190話 番外短編のまとめ(新作も入ってます)
今回に掲載する話は別サイトで公開してる短編のまとめです。
後半の2つは新作です。
灰川と飲み物
「よし! 酒飲むかぁ!」
自宅のボロアパートで灰川は思い立ったように宣言する、明日は休みだから酔っても問題ない。
「ビールが良いかなぁ、ワインも良いなぁ! 高いの買う余裕は無いけどな!」
近くのコンビニに行って適当に酒とつまみを買って戻ろうとしたとき、レジに横に置いてあった新商品の『ブロッコリージュース』『ピーチレモンサイダー』が置いてあった。
どっちか買ってみようと一瞬だけ迷ったが、普通に考えてピーチレモンだろう。
ブロッコリー買う奴いるのか?ウケ狙いの配信者しか買わんだろと灰川は思うが、そこでブロッコリーを選ばないから配信に誰も来ない事に気付けないのが3流たる理由だ。
「よっし、飲むかぁ! 誰かの配信でも見ながら優雅に飲むぜ! まずはピーチサイダーから飲もうかね」
配信を付けて探すと、ちょうど三ツ橋エリスが配信をしてたので見てみた。
『さっきブロッコリージュースっていうの買ったんだよー、最初は配信でウケ狙いのネタにしよって思ってたんだけど、すっごく美味しくてさ!』
コメント:マジ?
コメント:コンビニで見たけど買ってない
コメント:エリスちゃんが飲んだなら俺も挑戦してみっかな
『オススメだよ! 爽やかでスッキリした炭酸ジュースって感じだった! どの辺がブロッコリーなのか分かんなかったけどねー』
「そんなワケあるかよ、アイツ味覚が変なんじゃねーのか? 今度検査受けるように言っとくかなぁ」
ブロッコリージュースが美味しい訳が無いと思いつつ、人気Vtuberは商品を貶したら案件依頼が来なくなる可能性があるから下手なこと言えないんだろうと思ってピーチレモンサイダーを口に運んだ。
その瞬間に口の中に凝縮した森みたいな苦みと野菜臭さが広がった。
「ぶーーっっ!! マッズ!! なんだこれ!? え? ピーチとレモンとサイダー何処に行った!!?」
あまりの衝撃に噴き出してスマホに掛かってしまう、急いで拭いてたらネットニュースが流れてきた。
速報!!
某社の清涼飲料水の内容間違いが発生!
ピーチレモンサイダーとブロッコリージュースの中身が入れ替わっており、消費者庁から回収命令が~~……
「チクショー!! こんなのばっかりだ! 口の中が苦い!」
『私が飲んだやつ、中身はピーチレモンサイダーだったみたいだ! これスゴイ美味しいから皆も飲んでみてねー! ジャパンドリンクの製品だよっ!』
「おのれジャパンドリンクぅぅーー! 俺をどこまで苦しめれば気が済むんだー!」
結局は泣き寝入りするしか無く、ヤケ酒を飲んで寝たのだった。
市乃とホラー映画
三ツ橋エリスこと神坂市乃は人気のVtuberだ。
今日も色んな情報やサブカルチャーを漁って、配信で面白い話とかのネタにしようとマンションの自室で考えてる際中だ。
「今日はホラー映画の“暗い森のチェーンソー男”っていう映画みよっかな。たまにはこういうのも良さそうだよねー」
一人で部屋の中でサブスクのチャンネルから映画を再生する、サムネイルは人間の手から血が滴る画像で、スリラー系のホラーだと予想できた。
映画が始まり、画面の中でチェーンソーを持った男が腰を上げ、暗い森の中へ歩いていく。
この男がキラーなのか、どんな緊張感やスリルのある内容なのか、そんな事を考えながら市乃は唾を飲み込みながら画面を見てる。
『…………』
ギュイィーーンッ!!
男が森の中で木を切り倒す、黙って淡々と作業する姿は不気味に思えるような感じがしてるが、特にこれといってストーリーが進展しない。
『ふぅ……』
「いや、一息ついてないで! まだ何も起こらないの!?」
何も起きないし何も始まらない、そう思ってた時だった!遂に変化が起きた!
『痛っった! うわ~、木の破片で腕にケガしちゃったよ…血も出てるし』
「…………」
サムネイルパッケージと同じように男の腕から血が出てる!そこまで見て市乃は動画を停止して映画の一覧画面に戻る。評価を見ると星1、何の映像なのかよく分からない!
「サムネに騙されたー! 全然ダメ映画じゃん!」
パッケージだけは立派なタイプのZ級映画だった、この手の映画は特殊な感性が無いと楽しめないタイプの映画で、内容は詐欺同然の物が多々ある。
「暗い森のチェーンソー男ってなに!? 森なんて大体は暗いじゃん! チェーンソー持ってる男の人だったらチェーンソー男を名乗れるけどさ!」
文句しか出て来ないダメ映画、でもそんな映画を愛する人たちも確かに居るから世の中は面白い。
「あーもう、時間の無駄だったよ! 明日、灰川さんのことからかってウサ晴らししよっと! もう寝る!」
ダメ映画に見事に騙された市乃は若干怒りながら寝て、次の日に灰川に。
「灰川さん、暗い森のチェーンソー男って映画、凄い面白いよー」
と嘘を教えてからかおうとしたら。
「その映画、続編が5まで出てるぞ」
「ええっ!? ウソっ!こんな映画が!?」
「ウソだよー! 騙されてやんのー!がははっ!」
逆にからかわれてしまい、いつものように「ムカつく!」と言って終わったのだった。
史菜とメンズ雑誌?
「今日は年上の男の人が、どんな物をもらったら嬉しいのかリサーチしますっ」
白百合史菜は最近、ちょっと気になる年上の男性が出来た。
でも今まで異性と話す機会も少なく、中学校時代は片手で数えるくらいしか男子と話せず、今は女子高に通ってるから男性と話す機会は相変わらず少ない。
だから雑誌で男性が何をもらったら嬉しいのか調べ、気になる人にプレゼントしようと考えたのだ。
「灰川さんはどのような物がお好きなんでしょうか、この雑誌によると~~……」
史菜が買ってきた雑誌の表紙には『男が欲しいと思ってるもの3選!』という文字が書かれてあり、人気の芸能人が表紙モデルとして映ってる普通の雑誌だ。
「えっと、まず男性が欲しいと思ってるもの3位は清潔感で、2位は積極性ですね、ふむふむ……え?」
まさかの欲しいもの違いだ!物質的な欲しい物じゃなく、メンタリティ的に欲しい性質の記事だった!
「清潔感は女性に好かれるために大切…灰川さんは清潔ですし問題ないです! 積極性はあったり無かったりですが、そこも良い所だと思います!何でもかんでも積極だったら良いとも思えませんし」
そして堂々の第1位の欄には『恥ずかしい表紙の本でも本屋で迷わず買える勇気』なんて書いてあった。なんですか!この記事は!?
しかし1位の欄には凄く詳しく色々と書いてあり、そういった本は見つけた時に買わないと後から品切れになってたり、もう売ってなかったりするから即座に買わないと長く後悔することになるとか書いてある。
以前はこういう事柄には不快な気持ちを抱いてたが、今は気になる人が出来てそこまで不快な気持ちにはならないくらいには史菜も成長してる。
「読んで損しました…マフラーとかサングラスとかの物が書いてあると思ってたのですが、まさか欲しい精神性のことが書いてあるなんて…」
しかも1位の精神性の意味が分かりません!そこは単に『勇気』じゃダメだったんですか!?なんて思ったりする。
実はこの雑誌は男向けのライトなコミカル雑誌で、男の笑いを誘いつつ楽しませる目的で作られてる雑誌なのだ。少なくとも高校生の女の子に向けて作られた雑誌じゃない。
「あっ、そういえばさっきインターネットで見かけて買おうかどうか迷ってた本がありました! この変な記事のおかげで思い出しちゃいました!」
見つけた時に買わないと後悔するという言葉で思い出し、スマホを使って注文する事にした。この本は電子書籍になってないから、買おうかどうか迷ってたのだ。
しょーもない記事や情報でも役に立つことはあるもので、今回がその典型例だろう。
「世界のぬいぐるみ全集と、年上の男性が女の子にされて喜ぶこと特集の本、どっちも買っちゃいました!届くのが楽しみですっ」
こうして史菜は色々と情報を集めて配信活動に活かしつつ、今まであまり興味が無かった異性への様々なアプローチを学んでいくのだった。
佳那美とSFアニメ
「機動勇士シュテルン面白かった! 次はアニメに詳しくなるために、お勉強しなきゃ」
佳那美は配信で話題の種にするために、有名なロボットアニメを見た。内容は少し難しくて全部は理解出来なかったが、小学生でも楽しめる作りの作品で十分に楽しめた。
しかしこのアニメはファンが多く、ニワカは叩かれたりするから配信で話題にする時は作中の用語とかを勉強しなさいと、マネージャーの木島に教えられてる。
「詳しくなんないと視聴者さんから嫌われちゃうから、しっかり調べなくちゃだよね!」
作中の用語や情報について調べるが、佳那美は小学4年生の子供であり、作品内の政治的な話とかは情報サイトを見ても興味が強く引かれず、覚える内容は自分が興味を持った情報に偏って行った。
【機動勇士】アニメ面白かった!雑談配信!【シュテルン】
ルルエルちゃん 同時視聴者800人
「アニメすっごい面白かったよ! モビルアウタースーツがすっごいカッコイイんだよ!」
コメント:おお、見たんだ!
コメント:MAS格好良いよね
コメント:話も面白いし、ファンも多いよ
佳那美はルルエルちゃんとしてVtuber配信でアニメの話題を語って、視聴者に感想や見た時の反応を伝えて楽しませていく。
同時視聴配信なんかも考えたのだが、話数が多い上に今更感があり、他の配信者と内容が被るので普通に見て語った方が良いと言われたから今の形式にしてる。
コメント:ルルエルちゃんは何が好きになった?
ここでそんなコメントが目に付いて、そこから話を広げていく。
この場合は『どのロボットが好き?』みたいなニュアンスなのだが、少し情報量が足りないコメントだ。
「ルルエルは近接兵装内臓防盾システム・ドラインシールドクローが好きだよ!」
コメント:ん?
コメント:なんだっけそれ?
コメント:敵機の武器付きのシールド?
「他にも28mm口径多目的防御機関砲・胸部バルカンファランクスも好き! かっこいいもん!」
コメント:ちょっと待って、好きなMASじゃないの?
コメント:好きな武装!?
コメント:詳しいなルルエルちゃん
佳那美はネットでアニメの事を調べてたらロボットの武器の設定や内容に興味を持ってしまい、そっちに詳しくなってしまったのだ!
そういう人も居るしオタク知識が色々ある人なら詳しい人も居るだろうが、最初から興味を持つ人は少ないと思う。視聴者も若干困惑気味だ。
「あと82mm3連収束重粒子砲・ユーディスゲールと、武装格納推進バックパックのことランドセルって言うのも好きなの! ルルエルもランドセルあんな風にしたいかもっ!」
コメント:マニアックだなwww
コメント:ビームライフルは名前少ないんだよね
コメント:ランドセルに推進剤は入れんなwww
身に付けた知識で笑いを取り、少しづつアニメファンの視聴者も増えてきた。
しかし最後の発言が実年齢を想起させる言葉だったので、運営から即座に配信終了の連絡が来てしまい、今日はマニアックなアニメ知識を語っただけで終わってしまったのだった。
「あー! もっと話したかったのになー、運営さんのバカー」
「佳那美ー! 配信終わったんだから、もう寝なさーい!」
「はーい!」
こうしてトラブルはあったものの、今日の配信も終了して佳那美はベッドに入ってスヤスヤ眠ったのだった。
明日も配信ガンバるよ!
灰川と薔薇咲ロズ
「あぁ~、宝くじ当たんねぇかな~、買ってないけど」
「なんだか景気が悪そうな声が出てますよ、どうしたんですか灰川さん、こんな所で?」
「あれ、薔薇咲さん? お久しぶりですね」
灰川が仕事の用でシャイニングゲートに来て休憩所で休んでると、独り言が漏れてたようで正規シャイニングゲートVtuberの薔薇咲ロズが話し掛けてきた。
薔薇咲は成人女性Vtuberでスポーツに詳しく、スポーツ同時観戦配信などでは業界で1位2位を争う盛り上がりを見せる。胸が割と大きいのが灰川にとって目の保養になる感じの人だ。
「前は弟がお世話になりました、卓哉も灰川さんに凄く感謝してます」
「そういえば卓哉君の試合はどうなったんですか? 大事な試合だって言ってた気がしますけど」
薔薇咲の弟の卓哉はプロサッカー選手を本気で目指す高校生で、プロ加入に近付ける大事な試合の前にスランプになり、姉の伝手で灰川に頼ってスポーツ陽呪術でスランプから脱却した。
しかし試合に勝つか負けるかは別問題、調子が良くなったからって勝てるとは限らないのがスポーツである。
「卓哉のチームが勝ちました、凄かったんですよ! フォワードの卓哉がサイドに構えて敵チームのディフェンスを3人抜きして~…!」
「そうなんですか、良かった良かった」
「しかも前よりフィールド把握が上手くなってて、パス回しも判断力も一気に上がってます! それにフェイントが~…!!」
「そ、そうなんですか……そりゃ良かった、ははは…」
かなり熱く語る薔薇咲に灰川は引き気味だ、昔に親戚からスポーツ陽呪術を習う際にサッカーについても教えられたのだが、そっちはあまり覚えてないのだ。
灰川はあまりスポーツが好きではなく、率先してやろうとは思わない性質だ。体育会系の人に酷い目に遭わされた経験があるし、彼ら特有のノリに着いて行けない。
「卓哉はプロになれるかどうかは今から次第です。また灰川さんの呪いパワーをお借りしたいと思ってるんですが、良いですよね!? お金なら私が払いますから!」
「良いですけど、でも時間がなぁ…それに一応ですけど、卓哉君は身内の灰島勝機のライバルチームですし…」
「ああっ!そうでした! 灰川さんって灰島選手の親戚でした! 良いな~、現役高校生プロ選手で」
灰川の親戚の勝機は高校2年生でプロ入りしてる現役高校生プロサッカー選手で、薔薇咲ロズの弟のライバルチーム所属なのである。
その勝機の身内が敵チームメイトと仲が良いというのは都合が悪そうな気もするし、仕事の都合とかもあるから正直あまり与したくはない。
「そこは大丈夫です! スポーツ選手の身内がスポーツ関係者なんて例はありますし、なんなら兄弟で別のチーム入ってるプロ兄弟とかも居ますから!」
「そ、そうなんですか…考えときます…」
「あと卓哉の所属してる東京マルビウスFCで、灰川さんの呪いパワーを体験してみたいって人がプロ選手にも居るそうです! それとサッカー以外のスポーツ関係者にも少し話が広がってるようで~~……!」
「呪いパワーって何か聞こえが悪いっすね…どうでも良いっすけど」
どうやら卓哉は灰川が思ってたより深刻かつ重大なスランプだったらしく、それを一瞬で治した灰川のパワーを頼りたいという人が出てきたようなのだ。
しかも他の競技やチームの関係者にも少し伝わってるらしく、そんなに名前は広がってないものの興味がある人がチラホラ出てるらしい。
「それと私の彼氏のU-MARKも興味あるってっ…うわぁっっ!! いらんこと言っちゃった!今の忘れて下さい!」
「薔薇咲さん彼氏いるんすか…しかも誠実系スポーツマンで売ってる配信者のU-MARKなんすね…」
「忘れてくださいって! ホントお願いします! 灰川さんがハピレかシャイゲの子に手を出しても私は味方しますから!! 本当に!」
「分かってますよ、聞かんかった事にしますって。ここだけの絶対の秘密って事で」
「ありがとうございます! 灰川さんがナツハちゃんとかれもんちゃん達と裏で何やっても、私は味方ですから!」
「やりませんて!」
何やら配信界隈の裏側が見えた気がするが、誰にも聞かれてなかったようなので安心だ。そのまま灰川はシャイニングゲートを後にして、薔薇咲ロズとは別れたのだった。
シャイニングゲートにもハッピーリレーにも、実は交際相手が居るという所属者は居る。視聴者に公言してる人も居れば黙ってる人も居て、そこはもう割り切って活動してもらうしかない。所詮は自己責任だ。
ちなみにハッピーリレーのボルボルは裏で付き合ってた彼女にフラれた事があるらしく、枝豆ボンバーは「枝豆農家の女性だったら誰とでも結婚します!」と視聴者にも公言してる。やっぱり人それぞれに事情や秘密はある物らしい。
自分も相談された人も、そういう秘密はしっかり守ろう。
北川ミナミのアニメ同時視聴配信
「こんにちは皆さん、今日は私が出演したアニメ作品“異世界ゴッド勇者・仮面の最強伝説”の同時視聴配信です♪」
コメント:放映楽しみだった!
コメント:ミナミちゃんの演技楽しみ
コメント:原作知らないけどミナミちゃん出るから見る
コメント:ミナミちゃん出るの1話だけか、残念
「私の出番は1話だけなのですが、面白いとネットで評判です。私も読ませて頂きました」
コメント:ミナミちゃん読んだなら俺も読もうかな
コメント:結構長いな、200万文字超えてるじゃん
コメント:書籍はネットと内容違うっぽいね
この作品はいわゆる異世界モノで、転生した主人公がチートで世界を救って神と崇められるみたいな、まさしく異世界チート作品である。
しかし魔王を倒して世界を救った後が問題だった、主人公は常に仮面を付けて戦闘から生活までを送っており素顔は誰も知らない。世界を救った時も仲間とかはおらず、やはり誰も顔を知らない。
魔王を倒したからと言ってモンスターは現れるし盗賊なんかも居て、世界は平和にはなってなかった。そこで主人公は人々の助けになるために冒険者をするのだが、仮面の下は超美形だとか大国のイケメン王子が正体だとかの噂が広がってしまう。
だが仮面の下は微妙に不格好な普通の男性であり、イケメンではない。しかし噂は取り返しの付かない所まで広まっており、あの手この手で素顔を見ようとしてくる女性たちから逃げ回るというギャグ作品だ。
「私は主人公のディアスに助けられる町娘のアマンダ役で、ディアスに町の案内とかをしつつ視聴者さんに世界観の説明などをする役でした。初めてだったので凄く緊張しましたよ」
コメント:OP良い感じじゃん
コメント:ミナミちゃんのキャラはOP出てないか
コメント:絵は良いけどあんまりアニメが動かないな
コメント:原作知ってるけど、ネットと書籍と漫画で全部展開が違うよ
「あっ、出ましたよ! 私が声を当てさせて頂いたアマンダちゃんです! えっ…?」
コメント:おいおい…
コメント:マジか…
コメント:…………
コメント:キャストミスじゃないよね?
画面に映ってるのは異世界という事を感じさせる町娘……ではなく、金髪でちょっと強気っぽいルックス、三ツ橋エリスに酷似したキャラがミナミの声で喋ってた。これにはもちろん理由がある。
ミナミがスタジオでアフレコした時にはアニメは動いておらず、簡易的な絵コンテを写して声当てした。
キャラ設定や原画イラストなども見たし問題は無かったが、実は後になって問題が発生していた。同期に放映してる別アニメのヒロインと、ミナミが声を当てたキャラのデザインが被るからという問題が浮き出たのだ。
急遽にキャラデザ変更の打診を受けた時に「もう時間が無いので…申し訳ないんですが、ミナミちゃんの2Dモデルに寄せちゃって良いですか…?」と聞かれ、ハッピーリレーもミナミも了承してアニメーションの差し替えが決定。
しかしスタッフの手違いで北川ミナミではなく三ツ橋エリスのイラストが渡され、それに沿ってデザインされてアニメが作られてしまったのだ。
その後は忙しくて人手も足りないアニメ制作の現場、報告や連絡も少なく、監督なども他のアニメの監督も兼任してるため確認が遅れ~~……その他もろもろの原因が重なって今に至ってる。
北川ミナミの声で喋る三ツ橋エリスに似た町娘、本人やファンからしたら割とシャレにならない事態だが。
「エリスちゃんに似てますっ! すごく面白い演出ですっ、あははははっ!」
コメント:確かに面白いかも!
コメント:こういうのもアリなのか!
コメント:アニメスタッフ面白いこと考えるな
コメント:間違いって訳じゃないよな?まさかな
「あははっ、はぁはぁ、すっごく笑っちゃいましたっ! エリスちゃんもSNSで笑ってるって書いてますっ」
ミナミが出演したアニメは低予算作品な上にスタッフも充分な数は当てられず、このようなミスとなった。
ネットで100万や80万の登録者が居ようと、Vtuberに興味がない人は名前も知らない。そういう人がデザインに関わってたようである。
「一緒に収録したREYさんと鹿野さんもSNSに投稿されてますね、ミナミちゃんじゃなくてエリスちゃんじゃん!って、あははっ」
コメント:楽しそうで何より
コメント:注目度低かったけどトレンド入りしてる!
コメント:作者も笑ってるよ!
コメント:話も割と面白かった、2話も見る
こうして変な間違いや行き違いからあまり発生しない事態になり、アニメもそこそこに話題になって1話が終了したのだった。
その翌日にアニメ会社と監督からハッピーリレーに凄い勢いで謝罪が来たが、電話応対をした窓口スタッフが「2人ともアニメも自分たちも話題に登れて良かったと言ってます」と伝えて事は収まった。
この件でアニメ制作会社からミナミとハッピーリレーの話が少し広まり、案件依頼の金額も適正で頼みやすいという話が広がるかも知れない。




