230話 色々と済ませた週末
ライブとかミニ演劇を見に行った翌日の午後、灰川はアパートに居た。アリエルは隣の部屋で私物の整理とかをしてるが、通学などの問題もあるので基本的には平日はアリエルは渋谷の事務所の住まいで過ごす事になるだろう。
アリエルの事務所加入については花田社長と話し、是非にそうしなさいと言われて決定した。
「色々とどうすっかなぁ~、こっちに帰ってきたらアリエルの送迎とかしなくちゃいけないだろうしなぁ」
昨日は本当に色々な事があった、灰川家が揃って怪異の解決に当たったり、皆で出掛けてアリエルが灰川事務所に入ることが決まったり様々だった。
アリエルの日本での生活に必要な物も用意は出来たし、小学校に通うためのランドセルや教科書とか体操着などの用品セットも購入してある。これらはもちろんアーヴァス家が金を出してる。
「問題は無さそうだな、明日からはアリエルは学校だし、俺も忙しくなるし」
アリエルの生活費も大丈夫なようで、これからはハッピーリレーのスタッフや灰川が生活の仕方を教えていく事になるだろう。近所の飛車原家や上の階の朋絵にも協力をお願いしてる。
灰川事務所の所属者は最初はVtuberとして朋絵が入り、役者希望の名目として佳那美とアリエルが所属する。愛純の両親はライクスペースの顛末などもあって難色を示し、両親は娘の事務所の所属に尻込みしてる状態だ。
朋絵も佳那美もアリエルも未成年であり、事務所所属には両親の同意が必要となるが3人に関しては問題なく進んだ。アリエルは本国の両親からウェブ同意書が送られて来たし、朋絵は両親が放任主義らしく普通に同意書が送られて来たのだ。
アレコレと確認してからひとまずはアリエルの身の回りの事は片が付き、隣のアリエルの部屋に行って整理の手伝いをしに行く。
「おーい、片付けは進んでるかー?」
「うん! ベッドもチェストもあるし、家から本とかも届いたから整理してるよ」
部屋の中は開けてない段ボール箱なんかがあり、まだ整理がつくには時間が掛かりそうだ。
アリエルはまだ9才であり一人暮らしには早すぎる年齢だ、泥棒とかの危険もあるから保護者が一緒に居るのが普通である。
この判断ついてはMID7のアリエルの先輩やアーヴァス家の者からも反発が出たが、聖剣の担い手であるアリエルには強大な加護があり、自分から挑まない限りは危険などは近づいて来ない可能性の方が高いと言う。
だが周囲の反発も非常に強かったらしく、こんな事態になって強く心配したMID7のルチアナという女性隊員は、アーヴァス家に殴り込みに行こうと本気でしてたそうだ。
その反発の声もあってアリエルは完全な単独生活という事にはならず、隠れ御目付け役が馬路矢場アパート近辺や渋谷といった、アリエルの生活圏内に常駐する事となったとも聞いた。
アリエルは御目付け役が居る事は知らないし、灰川も口止めされてるから言う事は出来ない。しかし安心は安心である。
「一人暮らしはちゃんと出来そうか? 困った事があったら言うんだぞ、食事とかは~…」
「大丈夫だよ、ボクはMID7の宿舎で一人暮らしだったし、食事なんかは家がフードサービスを年間契約したから心配ないってさ」
「え、マジ? あと防犯とかも~…」
「そこも大丈夫だよ、ハイカワの事務所の上にあるセキュリティ会社に頼んであるからね」
「ええっ? SSP社に頼んだのかっ?」
「うん、ジャパンで一番信頼できるセキュリティサービスだってアーヴァス家が判断したんだ。心配してくれてありがとう、ハイカワっ」
SSP社は高額だが高度なセキュリティ会社であり、ハッキリ言って客を選ぶ感じの警護警備会社である。そこに依頼できて料金を払えるなんて、やっぱり名家の子という事だ。
試練の異国一人暮らしではあるが生活部分での安全面はしっかりしてるらしく、もし万が一の際には即座に対処できるよう備えられてるようだ。しかしオカルト絡みではその限りではない。
どうやら灰川が思ってたより恵まれた環境が用意されてるようでホっとする。確実に戻って来る呪物的力がある聖剣とはいえ、もし盗まれたりしたら家の名に傷が付くなんてこともあるだろう。
この部屋はボロアパートに似合わないセキュリティが敷かれてるのだ、鍵とか窓ガラスなんかもしっかり変えられてる。ちなみに灰川の部屋も四楓院家とSSP社の手回しでセキュリティはしっかり変えられてる。
どうやらアリエルの家のような所は普通人とは違ったタイプの気を払わなければならず、やはり完全に奔放にさせるという訳ではなさそうだ。
一人暮らしにおける精神面での寂しさとか、自分が何をどのようにするか等は自分で判断しなければならない。そういった事で心を鍛えるなどの目的があるのだろうか。
「とりあえず安全とか生活での心配はなさそうだな。俺が居ない時に困った事があったら、こっちだったら2階の朋絵さん、あとさっき案内した飛車原さんの家に行くんだぞ」
「うんっ、渋谷だったらSSP社の人かハッピーリレーのスタッフさん、あと王さんに相談だよねっ」
灰川もずっとアリエルに付いててあげられる訳ではないし、保護者代わりになると買って出てくれた人は複数が居る。これも聖剣の加護が引き寄せた縁なのだろうか、だとしたら凄いことだ。
それにアリエルだって今まで親と離れて暮らしてきたのだし、警護も居るから過度な心配は必要ないと本人から言われた。灰川が考えてるよりもしっかりした子なのだろう。
近年は子供を取り巻く環境も変わって来ており、共働き家庭で両親とロクに一緒に居られない子供も増えてる。孤独感とどう向き合うかも今の子供には重要なのかも知れない。
「今日は俺も家でやる事とか済ませて明日に備えないとな、アリエルも明日からは小学校に通うから、しっかり準備しておくんだぞ」
「うん! ジャパンのスクールがどんな所なのか楽しみだよっ、お友達いっぱいできたら良いなっ! くふふっ」
子供だって生活というものがある、学校だとか塾だとか何らかの校外活動だとかだ。アリエルは明日から日本の小学生として学校に通い、灰川事務所所属の芸能活動家という事になる。
事務所の手続きなどは花田社長を始めとしたハッピーリレーのスタッフが教えてくれながら手伝ってくれるし、たぶん問題なく進むだろう。
その後はアリエルの手伝いをしつつ朋絵とも事務所所属の話や必要書類などを用意し、朋絵の家などにも連絡をして来週に備えていった。
夜は灰川事務所の3人で食事でもと思ったのだが、予想以上に朋絵とアリエルは疲れが溜まってたらしく、早々にそれぞれで休む事になったのだった。
「さて、配信するかぁ」
灰川はまだ少し余力があるので今夜は配信をする事にする。今からは灰川メビウスの時間だ、今夜の灰川配信のメニューは。
「今日は怪談配信するかぁ、前に空羽にも勧められてたしな」
そんな訳で今日は怪談話をやってく事にして、配信画面を点けて早速開始である。
「はい、こんばんは~、灰川メビウスでっす! 今日は怪談やってくぜ!」
誰も来ない配信、まずは最初に少しの前置き雑談をしてから怪談を話す事にする。
「俺の怪談配信に誰も来ないってのは、やっぱ怖さが足りねぇのかな? でもあんまり怖いのもなぁ」
配信という手前でどうしても話せる内容は限られがちだ、あんまり嫌な話だと来た人が帰っちゃうとか思ってしまう。
現状で誰も来てないんだから考えるだけ無駄なのだが、それでも考えてしまうのが灰川だ。
『南山:こんばんは灰川さん、今夜は怖い話の配信なんですね』
『柑橘系:こんばんわっす』
「お、南山さんに柑橘系さん、今夜は怪談配信だぜ! やっぱ視聴者を呼び込むにはしっかり怖い話しなきゃいけねぇのかな」
『南山:怪談配信だと話術なども大事ですが、やっぱり話者が勢いに乗れてるかも大事だと思います』
『柑橘系:怪談はやっぱり場の雰囲気とか配信の空気とか大事じゃないですか? 自分はそう思うっす』
史菜と来苑が配信に来てくれてコメントしてくれる、史菜はホラー配信で怪談もやってるから、配信における怪談話術なども研究したようだ。
来苑は怪談などはキャラに合わないからやってないが、直感的に怪談配信は雰囲気が大事だと判断する。
2人ともプロのVtuberだし、その考えは間違ってる筈もない。
「俺はあんまり怖くない怪談も好きなんだけど、視聴者を掴むためには出し惜しみなんてしないぜ! ちょっと変わり種の話をするかぁ!」
『南山:灰川さんの怪談は大好きなので、どんな話でも大歓迎です!もちろん怪談だけでなく灰川さんも大好きです!』
『柑橘系:自分も参考にさせてもらうっす! 南山さんぶっちゃけすぎですって!』
そんなこんなで灰川の怪談が始まる、2人のようにマーケティングや視聴者ニーズに合わせるような考えも無く、ただ『こういうのだろ!』みたいな考えで話す、いつもの素人配信だ。
視聴者は変わらず2人である。市乃や空羽たちは自分の配信や動画編集などをしており、今夜は灰川配信には現れなかった。
窃盗団で語られる噂
泥棒たちの間で『あの家には入るな』と言われる家があるらしい、その家はヤクザの家とか警官の家とかではなく、普通の会社員と家族が住んでる一軒家だと泥棒をやってるAさんは語った。
外見は普通の都市住宅、防犯的に見ても普通かそれ以下だし、窃盗団が入ろうと思えば侵入して盗みを働けそうな感じがする家だ。実際に留守を狙って窃盗団が入ったことがあったそうなのだが……入ったきりで誰も出て来なかった。
しかし警察は来ないし騒ぎにもなってない、見張り役も中から仲間が何かあったような声も聞こえなかったそうだ。その一家は翌日も子供は学校に行き、父は会社で母は家で家事をしてるのを仲間が目撃してる。見た目では普通の生活だ。
その窃盗団では『消えた仲間は犯罪が嫌になって逃げた』という結論になり、もし自分たちの事を警察にベラベラ喋られたりしたら面倒だが、追いようもないから放っておくことにした。
少ししてから別の窃盗グループが同じ家に目を付けた、彼らは夜に家の者が寝静まった後に侵入して、音を立てずに盗んで出て行く夜間窃盗のグループだった。彼らは少しは名の知れたグループだったが、その家に入ったらしいという情報を得た後に彼らを見た者は居ない。
その後も暴力も辞さない外国人窃盗グループ、空き巣のプロ、そんな物騒な連中がその家に入っては消えて行ったらしい。
ある日にAさんは窃盗団界隈で本物のプロと呼ばれるBという泥棒に会う機会があり、その人にあの家の事を聞いたそうだ。
あの家はどう考えてもおかしい、中に入った窃盗集団が誰も出て来ないし家の者が普通に生活を続けてる、それに何故あんなに泥棒に狙われるのか?
どう見たって凄い金持ちの家って訳じゃないのに、危ない噂だって流れてるのに泥棒が入り続けてる。かく言うAさんもあの家に入りたいという気持ちがある、どんな宝があるのかという気持ちになってしまうそうだ。
「俺もあの家に入った事がある、だが明らかに変な家だった……俺はあの家に例え100億円があったとしても入らない…」
Bさんが言うにはあの家の中には、玄関、リビング、息子の部屋、夫婦の寝室、トイレ、バスルーム、など家の至る所に『ご自由にどうぞ』と書かれた、ある物が置かれてたり設置されてたりするるらしいのだ。
「天井から下がった首吊り縄…何かの液体が入った注射器…異常に密閉性が高い風呂場には混ぜたらヤバい洗剤…練炭…謎の錠剤……」
「それって…自殺の道具ですか……?」
「仏壇には数え切れない沢山の写真が飾ってあったよ…中には昔に一緒に仕事した野郎の写真もあった…」
しかもそれらの道具を見たら凄く魅力的に見えて、使いたい!と思ってしまった。
「あの家が何なのか分からんけどな…俺は泥喰いの家って呼んでる」
「マジっすか…そんなおっかない家だったんすね…、小学生の子供もいるのに…」
「え…? 小学生…? それってどんな子供だ?」
「普通の男の子っすよ、特徴は~~……」
Bさんもその子供を知ってるが、それは異常な事だった。
「俺があの家に入ったのは10年以上も前だぞ…どうやらマジで危険な何かがある家らしいな…」
Bさんが言うには両親も子供も10年以上前から変わってない、これはもう完全に幽霊か妖怪の類ではないかと話す。侵入した泥棒が次々と消えてるのも、もはや超常現象が発生してるとしか思えなかった。
Bさんが生きて帰れたのはパトカーのサイレンが聞こえて正気に戻ったからという理由らしく、やはり泥棒はパトカーの音は何にも優先される警戒の音らしい。パトカーのサイレンに助けられるとは何とも皮肉な話だ。
Aさんはその後もその家が気になってしまう。気にしても危ないだけなのに調べようと思い、近所の家に訪問販売のフリをしてその家の事を聞きに回った。そこで新たな情報が入って来る。
「あの家は今は誰も住んでないのよ、昔に泥棒が入って一家が殺されるっていう事件があってねぇ…」
「そう…なんですか……、はは……」
その家は今も泥棒への恨みを晴らすために泥棒を呼び込み、何処かへと消し去ってるのだろう。泥棒だけを呼び込む『泥棒の呼び家』、それがあの家の正体なのだろうか。
「という話でした、やっぱこういう話すると雰囲気が暗くなっちまうな」
明確に悲劇があった話であり、灰川としては少し暗い雰囲気のある話だから苦手な部類である。
ホラーはどうしたって不幸や恨みといった具合の話が多くなるし、そこは仕方ないのだが、自分で話すとなるとどうしても気分が良い話にはならないのな問題だ。
『南山:独特な感じの話でした、面白かったですよ』
『柑橘系:自分も怖いなって思ったっす!』
「お、ありがとう2人とも、やっぱそう言ってもらえると嬉しいわな」
怪談とは実話であれ創作であれ、あったかもしれない話として聞くのが一番だ。それに世の中の怪談の9割以上は作り話であり、話の内容にあまり入れ込み過ぎるのは良くない事である。
「今日はそろそろ配信終了かね、明日もあるしな。それにしても新規が誰も来ないな俺の配信」
『南山:そのうち灰川さんの良さに気が付いた視聴者さんが来ます!絶対に来ます!』
『柑橘系:自分は灰川さんの配信は好きっすよ!』
来苑は灰川の配信を反面教師にしてる部分があるが、それでも楽しんで視聴してる。
そんなこんなで今夜の灰川配信も終了し、明日に備えて寝るのだった。
翌日の朝になり灰川はアリエルを連れて馬路矢場アパートからタクシーで小学校に来ていた。
「じゃあこれで転校手続きは終了という事で」
「はい、書類は揃いましたのでアリエルさんは当校でお預かりしますね」
灰川はアリエルと一緒に渋谷東南第3小学校の応接室で転校手続きを終わらせる。この小学校は佳那美が通う小学校であり、灰川は以前に怪人Nの事件の際に来た事があった。
「ハイカワっ、行って来るねっ」
「おう、しっかり勉強してくるんだぞ」
「うんっ、ハイカワもお仕事がんばってねっ」
アリエルは赤いランドセルを背負って先生に連れられて4年生の教室に向かって行く、これからアリエルの日本での生活が本格的に始まろうとしていた。
灰川は今から仕事であり、事務所に行ってこれからの手回しや準備などをしていく予定だ。
事務所に来て作業をしつつ、灰川はここからの事を考え始める。
今週に複数人を連れてOBTテレビに赴いてテレビ番組の収録、その際に佳那美とアリエルをnew Age stardomの収録を直に見せて、テレビの仕事とはこういう物だと見せる。
可能ならば富川プロデューサーやテレビ局幹部に話を通し、別の番組の収録などを見学させてもらったり話を聞いたりする。
その際にアリエルには富川Pの正体を、富川Pにはアリエルの正体を口外しないよう念のため言い含める。どちらもオカルト秘密機関の構成員だなんて言えっこない。
他にも細々とした事を考えながら作業をしてると、渡辺社長から電話が掛かって来た。
『灰川さん、すまないんだが竜胆れもんのマンションに灰川さんのパソコンを持って行って貸してくれませんか!?』
「え、どうしたんですか?」
『れもんの自宅のパソコンが壊れてしまったそうなんだ! 予備のパソコンもあるけど、そっちは今ではスペックが劣るらしくって~~……』
なんでも今日は来見野 来苑の自宅パソコンが何かの理由で壊れてしまったそうで、急遽に代替PCが必要になったとの事だ。
ならば配信邸宅があるだろと思ったが、そっちだと今は来苑が苦手な所属者が居るらしく、事務所としてもあまり行かせたくないらしい。
どうやら過去にその人とは結構な因縁が出来てしまったようで、その人と来苑が顔を合わせると相手も配信に影響が出るそうだ。
今日は来苑の学校である文京学詠館高等部は代休か何かで休みらしく、今日にそこそこ大事な配信を控えてたのだ。その時間が迫ってる。
『タクシーでも何でも良いから至急にパソコンを持って向かって欲しい! テレビ放映や他の大事なことを控えてる今に余計な騒動やファンの期待を裏切るような事はして欲しくないんだ!』
「わ、分かりましたって、でも料金は頂きますよ。タクシー代とかレンタル料とか」
『もちろん構わないよ! れもんから灰川さんに住所を教える許可は取ってるから、千代田区の~~……』
こうして灰川は今から来見野 来苑にサイトウからもらったパソコンを貸す事になり、自宅マンションに運び込む事になった。消費電力も凄いパソコンなのだが来苑のマンションなら問題なく使用できるらしい。
シャイニングゲート事務所にVtuber配信が出来そうなPCがありそうなものだが、実際には事務作業用のPCでそこまでスペックが良くない物が大半らしく、配信に使えるPCは他の作業に使ってるとの事だ。
どうしようか焦ってる所に灰川のPCが思い浮かんだらしく、いきなりに頼み込んで来たという訳だ。
「さて、じゃあ用意して行くかぁ、このパソコン重いんだよなぁ…」
事務所の前の倉庫室からパソコンを取り出してボックスタクシーを呼び、電話で教えられた住所に向かって走ってもらう。
今から行く場所は来苑が住んでるマンションで、灰川としてはVtuberの自宅に行くのは史菜や由奈、引っ越し前の空羽の家などに次ぐ訪問だ。
忙しい中で勘弁してくれと少し思いはしたが、仕事は多少は余裕を持って済ませてあるあるから大丈夫だろう。
来苑の自宅はどんな感じなのか分からないが、イメージとしてはスポーツ用品とかありそうだなとか思う。
あとは音楽が盛んな文京学詠館高等部に通ってるから、防音設備とか凄そうかもとか思うのであった。
「ここが来苑のマンションか、立派な所だなぁ」
来苑の両親は都内の良い企業に勤めてるらしく、その娘である来苑が暮らすマンションも立派な感じだった。
そもそも本人が今はVtuber活動で多額の収入があるのだから、やはり住まいも立派な場所じゃなければ不安だろう。
「こんにちは来苑、PC持って来たぞ」
『どうもっす灰川さん! 今から入り口のロック解除しますね!』
重いパソコンを運び、25階建ての立派なマンションの玄関口が開く。セキュリティもしっかりしてるようで、女性の一人暮らしには良さそうだ。




