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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
20章 因果消滅世界アテルトキア
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134. 勝利の結末

 通信によりアビスハイムは終戦を確信する。

 心神はアルスらに、命神はリリスらに、そして天魔はユリーチに討ち取られた。同時、ソレイユ大森林に蔓延っていたエムティングとメロアは全て消滅。


 アビスハイムが一連の報告を聞き届けたのは、命神の絶命を確認した直後だった。三大外敵はほぼ同時に討伐されたと。


「フッ……ハハハハッハッ!」


「陛下、如何致しました?」


「リリスよ、此度の戦……我らの勝利だ」


「……! では……」


 いつしか天を覆っていた闇は晴らされ、鬼のように鳴り響いていた被害報告も途絶えていた。複数の観測員から同様に三大外敵討伐の報告があったことから考えても、勝利は間違いないだろう。


「凱旋であるっ! 我らソレイユ、困難を乗り越えた! ゆくぞ、リリス、マリー!」


 マントを翻し、堂々とアビスハイムは歩き出す。

 勝利を告げられた瞬間、マリーはただ呆けていた。まさか全ての戦場の動きがかくも噛み合い、奇跡的な戦果を上げるとは。相手は神々……到底敵うわけがないと諦めかけていたのも事実だ。


「我らの勝利は当然です。魔導に不可能はない」


 一方で、リリスは澄ました顔で魔導王の後ろを歩いていた。

 ……とは言っているものの、彼女は心なしか嬉しそうだった。表情はいつもと変わらないが、足元はどこか軽やかだ。


 彼女に釣られるようにマリーが歩き出した時、アビスハイムがふと足を止めた。


「……そうか。今回はアリキソンが……」


「陛下?」


「いや、なんでもない。さあ帰るぞ!」


 魔導王は再び歩みを再開し、王城へ凱旋する。


 ~・~・~


 此度の被害は決して少ないものではなかった。

 数多の死傷者が出てしまい、経済的な損失も測り知れない。


 それでもソレイユは国として残存することができたのだ。

 魔導王アビスハイムの号令により祝砲が打ち上げられ、終戦の夜は誰もが歓喜して舞い上がった。

 シレーネは死んだ目でオレンジジュースを呷る。


「いやー棄てられし神々は強敵でしたねー」


「なあ、俺ら何もしてなくね? ただ『救済の放出砲』とかいうわけわかんない魔道具作ってただけじゃん」


 クロイムは自分が祝いの席に居ていいものかと困惑する。

 魔導王によって作成を命じられた魔道具は結局役に立たなかった。作っているうちに戦が終わってしまうという、なんとも言えない寂寞。


「仕事はサボれるだけサボるべきですよ。社畜にならないように生きていきましょう。それに、私たちの魔道具が使われなかったということは、それだけ戦いが苦戦せずに終わったということ。喜びましょう」


「喜べって言う割には、お前の目は死んでるが。さすがに寝た方が良いんじゃないか?」


 シレーネはこの期間中、ずっと魔道具のパーツを作り続けて一睡もすることはなかったという。一番社畜精神に溢れているのは彼女だとクロイムは思う。


「ここまできたら寝た方が負けな気がします。ルフィアに帰るまで寝ませんよ」


「あのさあ……」


 そんな二人の様子を、アルスは遠くの席から眺めていた。

 彼らのように戦いすらしなかった者がいる反面、今回の戦は大きな爪痕を残した。


 ユリーチは兄の記憶を失ってしまったようだ。彼女が次元遡行(マカ・ジ・フラムトア)を使ったことを、アルスは一連の情報から理解した。

 彼は予め周囲に根回しをして、スターチが『天魔』であったことは伏せておくように忠告しておいた。ユリーチには極力真実が届かないように彼は奔走したのだ。お節介と言われれば仕方ないが、どうしてもこれ以上ユリーチに残酷な事実を突きつけるのは許せない。


 彼がクロイムを観察しながら抱く感情は疑念。林檎酒をグラスに注ぎながら、近くのナリアに尋ねる。


「ナリア、説明してもらえるか」


「む」


「君の予測によれば、クロイムは八つの神能を取り戻した時点で記憶が回復するとのことだった。『天魔』は討たれ、秩序の干渉がクロイムへと返還されたはず。これで八つ目……なぜ記憶が戻っていない?」


 ナリアは考え込む。そして考え得る推測を列挙した。


「まず、天魔が死んでいない可能性。次に、まだ神能が魔力を伝って神能がクロイムに届いていない可能性。そして、クロイムが記憶をまだ失っているフリをしている可能性」


 彼女が列挙した可能性は全て考え辛い。

 天魔の絶命はユリーチとスターチの戦いを見守っていた観測員によって確認されている。神能が届いていない可能性も、戦場が近くだったため低いだろう。クロイムが記憶を未だに失っているフリをしているというのは……性格からして考え難い。


「或いは。スターチ・ナージェントが本当に六花の魔将であったのか。疑わしいものだな」


「…………」


 まだ問題は残っている。

 『守天』ゼロ。彼は自分が天魔の味方であると語っていた。もしも彼が天魔と何らかの関係があるのなら、真相を知っているのかもしれない。

 とにかくアルスはゼロも救う必要がある。彼がなぜ裏切り、かつての仲間へ刃を向けたのか。彼が今も苦しんでいるのならば……アルスは仲間として彼を助けるのみ。


 クロイムに自分の『混沌の接続』を返還すべきか、やはりアルスは逡巡する。

 まだ……決意はできなかった。

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