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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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234/333

234話 2,3回目の収録日

 来苑のマンションに行った翌日はハッピーリレーのマネジメント業務や取次業務を行い、シャイニングゲートのスタッフを交えて灰川事務所に来た案件客と仕事の話し合いをしたりした。 


 佳那美とアリエルは学校に行きつつ、放課後にハッピーリレーで演技や歌唱のレッスン、ダンスのトレーニングなどを行った。


 2人の各芸能技術は講師も舌を巻くほどであり、佳那美もアリエルも技量は更に上がっていくと目されてる。アリエルは聖剣の加護の影響もあるだろうが、元からそういった才能に秀でていたのかもしれない。


 そして水曜日、今日は大事な仕事がある。


 今日はテレビ局でnew Age stardomの2回目と3回目の収録がある、撮り貯めてしまうという方式だ。出演者は前回の5人とハッピーリレーとシャイニングゲートのVtuberで選出されたメンバーだ。


 番組2回目には灰川が選出した飛鳥馬 桔梗と雲竜コバコが出演するし、3回目にはシャイニングゲートの赤木箱シャルゥとケンプス・サイクローも出演する。


 その他にも出演者は多数で、ハッピーリレーからはルナウサギ・ロンイヤーと神谷 愛儒というエリスたちの先輩が出るし、シャイニングゲートの成人Vtuberも多数が出演して様々な盛り上げをしていく段取りになっている。


「じゃあ皆さん準備良い?」 


「はい、よろしくお願いします」


「よろしくでーす、灰川さん」


「どうも、安全運転でお願いします」


「おうっ、準備OKだぜ」


 灰川はシャイニングゲート所属者で番組に出演する人達を乗せてるが、この車には空羽と来苑は乗ってない。2人は渡辺社長の車に乗っており、ボックスカーの運転がそこそこ得意な灰川はこちらを任されたという感じだ。


 ハッピーリレーの出演者は花田社長が運転する車に乗っており、佳那美とアリエルもそっちの車に乗ってる形だ。灰川の車には赤木箱シャルゥとケンプス・サイクロー、桔梗とコバコが乗ってる。それとVtuber撮影に必要な機材がアレコレ積まれてる。


「じゃあ出発するか、今日はよろしくシャルゥさん、ケンプスさん、桔梗さんにコバコ」 


「お、灰川さん私とケンプちゃんの名前覚えててくれたんですね、嬉しいですよ!」


「よろしくお願いします、ちゃんと台本も覚えてきましたので」


「灰川さん、コンビニに寄れる時間はありますか? 朝ごはんのサンドイッチをカラスに奪われちゃいまして」


「今日もよろしくな灰川さん! 今度お礼にクッキー焼いてあげるぜ!」


 そんな事を言いながら車に乗り、お台場のOBTテレビに向かって出発する、そこから30分程度の車内時間は各自で台本の確認などをするのだが、やはりというか会話が無い。


 赤木箱シャルゥとケンプス・サイクローの2人と桔梗とコバコはほぼ初対面であり、互いの自己紹介や挨拶は終わってるのだが、番組収録の緊張もあるのか初対面から打ち解けてる雰囲気は無かった。


 シャルゥとケンプスは番組では出演する回が違うから絡む事は無いので、今は良しとしておこう。




 車を走らせてレインボーブリッジを渡り、お台場に入ってOBTテレビの地下駐車場に入る。そこから2社のスタッフが荷物搬入をして、そこをテレビ局スタッフも手伝ってくれた。


「皆さん、これから入構証を受け取りに行くのでこちらへ来てください」


 スタッフが2社の者達に声をかけ、テレビ局内へと入って行く。市乃や空羽も前回とは違う入構証をもらうので同じように着いていく。


「誠治、今日は楽屋は前と同じ部屋なのかしら?」


「今回は人数が多いし、楽屋は個室と大部屋の2つがあるぞ」


「私は大部屋の方が良いわ! みんなとお喋りしたいものっ」


「そっか、まあ個室はレギュラー出演者に割り当てられるからな。そう言ってもらえると助かるよ」


 今回からはレギュラー陣の楽屋は個室となり、その他の出演者は大部屋楽屋となる。だが由奈こと破幡木ツバサは準レギュラーなので、要望によっては個室もあり得たが、その必要は無さそうだ。


「エリス、今日は前よりメイン時間が多くなるんだよな? スタッフさんに映りの要望とかあったら早めに言って欲しいってさ」


「うん、ありがとー灰川さん。3Dでの出演もあるから、映りも気にしなくちゃだね。ディレクターさん達と相談してみる」


 所属者のテレビ局での名前の呼び方は議論があったが、臨機応変に対応しようという事で決まった。


 呼び方に関しては個人情報保護などもあるからVtuber名で呼ぶのが良いという話が多数派で、入構証にもVtuber名が書かれてるから基本的にはそっちの名前で呼ぶ方が良い。


「史菜…じゃなくてミナミ、楽屋は個室だけど前部屋に行きたかったら遠慮せず行って良いからな。シャイニングゲートの人達も登録者が上だとか年上だとかの理由で引いて話さなくて良いんだからな」 


「はい、ありがとうございます。ちゃんと意思疎通が出来るよう備えさせて頂きますね」


 前部屋というのは楽屋とは違い、出演者がスタジオのすぐ傍で出演に向けて控えるための部屋だ。


 本来ならVtuberのような生身でテレビに出る訳じゃない人達は前部屋とかは必要ない。しかし今回の収録は3Dモデルを持ってる人が多数出演する事や、スタジオにより近い場所でパソコンを使うから前部屋も使う事になった。


 何よりこの前部屋と言うのは出演者の親睦や互いの理解を深めるのに非常に有効な場所であり、本番前の緊張などを緩めるのに最適な場所なのだそうだ。前部屋で仲良くなって長い付き合いになってる芸能人の人達も多いらしい。


「灰川さん、桔梗とコバコが皆に挨拶をした後は予定通りにお願いしますね」 


「はい渡辺社長、なるべく早めに済ませて来ますんで」


「ハイカワっ、ライセンスは首から掛けてれば良いのっ?」


「おう、それで良いぞアリエル、ハッピーリレーの車はあっちか?」


「おはよう灰川さんっ、番組収録とか楽しみだよっ。ハッピーリレーの車はあっちにあるよ」


「おはよう佳那美ちゃん、車はあっちか。ありがとう」


 佳那美とアリエルはハッピーリレーの車に乗って来ており、車内では史菜や他の初対面の人達と自己紹介し合って顔見知りになれたようだ。


 2人にとっても今日は大事な日であり、桔梗とコバコの事もあるから灰川もアレコレと忙しい日になる。


 とりあえずは局内に機材などを運び込み、出演者をスタジオ近くの楽屋まで案内して御目通しなどをしていった。


 雰囲気もスタッフと2社の間は悪くなく、スタッフ紹介などもしっかりとやって、互いに協力して良いモノを作ろうという雰囲気が流れたのだった。




「灰川です、失礼しま~す。桔梗さん、コバコ、そろそろ行くからこっち来て」


「はい、ただいま行きます」


「おっ、来てくれてありがとうな灰川さん」


 大部屋楽屋にノックしてから入り、灰川が雲竜コバコと飛鳥馬 桔梗を呼んで連れ出す。


 楽屋の中は着替え中などにブッキングしないよう、更衣室が設けられており安心できる造りだ。


 2人を楽屋から連れ出して少し離れた通路で話す、他の出演者たちは台本チェックやイメトレなどをしたり、Vモデルの確認作業などをやってる。


「コバコ、桔梗さん、今から専務取締役代表執行役員の三河田 憲治さんっていう、OBTテレビで3番目に偉い人に挨拶してもらうから、準備は出来てる?」


「はい、ご紹介よろしくお願いいたします」


「灰川さん、そんな偉い人に会えるなんてスゲェな」


 この予定は既に2人には話しており、最初に楽屋などに行って先輩たちに軽く挨拶してから執行役員の三河田に挨拶をしに行く段取りが付いてる。


 桔梗とコバコは灰川が選出した新人正規Vであり、彼女たちの裏には灰川が直々に付くという形になる。それはつまり四楓院グループが他の所属者よりも強く付くという事だ。


「三河田さんはOBTテレビでカルチャー系番組に強い発言力がある人だから、しっかりと挨拶するようにね」


「おう、任せといてくれよな灰川さん!」


「分かりました、自分の力でもお仕事が取れるよう頑張ります」


「あと三河田さんの直属の部下のプロデューサーさんがやってる番組のスポンサーのCM仕事はもらえる話が付いてるから、その話が出た時はしっかり礼を言って欲しい」


 2人は頷き、ちゃんと礼を言うと約束した。コバコも口の利き方に気を付けると約束し、それで予定の擦り合わせは一応は済む。


 桔梗とコバコは新人で、まだ本格デビューすらしてない。2人のデビューは番組2回目の2人の出演回の放送が終わった直後、再来週月曜日の23時に同時デビューを飾るのだ。


「もう話したけど2人のデビューは広告代理店を通して大々的に宣伝するから、初回で結構な数の視聴者が取れると思うからさ」


「あの…灰川さん、広告代理店に頼むと仰ってましたけど、広告業界1位と2位の代理店に頼むって本当でしょうか…?」


「本当だよ、広告業界1位のルーツKIY株式会社と2位の上陽広告に依頼を出してる。広告依頼料は色んな所が負担するって声が上がったから、大きな宣伝が出来るぞ」


「新聞に雑誌に大手ネットサイトでも宣伝するんだよなっ…電車の中の映像広告までやるって本当かよっ…?」


「本当だよ、その収録も終わってるだろ? 渡辺社長が2人の声とか演技にOK出したんだから大丈夫だって」 


 広告代理店とは依頼会社の要望に応じて広告を出す会社であり、広告を出したい企業と広告を掲載するメディアを繋ぐ会社である。単に仲介をするというだけでなく、そこには様々な依頼に基づいた戦略込みの仕事をしてる会社である。


 マーケティングという市場やターゲット層を分析して、そこに応じた広告を出す戦略プランニング業務。そこには最先端技術などを使用した広告や、インターネットでの広告などのデジタルマーケティングもある。


 広告そのものを作るクリエイト作業を直にやる事もあるし、最適だと思われる下請け会社に広告制作を流す事もある。それらはデジタル、アナログを問わない。


 広告を主目的としたイベントや展示会、ネットメディアのプロモーション業務も行う。それらのノウハウもあるためイベントを開催したけど総崩れみたいな事にはまずならない。


 そして何より広告メディアへの伝手の強さがある。広告を出すのも無料ではなく、広告枠を購入しなければならないのだが、そこへの伝手が非常に強いのだ。


 街中で見るデジタルやアナログの看板広告、雑誌や新聞で見る広告、その他にも人気のある所に広告を出す力が非常に強く、それらの場所を如何に有効に使って求心力を高める広告を作って出すかが代理店の仕事である。


 中抜き業者というイメージは強いし、実際にそういう面もある。しかし効果的かつ大勢の興味を引く広告を出したいならば、広告業のプロが集う広告代理店を頼るのが一番だ。だからこそ凄い儲けを出してる業界なのだ。


 他にも裏宣伝と言われる有名人との独自契約をして、SNSなどで宣伝してもらう契約を結んでるなんて言う噂もあったりする。もちろんそれは大手が関わってるなんて大衆に悟らせないよう、傘下企業や別会社を通じて行うだろう。


「あとジャパンドリンクのCMもウケが良かったら2回目も頼むって2人にも声が掛かってるし、ここから更に忙しくなるからな。高校と大学は大丈夫?」


「問題ないぜっ、こっから楽しみで仕方ないって、へへっ」


「私も単位は取れてるので問題ありません、今はこっちが大事な時ですから」


 今はテレビ仕事が大事なのは確かにそうだ、社運と2人の今後が懸かってると言っても過言ではない。


 テレビ放送に合わせてジャパンドリンクのCMはもちろん、限定ラベルのドリンクも発売される。その他にも話題作りのために算段はいっぱいある。


「まずはテレビ局の偉い人の顔覚えを良くしてもらって、良い仕事をこれからも回してもらえるように~~……」 


 広告代理店を使った宣伝や今日やこれからの説明が終わり、役員が居る28階の上層階受付へ行こうとした時だった。



「あ、あのっ! 灰川さんっ、コバコちゃんと桔梗さんって、本当に最初からそんな広告を出すんですかっ?」


「えっ?あっ! 聞いてたのケンプスさん!?」



 通路の近くの曲がり角の所でシャイニングゲート所属のケンプス・サイクローに立ち聞きされていた、さっき確認した時は誰も居なかったのだが、足音を聞き漏らしてたようだ。


 しかしここは焦らず、灰川はしっかりとケンプスを見据えて納得のいくよう、少なくとも不和にならないよう立ち回ろうとする。


「ああ、うん、安心して、シャイニングゲートの費用は一切使わないからさ、皆さんの稼いだ収益を新人の広告に注ぎこむなんて納得しないでしょ?」


「じゃあどうやってそんな広告出すんですかっ? そんな広告出したら凄いお金が掛かりますよねっ?」


 焦って聞いてくるケンプス、高校2年生の彼女でもそれは普通じゃないと感じたのだ。


「2人にはスポンサーが付いたんだ、さっき言った広告代理店ルーツKIYと上陽広告がナツハさん、れもんさん、小路さんと同時に2人にもスポンサーに着いてくれてるから、格安で請け負ってくれる」


 「!?」


「あとジャパンドリンクも2人には自由鷹ナツハ、竜胆れもん、染谷川小路と同等の業務資本提供を約束してるし、パソコン開発とかをやってるPcyber gateも2人のスポンサーに着いてくれたしさ、他にも~…」


 これが意味する事は2人は別格の待遇という事で、灰川のコネが凄いという事だとケンプスは薄々と感じ取る。灰川のコネが凄いのは前から感じてはいたが、確信に近くなるという感じだ。


 実際に灰川は後ろ盾が強いため非常に強力なコネを有してる、スポンサーも引っ張ってこようと思えば簡単に引っ張れるのだ。


「ルーツKIYと上陽広告がスポンサー……2人って新人なんですよね…っ?」


「そうだよ、しっかり頼み込んでスポンサーになってもらったんだ。元から2社にはイベント広告とか打ってもらってたから、話は少し通しやすかったけどさ」


 灰川が頼み込んだというのは嘘だ、向こうからスポンサーになりますと言われたのだ。それを言ったら角が立ちそうなので言わない。広告代理店の2社は四楓院が発起人であり、天下りの高級官僚なんかが多数が勤めてる大きな会社だ。


 ルーツKIYは年間売り上げを1兆円を超えるような超大企業で、上陽広告も年間5000億を超える売り上げを計上する大企業である。


 その2社は株式は過半数を会社が有してるが、四楓院が株式を含む実質的な全権を今も掌握しており、逆らう事はほぼ出来ない状態となってる。


 広告業界を制してるから芸能界にも強い力が働く、その逆も然りという感じで、強い力が強い力を生む構図を見事に作り上げてるのだ。


 以前は上陽広告で四楓院を追い出そうという動きを社長が取った事があったが、完全なる失敗に終わっており、それ以来はパワーゲームも発生してない。


 四楓院はこの2社には経営に強く口出ししてるのだが、方針としては間違ってないし、利益もしっかり取れてる。内部の話や意見などもしっかり聞くから大きな反発なども発生してないのだ。


 このような多数の大きな企業を経済面と経営面で掌握してるからこそ四楓院は強く、そこの最上位客人の灰川も強いコネがある。


 しかしその事はほとんどの関係者は知らないし、桔梗とコバコも『なんか凄い伝手があるっぽい』くらいに思ってる。


「ちょっと不公平じゃないですか? 流石に優遇され過ぎな感じします…」


 この待遇にケンプス少しばかり不機嫌な声を出す、彼女は高校2年生で年齢的には桔梗の年下でコバコとは同学年である。


「こういう業界で公平だ不公平だってのは通用しないよ、2人は俺の責任においてコケさせる訳にいかない。それに他の所属者の人達にも躍進の方策は考えてるって」


「それは…そうですけど…」


 2人は灰川の肝煎りであり、コケる事は許されない。2人がコケるという事は四楓院がコケるという事であり、そうなればフィクサーの面目が立たないのである。陣伍や英明の顔を汚さないよう灰川だって必死なのだ。


 チャンスも結果も公平に与えられる物ではなく、自分で勝ち取る業界だとケンプスは分かってるつもりだった。運だって状況を左右する。


 自分たちには上層部への挨拶の話は来てないし、テレビCM案件なんて来てない。この差は大きいと感じてしまう、その悔しさとかの感情がどうしても隠し切れない。


 理屈は分かる、納得もしてる、新人デビュー者の2人にはそういった運があったのだ。2人は自分が努力や苦悩の果てに掴み取った物の上を軽く行く運があったのだ。


 ソレは分かる、しかし……だったら自分の努力は何だったんだと思ってしまう。やっぱり心の何処かが納得してくれない。


 シャイニングゲートで71万人の登録者が居るけど、幼馴染で年下のシャルゥは80万人、自分だって努力してるのに負けてる。それは悔しい事だ。


 もちろんシャルゥは好きだし、問題なく活動は出来てる。でも前から言われてた弱点、『爆発力が足りない』という部分がケンプスに重く圧し掛かる。きっと目の前の2人には爆発力だってあるのだろう、だから選ばれたんだと思う。


 ケンプス・サイクローこと鈴井 優子はシャイニングゲートに所属する上澄みのVtuberであるが、その中では目立った部分が無いのだ。


 とても負けず嫌いな性格だが本人の資質はサポート向きで、どうしてもサポートした人の方が目立って伸びてしまうのである。それが悔しい。


「ケンプスさん、何だか納得してくれなさそうだから、良かったら一緒に挨拶に行く? この事は今は波風立てたくないから黙ってて欲しいから、口止めも兼ねてさ」


「えっ…?」


 桔梗とコバコの待遇が特別なのはシャイニングゲート所属の者は知ってはいるのだが、そこまで特別だなんて知ってる者は居ない。もし今に『トップ3と新人が同じ待遇』という話が漏れたら他の所属者から嫉妬の目が向けられる可能性がある。


 2人の待遇については灰川と仲の良いナツハ達は知っており、むしろ灰川の力で無名の2人がどこまで上に行けるかを楽しみに見てる。


 この話を漏らされる訳にはいかない、ここで他の所属者に話されたら反感を買いかねない。後から他の所属者にも躍進してもらう算段はあるのだが、そこで公平にしたとしても今すぐ納得はさせられないだろう。


 ならばケンプス・サイクローへの口止めと出演への気力維持のため、何かしらの得を持ちかけるしかないと灰川は感じたのだ。


「ケンプスさんってピアノが準プロ級なんだよね、挨拶に一緒に来たらOBTテレビの音楽番組に出させてっていう交渉も出来るかもよ?」


「~~!!」


 OBTテレビは当然ながら様々な番組をやってるし、様々な放送局を系列込みで持ってる。


 地上波は今居る本局を始めとして各都道府県にある地方局、8種類の衛星放送、インターネットでの放送チャンネル、その他だ。


 膨大なチャンネル数によって全国にまたがる放送網、国民で知らぬ者は居ない巨大資本によるテレビ局、そのテレビ局の『音楽番組』に出られるチャンスをくれると言ってる。


 ケンプスには小さな頃から夢があった、それはとある有名ホールでピアノを演奏してみたいという夢だ。

 

 しかしその音楽ホールは非常に格式高いホールであり、名だたる者しかステージに立てないのだ。ピアニストが1000人居たとすれば1人がステージに立てるかどうかというレベルの話だ。


 そのホールはOBTテレビが所有する施設であり、そこで行われる音楽コンサートやバレエ、各種芸能はOBTテレビが独占で放送する。海外局を含むその他のテレビ局が入る時は有料の許可が必要だ。


 音響は世界一とすら言われるホールで、そこで演奏するのが夢なのだ。


「行きます!連れてって下さい! あとシャルゥもご挨拶に一緒に連れてっても良いですかっ!? ここで聞いた事は絶対に誰にも言いませんから!」


 こうして赤木箱シャルゥとケンプス・サイクローも、OBTテレビ専務取締役代表執行役員の三河田 憲治に挨拶に行く事となった。


 灰川の仕事は少し増えるが問題ない、リハーサルが始まる前には挨拶は終わるだろうと考えてるが、灰川はケンプスの情熱の事を知らないままだ。

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