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配信に誰も来ないんだが?  作者: 常夏野 雨内


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122話 放送事故を回避せよ

「そういえば最近さ、トルマリン・ラッシュっていう漫画読んだんだけどさー、あれってスゴイねっ」 


コメント;トルラシ読んだんだ、男向けなのに

コメント;結構人気あるよね

コメント;サービスシーン多いけど女の子でも楽しい?

コメント;ストーリーは女子向きではあるのかも


 エリスが話題に上げたのはサービスシーン多めの男の子向けラブコメ漫画だ、作中には面白いギャグやパンチラなどが散りばめられ人気を博してる。


「女の子も可愛いし主人公の気持ちも何となく分かるって言うかさー」


コメント;あの漫画良いよね

コメント;同じ作者の前作も良いよ

コメント;自分もあんな青春したかったwww

コメント;読んだことない、明日買って来る


 漫画の話題は盛り上がり、だんだんと普段とは違う感じの雰囲気になっていく。エリスは普段の配信では自他に関する恋バナはしない。これは心掛けてるとかではなく、あまりそういう話をする雰囲気にならないのだ。もちろん自身の恋バナは会社から極力しないようには言われてる。


 視聴者の多くはエリスの事を可愛いと思いつつも、ゲームやトークの配信が面白いから来てる。別に恋バナが聞きたくて来てる訳では無いし、三ツ橋エリスと付き合いたいとか本気で思ってる訳では無い。


 だがそういう方面の話も気にはなる、センシティブな話題になりかねないから視聴者もエリスも切り出さないだけだ。しかし今回はそういう方面に切り出さなければならない。


 コメントが少しづつ変化する、エリスちゃんはどんな男が好みなの?とか、好きな男が居たらどうやって落とす?とか、視聴者が普段は書かないコメントを見え始めた。


「私は年上で優しくて頼りになる人が良いかなー、好きな人とかに肩揉んで欲しいかもっ」


コメント;ワシは80歳じゃぞ

コメント;俺90歳だけどどうよ?

コメント;お爺さん大量発生じゃねぇか!俺100歳!

コメント;年上すぎぃ!!


「さすがに年上すぎだよ! もう寝なっておじいちゃん!」


コメント;www

コメント;オークションじゃねぇんだって!

コメント;この流れ笑えるwww

コメント;100万人まであとちょっとか


 面白トークをしながら配信は盛り上がる、エリスは最近に読んだ漫画をダシにして少しづつ配信の方向性を変える事に成功していた。


 方向性を変えたは良いが少し口のブレーキが弱くなってる、そして出てしまったのが……。


「そういえばこの前ネットで間違えて少しエッチな漫画買っちゃったんだよー、読んだらビックリしちゃってさー、あ!あと500人で100万人だ!」


コメント;そんなことあったの?

コメント;うわー、やっちゃったね

コメント;俺もやったことあるwww

コメント;本当に間違えたの?


「その内容が~~……」 


 エリスが話題に上げた漫画は18禁でこそないが、かなり際どい作風の漫画で、語ればほぼ確実にセンシティブになる作品だった。


 ここから一気に視聴者登録が増えていく、もう500人で100万人達成だがトークは止まらない。




 その一方でナツハと桜も配信を続けてるが、その内容はさっきよりエスカレートしていた。


「私の周りの人たちも結構エッチな話はしてるよ、tika tokaにダンスの動画を投稿したら凄い変なコメントが来たとか聞いた」


「みんな興味あるんだね~、私も少しは知ってるけど、そういうお話できる人がいないな~」


 内容的にはセーフだが先程よりは話が広がっており、コメントも視聴者数も軒並み増えている。


 そんな中で小路がコメントを読み上げソフトで聞くために付けてたイヤホンから、ランダムでコメントが再生され、その事についてナツハに聞いてしまった。


「ナっちゃん先輩~、今ってキスの練習するのが流行りらしいね~」


「え、そうなの? そうなのかな、初めて聞いたかも」


コメント;あ~、確かに流行ってる

コメント;昔からあるよね~

コメント;クラスメイトがやってた

コメント;そうなの?騙されてない?

コメント;今じゃ普通


「男の人とお付き合いした時にキスで失敗しないように~、女の子の友達と練習するんだって、それならファーストキスにならないらしいよ~」


「そうなんだ、私はした事ないかな、そもそも初めて聞いたよ」


コメント;小路ちゃん騙されんな!

コメント;これも普通になって来たか

コメント;男同士で練習したなんて言えない…

コメント;やったやった

コメント;最近は何が流行るか分からんしね


 情報内容が曖昧で嘘なのかどうなのか判断が付かない、最近は流行というものが多くて一人では追いきれないし、ナツハも桜も忙しくてリサーチが足りてなかった。


 しかもコメントは悪乗りして本当に流行ってるみたいな書き方をしてる、2人はその情報を『いかにもありそう』みたいに思ってしまっていた。


「ナっちゃん先輩~、私とキスの練習してみる~? むふふ~」


「ええっ? 小路ちゃんとっ?」


コメント;よし!やろう!

コメント;流れが変わった

コメント;アリの方向で


 まさかそんな事するはず無いと普通なら思うが、普通の感性や精神性とは違う部分があるから彼女たちはVtuberとして有名になった。


 その普通ではない部分が発揮されてしまう、練習なんだし良いかとか、みんな普通にやってるなら大丈夫、流行ってるのだから乗り遅れる訳にはいかないとか、そんな精神バイアスが掛かって普段とは違う配信内容というのもあり、心の向きも違ってしまってる。


 お互いに嫌ってる訳でもないし、むしろ可愛いと思ってるから多少なら的な感情もあり、それらの精神が混ざって普段とは違う脳内処理をしてしまってる状態だ。


「じゃあやるね~、ナっちゃん先輩いくよ~」


「ま、まあ私は良いけどね、よろしくね小路ちゃん」


 まさかの配信中に大人気Vtuber同士でキスする運びになってしまった、しかし……。




「書き上がったわ、これでお役御免ね」  


「ありがとうございます、徳原先生」


「余裕で書いちゃったわね! 流石プロだわ!」


 灰川が口寄せした徳原が小説を書き上げ、史菜と由奈が礼を言う。時刻は夜の11時であり、由奈は母に今日はシャイニングゲートとハッピーリレーの先輩達と一緒に泊まると連絡して許可を貰ってある。


「色々と話して書いちゃったけど、今の時代はエロに厳しいから少し残念な気がするわね」


「そうですね、私も配信では気を付けてますが、トークで予想外のセンシティブ認定をyour-tubeにされた事がありました」


「私も警告メールが来た事あるわよ! そのアーカイブ動画は削除されちゃったわ!」


 性に関する規約は厳しい世の中だ、少しでもセンシティブだと思われたら削除されたり警告を受けたりする。


 動画で配信者が異性と手を繋いだだけで苦情が来たり、性に関する事や想起させる事を言ったらアカウントを消されたり、男女が一緒に映ってるだけで性的だと言う人も居る世の中だ。線引きは非常に難しい。


 明確な条件がない以上は見た者の感性による判断でしか決められないから、同じ内容でもアウトになったりならなかったり曖昧で、ネット活動者はいつも悩まされる。


「そろそろ時間切れね、書いた小説は自由にしてくれて良いわ、お話し出来て楽しかったわよ」


「私も勉強になりました、色々と考えさせられた気がします」


「徳原さんの作品、今度に読ませてもらうわ! ありがとうっ、また会いたいわ!」


「ふふっ、こちらこそありがとう、またいつか会いましょう」


 こうして徳原は灰川の体から抜けて、あるべき場所へと戻って行った。


「終わったか!? 完成したのか!?」


「はいっ、徳原先生が書いて下さいましたよ」


「それよりエリス先輩達が気になるわっ、100万人になったのかしら?」 


 色々と気になる事があるが、灰川は口寄せの反動で少しフラフラしており、まずは休憩を兼ねて配信を見てみる事にした。



『その漫画は女の子が~~……』


コメント;その話は大丈夫なのかい?

コメント;エリスちゃん!マズイですよ!

コメント;その本持ってる!

コメント;3話が一番使えるよ

コメント;まさかの配信内容!来て良かった!



『じゃあ小路ちゃん、キスするから動かないでね?』


『うん~、優しくお願いね~、ナっちゃん先輩』


コメント;俺得配信

コメント;生きてて良かった

コメント;まあ同性同士だからね

コメント;感想教えてね

コメント;切り抜き確定だな



「なんだこれ…? おいおい、マズイって! センシティブ漫画もキスも視聴者が居ない所でやれっての!」


「市乃ちゃんっ、配信強制終了されちゃうよ! どうしましょう!!」


「ナツハ先輩と小路ちゃんがキス!? やるじゃない!」


 灰川は慌てたが、直後に花田社長から電話が掛かって来て「どうにかして3人を止めてくれ!」と言われた、恐らくは渡辺社長と話は付いてるのだろう。


 コメントで教えようとしたって見てるとは限らないし、早く止めなければならないから灰川はすぐに決めた。


「しょうがない! ミナミとツバサで乱入してくれ! それしか思いつかんって!」


「わ、分かりました!」


 史菜と由奈を連れて3階に上がり、使用中の札が出てる配信ルームに2人を突撃させた。エリスの方にはミナミ、ナツハと小路の方にはツバサだ。


 これならVtuberの乱入だからファンの期待を過度に裏切る事にはならないだろう、ナツハと小路の方は他社のVtuber乱入というのが気にはなるが、この際だから仕方ない。



「エリスちゃん!! ちょっと良いかな!?」


「うひゃ! えっ、ミナミ!?」


コメント;ミナミちゃんが来た!

コメント;一緒に居たの?

コメント;流石に止めに来たかwww



「ナツハ先輩!小路ちゃん! 私が来たからそこまでよ!」


「えっ!? ツバサちゃん!? 今配信中だからっ」


「あ~、ツバサちゃんだ~、やっほ~」


コメント;ツバサちゃん?誰?

コメント;シャイゲの新人の子?

コメント;この声でツバサって、まさかハピレの!?

コメント;会社違うけど大丈夫なの?



 緊急で突入させて配信の内容を無理やり変えさせる、視聴者は驚いたが良い意味でサプライズにもなり喜ぶコメントも多い。


 ミナミはとりあえずエリスに100万人達成おめでとうと言い、いつの間にか突破してた事に驚きつつも感動した場面はもちろん切り抜き動画となった。


 ツバサが乱入したナツハと小路の配信は、ハッピーリレーのVtuberが乱入してくるとは思わなかったファン達はもちろん驚いた。


 ツバサとは小路が仲良しという説明をしたり、配信ルームのドアを開けて灰川がカンペで『良い感じに締めてからスパチャ読み!』と指示を出し。


 エリスの配信は100万人達成をミナミと一緒に喜びながら配信は終わった。


 


「はぁ~…100万人達成できてうれしいけど、すごい疲れたよー。灰川さん肩揉んで欲しいなー」


「良いけどちょっとだぞ、俺も疲れたからよ」


「エリス先輩100万人おめでとっ! 次は私ねっ!」 


「エリスちゃんおめでとう、はぁ…やらかしちゃったなぁ…」


「市乃ちゃんおめでと~、会社から怒られちゃったね~」


 お祝いしたり疲れたりと反応は様々だが、やはりみんな疲れ気味ではある。配信してた3人は全員とも会社から注意を受けてしまったが、今回は仕方ないだろう。


 ネットの反応は上々で今もSNSのトレンドには『放送事故』のワードが上がって賑わいを見せていた。


「あっ、はい~、今送りましたよ~」 


「桜ちゃん、誰かから電話来たのかしらっ?」


「うん、出版社さんから作品を送ってくれって言われたから、送らせてもらったよ~」


「え、マジで?」


 桜は灰川が口寄せでズルをした事は知らず、ボツ前提だから何を送っても大丈夫だと思って送ってしまった。


 灰川が少し小説に目を通すと、内容は全年齢向けで官能描写は無いのだが何故か少しエロスを感じる文章だった。


「お、おう、まあボツになるんだし大丈夫だろ!」


「ありがと~灰川さん、助かったよ~」


 この日の出来事が後日に影響を及ぼす可能性はあるが、それはまだ分からないし考えるだけ無駄というものだ。今はただ乗り切ったことと、三ツ橋エリスが100万人登録者Vtuberになった事を喜ぶばかりだ。


「じゃあ俺は帰るからよ、皆も早めに寝るんだぞ」


「えっ? 灰川さん帰っちゃうの?」


「そりゃここは本来なら男が入っちゃいけない場所だからな」


 シャイニングゲートは女性Vtuberのみの配信企業であり、配信事務所は男は進入禁止だ。灰川だけが少し特別なのである。


「別に灰川さんなら泊っても良いと思うけどな、夜も遅いし」


「そうだよ~、私も灰川さんなら泊ってってほしいな~」


「そういう訳にイカンって、じゃあエリスとミナミはよろしくな」


「灰川さん、今日もお疲れさまでした」


「おう、また今度な皆」 


 こうして騒がしい1日が過ぎ、少しは平和な日常が戻る。まだ仕事は大きな物を含めて残ってるが、大きな壁をそれぞれに越えて気分的には楽な気持ちになれた。


 明日も明後日も忙しい日が来るだろうが、今日よりはマシだと思えば乗り越えられるような気がするのだった。


 今回の話は思ったように書けませんでした!

 全年齢の場合はセンシティブ描写がどこまで許されるのか調べても分からず、少年漫画レベルのエロ描写でも削除されると聞いてヒヨってしまい、中途半端な内容になってしまってます。

 非常に悔しい思いが残りますが、懲りてはいないのでまだ続きます。

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