領都ナーシサス
ナーシサス侯爵家の直轄領に入るころには、周辺は広大な冬小麦畑とところどころに野菜畑が見えるようになってくる。
さすが王国きっての穀倉地帯という光景だ。
この辺りも大昔は湿地だったと言われており、肥沃な土地は豊かな実りを生む。
ナーシサス量全体で見ても小さな川は多く、もともとが湿地帯であったことがよくわかる。
「ノンノ男爵令嬢、みえてきましたよ」
同行しているハンターの女性に声をかけられ馬車の窓から少し顔を出すと、目の前に城壁が見えてくる。
領都ナーシサスだ。
道中、ある子爵の領地で一泊し、ようやくナーシサスについたわけだ。
ゆっくりと進む馬車はしばらくして停まる。
城壁の門についたようだ。
「申し訳ありませんが、どちらの貴族家かご確認させていただきます」
「えぇ、わかりました。お待ちくださいな」
門を守る騎士に言われ、私は馬車を降りる。
この門番しっかりエスコートしてくれてずいぶん紳士的だ。
「アデル・ノンノ様とお見受けいたします。お待ちしておりました」
「あら、私のことをご存じで?」
「はい、お嬢様より似顔絵をいただいておりまして、ノンノ家の馬車ですので間違いないと確信しておりました。無事のご到着おつかれさまでございます。職務へのご協力ありがとうございました」
「いえ、お勤めご苦労様です」
騎士の了解を得て私たちは貴族専用出入り口よりナーシサス領都にはいる。
一般の出入りはもっと厳しく管理されているので少し行列になっているのが見えた。
「お貴族様と一緒だと楽でいいや」
「ほんとね、ほとんど顔パスだったわ!いつもはとっても待つのに」
ハンターたちがワイワイしている。
定住者じゃない者はどこの領でも中心部に入るには身分の確認が厳重なのだ。
犯罪者を入れないためという役目もあるし、領地によっては平民の移動には税金がかかり金をとられるからだ。
「みなさまも護衛ありがとうございました。ギルドにて報酬をお受け取りくださいな」
「ノンノ様、ありがとうございました」
ハンターたちがお礼をして去っていく。
街中は安全なので、護衛の兵士二人だけで十分何とかなるのよね。
「では、ナーシサス家に向かいます」
「お願いしますね」
御者の兵が馬を進める。
城壁の門からナーシサス家に馬車で行こうとすると少し遠回りすることになる。
あくまで城なので、一直線に本丸である侯爵邸には行けないようになっているのだ。
道中の街の様子は存分ににぎわっていた。
「やっぱり活気が違うわよね」
「東から王都へ行くには必ず通る街ですからね」
「人が行き交えば自ずと活気づく、ですわね」
曲がりくねる通り沿いにはいくつも店が並ぶ。
ノンノ家周辺と違い雑貨を扱う多くの店や、飲食店がならび活気づいている。
「たしか、食料品は広場でマルシェが開かれるとか」
「昼前ですからこの時間でもまだにぎわっていると思いますよ」
私の質問に御者が答えてくれる。
しばらくするとその広場に差し掛かった。
ロバ車が多く、近くの農地でとれた野菜や狩猟した肉や家畜が売られている。
「活気が一段違いますね」
「朝はもっとにぎやかですよ。もう昼前ですから店じまいする奴らもいますし」
確かにちらほら空いている空間が見える。
早朝だと所狭しと荷が並ぶのだろう。
そんな話をしているうちに広場を通り過ぎ、ナーシサス侯爵邸の門に到着した。
さて、お約束通り侯爵様たちとご挨拶しますか。




