第209話 黄昏刀剣の真価
「ハァアアアア!」
シェリーが先陣を切る。互いに近接戦闘を得意とする対魔師ではあるが、僕がオールレンジを対応できるのに対してシェリーは近接戦闘のみに特化している。
ベルさんに教えてもらった剣技は今も彼女の中で生き続けているのだ。
一閃。
彼女は一気に超近接距離に入り込むと抜刀。目にも止まらぬ速さで刀が抜かれた。
並の魔物であれば今の一撃で終わっていたが……。
「ギィイイイイイイイアアアアアアアアアアアア!!」
咆哮。
あまりの声量に離れている僕ですら耳を塞いでしまう。すでに超近接距離まで潜り込んでいたシェリーはたまったものではないだろう。苦悶の表情を浮かべながら、彼女は僕の位置まで下がってきた。
「う……つううううう……」
シェリーは自分の耳を押さえていた。
「シェリー聞こえる?」
「えぇ。なんとかね。それにしても、あんな防御の仕方があるなんて」
シェリーが放った一撃はギリギリのところで止まることになった。物理的に防御するのではなく、咆哮で防ぐ。いや、あれはカウンターといった方がいいかもしれない。
ともかく、目の前にいるキマイラはかなり戦闘に慣れていることが窺える。
「ユリア。どうする?」
「僕が切り開くよ」
「どうやって?」
「こうするよ」
不可視刀剣を発動するが、徐々に赤黒く染まっていく。僕の魔法の性質は少しずつ変化していっている。そのこともあって、今は不可視刀剣ではなくこの刀剣はこう言う方が正しいだろう。
黄昏刀剣。
顕現するのは赤黒い刀剣。それを僕は弓の形へと変形させる。周囲の魔素を吸い込むと一気に刀剣は形を弓へと変える。構える矢は剣の形をしている。
僕は剣を限りなく細くしてから、弓を引く。
ヒュン──と、風を切る音が室内に響く。
「ギィイイイイイイイイアアアアアアアアアア!」
咆哮は先ほどと似たようなものだが、決して攻撃をする目的で放たれたものではない。僕の放った剣はキマイラの右肩に突き刺さったのだ。そして、炸裂を展開する。
キマイラの右肩からはだらだらと血液が流れ出てくる。
シェリーは相手が弱ったのを確認すると、一気に距離を詰めていく。先ほどのような咆哮はなく、獅子の頭は火球を放ってくる。
羊の頭からは雷が生じ、尻尾の蛇からは毒液をダラダラとこぼしている。だがシェリーはそれでも怯むことはない。彼女は一気に飛び込んでいき、一閃。獅子の頭を切り落とした。
僕もまた、両手に黄昏刀剣て展開すると一緒に突撃して相手の頭を切り落としていく。時間にして、五秒程度だろうか。キマイラの体はドォンと音を立てて地面に沈んでいく。
「ふぅ。こんなものかしら」
キンと音を出して納刀。僕もまた、黄昏刀剣を解除する。
「それにしてもユリア。いつもの間に新しい技を覚えたの?」
「覚えたというか、前々から思ってたんだ。別に刀剣に限る必要はないのかなって。弓矢とか槍とか、盾とかにも変形できた方が戦いのバリエーションが降ると思って」
「あはは……流石はユリアね」
シェリーは苦笑いを浮かべていた。僕としても今回の技の出来はかなり良かったので、驚いてはいるのだが。
「じゃあ奥に行こうか」
「えぇ」
そうして僕とシェリーはさらに深部へと進んでいくのだった。
更新、お待たせしてしまい申し訳ありません!! 本業と書籍化作業なども諸々あり、後回しになってしまいました……。今後はもう少し間隔を空けないように努めていきたいと思います。
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