』
『俺もあの配信者のファンなんだよ、君たちも? じゃあ今から飲みに行かない? え?未成年? 黙ってりゃ大丈夫だって』
『ゴメンっ! 道に迷っちゃってさ! お願いだから案内してくんないっ? お礼も渡すからさ!』
合成写真で知り合いを騙る、睡眠薬で眠らせて個人情報ゲットから好き放題、仲間の控えてる人の居ない場所への誘導、言葉巧みに警戒心を解かせて食い物に、そんな被害は今でも発生してる
泣き寝入りや被害届未提出などで表沙汰になってないだけで発生しており、夜の街の危険度は今も昔も高いままなのだ。
SNSで○○に行くとか、○○のファンなどの情報を出してれば危険度は更に上がるだろう。欲望の街の大都会、その夜の顔は昼間とは少し違う物だ。
そこに網を張るように巣食う危険から皆を守ってくれる三檜たちSSP社、彼らに感謝しつつ灰川も三檜を一緒に入りましょうと誘って入浴しに向かうのだった。
本来なら渋谷とか池袋とかの繁華街を歩くのにも、別に警護とかは必要ない、しかしほんの少しの可能性で人生が終わるような悪意に出会ってしまうかもしれないのだ。
男も女もなく、金や体を狙われる可能性はある。
そんな悪意に出会ってしまった時に危険から守ってくれる存在、それがボディーガードという存在だ。
皆は四楓院家の第一客人である灰川誠治のビジネスパートナー達であり、もしかしたら声などで有名Vと気付いた危険な奴らが、彼女たちから搾り取ろうと近寄って来るかもしれない。
万が一の保険とは何万分の一という最悪の事態に対処してくれる心強い味方であり、総じて何万分の一という不運は最悪の結果に繋がることが多い。そして名前が売れれば最悪の不運に出会う確率も高くなるのが世の常だ。
とはいえ市乃たちは今夜も特に何かの危険に晒される事は無さそうだ、本人達も危険に近づく事はないし、妙な奴の口車に乗るような精神状態でもない。何より優秀な警護が付いてる。
だが、今夜も繁華街の何処かで誰かが食い物にされてるのだろう。
華やかな街、華やかな業界、その裏には卑劣な悪意が渦巻いてる事を決して忘れてはいけない。
人数を多くし過ぎて今回は話が長くなるかもです。




