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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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225話 解決、相談、情熱充填の怒涛の日

「それでさ朱鷺美ちゃん、アリエルちゃん、結局どうなったのー?」


「え、えっと…凄く……上手くいったよ…っ…」


「ハイカワって……あんなにスゴい人だったんだね…!」


 あの後は誠治が上手いこと霊力変換しながら動画に撮影され、祓いの力を発揮して解呪を行った。


 スマホに宿ってた黒い悪念は消え去り、青島の因果も元に戻ったのである。


「その後に先輩に電話が来てね……悪い事に収拾が付いてく気配があったの…」


 両親の飲酒運転事件は実は飲酒ではなく酒粕(さけかす)を使った漬物の食べ過ぎが原因だった事が判明、賠償や罰金は免れないし免許失効などもあるが会社を解雇などは免れた。


 配信や事業で稼いだ金は相当額を使ってしまってたが、事業所登録を理実亜の実家にしていたため、火事で会社財産も焼失した事により破産申請が通るとか何とかの電話が来た。法人破産が通れば税金免除となるそうだ。


 会社に所属してた連中が得た金銭なども何かの整合性の擦り合わせが働いて消えるだろう、失った友達や人脈は諦めてもらうしかない。所詮は薄い友情であり、利益目的の仲しか構築出来なかったのだから元から無いのと一緒だ。


 あまりに酷かった性格も今となっては本人はしっかり反省しており、最後に(いさお)が。


「人を見下せば見下すほど、その業は己が腐るという形で返って来るぞ。そうなれば人に嫌われて、自分が困った時に誰にも助けてもらえないって形で苦しむ事になる」


 と説教され、今回の事が骨身に染みた理実亜は泣きながら功の話を聞いていた。


 実感を伴った説教や説法とは良い意味で心に来るものがあり、今回の件を通して様々な事を感じた理実亜はしっかりと反省したのであった。


 お金の本来の価値や重み、1万円という金がどれだけ重く、それを稼ぐのにどれだけ苦労するのかなども彼女は学んでいく事になるだろう。


 アプリも効果を失って消え去り、プラスマイナスで言えばマイナスだ。理実亜のイングラやティッカのアカウントも消えてしまったし、財産もかなり消えてしまったからこれから苦労はする筈だ。


 それでも破滅は避けられた事に理実亜も霊能者たちに感謝していた、最後はオカルトを信じてもらえたが、同時に功が『悪どい霊能者やニセモノ霊能者、詐欺野郎も居るからオカルトに傾きすぎるな』と厳重に注意もしてる。


 青島 理実亜は良くも悪くも普通の人間の範囲を逸脱しない者だったのだ。人並みに問題のある性格で、人並みに努力が足りなくて、人並みに自分を過信する精神があった。


 それらは確かに平均より少し濃い部分があったかもしれない、そこを付け込まれたのだろうか。


 理実亜の周囲の連中や、楽に稼ぐ味を知ってしまった所属者たちがどう思い、これからどんな生活をしていくのかは分からない。そんな部分までは解決のしようがない。


 理実亜にしたってこれからどうなっていくのかは分からない、人生なんて何が起こるか分からないのだから、苦汁の味を知った事後こそ努力をもって乗り越えて欲しい。


「灰川さんの動画を撮影したんだよね? どんな動画を撮ったの?」


「えっと、ハイカワがベンチに座ってるだけの映像だよ。ちゃんとした霊能者が見たら絶対に驚く映像だけどねっ」


 空羽の問いにアリエルが答えるが、映像としては5分ほど誠治がベンチに座ってるだけの映像なのだ。動画的には何も面白くはないが、霊能的に見た場合は話が違ってくる。


 動画の撮影中に誠治は『怪異・幸せのアプリ』を消すのに適した霊力変換を連続で行い、しっかりと祓いを成功させたのだ。


 こういう形でデジタル呪物の効果を消す事が出来るのかと学んだ半面、誠治以外には出来っこない霊能技術だと強く思う。


 数秒ごとに霊力の質を変換させて、オーラの大きさや形や色を自在に変える。やれと言われてもアリエルにも藤枝にも出来ない、惜しいのは使う場所がやっぱり限定されるという部分だろう。


「それで~、灰川さんたちは何処行ったの~?」


「少ししたらハイカワたち帰って来ますよ、ちょっと家族で話し合いをしてるそうです」


 灰川家は少しの間だけ家族で話があり、しばらくしたら事務所に帰って来たのだった。




「うわぁーーん! オモチ~!にゃー子ちゃん! またお別れなんて~!」


「なゃぁ~~」


「にゃーー」


「ギドラ、また今度だねー」


「にゃ、にゃ、にゃ」


「マフ子~…」


「にゃ~……にゃ…」


 功と砂遊は明日までは東京に居るのだが、観光とかしたいから今日でお別れとなる。


「じゃあ父ちゃん、猫どものこと考えてみてくれよな」 


「おう、皆さんもコイツらと一緒に居たいってんなら構わねぇさ、準備が整ったら言ってくれ」


「お兄ちゃん、私の事務所加入も前向きに考えて頂戴よぉ~、またねぇ」


 誠治は前日に社長達と今後の動きを話し合っており、その際に猫たちのタレント化の考えなども話されてる。


 砂遊は灰川事務所に加入希望だが、中学3年の未成年という事もあって家族での話し合いもある。今すぐにどうこうという事は出来ない。


 功と砂遊とは今後の事をしっかり話し、もし砂遊や猫たちが加入するにしても迅速に手続きをしていくという事になった。これだけ人の言う事を聞けて人懐っこい動物たちなら必ずバズる、その目算が社長達にはある。


「にゃー子、田舎の猫どもの後継探しとか、やっぱあるのか?」


「そこは大丈夫にゃ、にゃー子以外にも頭の良いネコも居るし、もう一匹の猫叉も居るんだにゃ」


「ああ、やっぱザブトンは猫叉になったのか、アイツは前から怪しかったからなぁ」


「そうにゃ、ザブトンも人間が大好きだから問題ないにゃ」 


 ザブトンとは田舎に居る長く生きてた猫で、灰川家や近所の家の座布団の上に陣取っては何時間も過ごすという習性がある猫だ。


 お触りOK、エサの好き嫌いナシ、お風呂好き、人間大好きという良い感じの猫であるが、灰川家が目してた通りに猫叉になったらしい。


「じゃあ誠治、またな。今度に帰って来た時は土産とか持って来いよ」


「お兄ちゃん、企業案件とかお金になる仕事の用意しといてねぇ~、アニメとゲームのグッズ買うお金は幾らあっても足りなんだな」


「誠治も立派な感じになったにゃ、にゃー子も一安心だにゃ」


「またな父ちゃん、砂遊、にゃー子」


 しっかりと今後の話をしてから家族を見送り、やっぱり少し寂しい気持ちになるが感傷に浸ってる暇など無い。それに、もしかしたら砂遊やにゃー子にはすぐ会えるかもしれない。


「藤枝さん、もし良かったらさっきの話、考えてみてくれる?」


「…はい……ぅぅ……」


 藤枝には灰川事務所でバイトしないかと誘ってみた、入力作業とかをやってくれる人が欲しかったし、オカルト関係の依頼が来た時には相談とかも出来るから居てくれたら何かしらありがたいだろう。


 ここから先は非常に忙しくなる、事務所の仕事形態が変わるのだ。2社のサポートが受けられるとはいえ簡単な話ではない。


 先程に電話が来て朋絵は灰川事務所に所属したいという返事があった、愛純はライクスペースの事件があった事から両親が業界に不信感を持って許可が下りないと言われたが、説得しようと頑張ってるらしい。


 砂遊は母の芳子にも話をしなければならないし、取りあえずは灰川事務所の所属者は2名になりそうだ。




「ハイカワのパパとリトルシスター、面白くて良い人たちだったねっ、また会いたいなっ」


「おっ、そうか? また来るかもしれないから、その時はよろしくな」


 事務所に戻って灰川、市乃、空羽、桜、アリエルのメンバーになる。そこから少しばかり話をする事になった。


「灰川さん、来週とかってどんな仕事入ってるのー?」


「来週は番組収録と佳那美ちゃんの仕事取りの話付けとかになりそうだなぁ、それと社長達から2社で何らかの形で所属者同士の交流の場を作りたいって話が出てるぞ」


「交流? パーティーとかってことかな?」


「やるんだとしたら多分そんな感じなんだろうな、てか来週は忙しくなりそうだな。配信とかしてぇんだけどなぁ」


「最近は灰川さんの配信が少なくなっちゃったもんね~、残念だな~」 


 桜の言う通りで最近は灰川の配信の時間が少なくなって来てる。忙しくて疲れてるというのもあるし、睡眠時間や生活に必要な時間もあるから配信の時間が取りにくい。


「自分の配信もしたいけど、まずは皆のサポートとか頑張らないとな」


「ありがとう灰川さん、でも無理はしないようにお願いしたいな」


 配信というのは体力を使うと灰川は感じてる、市乃たちは慣れもあるから灰川ほど疲れないだろう。


 プロとアマは違うという事だ、灰川はやはり配信のプロとしては技量や性格的にもどうしてもやっていけないタイプなのかもしれない。


「そういやアリエル、お前は今後はどうするんだ? 家とかと連絡は取ったんだろ?」


 アリエルの事だって放っておくことは出来ない、昨日に家とかMID7と連絡を取って今後の話はしたみたいだから聞いておく。


「それなんだけどねハイカワ、よく考えたんだけどボクもVtuberとか、そういう活動が出来ないかなって思うんだ」


「Vになりたいのか? 他にも道はあるんだぞ?」


「うん、Vtuberじゃなくて社長さん達が言ってたような活動でも良いんだけど、何かの成果をボクはジャパンで出さないといけない。だから行動を早く起こさないといけないんだ」


 アリエルは日本にいる間に家から『何かしらの成果を上げろ』という指令を受けている、何かしらというのを自分で判断するのも成長の一つだという事だ。


「昨日にパパとママに久しぶりに連絡できて、役者とか歌のお仕事をして良い?って聞いたんだ。そしたらパパとママは何も言わない、自分で決めなさいって言ってくれたんだ」


 それは無言の肯定という意味合いだ、芸能活動だろうがVtuber活動だろうが思った通りに自分で決めなさいという事だ。


「じゃあVtuberならここに3人も居るし、色々と聞いてみたらどうだ? みんな良いよな?」


「良いよ~、桜お姉さんに何でも聞いてね~」


「アリエルちゃん、私も何でも答えてあげるよ」


「私も聞くよー、Vtuberの事なら任せてよ」


「ありがとうっ、お姉さんたち。じゃあVtuberってどうやってあんな風に画面に映れるのとか~~……」 


 しばらくはアリエルと3人の質疑応答が続きそうなので、灰川は仕事でもこなそうと思い立つ。


 パソコンを立ち上げて入力作業とか依頼を受けて保留にしてる企業案件の整理とか、ハッピーリレー所属者からの会社への要望まとめとかをしていく。


 アリエルは3人にVtuberについての話を聞いていく、どうやってあのような形の配信をしてるのか等の基礎的な話や、どんな仕事をしてるのか等だ。


「ライブカメラを使ってモデルを動かしてるんだよー、顔とかは出さないから気楽っちゃ気楽かもねっ」


「そうなんだっ、あの体はCGで作ったものだったんだね!」


「仕事は配信が主だけど、最近は色々あるかな。他の会社さんからお仕事をもらって宣伝したり、キャラクター肖像を貸したりもするかな」


「色んなお仕事があるんだっ、すごいなぁ」


「今はVtuberは誰でも出来ちゃうみたいだね~、でも人気を取るのは難しい場所でもあるよ~」


「なるほど、Vtuberさんはいっぱい居るってことなのかぁ…」


 色々な事を聞いていく、演技などのお芝居とか役者仕事などはあまり無いことや、歌の仕事はあるけどプロのように歌えるのは一握りだけ、視聴者を楽しませられなければ生き残れないなど、そういった情報だ。


 そこから知りえる事を考えると、アリエルは『自分に向いてるだろうか?』と考えてしまう。


 気の利いた楽しい話を9才の自分が長時間も出来るのか、話の中でMID7とか聖剣の事をポロリと言ってしまわないか、話に詰まってしどろもどろになるんじゃないか、そんな考えを持つ。


 それに想像してた感じと少し違う、アリエルはVtuberとは歌とかお芝居を主にやるような人達のように思ってたのだ。


 今聞いた話だと、どうにもコメディアンと実況キャスターを混ぜたとでも言うようなイメージを持った。喋りながら人を笑わせたり楽しませたりするよなイメージである。


「なんか…ボクには向いてないかも…、メインはトークなんだね、歌やダンスやお芝居はあまり無いんだ」


「そうだね、人によってはそういうお仕事がいっぱいある人も居るけど、そういう人もやっぱり配信とかの時間の方が長いと思うな」


 ゲーム配信や雑談配信などが多く、話を聞くほどにアリエルの考えてた感じとは離れていく。


 昨日に初めて歌や芝居に挑戦してみて、凄く楽しかったし手応えを感じたのだ。それらが自分に向いてるかもしれないという直感で、Vtuberという形態は何か向いてないような気がしてる。。


「アリエル、お芝居とか歌の方に挑戦してみたいのか? だったらちょっと今から芝居かダンスのステージを見に行くか?」


「えっ? 今から見れるのっ?」


「おう、渋谷にはいくつかそういう場所があるからな、若者が我こそは次代のスーパースターだ!って自分を信じてシノギを削ってんのさ」


「シノギ? 頑張ってるってことかなっ?」


 エンターテインメントの場は何もインターネットの中だけじゃない、ましてやVtuberだけなんて事はないのだ。


 若者向けライブ形式エンタメだけでも、歌、アイドルライブ、ダンスステージ、格闘技、ヒップホップやラップ、いくらでも存在する。


 それらに魅せられた者達が自分の才能を信じてステージに飛び込む、それは今も昔も変わらない。渋谷と原宿地域は良くも悪くも若者の街、それらの披露の場が大量にある街だ。


 そういったステージでは画面越しでは得られない迫力や、生で見なければ分からない当事者たちの情熱が感じられるもの。


 当日でもチケットが買えるステージなんていっぱいあるし、何なら路上や公園で許可を取ってパフォーマンスをしてる人達が居る場所もある。


「あっ、それ私も行きたい! 一緒に連れてってよー」


「ライブとか私も興味あるな~」


「私も最近そういうの見てないな、勉強のためにも見に行きたいな」


 市乃たちも猫と別れた寂しさもあってか、盛り上がりのある場所に行きたいと申し出る。


 最近の皆は仕事続きで体はともかく精神の疲れが出てる、どこかで心の滋養を補給しないとこれからの仕事に支障が出てしまうだろう。


 ちょうど今日の3人は仕事を後回しにしたりしてるので時間がある、灰川も今やれる事はほとんど無い状況、出掛けるのは問題はない。


「じゃあいっちょ心に情熱をチャージしに行くか、自分らとは違うステージで頑張る人達から心の栄養を分けてもらおうぜ」


「いいね! インディーズバンドのライブやってるハウスとかあるっぽいよー」


「渋谷ブックレコードの10階のシアターでミニ演劇を開いてるみたいだよ、今からでも公演時間に余裕がありそうかな」


「演劇も音楽も耳で楽しめるんだよね~、ダンスとかは見えないけど~、雰囲気を味わってみたいな~」


 3人ともかなり乗り気だ、やはり心の滋養が足りてなかったのだろう。


 視聴者に楽しいものを届けてばかりで、最近は自分たちの娯楽の時間をしっかり確保できてなかったようだ。それが続けばストレスが溜まり、配信にせよ案件にせよ満足のいくパフォーマンス発揮が出来なくなるだろう。


 以前に史菜が熱不足になった時に配信カフェ&バーのような場所に連れて行き、配信や活動に対する熱を補充した事があった。今回は配信ではない別の種別のステージから栄養を頂いて来よう。


 それに伴ってアリエルが興味を持ち始めてる演技や歌のステージも見せてあげられるかもしれない、そこに立つ人たちが何処を目指し、どんな熱意を持ってるかも見せられるかもしれない。


「アリエル、まずはしっかり実物を見て考えた方が良いぞ。そこからでも遅くは無いだろうからな」


「うん! 楽しみだなぁ、演劇も見た事はあるけどジャパンのは初めてだし、なんだかボクが見た事があるのとは違ってるみたいだよっ」


 演劇や歌唱のステージもアリエルは見た事があるが、それはエンターテインメントというよりは勉強に近い観劇や鑑賞だったらしい。


 名作演劇やオペラ歌唱などの真面目なステージであり、それも面白いし素晴らしいのだが、現代ステージも見なければ判断は付かないだろう。まだまだアリエルは知らない事がいっぱいなのだ。


「よし、じゃあ街に繰り出すぞ。見たい物とかあったらどんどん突入して行こうぜ!」


 こうして5人で現代ライブエンターテイメントを鑑賞するために外に出る、午後2時くらいだから時間的には悪くないだろう。


 渋谷で見れるライブイベントは多く、あちこちで若者が舞台に立つ。大小さまざまなライブハウス、路上パフォーマンス、商業施設のライブシアター、本当に様々だ。


 だが皆はこの時は渋谷のライブステージが、単に『若者がシノギを削る場所』という認識しかなかった。


「ああそうだ、スカウトとかに話し掛けられても連絡先とか教えたりするなよな。名刺くらいはもらっても良いけどな」


 「「え?」」


「しつこいのが居たりしたら俺が助けに行くし、大体は事務所に所属してますって言ったら脈なしだと思って離れるからよ」


 今から行く場所は芸能スカウトなどが付き物の場所であり、彼らは金の卵を血眼で探してる。最近のスカウトマンは男だけでなく女性も居るらしい。


 彼らが逸材を探す場所は何もステージの上だけではない、鑑賞に来てる客たちですら彼らのスカウトの対象な場合があるのだ。


 悪質な奴も居るかもしれないが、そこは実は安心だ。灰川事務所の上の階にある警護会社のSSP社に皆にバレずに、危険な虫が付かないよう護衛を頼んだ。


 彼らは灰川の頼みは一切を無償で聞く事を当主と次期当主から厳命されており、二つ返事で了承してくれた。むしろ『やっとまともな仕事が来た』と意気込んですら居る。


 灰川は社会的に危ない場所に踏み込むような事は無いし、危険人物と会うような事もないから、慣れてるとはいえ彼らは基本ヒマなのだ。もちろん灰川の警護以外の仕事もある時はあるし、土日祝日でも誰かしらは詰めてる。


「よし、じゃあ行くか。みんなスカウト受けた数とか、もらった名刺の数とかで競ったりするんじゃないぞ。ストリーマーのオーラは隠せよな」


「灰川さん心配性だなー、大丈夫だって」


「私はスカウト受けた事が何回かあるけど、ちゃんとお断りするから大丈夫だよ」


 市乃もスカウトは受けた事があるらしく、空羽は何度もスカウトに声を掛けられてる。2人とも美人で可愛いから無理もないことだ。


 渋谷では女子高生や女子中学生はスカウトに遭う確率が高い、悪質な者も多いが中には大手モデル事務所や有名芸能事務所、優良な会社のスカウトも割と居るらしい。


「桜も白杖持ってるからって油断するなよ、めっちゃ可愛いんだから賑やかな場所に行ったらスカウト来るかも知れないって思っとけよな」 


「~~! か、かわいいって言ってくれった~…ぅぅ…、うん、気を付けるね~、学校の友達も白杖だけどスカウトされた事があるって言ってたから~」


 近年では障碍者差別は薄くなってるが、同時に面倒事が降りかかる壁も低くなってる。障碍者だからスカウトが寄って来ないなんていう甘い考えは通用しない時代になりかけてる。


 ともかく5人で渋谷の街に出てライブなんかを見て回ろうという話になる、ここから何が起こるのかは分からない。

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