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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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206話 TCGお祓いと番組収録の決着

「な、なあ…? 何かバトルしてる2人の後ろとか前に、何か見えない…?」


「お前もかっ…!? サイーチ選手の後ろと前に変身したプリコーダーズとアドプリが居るように見える…っ」


「灰川さんの前に聖なるヤクザのマサが居るように見える……!」


 霊能力を強く出してお祓いカードバトルをしており、その効果で周囲の観戦者に普通なら見えないものが見えてる。


 それは才知が命を懸けたバトルをする事によって高まったイメージが具現化した映像のように見えたり、灰川の本気の集中力が霊力を帯びてるような感じになってたりというオカルト現象だ。


「君は無理男さんと言ったね……ここから灰川さんに勝ち筋はあるのかね…? このままでは…」


「無理…とは言いたくないですね…、でも難しい局面ですぜ」


 OBTテレビ取締役会長の深谷がプレイヤーに戦況を聞く、取締役3名も段々とルールを把握してきたのだが、まだ細かいことは分からない。


 才知の父の取締役社長である和藤健治も緊迫の目でバトルを見てるが、今は少し息子への感情が変わっていた。こんなに熱中してる事があったのか、命が懸かるとも負けたくないと思えるほどの物があったのかという感情だ。


 冷え気味だった家庭、エリート街道を行く自分は忙しさから家庭をあまり(かえり)みなかった。それでも家族を愛する気持ちは消えてはいなかった。


 昔は父が仕事に行くと言ったら泣いてしまうような子だった、テストで100点を取っても疲れててロクに褒めなかった、父として失格な生き方をして来たと思う。


 息子が彼女を悪い意味でとっかえひっかえにしてたとか聞いた時は、自分も愛人を作ってたから叱れなかった。我ながら酷い父親だと感じる。


 今さら父親面などおこがましい、息子は今日で20歳、父として反省するには遅すぎた。それでも反省する気持ちは抑えられない、今からでも謝りたいと感じてる。


 それが叶うかは分からない、戦局は非常に厳しく見える。TCG素人の和藤にさえ見て取れる劣勢、どうにかして勝ってくれ!と願うしかない現状が歯がゆく悔しい。


「手札から魔術スペルカードを使用!」


 灰川はここまでは“パーティブレイカー 女僧侶”“用済みの英雄”などを使い、ヒーロー系カードは封殺できていた。しかし魔法少女系は依然として脅威である。


 ここからは魔法少女系カード、プリコーダーズの戦力を削ぐために動き出す。


「俺は手札から魔術スペルカード“消耗戦の決断”を発動、相手ターン中にフィールドに進化ユニットが出た場合、自軍フィールドに出てるユニットをスリープヤードに移し、1枚ドローして配備可能なユニットを場に出す」


「通ります、もっとも通った所でプリコーダーズとアドプリが揃ったのだから痛くはないですけどね」


 才知から感じる嫌な気配が濃くなってる、性格も何かハイになってるような感じがして、呪いの影響なのだと灰川は感じた。


 灰川はフィールドに出てる聖なるヤクザを破壊してスリープヤードに移し、そこからカードを展開する。このターンに才知からの攻撃を防げば勝機は見える。


「手札から地上前衛フィールドに“悪獣 ヴィラゴ”をセット、続けて魔術スペルカード“魔法禁止区域”を発動」 


「無駄な足掻きを…」


 魔法禁止区域は属性に悪を含むカードが場に出てる時しか使えないカードで、これを使うだけなら聖なるヤクザだけでも良かった。


 効果は、魔法使い系、魔法少女系などの魔法に関連したユニットの効果をターン終了時まで無効化する、という物だが。


「魔法禁止区域は無効化します、魔術スペルカードゾーンから伏せカードをリバース、“プリームの応援”」


 魔法少女アニメには付き物のお供キャラ、プリコーダーにもプリームというお供キャラが居て、物語を色々と盛り上げる小さな動物キャラである。


 才知が発動したカードによって効果制限カードを無効化され、ここから攻撃フェイズに入るだろう。


 前衛フィールドのカードは前衛攻撃力が参照されてダメージ計算、後衛は後衛攻撃力という感じだ。いずれにせよ灰川のフィールドに居るヴィラゴではプリコーダーズの約2000のパワーに圧し潰される。


「念には念を入れて動くよ灰川さん、このターンで終わらせる」


「くそっ…!」


 才知は効果を使って攻撃の準備、それもフィニッシュ・キルの準備を整える。


「プリコーダーホワイトの効果とアドバンスド・プリコーダー レートの効果を使用! プリティ・リコーダー・コンサート・フォルティシモによりバフ効果最大!」


 アニメでプリコーダーホワイトであるアリシアが、かつて敵だったレートと心を通わせ本当の友達になれた時に使用した技だ。2人が力を合わせて使う最大バフによりプリコーダーズは強敵を倒したのだ。


 その後は2人とも互いに友達以上の絆が出来て、一緒に同じ家で住むうちに互いに凄く意識するようになってたが、その辺りで1期は終了した。


 効果はプリコーダーズとアドバンスド・プリコーダーズの各パワーを1000ずつアップというもので、発動するには様々な条件が必要だが強力な効果である。


「プリコーダーブルーとアドバンスド・プリコーダー テナの効果を使用! プリティ・リコーダー・高威力長射程ボンバー!」


 真面目な性格である音野峰リンネは、敵の頃からダウナーで引っ込み思案のアドバンスド・プリコーダーだった恋形雨手南があまり好きではなかった。


 しかしある時にリンネの祖母の形見のキーホルダーが付いたランドセルが敵に壊されそうになった時、必死に雨手南がリンネのランドセルを必死に守り、それ以来はリンネが雨手南を見る目が変わったのだった。


 今では雨手南が守ってくれた自分のランドセルを見るだけで顔が赤くなり、雨手南のランドセルを間違えて背負ってしまったエピソードでは心臓がバクバクいってしまう姿を見せた。


 相手のフィールドのレア度4以下のユニットを破壊、追加効果で魔術スペルカードゾーンのカードをランダムに1枚破壊する効果がある。ネーミングセンスは硬い上にセンスがないコンビだ。


 レア度は最大で5なので、発動されたらフィールドを更地にされる可能性がある非常に厄介で強力な効果だ。現に灰川のフィールドは更地にされた。


「プリコーダーピンクとアドバンスド・プリコーダー プラノの必殺効果発動! プリティ・リコーダー・バスターエッジ!」


 プリコーダーピンクとプラノの合体技、ピンク単体での必殺技より明らかに威力の高い技である。


 2人のリコーダーから未知の物質が何らかの切断エネルギーを持って放出し、敵幹部の一人を切り倒して浄化した強力な技だ。


 ナナが誰かを助ける姿に感化された富良乃は、段々と自分も人を助けるようになり、一人の女の子としてナナと一緒に生きるようになった。


 しかし敵幹部が『神化の管弦楽団に戻らなければ小学校を壊す』と言い放ち、富良乃は再びアドバンスド・プリコーダー プラノとして組織に帰り、プリコーダーズと戦う事になってしまった。


 そこからナナが敵の企みに気が付いて小学校に仕掛けられた罠を解除、泣きながらありがとうと言うプラノと共にピンクが放った合体必殺技である。


 その後は富良乃はナナに今まで感じた事の無い気持ちを抱くようになり、間違えてナナのリコーダーを富良乃が授業で使ってしまった時は、心拍が上がり過ぎて混乱状態になってしまった程だ。


「おいおい! あれが通ったら灰川さん負けるぞ!」


「ごほっ…! 何としてでも防いでください…!」


「もう無理だ! 流石に無理だぞコレ!」


 既に灰川のフィールドにはユニットは存在しない、そこにオーバーキルの攻撃が殺到する。その光景は観戦者たちに明確なイメージ映像として見えてるが、高まった集中力と緊迫感のせいか不思議に思う者は今は居なかった。


 灰川にもプリコーダー達が必殺の攻撃を向けてくるのが見え、子供たちに勇気と希望を与えてくれるプリコーダー達が今は恐ろしい戦闘単位に見えていた。


 可愛らしいカラフルな変身衣装を纏った女の子達がトドメを刺そうと向かい来る。これを受けたら確実に負ける、あと1戦する時間も無い。必ず耐えなければならない局面だ。


「ヴィラゴの効果発動! 敵効果でスリープヤードに行った場合、進化デッキからフィールドに任意の進化形態を特殊セット効果を使用! 悪性植物・ヴィラゴプラントをセット!」


 「「!!」」


「更に手札から“悪意の障壁カルマウォール”発動だ! このターンに戦闘ダメージでのユニット破壊を無効! 生命ポイントへのダメージを半分にする!」


 カルマウォールはフィールドにヴィラゴ系ユニットがセットされて無ければ発動できず、その条件を満たすためにヴィラゴをセットした。


「続けて魔術スペルカード“クラスのみんなにバレちゃうよ!”発動! 魔法少女系ユニットは次のターンまでカード効果無効! 戦闘力を半減!」


「な、なにっ! 灰川さん、やってくれたなっ!」


「手札から“ゾンビ山脈の呪い”発動! 自軍スリープヤードに死者属性のユニットがいる場合、敵軍ユニットのステータス上昇効果を全て次の敵軍ターンまで解除!」


 才知のデッキはワールド・ブレイブ・リンクのカードパック87弾“リコーダー・プリンセスの祝福”と、91弾パック“アドバンスド襲来”のカードが中核を成している。


 それに対して灰川は雑多なデッキを組んでるが、少しづつ組み替えてアニメでプリコーダーズ達が苦しめられた要素を上手く噛み合わせていった。


 アリシアが嫌いな食べ物で中度のメタ性能がある“ビッグ・ピーマン大佐”


 リンネと雨手南が苦手でアニメで震えあがってた学校行事を彷彿させ、フィールドのカードを手札に戻すバウンス効果がある“予防注射ドクター”


 勉強嫌いなレイが嫌がる宿題の名を冠し、デッキからユニットを直接セットするリクルート効果を封じる“終わらない算数ドリル”


 プリコーダー達が苦戦したり嫌がる物がTCGでも効果が高く、作中内外から各ユニットが苦手な物をデッキに組み込んでる。


 その中でも魔法少女系ユニットに強いとされる系統のユニットがあり、それがヴィラゴ系と呼ばれるものだった。しかしヴィラゴはWBLのオリジナルであり、プリコーダーとは直接の関りはない。


「このターンで決めたかったけど仕方ない…! ターンエンド…!」


 才知は勝利を確信していたが不発に終わった、ここからは灰川のターンである。


 お台場の海に夕日が沈む、もう空は暗さが強くなりヘリポートにはいつの間にかライトが灯っていた。


 海の向こうの東京の街が黒く染まるまで後数分、それまでに決着がつくだろう。


「ターン開始! ドロー!俺は策略カード“ヴィラゴの進化”を発動! このターン、ヴィラゴ系カードは進化回数制限無視、コスト不要、強化回数制限無視が可能になる!」


「たった1匹のカードだ! 耐える手段はあるぞ!」


「ヴィラゴプラントの効果使用! デッキから植物属性強化カードをサーチして使用できる! 俺はデッキから“毒液”をヴィラゴプラントに使用!」


 「「!!」」


 このコンボに観戦者たちもざわめく、毒液のカード効果は攻撃時に装備効果がある敵カードの効果を無効、先程に使った魔術スペルカード“みんなにバレちゃうよ!”で消しきれなかった効果も消す事に成功した。


「更に“都市開発の着手”を使用! フィールド魔術スペルカード“メロディ坂小学校”のバフ効果を無効!」


「まだ来るのか…!」


「そして手札から魔術スペルカード“ヴィラゴの成長”を使用!」


 灰川が次々とカードを展開していき、フィールドには攻撃力がどんどん高くなっていくヴィラゴプラントが育っていく。


「この流れはっ…まさか劇場版プリコーダーズ!?」


「映画でフラワー王国の女王が邪気に操られた時の再現か!?」


 見る人が見れば分かるという感じの戦略で、灰川は映画でナナと富良乃が苦戦して敗北を喫した植物属性カードを組んでいた。ヴィラゴプラントや、そのサポートカードはプリコーダーズに対して力を発揮する効果が多いのだ。


 そこから更に“植物の分裂”“種子の拡散”といった効果やカードを使い、結果として地上前衛、後衛攻撃力2500の6体の分裂モンスター、空戦闘フィールドには空攻撃力2000のフライプラントが3体出せた。


「おおっ! ここで攻撃が通れば勝てるぞ! 生命ポイントは余裕で削れる!」


「俺が見た感じだとサイーチの奴は防御できねぇぞ! やっちまえ!灰川の!」


「ごほっ…ごほっ…! 慎重に行きたい気持ちもあるでしょうが…攻め時です…!」


 灰川としても時間があまり無いのが分かる、ここが勝利を掴むチャンスだ。そのために様々な効果を発動してお膳立てしてきた。


「総攻撃を掛ける! ヴィラゴプラント軍団! プリコーダーズとアドバンスド・プリコーダーズにアタック!」


「お、おのれっ…! なにか使えるカードか効果はっ…!」


 灰川の操るモンスター軍団が才知のプリコーダーズ達に攻撃を掛ける、これを捌かれたら勝ち目は薄くなるだろう。




「本当にこんな所に居るのー?」


「なんだか人がいっぱい居ますね、どうしたんでしょうか?」


「……! なんか…嫌な匂いするわっ…!」


「あ、灰川さん居たっす! えっ!向かいに居る人、呪われて…」


 収録を終えたVtuber組がヘリポートに案内されてやってきた、そこには結構な人数が居て何かを見守ってる。


 霊能力がある由奈と来苑は尋常ならざる悪い何かを感じ取る。


「え…? なんだろう…? プリコーダーズがそこに居るみたいに見える、幻覚なのかな?」


「空羽先輩、私にも見えますが…灰川さんの方には気持ち悪いモンスターが居るような…」


 彼女たちが来たタイミングは、灰川が総攻撃を掛けようとしてる場面であった。


 市乃たちにも灰川の集中力で増幅された霊能力の影響を受けて、バトルで繰り広げられてるカードたちの映像が脳内で勝手に再生されていた。


「陣形は破壊させてもらったぞ! 総崩れになった所を叩く! 倒れろプリコーダーズ!」


「く、くそぉぉ! 」


 トドメを刺しに灰川の陣営からヴィラゴプラントたちが敵陣に殺到し、守り切る力を失ったプリコーダーズ達を倒すのだが、その際に観戦者達に見えたイメージ映像がアレだった。


 「「うわぁ…」」


 魔法少女たちが植物モンスターの触手に捕らえられてダメージを受ける様子は、なんかこう……非常にマニアックな光景だった。


 映画でもプリコーダーズは植物モンスターと戦ったが、少なくとも魔法装備が粘液で溶かされるような事は無かった。


 今はしっかり溶かされてるが、謎の光と都合の良い溶かされ方によって危ない部分は見えてない。


 ダメージはしっかり加算され、フィールドには魔法少女6名が変身解除となって、通常カードイラストのランドセル装備になって倒れたのだった。




 才知の生命ポイントが0になる、しかしジャッジが下るまではゲーム終了ではない。何らかの効果によってギリギリセーフになる可能性はあるのだ。


「生命ポイント喪失、及び規定タイム内に復活効果の使用がなかったためゲームセット! 勝者、プレイヤー灰川っ!」


「うおおおっっ! 灰川さんが勝った!」


「やったぞ! あれ? プリコーダーズもモンスターも消えた?」


「無理って思ったけど勝った! やったぜ!」


 ジャッジによって灰川の勝利が宣言され、お祓いの全ての段階を踏んで勝ったため呪いの効果も消え去る。これで才知が危険に晒される事もなくなった。


 悪い気配が消えた事は観戦者も気付き、和藤親子も呪いが消えた事を確信して安心の表情を浮かべてる。


「ごほっ…不思議な事もあるんですね、カードのイメージ映像が皆に見えるなんて…」


「プリコーダーズがアニメじゃ見せられない感じになってたな! 誰かに言っても信じてくれねぇだろうな~」


「ちょっと帰ったらプリコダのイラスト検索してみよっかな…変な癖に目覚めちゃったかもしれねぇ」


 観戦者たちも灰川の勝利に安堵したり、不思議な現象に驚いたりと反応は様々だ。中には灰川に駆け寄って勝利の労いをしてくれる人達も居た。


 いつの間にか観戦者の中にはテレビ局関係者も来てて、勝負の行く末を見てたのだった。


「灰川さん、ありがとうございました。これで終わったんですよね?」


「はい、呪いは完全に消えました。時間も過ぎたようだし、これで安心です」


 権典神社の何かによって掛けられた呪いはしっかりと消えて、紫鏡の都市伝説に類似した現象も消え去った。


「ありがとう灰川さん! 変な気配が消えたよ!もう大丈夫だと思う!」


「才知君、どうにか勝てて良かった。やっぱ世界ランカーは強いわな」


「灰川さんこそ効果の使い所とか凄い良かったよ! 途中からバトルに集中し過ぎてプリコーダーズが見えたような気がしたし!」


「ははっ、俺もバトルの映像みたいなの見えたぞ、面白かった」


 才知も灰川に手厚く礼を言い、これにてお祓いは完全終了だ。


 OBTテレビ取締役の3人も灰川や才知の一直線な精神に当てられて、これまでの事を反省したが、それがこれからの人生に活かされるかは分からない。


「ところで深谷会長、和藤社長、三河田専務、ちょっとばかり相談があるんですが」


「はい、富川から聞きました。皆さんの安全の件ですね」


「既に部下に手配させました、2社の所属者の方達には通常とは違う入構証を発行します、それでどうでしょうか?」


 なんと既に富川Pから話が伝わってたらしく、2社の所属者には普通とは違う紫の入構証が与えられる事になっていた。


 実は以前にも特別扱いをしなければならない芸能人が居たらしく、そういう人に渡される入構証として紫の入構証が存在してたらしい。


 現在は紫入構証が渡されてる人は居ないようだが、2社の所属者には特別扱いを暗に示す物が渡される。


 入構証には職種や所属によって様々な色があるらしいのだが、紫だけは例外の色として暗黙の噂が昔からあるとの事だ。


「もし不埒な真似をするような輩が居たら、OBTテレビや関連企業の敷居は踏ませません。他局にも情報を回して業界から干します」


「この情報は既に回してますよ、次の収録には裏で周知されてるでしょう」


 テレビ局が業界に持つ権力は強く、もし勘違い野郎が近づいて来てもコレさえあれば追い払えると言う。それでも間に合わなかったら取締役たちの個人的な人脈も使って対処すると確約してくれた。


「もしそれでも何かあったなら、四楓院の方が黙ってはないでしょう。そうなったらインターネットでの活躍すら出来なくさせられるでしょうね」


「な、なるほど、ありがとうございます!」


 動画サイトのアカウント凍結などもその気になれば出来ると聞き及び、そこからちゃんと安心する事が出来た。これで皆の業界内での安全は保障されたも同然だ。


「あとついでにゴシップ狙い連中にも釘を刺しときましょう、アイツらには本当に業界人は困らせられてばかりですからね」


「会長、インフルエンサー気取りの奴らにも注意が必要ですよ、最近は裏取りもしてないガセ情報を嬉々として動画にしますから」


「私としては2社を局で推してネットと業界の害虫が寄らないようにするのも手だと思いますが、局のアニメや特番仕事、他にもイベントに呼ぶなど~~……」


 どうやら取締役たちは自分たちも色々やって来たが、ヤバい連中に困らされて来た経歴も一般人とは回数もレベルも段違いらしい。


 その恨み節が籠ったかのように支援してくれる事を約束してくれた。


 しかも、もしかしたら大きな仕事も2社に舞い込む可能性も出て来た、アニメの仕事やイベント仕事、どれもやりたい人は出て来るだろう。




 その後は解散となり、和藤はお祓いの報酬を払うと言ったので8000円を受け取った。安さに驚いたようだったが、これはお近づきの印だという事にした。


 ヘリポートから観戦者たちも引き上げ、その時に灰川は1人づつ礼を言う。珍しいものが見れたとか、今度は水着プリコーダーズのカードでバトルして欲しいとか言われて、笑顔と共に一件は終わった。


「おう皆、収録終わったのか、ちょっと仕事が長引いてなぁ」


 日も暮れて人が少なくなった局内の休憩スペースで皆と合流したが、何か皆が灰川を見る目が変だ。


「灰川さん、屋上でプリコーダーズが服を溶かされてたように見えたんだけど、あれって何なのかな?」


「え…? 空羽、あれ見てたの…?」


「私たち全員で見たよー、不思議な体験だったね」


「灰川さんがどのようなご趣味を持っていらしても、私は構いませんから。今度ご一緒にプリコーダーズのアニメを見ましょう!」


「お、おいおい! ありゃ違うんだって! 霊能力で~~……!」


「灰川君、ありゃイカンよ。もう少し時と場合は弁えてくれたまえ……」


 実は皆は事前に由奈と来苑から、あれはお祓いだろうと説明されてたらしく、灰川をからかうためにこんな事を言ったそうだ。


 傍から見れば人気アニメの女の子キャラをモンスターで襲ってたようにしか見えない場面、割と見られたくない構図である。


「仕方なかったとはいえ変な事やっちまったー! ヴィラゴプラントじゃなくてヴィラゴメテオラでデッキ組めば良かった、チクショー!」


「でもヴィラゴ系はドラゴンデッキ相手だったら何も出来なくて負けるっすよ! 灰川さんWBLやってたんですね!」


「れもん先輩も前に配信でネットWBLやってたわねっ! 私もリザードウルフのデッキを組んでやったわ!」


 そんなやり取りをして皆で収録が上手く行った事を喜びつつ、社長達には2社の所属者の扱いに気を付けて貰う交渉は富川Pの協力あって上手く行った事も話した。


 市乃たちにも局内で危険に晒される可能性は非常に低い事を説明し、その日は疲れもあるから足早に帰る事にしたのだった。




 TCGは今も世界中で人気のコンテンツ、沼にハマれば際限なく時間が融けるという魔法が掛けられたカードなのだ。


 由奈は学校で友達が熱中しており、来苑は今もネットバトルを楽しみ、才知は成人した世界ランカー、今では老人ですらプレイしてる人が居る。


 日常の楽しみがある事は素晴らしいことだ、美容に夢中な人も居るし、カードに夢中な人も居る。何かへの熱中は認知症の予防やストレス性の鬱病防止にも効果があるかもしれない。


 そんな多種多様なTCGを使ったお祓い、そんな物ももしかしたら灰川以外に真面目に道を見出す霊能者が出て来るかもしれない。そしたらTCGに滅茶苦茶に詳しい霊能者が出てくるかも。


 何が起こるか、何が流行るか分からないのは今も昔も同じ、何にどんな効果が潜んでるか分からないのも昔から同じなのだ。

まだ体の調子が戻り切りません……

他サイトでは使える文字が小説家になろうでは使えないというトラブルが結構あります、2月22日22時22分に投稿したかった~!

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― 新着の感想 ―
風邪はこじらせると長いのでご自愛ください。
風邪だと思ったら心不全だったってのがあったので早めに病院で見て貰うと良いと思いますよ。 足のむくみで発覚しましたけど、それまではただ体の調子が悪いだけと思ってましたし
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