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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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245/333

245話 ほぼ全員集合?

 図らずしも大勢が集まってしまった渋谷キャンプ、灰川は市乃と早奈美を連れて施設内にあるアウトドアショップに来ていた。


「どうすっかなぁ、10人以上も泊まれるテントなんてあるのかよ、あったとしても値段が怖すぎるんだが…」


「灰川さんさー、レンタルとかあったら使った方が良いよ。そうしたら安く済みそーじゃん」


 何組かに別れて食材の買い出しとかをしつつ、アウトドアショップを見ていくがテントは意外と種類があって選びきれない。


 そんな中で早奈美が電話で誰かに連絡をしており、灰川に話し掛けて来た。


「灰川せんせー、市乃ちゃん。英明会長が良かったら手助けしたいって言ってくれてますよ」


「ええっ!? 連絡しちゃったの!? カッコ悪すぎだし自業自得だから、四楓院さん達に頼ったら呆れられると思って足踏みしてたんだよ…」


 どうやら早奈美はSSP社主任の三檜に連絡を取り、三檜が英明に連絡して今のようになったようだ。早奈美は直接に英明や陣伍に連絡をして良い立場ではないらしい。


「英明おじさんが? せっかくだし助けてもらおーよ」


「まぁ…そうだよな、早奈美ちゃん、ちょっと電話を代わってくれる?」


 早奈美は英明と電話していたらしく灰川が代わってもらう、大体の事は説明して改めてキャンプに必要な物の手配をお願いした。


 市乃は四楓院の親戚筋だが、本家では無いので権力機構とは切り離されてる。普段だったら余程の事が無い限り助けてはもらえない位置付けなのだが、今回は灰川が関わってるから別だ。


『灰川先生、我々はお世話になっているのですから、どんな時でも頼って頂いて構わないんですよ。既にキャンプ用品の会社への手配は済んでおりますので、ご安心ください』


「ええっ!? もう手配が済んじゃったんですか!? すげぇ…」


『はい、四楓院系列ではないんですがアウトドア系の会社を知ってまして、そこに即対応での依頼をさせて頂きました』


 英明に頼んだらたったの数分で手配が終わってしまい、既に業者が用意に入ってるらしい。準備もあるし移動時間もあるから設営などにはまだ時間は掛かるが、2時間ちょっと後くらいには全て終わってると約束される。


 しかも今回も料金などは四楓院が持ってくれると言ってくれて、またしても至れり尽くせりの状況である。感謝感激だ。


「ありがとうございます! 本当に困ってたんで凄い助かりました!」


『いえいえ、灰川先生は娘の命の恩人ですし、ビジネスチャンスの手掛かりになって頂いてますから』


 四楓院とて金銭や権力だけで全てを上手く回せる訳ではなく、配下ビジネスや傘下ビジネスだけでは組織は腐っていく事を嫌というほど知っている。


 チャンスを生かすために金や権力に物を言わせてばかりでは遺恨が残る事もあり、そういった後腐れを残さないために灰川を業界へのクッション材、窓口として活用してるという側面もあるのだ。


 あまり表立って動きたくない家という理由もあるし、灰川に対しては確かな感謝の念もあるし彼の性格も自己中心的ではない、それが元で穏やかに関われてるのも四楓院としてはありがたい。


 やろうと思えばシャイニングゲートもハッピーリレーも傘下に置けるし、実質的な利益面としては傘下企業のように今はなっているとも言える状態だ。


 四楓院グループは2社に仕事の斡旋は裏からするものの、経営や運営方針などに関しては口を出さない。自分たちが口を出すより良い結果が出ると分かってるからだ。


『それと灰川先生、もし良ければ今度に依頼を聞いては頂けませんか? またオカルト方面の話になると思うのですが』


「オカルトですか? もちろん良いですよ! 今日のお礼も兼ねて無料でお受けしますよっ、都合の良い日に連絡して下さい」


 英明と陣伍は灰川に強い信頼と感謝を置いてる、その理由の最たるものは娘の八重香を助けられたからだ。


 灰川の仕事仲間であり四楓院の親戚筋である市乃の頼みとはいえ、赤の他人同然の子供を命がけで助けたのにも関わらず、多額の報酬には目もくれずに去って行った。


 その時に灰川に感じたのは義侠心や損得なしの本来の意味での任侠の精神、悪しきをくじき弱きを助け、信義を重んじて見返りも求めない、そういう道を大きな自覚無しに行く若者だと感じ入ったのだ。


 四楓院は長い歴史の中でそういった人たちに全く出会わなかった訳ではない、しかしそういう心を持った人は最後は誰かに利用されてポイ捨てされるのも見て来た。


 金を過度に求めるでもなく、正義に溺れるでもなく、見知らぬ人を含む誰かのために己の出来る事をするという精神、そういう義の心は今の時代は都合よく使われて、用済みになったら捨てられる時代だ。


 娘の命の恩人が悪しき誰かに使われてボロ雑巾みたいになって捨てられる、そんな姿は英明も陣伍も見たくない。現に灰川はブラック企業にそういった扱いを受けて来た。


 英明と陣伍は灰川が属してた会社に代理で制裁を加えるかとも考えたが、灰川がそれを望まないと感じて引き下がってる。下手に手を出したら灰川が不快感を抱くかもしれない、義侠の心を持った人はそういうものだと判断した。


 八重香がまた同じような目に遭うとも知れないし、霊能力は凄いと言うのも知ってるから縁は絶対に切りたくない。四楓院を助けた事を知った者が彼を利用する事だって考えられるから、今は灰川の生活は四楓院が直に守ってる。


 灰川の事務所の運営資金を出してる2社にはグループから仕事を回すよう言ってるし、ビジネス的な面で裏の出資者という形で今も灰川を後ろの盾として構えてる。


「あの、もし良かったら英明さんも八重香ちゃんと奥さんと一緒に遊びに来ませんか?」


『えっ??』


「親戚の市乃も居るんだし、八重香ちゃんもテントに入ってみたいとかって思う年齢じゃありませんか? 英明さんも鬱憤とか溜まってるかもって思いますし」


 八重香は5才くらいの子であり、様々な物事に興味を示す年齢である。


 知らない人達が大勢いる中に誘うのも灰川は少し気が引けたが、悪い人は居ないのだし大丈夫だとも思ったから誘った。


 こういう時に権力者だからといって遠ざけたりしたら壁が厚くなるばかりだ。


 こういう場合、失礼があって先方を不快にさせる危険性もある。しかし灰川は普段は少し息苦しい生活をしてるであろう、八重香と英明や奥さんが少しでも楽しめたらなと思って誘った。


 その気持ちは英明にも伝わる、権力におもんねる性格ではない灰川の温かみが英明の精神を何か落ち着けた。


『お誘いは嬉しいのですが、我々の家は何かと動きに制限が掛かってしまうんです。それに私は今は仕事でニューヨークに居りますもので』


「あ…そうでしたか! じゃあ今度に八重香ちゃんと英明さんたちにお土産持って伺わせてもらいますよ、助けて頂いてありがとうございます!」


『いえ、ではこれにて失礼いたします。もし何かキャンプで困りごとがあったら、SSP社に連絡や相談をしてもらえればよろしいかと思います。詳しい者が居るはずですので』


 英明は今はニューヨークの証券街であるウォール街に行ってるようで、何かしらの証券取引とかしてるのだろうと灰川は思う。


 海外株でも大きな利益を出してると三檜から聞いてたし、灰川の予想も付かない専門的な証券取引を様々な専門家や投資企業などを交えてやってるのだろう。


 ちなみにこの時、英明は証券取引で難航してたのだが、灰川と話して娘や自分たちを案じてくれる温かみに触れて落ち着きを取り戻し、グループに多額の利益を上げる交渉に成功したのだった。


 とにかくこれでキャンプの心配は無くなった。しかも食事なども心配しなくて良いそうで、その事を焦って空羽たちに電話で伝えて買い物は控えてくれと連絡する。


 これで用意も片付けもする必要のないフルオートキャンプになる事が決定し、キャンプの事を全く知らない灰川は助かったと息をつくのであった。




 その後は設営班が来るまでは時間があるので屋上展望デッキに戻ったが、そこで問題が発生する。なんと灰川から連絡を受けた渡辺社長と花田社長も現地に来てたのだ。


 メンバーは全員が集まっており、どういう事態なのか社長の2人にも説明する。


「なるほど、そういう訳だったんですか…」


「灰川君…酒には気を付けてくれたまえ……」


「すいません! 普段はあんな悪酔いはしないんですって!」


 結局は人騒がせな不注意という感じで話は付いて、ここからどうするか話し合う事になる。

 

 渡辺社長も花田社長も仕事で会社に来てたらしく、明日は早くから家族で出掛けるから宿泊は出来ないとの事だった。


「あの~…もう皆がキャンプって雰囲気になっちゃってて、ここでキャンプをさせても大丈夫でしょうかね…? 会社的にというか」 


 灰川としてはその部分が気になってしまうが、社長達から返って来たのは意外な返事だった。


「それをどうするかを決める権利は我々には無いんだ灰川君、決めるのはそれぞれ個人だ。私も渡辺社長も皆の親という訳ではないし、私生活を束縛する権利はないのだよ」


「灰川さん、所属者が私生活でそれぞれに自分で決めて自分で動くというのを、容認するも否定するも無いんだ。社内規則で束縛すれば離脱者も多くなるし、何よりも顔を知られてないのだから問題は少ないよ」


 これがもし芸能人だったりしたら話は大きくなりそうだが、彼女たちは顔を知られてないから私生活における自由度が高い。そこがVtuberというものの強みだろう。


 空羽だけは実写チャンネルをやってるが少し変装すればバレない容姿になり、安心度を高く保って動く事が出来る。


 2社は芸能会社とかと比べれば束縛や制限は少ないのだろう、もし生活の制限が強すぎたら離脱者が増えるかもしれない。そうなったら損をするのは会社である。


 何事も万事にリスクが無い活動や生活などないし、そこは上手く折り合いを付けなければならない。その折り合いがVtuberは少し甘く出来るのが強みなのだろう。


「つまり男と一緒にキャンプしても問題ないって事ですね?」


「男って言っても灰川君だろう、妙なマネをする事もあるまいさ」


「こんなに人数が居る中で変な事は出来ないさ、それに皆にとっても息抜きになると思う。灰川さんは世話係みたいな感じになってしまいそうだけどね」


 社長達も灰川と皆の事を信用してるし、会社としては所属者の私生活に口出しする権利もない。それに何か騒ぎがあったとしても、揉み消せる力が灰川にはあるのを見越してる。


 そして此度の集合は各々が仲を深めるチャンスだとも社長2人は感じてるし、仲が良くなれる雰囲気を壊したくないという気持ちも強い。


 これが仮に雰囲気が悪かったりしたら会社規則みたいな事を言って許可せず、溝が深まる危険を排除してただろう。要は臨機応変に対応したという事だ。


「それに既に四楓院グループにキャンプの手伝いの要望を出したのだろう? だったら面目を潰す訳にもいかん」


 社長達には四楓院から新たなオカルト関係らしき依頼が入った事も伝え、来週あたりに何かあるかも知れない事を言っておく。


「キャンプはともかく、こんなに一気に人が集まるのは珍しいですよね。何か活動に活かせる場に出来ないかな…少しで良いんだけども」


 そう言ったのは渡辺社長で、ここまで所属者が一堂に会したのだから何かプラスになる事に繋げられないか考えてる。


「とりあえずは皆の懇親会みたいな感じにしますよ、コバコと桔梗さんも来てるし、面識が無かったり薄かったりするメンバーも居ますから」


「そうしてくれると助かる灰川君、ここから先は2社はコラボ等もしていく予定なのでな、何処かで顔合わせをする場所を設けたいと思っていたのだよ」


「何かあったら何時でも電話してもらって構わないよ、皆を楽しませてあげて欲しいと思ってる」


 こうして社長達との話も済んでキャンプに関する事は灰川に任せられる事となる。


 佳那美も母親から、これからの事も考えてキャンプには参加しなさいと言われたそうで本人も乗り気の様子だ。小学生だから少し気を付けて見てないといけないかも知れないが、他の者達も居るから大丈夫なはずだ。


 皆はそこそこに自分で物事が判断できる年齢だし、Vtuberや様々な活動を経て来た子達だ。1日の外泊くらいは問題なく過ごせる精神が備わっており、灰川が過度に心配する必要はないのである。。




「じゃあみんな、17時頃に集合って事でよろしく」


 「「はーい」」


 結局は皆で渋谷の空の上でキャンプする事になり、設営などをしてくれる業者が作業が終わるまで自由時間となる。


 灰川は現時点でこの場に来なかった者達には参加者募集終了のメッセージを飛ばし、今の人数で確定する事になった。


「空羽先輩~、市乃ちゃん~、美味しいお紅茶の茶葉のお店があるんだけどね、もし良かったらキャンプで皆に淹れてあげたいな~、むふふ~」


「えっ!本当、桜ちゃんっ? じゃあ一緒に行って買って来ようよー」


「この前にシャイゲのスタッフさんが言ってたんだけど、桜ちゃんの紅茶が凄く美味しかったって話題になってるんだよね」


「私も着いて行って良いですか? そのお店って気になりますっ」


 市乃、史菜、空羽、桜は以前に灰川が桜と行った店に紅茶を買いに行って来るようだ、流石に全員で動いたら大所帯になり過ぎる。桜は仲の良い由奈も誘ったのだが、先約があったため別行動だ。


「朋絵ちゃん、もし良かったら自分とスポーツショップに行かないっすか? 灰川さんの事務所のこととか聞いてみたいですしっ!」


「えっ、あ、はい。えっと…竜胆れもんさんですよね? よろしくお願いしますっ」


「そんなに(かしこ)まんないで良いよ朋絵ちゃん、来苑ちゃんのその話し方ってクセだから」


「よっろしくー! 私はシャルゥの中の人の華符花だよー!」


 来苑が朋絵に話し掛けて優子と華符花も乗っかって少し仲が深まってる様子が見えた、そのままスポーツショップに行って学校とか趣味で使う物を見に行くらしい。


「桔梗さん、コバコさんっ! 私はハッピーリレーの破幡木ツバサよ、覚えておいて欲しいわ! わははっ!」 


「か、かわいいっ…! ツバサちゃんってVモデルと印象がそっくりっ…!」


「元気が良いなツバサちゃんよ! 一緒にゲーセンでも行こうぜ、クロススクウェアに入ってるゲーセンって評判が良いからよ!」


「ゲーセンですか、じゃあ私も着いて行きますよー。不良とか居たら厄介ですからね」


 由奈と桔梗とコバコはゲーセンに行く事となり、そこに早奈美も付いていく事になる。早奈美はSSP社から指示でも入ったのかも知れない。


 それぞれに別れて親睦を深めたりキャンプの準備をしたりするようで、17時までの2時間と少しくらいを各々で楽しく過ごす事となる。


 屋上展望デッキに残ったのは灰川、砂遊、佳那美、アリエルの4人で、これは灰川事務所の所属者たちだ。朋絵だけは別行動である。


 残った者達も他の者に誘われたりしたのだが、佳那美とアリエルは小学生だから危険のないよう灰川が連れ立つと言った。しかし本当の目的は少し違う。





「さてと…佳那美ちゃん、ちょっと良いかな?」


「どうしたの灰川さんっ?」


 誠治が佳那美を呼び話を始める、そこに砂遊も乗っかって来た。


「佳那美ちゃんだったよねぇ~、なんか黒い悪念モヤが憑いてるぞぉ~」


「ええっ? そ、それって幽霊とかですかっ!?」


 佳那美には何か嫌な気配のする悪念が憑いており、それには砂遊も気が付いていた。むしろ感知力は砂遊の方が上だから気付かない筈がない。


「アリエル、佳那美ちゃんと一緒に居て何かあった?」


「えっ、何も無かったけど…でも確かに何か変なのが憑いてるのかなって思ったっ…」


 アリエルは佳那美に自身が霊能力者だと話しておらず、むしろ話して良いのかの判断も付かなかった。


「この際だから言っておくよ佳那美ちゃん、アリエルには強い霊能力が有るんだ」


「えっ、そうなのアーちゃんっ? すごいっ!」


「あ、あははっ…黙っててSorry、カナミっ…ぅぅ…」


「ううんっ、アーちゃんも霊能力者さんなんだねっ、砂遊さんもだし、私だけ仲間外れみたいだよ~」


 霊能力が有るなんて話して変に思われないかとか、黙ってた事で嫌われるかもとアリエルは思ったようだが杞憂だった。佳那美は一切気にしてない。


 しかし聖剣がどうとかは流石に言えず、そこらは上手く誤魔化して話しておいた。もちろん砂遊にもそういった部分は話せない。


「お兄ちゃん、悪念の力自体は強く無かったけど、すげぇ嫌な悪念だったぞぉ~。あれって何だったの?」


「一応は来苑とかに気取られないように、来た時点で祓ったけどさ。弱かったけど割と危ない念だったな」


「ボクも|purificationピュリフィケーション(浄化祓い)をしようと思ったんだけど……アレ(聖剣ファース)が無いとボクのお祓いは目立つから出来なかったんだ…」 


 アリエルは聖剣が無くてもお祓いは出来るようなのだが、何か目立ってしまう手段らしい。もっとも聖剣があればもっと目立つだろうが。


 佳那美は以前にも悪念などに憑かれてた事があり、誠治と初めて出会った時もオカルト関連の悩みが元となってる。


 佳那美は悪念などを引き寄せやすい体質であり、それは父方の遺伝のような物である事が誠治には分かってた。


 その引き寄せ体質は以前より強くなってるようで、芸能才覚は大きく育ってるが霊的引き寄せ体質も強くなってる。


 もっとも今は誠治が近くに居るのだから問題ないし、仮に最悪レベルの引き寄せ体質になっても誠治は対処は出来る。


「えっとねっ、何が原因なのか分かんないけどっ…最近に“ゆびもらい先生”っていう噂が流行ってるのっ!」


 「「ゆびもらい先生?」」


 「getting finger Teacher?」


 どうやら小学生などを中心に広まりつつある噂のようで、その話を聞くと本当に現れる的な『自己責任系都市伝説』に類する怪談のようだ。


「昨日に友達が話してたの聞いちゃったのっ、でも(あかり)ちゃんはお話が上手じゃなかったから、あんまり分かんなかった」


「アカリって前の席から2番目の子だよねっ? ボクも少しお話したよっ」


 アリエルは噂を聞かなかったようだから影響はなかったようだが、例え聞いてたとしてもアリエルには加護があるから悪念は付かなかっただろう。


 聞いたのは昨日のようだが悪念が来たのは昨日の夜から今日の朝にかけてのようだ、この形式は流行り怪談には昔からよくあるタイプである。


 しかし自己責任系怪談はそもそも嘘の話が多く、本当に呪われる話なんて少ない。もしくは呪いが分散して影響が極度に低くなり、夜に寝る時に怖くて寝にくい程度という事がほとんどだ。


「まあ、もう祓ったし問題ないけどさ。前に佳那美ちゃんにあげた御守りとかも即席の物だったしなぁ、今度にしっかり作った御守りあげるから」


「お兄ちゃんがきちんと作った御守りは効果抜群だよぉ~、うししっ」


「うんっ、ありがとう灰川さんっ! なんだか少し怖かったんだっ、えへへっ」


 佳那美は色々とあって幽霊とかは存在するという認識が固まっており、怖いモノが多いのも知っている。そして自分はそういうのに目を付けられやすい体質だというのも、心の何処かでは分かりかけているのかも知れない。


「とりあえず俺達も何処か見回って遊んで来るかぁ! アウトドア業者が来るから少し早く戻って来ないといけないけどなっ」


「ハイカワっ、ボク、パフェ食べたいなっ。レッスンで少しお腹減っちゃったよっ」


「うししっ、じゃあお兄ちゃんの奢りでパフェ食べに行こう、良いよねお兄ちゃん~?」


「灰川さんっ、私もパフェ食べたいよ~! でもお小遣いはそんなにないし…」


「じゃあパフェ食べに行くかぁ! もちろん俺の奢りだぜ佳那美ちゃん、散歩がてら何処が良いか選びながら行こうな」


 佳那美もアリエルもすぐにお腹が減る年齢の子だし、砂遊も甘い物は好きな性格だ。


 灰川は事務所の所属者を労う、もしくは歓迎の意味を込めて午後のおやつを御馳走する事になったのだった。ちょっと財布が心配な事は気付かれないようにしなければいけない。

まだ体からダルさが取れません~!(泣)

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