152話 タカコサン 2
その後は飛車原親子から納得してもらった上でしっかりと頼まれ、今はリビングで4人で準備をしてる。
灰川は一度アパートに戻って使える道具などを持ち出してきたが、家が近いから時間のロスはほとんど無い。
「この怪現象は過去に色んな霊能者が解決に当たったそうなんですが、大きな成果は出せず終わっています」
「…!! それは、大丈夫なのか…?」
「まず説明からしていきますね」
誠治の祖父の巌は昭和の時代に、同様の怪現象と思われる事態の収拾に当たったが失敗してしまった。理由は被害者に害を成す者の本体も痕跡も見つけられなかった事だ。
被害を受けたのは当時20代の女性で酷い苦しみに襲われたが、苦しんでる際中にも呪いや憑依という現象は無く、それ故に祓う事が出来なかった。
しかし命は無事に済んだし苦しみを消す事も出来たが、それにも理由がある。
「その女性は結局は灰川家が暮らしてる村に引っ越す事になり、灰川家が無償で陽呪術で怪現象を抑えて一生を終えました。田舎生活を強制させてしまったと、祖父は後悔し続けてました」
その女性は灰川の実家の村で結婚して生涯を終えたが、その事について文句を言った事は一度も無かったという。しかし心の中は誰にも分からないし、祓いに失敗して田舎に来させてしまったのは事実だ。
「そ、それじゃ失敗しても助かる道はあるという事かい!?」
「これも確実とは言えないです、由奈が鷹呼山と聞いたんだから同じだとは思いますが、今回の現象が全く同一のモノとは限りませんし、同じ術が今も効果があるか分かりません。俺の命に代えてでも必ず倒します」
灰川家には自身の命を大きな危険に晒す条件の下で使える『灰川流陽呪術:浄土の門』という術があり、これの使用もイザとなったら躊躇わない心の準備は出来ている。
しかし浄土の門を使うにしたって敵を捕捉できなければ意味がない。しかし最悪の場合の使い方も考えてあるから、由奈は無事に済ませられるだろう事を両親にも説明したが、安心させる事は出来なかった。
オカルトが過ぎる話だから、信じたくても完全には信じられないのだ。そもそも由奈が今から危険に晒されるというのも経験からの予測でしかなく、確証はないのが実情である。
「そんなのダメよ! 誠治が死ぬなんて! そうなったら私が死んだ方がマシよ!」
「いや、俺が死んだ方がマシだな。別に死にたいと思ってる訳じゃないから、こうやって準備をしてる。勝つさ、必ずな」
「なんだか灰川さんって、真面目になると雰囲気が変わりますね。凛々しくなると言うか」
由奈の母の貴子が言うが、誰だって真面目な時とそうでない時は大なり小なり雰囲気は変わる。灰川も同じだが、普段がチャランポランだから落差でイメージが強く変わって見えてるに過ぎない。
由奈を守る結界などの準備は順調に進んでおり、喋って作業しても問題ないから灰川はそのまま説明を続ける。
「海外では昔に魔女狩りという社会行為がありました、ヨーロッパが有名ですが、実際には世界中で同様の行為が発生したという歴史があります」
魔女狩りとは中世ヨーロッパの末期で発生した陰惨な歴史で、魔女とされた人たちに対して迫害や苛烈な私刑、宗教組織の関わった裁判などで有罪として場合によっては命すら奪うという行為だ。
詳細は中学生である由奈に話すような内容ではないため、かなりボカして話すが意味は伝わってると思う。少なくとも由奈には知る権利はある。
「それが何か今回の事と関係あるのかい? 由奈が魔女だとでも言う気なのかい?」
「魔女の定義は様々です、魔術を使う女性みたいなイメージがありますが、実際には霊能力を持った女性も含まれるし、男すら魔女と言われ裁かれた例も多くあります」
女ですらない男が魔女扱いされるとなると、レッテル貼られたらお終いだ。全人類が魔女という事にすらなりかねない。
こういった事が発生する社会的機序はハッキリとは判明しておらず、迫害意識の過熱、権力者の民衆支配拡大欲説、災害や戦争被害などへの怒りの捌け口説、金目当て説と大量にある。恐らくは一つの理由で語れる物じゃないんだろう。
これはシャーマニズムという心霊主義的な思想のマイナス面でもあり、オカルトを信じる者が多いとこのような事になりかねないという歴史事実である。悪しき事象を安易に目に見えないモノのせいにするのは危険だ。
灰川としてはこういう理由からも、オカルトを過剰に信じる事は良くないと考えてる。このような集団心理が働いてしまえば、怪異や心霊被害とは比べ物にならない被害が出る。最も怖いのはいつの時代も人間だ。
「それと今回のような現象は海外で魔女狩りが無くなってから出始めたそうで、その時に解決に当たったエクソシストは魔女狩りに遭った人達の呪いだと言ったそうです」
「日本と関係ないじゃないか! なぜ由奈が狙われなきゃいけないんだ!」
「この現象の被害者は何らかの霊能力を持った女性、いわゆる魔女に限定されるみたいなんです。その条件なら由奈は当てはまります。それと魔女狩り行為は実は世界中で発生してるものなんです」
それなら貴子が狙われても良さそうなものだが、後から狙うつもりだったのか、単に偶然だったのかは分からない。
魔女狩りとは言い換えれば『疑心暗鬼や権力者の都合による謂れの無い迫害』だ、それを受けた者達の呪いならば世界中にある。もちろん日本だって例外じゃない。
そして祖父が調べる内に段々と分かって来た事があった、それはこの現象の被害者が霊能力の有る女性という事と、今は無いとある地域が関わってるということだ。
日本魔女狩り村
かつて江戸時代とか戦国時代とか確かじゃないが鷹呼山という山があった。非常に小さな山だったが周囲には村落があって、それなりに人が住んでたらしい。
その村落は普通に農民が稲作や畑作をしてた村だったようだが、飢饉や疫病の災禍が及んで『誰かが邪悪な術で呪ってる!』という噂が広がった。
この時代の生活コミュニティにおける災禍への対策は、人為的な農業や防疫の工夫では限界があった。そのため神に祈る、祈祷師を呼ぶなどのオカルト手段に頼るという精神的支柱が必要だったのだ。
しかしその形態はコミュニティによって様々で、中には苛烈な物や人権を無視した方法もある。その一つが誰かを災禍の原因だと指さして責任を押し付ける『魔女狩り行為』も含まれる。
その村では立場や権利が弱かった女性が『あの女が妖術で不幸をもたらした』と謂れなき迫害を受け、無実の罪を自白させられ無念の死を遂げた。
それらの尋問や私刑には水が使われたらしく、遺体は鷹呼山に埋められたそうだ。
しかし昭和に鷹呼山はダムの建造のために切り崩されて今は無く、建てられていた慰霊碑も埋められて破棄された。その結果、場所に留まっていた残留思念が散ってしまい、怪現象化して今も人を襲ってる。
これと似たような現象がヨーロッパでも霊能者などによって確認されており、残留思念の拡散による霊的被害ではないかとされている。
社会心理学的に考えると、このような集団心理が海外だけに働くとは考えられず、日本でも同じような事は複数の場所で発生してたのは予想できる。
人柱信仰なども実情は村の厄介者を消すための手段だったとか、村の有力者の支配力を示す場だったという説もある。これが事実なら西洋の魔女狩りと同じ心理が日本でも働いてたという事になる。
「そんなので誰かをヒドい目に遭わせるなんておかしいわ! すごくムカムカする!」
「確かに間違ってるよな、でも今とは時代が違うんだ。繰り返すべき事じゃないから、今を生きる人達が気を付けるしかないんだ、由奈」
これらの事を促進した要因の一つにあるかも知れないのが、14世紀から19世紀まで続いたとされる小氷期という地球規模の寒冷期間だ。
世界各地で気温が下がり、農作物の不作や漁港の凍結によって食糧危機が発生、疫病なども流行って世界全体が苦しかった時期なのだ。アイスランドではこの期間に人口が半減、有り得ない場所で雪が降るなどの事象が観測されてる。
こういった苦しい事情の中に宗教的な思想と悲観的集団心理が相互に作用して~~……。
「長い長い! 灰川君、話が長いよ! とにかく鷹呼山だか鷹呼山という山の近くで魔女狩りがあって、水責めにされた人たちの怨念が霊能力を持った女性の所に現れるんだね!?」
「そんな感じです!話長くてすいません! 風呂に現れるのは水があるからだと思います!」
「一気に喋ったわね、誠治! でも何でお風呂の蓋を開けようとしたら、タカコサンって言葉が思い浮かぶのかしら!?」
「知らんけど! たぶん慰霊碑があった場所が鷹呼山だからとかだと思う!」
「灰川君…君は要点だけを分かりやすく話す練習をした方が良いと思うぞ…、話は纏めないと原因の原因はとか、無限に広がるから」
作業しつつ話をしてたら別の話になりそうだった、このまま話してたら今回の怪現象の元は太陽活動の期間的低下と、火山活動の活性化による火山灰の大気上層への拡散による数%日光遮断が原因とか言い出しかねない。
要は解決できれば良いのだから余計な話は必要ない。科学実証が出来ないのだから、これだって憶測が多く含まれる。
しかし鷹呼山の周囲には不自然なくらいに、いつの時代も村があったそうだ。そして……全て同じ理由で滅んでる。これは山があった近辺に何かしらの怪異が発生して根付いてたのかも知れないが、今となっては分からない。
「今の話を聞いて思ったんですけど、残留思念というのは灰川さんは感じ取れないんですか?」
そう聞いて来たのは貴子だ、確かに霊能者なのに感じ取れないのは変だと思うかもしれないが理由がある。
「霊能者だからって霊的な物を全て感じ取れる訳じゃないんです。残留思念も感じ取れる物もあるんですけど、俺の場合はかなり苦手です」
残留思念は怪異や怪現象の元となるモノの一つで、霊能力と並行して空間把握能力とでも言うべき物も無いと読めないという説がある。
この2つの性質を有する者は少なく、灰川家で空間把握能力が高いと思われるのはサッカー選手になってる灰島勝機など少数だ。しかも勝機は霊能力が低いから見えない。
「残留思念は霊とか呪いではないので読みにくいというか、あれが何なのかよく分からんと言いますか~~……」
霊や呪いと残留思念の違いが灰川にもよく分からず、なんで怪異のような被害を人に及ぼせるのか、なぜ今回のような現象を霊能者が感知できないのか分からない……なんて思いながら話してた時に、ある事に思い当たった。
「そういう事か!!」
「「うわっ!」」
いきなり灰川が立ち上がり吼える、ここに来て大事なことに思い当たった。
「勝ち目は充分にあります! 敵の予測も着いてますし、策も打てます!」
「本当に大丈夫なんですかっ? 由奈はこれで助かるんですかっ?」
「はい、でも用意してもらいたい物があります。俺は少し調べたいことがありますんで」
用意してもらいたい物の詳細を告げると貴子と由奈は構わないと言ったが、飛車原家の父である学志は難色を強く示した。
灰川は残留思念の在りかを調べるために、スマホで近辺のとある場所の情報を調べたのだった。
「ねえ誠治、私のこと…死んでも助けてくれるって言ってたけど…、本当…?」
「ん? ああ、もちろん本当だぞ」
調べ物も終わって、灰川は由奈に守りの陽呪術を掛けている。あらゆる守りの陽呪術と灰川の陽の念が込められたお札やお守りを持たせるから、いきなり命の危機に晒される事は無いだろう。
今の由奈はさっきと変わらずパジャマ姿で、いつもの元気いっぱいツインテールヘアではなく髪を下ろしてる。この姿だと普段とは違った雰囲気だ
「なんでそんなに…私のためにがんばるのよっ…? お金も要らないなんて…ちょっと前まで他人だったじゃない」
誠治のことを信じてるし、霊嗅覚で相性がとても良い人だと知ってるが、少し前まで互いに存在すら知らなかったのに、ここまで助けてくれる彼を心の何処かで『変じゃないか?』と思ってしまう所があったのだ。
「確かに他人だったな、でも今は違うだろう?」
「そうだけど…でも…、家の仕来り…とかなの…?」
いくら知り合って意気投合したとはいえ、死んでも助けるなんて言うのはおかしい。何かしら理由が無ければ、そこまで思ってくれるとは普通は考えられない。
「実はな、そうなんだよなぁ~」
「ええっ!? 誠治の家って本当にそんな決まりあるのっ!?」
「嘘だよ~! 騙されたな、バカめっ!」
「~~! だましたわね! むっき~~!!」
「わはははっ! 騙される方が悪いのさ~!」
こんな下らない会話をしながらでも陽呪術の手は止めない、失敗することなく充分に掛けることが出来てる。
「ちゃんとした事を言うとな、こんな会話が出来るからだ」
「えっ? こんなって、今したお話みたいなのかしら?」
「そうだぞ、大人になると、こんなバカな会話を心から出来る人なんて少なくなるんだ」
社会に出てしまうと同僚や仕事の繋がりは出来る、だが友達と言える存在は出来にくくなるものだ。そうなってから友達や青春という存在の大きさに気付かされる。
朝に学校に向かうために通ってた道がひどく懐かしく思える時が来る。
学校の昼休みに友達と談笑しながら食べた弁当の味が蘇る事がある。
高校の帰り道で寄ったコンビニで買った缶コーヒーの温かさは、同じ物を買っても今はもう感じられない。
夕日に沈む街並みの中を一人で歩いてると、友たちと共に過ごした日々を思い出して寂しくなることがある。
「でもな、由奈たちと居ると楽しくてそんな事は忘れちまう。配信界っていう厳しい世界で前に進もうって、俺より小さい子達が頑張ってんのを見ると、俺も頑張らなきゃなって思うんだよ」
「そういうものなの? 私には分からないかも…」
「そのうち分かるかもな、それに由奈の事は騒がしい親戚の子みたいに思えるからな、それも追加で」
「騒がしいは余計よ! でもありがとう!そう言ってくれてうれしいわっ!」
由奈たちからは金銭には変えられない活力のようなものを灰川は貰ってる。それは時に青春の頃のような気持ちを思い起こさせるし、逆にそういった時期に居る彼女たちに笑顔で居て欲しいと思うような心も湧いて来る。
そんな生きる力、活力をくれる由奈が危機に晒される。彼女たちはブラック企業に連続で入ってしまって腐ってた自分に活力をくれた恩人だ、命を懸けるに十分な理由だろうと灰川は考えるが、その事は由奈には言わない事にする。
「それとまさか、俺が負けるとか本気で思ってないよな? 一応言っとくけどよ、俺は霊能力だけは凄いんだぞ?」
「自分で霊能力“だけ”って付けちゃうのね! 大丈夫よ!誠治が負けるなんて思ってないわ!」
「はっはっは!任せとけっての!」
ちゃんと安心もさせつつ陽呪術も掛け終わった、これで準備は終了だ。
「じゃあ行って来ます、後は言った通りにしてもらえれば大丈夫な筈です。怪現象が発生した時は例の方法で乗り切って下さい、1時間以内に決着を付けますんで」
「はい、ありがとうございます」
呪詛や霊的害意から守る結界をリビングに用意して守りの準備は完了した、後は灰川が残留思念がある場所に行って祓いをするだけだ。
今は灰川の程良く余裕ある態度や自信の感じられる言葉で飛車原家は少し安心感が出ており、過剰な不安の心に付け込まれるような事は無さそうな雰囲気だ。こういう時は依頼者を不安にさせず、油断もさせない雰囲気を作るのも霊能者の仕事だ。
しかし万が一のために灰川は実家の連絡先を教えてあり、もしもの時でも由奈は助かる算段を付けておいた。
「灰川さん、無事に帰って来て下さいね。帰って来られたなら、さっきお渡しした物より、もっと凄いモノをお渡ししますので」
「貴子、それは止めなさい。灰川君、お願いします」
「凄いモノっていうのが嫌な予感しかしないので辞退しますね」
灰川は祓いに必要な品を受け取っており、ソレより凄い物というのにちょっと嫌な予感がする。それはさておいて玄関で靴を履いて外に出ようとした。
「誠治っ、お願い! あのヘンなのやっつけて! 絶対に負けないって信じてるわっ!」
「おうよ、コソコソ隠れてるような奴だ。ちゃっちゃと倒して来るっての!」
そう言って灰川は飛車原の家を出た、向かう先は中くらいの道路を渡った先の小さな資料博物館だ。
そこで現在、小規模の郷土博を催しており、鷹呼山村の魔女狩り事件に関係したと思われる物が展示物になってる事を突き止めた。そこから霊能者の居る飛車原家に思念が飛んできて怪現象をもたらしたと予想を付けた。
残留思念が籠るのは土地以外にも道具などがあり、今は何処に何があるかはインターネットである程度は調べられる。祖父が昔に見つけられなかったのは情報が掴みにくい世の中だったからで、そこに振り回されて気付くのが遅れた。
先入観はやはり危険だ。気を付けてるつもりでも気付かぬ内に持ってしまう事があるから、常に自分を律しなければならない。
由奈以外に感じ取れなかったのは実際に霊などが居なかったからで、特殊な霊能者以外には感知しにくい思念だけで作られた念だったためだろう。由奈を狙ったものだから本人には感じ取れたのかも知れないが、そこはハッキリと分からない。
それらの事を灰川は喋ってる途中に気が付き、他の事も思い付いて対策と対処を考えた。
「じゃあ由奈、私たちは言われた通りに待ちましょう。何があっても私たちが守るわね」
「うん…でも、誠治の言ってる事が正解だったら…」
「由奈、大丈夫だ。まずはやれる事をやろう」
準備は整ってる、後は灰川が事を済ませるまで待てば良い。しかしそれが済むまで何が起こるか分からない。
ここからは忍び耐える時間だ、それが最も辛く苦しい時間なのである。
既に歴史の中に消えた鷹呼山村の過去の惨劇が現代に牙をむく……飛車原の家に魔女が来る。
「ここだな」
夜の1:00時、灰川は資料博物館に到着した。公園の中にある小さな建物で、公園内には誰も居ない。
都内の公園だったなら夜中は不良少年などが居たりするが、人の気配は今は一切ない。恐らくは現在に発生してる何かの気配が無意識に気味悪く、誰も近寄らないのだろう。多少なら叫んでも誰も来なさそうな雰囲気だ。
霊能力の有る無しに関わらず気味が悪いと感じる場所はある。魔女狩り行為という凄惨な歴史に宿った思念は、見えない者にすら気分が悪いと思わせる負念があるらしい。
今の状態だと灰川にも害を成す残留思念は見えない、灰川家は空間把握能力は総じて高いとは言えず、こっちの方面に向いて無いのだ。
そもそも残留思念を自在に見たり、読み取れるサイコメトリー能力者がそこらに居たら何を考えてるか、何を思ってるか持ち物から読み取られて過ごしにくいだろう。
「………すぅぅ~~」
しかし灰川には疑似的に残留思念を見る方法を思いついた。
自在に何でも読み取れるような能力じゃないだろうが、先程に試したら飛車原の家の風呂場で少しだけ思念の残滓が見えたのだ。
霊力を目に集中する、眼球に血液が集まるような感覚がする。この術は負担が大きく頻繁に使えないと感じたが今は仕方ない、それに頻繁に使うような術でもないから遠慮なく使わせて貰おう。断りは入れてないが本人も許してくれる筈だ。
「疑似瞳術・春川 桜」
灰川が思いついた方法は『見える人の目を借りる事』だった、霊力を使って疑似的に自身の目にサイコメトリー能力を付与させる。
灰川が最近に知り合った盲目の少女、春川 桜。Vtuber名、染谷川 小路は誰かに触れると相性とかが少し分かる力がある。それはサイコメトリー能力と呼ばれるものだ。
本人は目が見えないが、もし見えてたのなら目でも残留思念などが見えてたかも知れない。考えようによっては桜も魔女と言って良いのだろう。
彼女のように目が綺麗な桜色になる訳では無いが、今の灰川には普段は霊視をしても見えないモノが映っていた。祖父の時は見えなかったモノが、今なら見える。
ハロウィンの季節なので魔女なんて話を書いてます。
カボチャの話と迷いましたが、こっちにしました。




