表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

173/333

173話 色々と判明!灰川と来苑

 0番スタジオとはOBTテレビに実在する心霊的な場所で、地獄顕現型空間と呼ばれる種別の場所だ。


「名前が0番スタジオとはなってますが、実際には局舎の西側の地下にある昔に使われてたスタジオ区画全体を指す名前なんです」


 その区画は地下1階から3階まであり、お台場地区の建築関係の法改正で使用できなくなった空間らしい。海にある場所だから地下の使用などは制限が多いのかもしれない。


 スタジオもあるのだが、他にも倉庫だったり楽屋だったりの各部屋があり、結構な広さの空間が今も放置されてる。


 本来なら取り壊して埋め立てるのが正しいのだろうが、スタジオとして使用してなければ法的には問題ないらしく、使わなくなった物を押し込んで閉じてしまったそうだ。

 

 しかし閉じてから数年の間は物を取りに行ったり置きに行ったりで人の出入りが少しはあったそうで、その時に幽霊が出るとか怪奇現象が発生するという噂が出始めた。 


「0番スタジオがあった場所は、元は当時の売れっ子やスターたちの収録や、当時の人気番組の撮影によく使われてた区画だったんです。本当の呼び方は西B区画です」


 バンドグループのperfection、アイドルグループのAIZAZEM、一世を風靡したお笑い番組の爆笑イッキ!、そんな誰でも耳にはした事がある名前がOBTテレビのその区画に集まってた。


「自分も聞いたことありますよ! パーフェションってヒットソングは今でも有名ですし、AIZAZEMは伝説のアイドルグループって言われてるっす!」 


「俺も流石にその辺の名前は知ってるなぁ」


 20年ほど前はOBTテレビは人気番組を続発、そこからブレイクした芸能人は今でも有名な人が多数おり、まさに黄金時代だった。


 芸人や歌手は0番スタジオこと西B区画に呼ばれる事を憧れとし、そこに呼ばれた時の感動は涙を流すほどのものだったそうだ。努力と苦労と才能が認められた証の場所、更なるステージに歩める場所だったのだ。


 もちろんデビュー半年くらいで有名になって呼ばれる人も居たそうだが、そんな人たちですら存在を知られてたそうだ。


「当時はテレビの勢いが今よりあった時代です、あんまりパっとしない芸人ですら月収総額5から600万円くらいは当たり前で、テレビでよく見る人なら月に1千万越えなんかもザラでした。月に1億以上なんて人も割と居たくらいです」


「す、すげぇ~…正に夢の世界ですね」


「月に1千万越えるのがザラっすか…凄い世界っすね…」


 竜胆れもんの月収も似たような物だろうが、実際には結構な振れ幅があり安定してるとは言い難い。それでも現状ではどんなに悪く見ても、月に500万を下回る事は無いだろうなと灰川は何となく思う。


「そんな勢いがあった時代に皆が憧れた場所、名を上げようとする人達の目的地の一つがあの区画だったんです」


 時代が変わって区画が閉鎖され、スタジオも現在の場所に移って閉鎖されて使われなくなった。


 その後から幽霊を見た、死んだはずの芸能人を見た、怪奇現象が起こると噂になり、施設の老朽化もあって10年前に鍵を掛けて完全封鎖した。


 それ以来は誰も入って無かったし、入り口を塞ぐ扉にも誰も近づかなかったが……ある時にADの人が何故か鍵が閉まって無かったのを発見し、立ち入ってしまったそうだ。


 そのADは有り得るはずの無い番組撮影を見たと言って、数日後に行方知れずになってしまった。今は発見されてるそうだが、心療内科に通院してるらしい


 西B区画は実は民間の強い霊能者が厳重に封印処置をしてたらしく、国家超常対処局もそれで安心してたそうだ。害がない上にサイトウが勤める場所だから、何かあったら報告が上がるから問題視して無かった。


「封印が厳重だったが故に何かが起こる危険もなく、根本解決は後回しになっちゃってたんです。ですが封印をしていた霊能者の方が亡くなってしまって…」   


 国家超常対処局は人員が非常に少なく、後に回せるものは容赦なく後に回す。サイトウも西B区画の除霊をしようと思って、何度も挑んだそうだが失敗続きだったそうだ。


 封印をしてた霊能者も除霊は難しいと判断したからこその封印という処置だったそうで、今では内部は『地獄顕現型空間』と呼べるくらいに心霊的なエネルギーが濁り、良くないモノが漏れ出してる状況だそうだ。


 再封印も難しいそうで、やるにしたってお祓い等で濁りを収めなければならない。


「このままだと被害が出る可能性もあります、なので灰川さんに協力してもらえればと思ってるのですが」


「………」


 灰川は黙り込む、実は少し前から霊能力を使ってサイトウを見てるが、彼が西B区画の祓いを上手くできない理由が分かった。サイトウこと富川は霊能者としてはそこそこの力しか持ってない。


 しかし地位や様々な人物への人脈、手回しの良さ、趣味なのか何なのか知らないがコンピューター知識などが豊富で、国家超常対処局に無くてはならない人材なのだろう。


 地獄顕現型空間を祓える力は間違いなく有してないし、国家超常対処局の人員的な問題で即座の解決も難しい。


「悪念が漏れ出してるのは良くないですね、今日は無理ですが後日に準備を整えて俺が入ってみます」


「ちょ! 灰川さん大丈夫っすかっ? 地獄とか封印とか、凄い単語が出てるっすよ!」


「俺は大丈夫だよ、それにシャイニングゲートとハッピーリレーの子達が局に来て被害があったら顔向け出来んしさ」


 灰川としては西B区画に入っても心霊的な影響は跳ね返せる、そこら辺は特に問題はない。


「お願いします灰川さん、西Bに入る時は私にいつでも言って下さい」


「はい、その時は言いますので」


 こうして謝罪と打ち合わせは終わり、後日に準備を整えて立ち向かう事となった。このことは西B区画の事情を知るOBTテレビ局長や、その場所の恐ろしさを知る幹部局員の知る所にもなるだろう。 


 だが灰川としては正直に言うと気が進まない案件だ。西B区画が心霊地帯になってしまった原因は、芸能界の強い念が集中した結果なのは明らかだ。しかも現在は封鎖されて濁ってしまったため、悪念ばかりになってるのは予想に難くない。


 必死に頑張ったけど成功しなかった人や、成功を掴んだと思ったらどん底に落ちた人、夢半ばで業界を去った人、事故などの不運で命を落とした人、そんな人たちの強い念が集まってる。 


 そういう場所では心霊現象は当たり前に発生する事があるし、そういう所では霊能力が無くたって幽霊が見えることも珍しくない。しかも場所的な影響で念も強くなってるから、灰川が近づいただけで霧散する事も無いと思う。


 つまり怖い目に遭う可能性が高いという事で、今までだって霊などは見てきたが、今回は少し(おもむき)の違う体験に晒されそうだ。




 OBTテレビから出てお台場の街を駅に向かって2人で歩く、まだ午後になったばかりで空も晴れ渡る良い天気だ。


 灰川と来苑はお台場にあるオープンカフェで、サンドウィッチとかハンバーガーを注文して遅めの昼食を摂る。


 今日は休日だから人はいっぱい居るが、時間帯的にカフェなどからは人が少なくなり始めていた。


「灰川さん、…その、地獄とかって本当にあるんすかね?」


「ん? どうしたんだよ」


「この前ご先祖様が成仏?っていうんですか、したじゃないっすか。どこに行ったんだろうって考えちゃって」


 幽霊が見えても来苑はそっち方面は今まで考えて来なかったようだが、先祖が成仏した場面を見て、自分が危険に晒されたのもあって気になったようだった。


「死後の世界があるかどうかは今も分かってないよ、霊能者の間でも意見が分かれるし、死後の世界は無いって言ってた人が臨死体験をして有る派に鞍替えしたって話もあるし」


 決定的な事など何も言えない、科学では解明できないし、幾人もの科学者がこの課題に挑んでは結論を得られず敗北してきた。


 発明王のエジソンが霊界通信機を作ろうとしてたのは有名な話だし、アメリカの実業家は死後の世界の証拠を示す論文に懸賞金を懸けてる。日本では超有名俳優である方が心霊研究者もしてて、死後の世界の証明に没頭してた事があるのも有名だ。


 死後の世界に限らなければ、心霊現象の研究協会の歴代の会長の中には、世界的有名大学の教授や、イギリスの首相、ノーベル賞受賞者も居たりする。


 太古の昔から人類の何万もの人がこの問題に挑んだ。ある者は生涯を懸け、ある者は人類最高の頭脳を武器に挑み、ある者は金を用いて挑んでる。


 宗教、科学、人種を問わず挑んできたが、結果は『不明』のままだ。


「そうなんすね…なんだか不安な気分になってきたっす…」


「その不安は人類すべてが持つものだぞ、俺だって不安になる時があるけど、何十分かしたら忘れるもんだ。ま、死んでからのお楽しみって奴だな」


「そうっすよねっ、考えたって答えは出ないんだし、エジソンが考えて無理だったら自分には絶対にムリっすもん!」


「その意気だって、まぁ死後の世界の研究だと必ず話題に上がるのが、詩人のダンテ・アリギエーリが書いた神曲って文学になるんだけどよ、文学作品だけど体験談や預言書として捉えてる人も多くて~~……」


「難しい話は終わりっす! ご飯食べましょう、サンドウィッチとハンバーガー美味しいっすよ!」


「おっ! マジで美味い! ピクルスが良い感じ!」  


 死後の世界を語っても考えても答えが出ないのだから意味はない、結局は生きてるんだから腹は減る。起きて半畳寝て一畳、飯を食っても2合半なのが人間だ。


 ちなみに13世紀から14世紀のイタリアの詩人、ダンテ・アリギエーリの書いた神曲という作品は、地獄編・煉獄編・天国編の3編から成り、西洋文学に大きな影響をもたらしたとされている。 


 そんなダンテ・アリギエーリさんだが、彼の関係者の末裔の家からは今も彼が書いたと思われる詩などが見つかる事があるそうで、ダンテ研究は今も終わる気配はなさそうだ。 




 お台場から渋谷方面に帰る道中に、黙ってるのも何だから来苑と何気ない会話をしながら歩く。


 片やスーツ姿の男、片や謝罪に適した落ち着いた女性向けスーツ姿の女子高生、少し妙な取り合わせだがウマが合うのか変な空気感は流れてない。


「そういや来苑は何でVになったの? 陸上が好きなら、そっちに進むのもアリだったんじゃない?」


「陸上は今でも好きですよ、でも中学に入りたての時にクラスの子から配信を教えられて、そこからVtuberにも興味持っちゃったんすよ~、えへへっ」


 来苑は小学生の時から陸上が好きで、大会で優勝したり選抜で勝ったりしてた。


 しかし小学校の高学年になるとタイムがどんどん下がって行き、小学校最後の大会では自己最低記録を出してしまった。


「自分、その時に凄い背が伸びてた時期だったんすよ、その影響で走りに必要な筋肉とかのバランスが悪くなって、前より陸上に向いてない身体になっちゃったんです」


 成長期の体の変化による身体能力の変化、これはスポーツに打ち込めば打ち込むほど体に出てしまう。


 来苑は小学校6年生の時に一気に背が伸びて、スポーツパフォーマンスに大きな影響が出てしまった。


「その時は毎日のように泣いてたっすね~、オリンピックの未来選手の強化合宿に呼ばれるかもってコーチから言われてたんすから」


「マジか…来苑ってそんな凄い奴だったんだ…」 


「見直したっすか? 本当に早かったんすよ自分っ」


 少し我慢すれば前と同じように走れるはず、まだ終わりなんかじゃない!と思ってたが。


「スポーツドクターとスポーツトレーナーから、陸上に向いた身体じゃなくなったって言われちゃいました。そこで来見野来苑ちゃんの陸上人生は終わっちゃいましたっ」


 希望すれば幅跳びや高跳び競技なども出来たのだろうが、当時の来苑は短距離走の選手を目指してた。そこに本気で全力だったため、他の競技に転向する気にはなれなかったそうだ。


 大きな挫折を味わい中学に上がり、それからは気落ちする日々が続いたそうだ。元気印の彼女が不登校になりかけた事すらあったらしく、それほどまでに陸上が好きで夢中だった。


 オリンピックで表彰台の一番上に立つはずだったのに、世界新記録を出して世界を驚かせるはずだったのに、もっと走れたはずなのに!!


 世の中は何でも思い通りに行く訳じゃない、向き不向きもあれば事情があって夢半ばで道を離れることもある。


「でもそんな時に、配信を友達に勧められて見たら、凄い元気づけられて」


「へぇ~、なるほどねぇ」


 その配信者は有名ではなく、少しだけ活動して今は引退してしまった人らしくアカウントも残ってない。


 しかし来苑の人生を大きく変えた出来事であり、今でも感謝してるそうだ。


 そこから自分も配信をしてみたいと強く思うようになり、Vtuberという顔出しナシの配信形態を知り、持ち前の『夢中になった物事に一直線』という性格からシャイニングゲートに入って今に至ってる。


「ギガンティック・ハイさんっていう配信者さんなんですけど、知らないっすよね? 登録者さん少なかったっすから」


「え……?」


「辛い事があったってコメントしたら、頑張ったならそれでいい、心が落ち着くまで配信でも見て休んでいきなって言われて、涙が止まんなくなっちゃったんすよっ、えへへっ」


「……………」


 灰川はその名前に心当たりがあった、むしろあり過ぎた。


 灰川誠二は灰川メビウスとして配信を始めて数か月が経つが、実はその前にも大学生の頃から散発的に別の名前で配信をしてた事があった。


 ゼリーマンJr、煩悩没頭マン、それらのアカウント名で配信の真似事を少ししては止めるみたいなことをしてた。そして……。 


「あ…あの…、もしかして……ショートレモンさん…?」


「え??? なんで自分の昔のアカ名の一個を知って……」


 灰川が過去に使ってたアカウント名の一つにギガンティック・ハイという名前があり、その時に来た視聴者コメントで酷く落ち込んでた人が来て慰めた事があった。


 当時も配信者は結構な数が居たが、当時の灰川がやってた配信内容は『愚痴・お悩み相談受付中!』という、配信者が視聴者の悩みや辛かった事を聞いて慰めるという、以前に少し流行ったものだったのだ。


 しかし有名な配信者のコメントはすぐに流れてしまうから個別メールで対応という形で、人気配信だと視聴者も多いから愚痴なども言いづらく、すぐに廃れてしまったコンテンツだった。


 視聴者が少ない配信や、当時から配信に誰も来なかった灰川の配信には、あまり人に言いたくない事柄の相談なんかも来たりしてた。その時に来た人の事も覚えてる。


 驚きの余り口をついて言葉が出てしまった事を少し後悔するが、覆水盆に返らず、もう逃げる事は許されない雰囲気が二人の間に漂っていた。


「あ…えっと、ギガンティック・ハイです…。お、俺でした~…なんちゃって、ははは…」 


「え…? えっ……??」


 どうしたら良いか分からない、まさかこんな事があるとは思わなかった。


 ネットだろうがリアルだろうが、行動というのは何処の誰にどんな影響を与えてるか分からない。


 定食屋で同僚とした会話が隣の人に聞こえて人生に影響を与えてるかもしれない、何気ないネット掲示板への書き込みが誰かの勇気を後押ししてるかもしれない。


「………」 


「…………」


 口を滑らせる人の気持ちが今なら灰川にも分かる、まさに口をついて出てしまうのだ。それは気を付けていても起る事があるし、言って良い事と言ってはいけない事の判断が付かない時だって人にはある。


 最近は関わる人が口を滑らせてばっかりだ。竜胆れもんが口を滑らせ炎上しかけ、富川プロデューサーが口を滑らせた。それが灰川にも移ってしまったのだろうか。


 歩きを止めながら灰川と来苑の間に沈黙が流れる。知り合いと言えるような仲ではなかったが、ネットでは知ってる相手だった。そんな時に何を言えば良いのか分からない。


「あ~…えっと、最初のアカ名は~…」


「わ、わ~~!! さ、最初のアカ名は言わなくて良いっす! ナニコレ!めっちゃ恥ずかしい! 最初のアカ名は覚えてないっすよねっ!? 忘れたって言って下さいっす!!」


「お、おうっ、忘れた忘れた! お、落ち着きなって!」 

 

 来苑は顔を真っ赤にしながら混乱し、灰川を見る目が一瞬にして変わってしまった。


 来苑はギガンティック・ハイが少しして配信しなくなった時に泣いてしまい、そこからVtuberを目指したのだが、立ち直れたのはギガンティック・ハイのおかげだと強く思ってる。


「まぁ、こんな偶然ってあるんだな。霊能者同士の縁って奴かもしれんね、はははっ」


「そ、そうっすねっ! あ、あははっ」


 そこからは灰川は普通に接してたのだが、来苑は様子が変になる。ネット配信に憧れた理由の人が灰川だったというのが衝撃で、精神がちょっと混乱してる。


 当時の来苑は強く落ち込んでメンタルが最も凹んでた時期だったが、ギガンティック・ハイが配信で悩みや辛かった事を聞いてくれて、当時の来苑の心を支えて立ち直らせてくれた。


 家族ですら…いや、家族だからこそ励ましや慰めが余計に心に重かった時期を乗り越えさせてくれた。そう思って今も感謝してる人に会ってしまった。


「流石に驚いたけど、あの当時はお悩み相談配信で視聴者が来てないチャンネルは少なかったしな。今ほど配信者も多くなかったしよ」


「で、ですよね~! 自分もまさか灰川さんだったなんて思ってなかったっす」


 そんな話をしながら渋谷に帰り、灰川は偶然のリアルでの再会を喜び、来苑は何を言えば良いのか分からず半ば混乱したまま帰ったのだった。


 その後は灰川は事務所で仕事をしたり、OBTテレビ地獄顕現型空間に対処するための準備をしたりして時間が過ぎる。


 来苑は一旦シャイニングゲートに行ってテレビ局に謝罪は滞りなく終わったと報告し、その他の仕事の相談や打ち合わせもしてからタクシーで帰宅した。


 あと夕方から夜にかけて竜胆れもんの配信で昨日に言ってしまった事の説明をして、炎上回避は無事に終わったのだが、心は穏やかではない。


 灰川に対して十分に好感は持ってたが、それが急速に膨らんでパンパンになってるのが分かる。


 7人ミサキの件では助けられ、ご先祖を自分の家の術で送ってくれた。あの時にだって全く惹かれなかった訳じゃないけど、ナツハや小路が灰川を好きなのは分かってたから、あんまり気にしないようにしてた。 


 でも流石に『命の危機を助けられ、過去に心の救いになってくれた人だった』という事実の判明は、凄腕Vtuberとはいえ16歳の高校生の女の子には強すぎる刺激だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ