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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
15章 ココロガタリ
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91. 世界の守護者─ラウンアクロード─

「セティア、僕に力を貸してくれ」


 イージア君とノアがルミナを止めに向かった後、ラウア君はぼくに言った。

 無論、ぼくだって協力する。しかし何ができるのか。


「何をすれば……?」


「僕は第三因果に変質したようだが……絶対的に混沌の力が足りない。戦いを終わらせるには、もっと混沌の力が必要だ」


 たしかに、ラウア君は災厄ラウンアクロードの力と、秩序盾の力を持っているが……混沌の力には乏しいようだ。第三因果となった時点で、混沌の力も身に宿す資格を得たはず。きっとATから受け継いだのだろう。


「分かった、ぼくの力を貸そう」


 彼の胸に手を翳し、魂の底から混沌の力を流し込む。

 もうぼくの身などどうなってもいい……ま、死ぬつもりはないけどね。あらんかぎりの力を彼に。そして、この不毛な盤上遊戯を終わらせようじゃないか。


 だいぶ力を預けたが、まだ足りない。もっと、もっとだ。ぼくは創世主の心なんだ。混沌の意志力は無限に近い。


「……ありがとう。これで役目を果たせる」


「ねえ、どうやって戦いを終わらせるの?」


 それだけが疑問だった。ルミナの動きを止めてどうするつもりなのか。まさか殺すわけにもいかない。

 彼は少し困ったように笑ってから、語り始める。


「イージアに伝えたら反対されるから言わなかったんだけど……君になら話してもいいかな。秩序盾ルナの権能を使い、ルミナと共に封印されようと思う。自らが授けた神器で、ルミナは封印される羽目になるんだ。第三因果を得て、ラウンアクロードの力を取り戻した僕ならできる」


「そっ、か……うん。たしかにイージア君なら、そんな策は止めようとするだろうね」


 でも、ぼくは止めない。この選択が彼の決意なら。

 壊世主を封じても災厄が消えるわけじゃないけど。少なくともこうやって悪だくみはできないし、不正もできなくなるだろう。


「それで、僕からもう一つお願いがあるんだけど……」


 ~・~・~


 私の役目は、壊世主の本体である異形を止めること。

 ここで戦いを終わらせることが調停者である私の使命であり……旧世界の住人である私の贖罪にもなるだろう。

 新世界創世プログラムの第一人者として、壊世主の性質は把握している。きっと因果を研究していた父もこんな末路は望んでいなかった。だから、


「だから、私が止めます。『再誕の剣(アヴェンジソード)』」


 迫る暗黒が私の魂を抉り取る。痛い。でも……秩序の因果によって苦痛を受けてきた人たちに比べれば、痛くない。

 奪われた魂を自動蘇生する術式を施し、無謀に暗黒の中を邁進する。そして一振りの白刃を取り出した。


 受けた痛みを返上する再誕の剣(アヴェンジソード)

 調停者たる私の魂を何度も何度も、ルミナの暗黒が滅ぼす。一度の私の死でも、復讐として出力できる力は凄まじい。さあ、あなたも痛みを受けてください……ルミナ。


「はぁあっ!」


『────!』


 数多の触手と刻印を斬り刻み、異形の傷口を再生不能に陥らせる。だが神核は斬れない。今は拘束が目的。

 故に、復讐する力は再生の遅延に回す。これでしばらくは動けないはず。

 さあ、今こそ幕を下ろす時だ。


 ~・~・~



「不敗の王──『青雪の全構え』」


 迫り来る茨を青霧で薙ぐ。一撃ずつ慎重に見切って行けば、防げぬ力ではない。アテルよりも強力な力を持つルミナだが、なおも私は負ける訳にはいかない。我が生涯における全ての悲劇の元凶を、どうして許すことができようか。


 生まれた時からずっと磨き続けてきた受け流し、そして気配の察知。

 共鳴、剣術、槍術、戦意、青霧。全てを今、解き放つ。


「不敗、絶対、完全、最強。力は我にあり──『彗嵐・穿神の王』」


 ティアハートを投擲し、ルミナの結界を破壊。


『ぬう……凄まじい戦意だな、救世者? それほど我が身が憎いか?』


「ああ、憎いよ……そして君を何より哀れに思う」


『哀れだと……? どの口が言うか……』


 私の言葉にルミナが怪訝な表情を浮かべる。彼にも心はある。旧世界の管理者たちの傲慢により創り出され、永遠の戦いを強いられた。

 これを哀れと呼ばずして、何と呼ぶか。

 だが──彼は救えない。


「故に、ここで終わらせよう。私たちが勝利する未来を手にすることで……!」


『戯言を! 我が身は滅ぼせぬ! お前らの未来は必滅なのだよ!』


 違う。私はラウアを信じる。

 彼が手に入れた決意と心は揺るがない。彼の『策』を成功に導くことで……この遊戯(たたかい)を終わらせることができるはずだ。

 ルミナの器……イージャと言ったか。私と名が似通っているのは、レーシャが名付けたからなのだろうか。後は彼を封じるのみ。


「ティアハート……創世機構解放」


 アテルの共鳴者たる私は、アテルの心部であるセティアの神器を完全に使いこなせる。ルミナを拘束するための力がそこに眠っている。

 槍から放たれる灰色の光を見た時、ルミナは目を見開いた。その驚愕の心こそ、君の弱さ。そして私の弱さでもあった。


『寄るな、駒が!』


 左右から迫った茨。接近できない、退くべきか。いや、ここは私の魂を擦り減らしてでも接近すべきか──


『……ッ!?』


 刹那、蒼いオーラが茨を貫いた。ラウアの援護射撃。

 今ならば進める。神剣で道を切り拓き、そして神槍を構え……


「『堕情の縛鎖』!」


 ティアハートの権能、【堕情の縛鎖】。

 意志力の強い相手を縛り付ける。壊世主の意志力は比類なき強さを持つ。故に、この縛鎖も絶大な効果を発揮するだろう。

 灰色の鎖がルミナを縛り付ける。これで私の役目は果たしたか……ラウア。


 ~・~・~


 壊世主の動きは完全停止した。

 戦況を目視して、ラウアは歩き出す。異形の足元へ佇むルミナの下へと。


『おのれ……縛ったところで、お前らは我が身を滅することはできぬ! 小賢しい真似は止めることだな?』


「ありがとう……イージア、ノア。君たちを信じてよかった」


 彼はラウンアクロードの円環をどこまでも拡大させ、秩序盾ルナを構えた。

 セティアから授かった混沌の力と、彼が持つ秩序の力が混ざり合い──遥かなる救済の力を発現させている。


「ラウア、ここからどうするつもりだ?」


 イージアの問い。やはりラウアは答えない。


「そうだね……イージアとノアは下がっていてくれ。大丈夫、すぐに終わる」


「分かりました。さあ、イージアさん」


「……ああ」


 ノアは何かを察したのか、イージアを後方へ誘導する。

 セティアは何かがあった時にイージアを止められるように、彼の前方へ立った。きっと彼はラウアの決断を止めてしまうかもしれないから。

 だが、彼もまたラウアの意志には勘付いていたのだ。しかし信ずるが故に、彼は素直にラウアに従った。


『なんだ、哀れな駒よ。ATの仇討か? 無様だな』


「……何とでも言うがいい。秩序盾ルナ……壊世機構解放」


『何……なにをしている?』


 ラウアの発した暗黒が、ラウンアクロードの円環を伝って白い空間の全域に満ちる。

 後方に立つ三人の空間だけが、切り取られたかのように暗黒に支配されていなかった。


「ルナを贈与(リンヴ)した君ならば、権能を知っているだろう。暗黒に万象を呑み込み、封じる力だ。そしてATから救済の力を得た僕なら……君を封印できる」


『はっ! やはり愚物さ、お前は! ルナの封印を維持するには意志力が必要だ。自らの神器の権能すら碌に理解していないとは……』


「知っているさ……そんなこと。だから僕は──君と共に裁きを受けるんだ、ルミナ」


 彼の言葉を聞いた途端、ルミナの表情は強張った。

 心在る故の畏怖と、心ある故の決意が交差する。


『馬鹿な……バカな真似をするなよ、ラウア? そんなことをすればお前自身も永遠の闇に──』


「ああ。共に往こう。大丈夫だよ……僕がついてる。闇の中でも君は孤独じゃない」


 ラウアの暗黒が更に広がる。

 闇はラウアとルミナを取り囲むかのように波及し──



「ラウアッ!」


 イージアが叫び、一歩踏み出した。

 やはりこうなるかと、セティアは彼を止めるために眼前へ立つ。しかし、彼の言葉は決してラウアの心を否定するものではなく、



「……ありがとう! 私は君に救われた。君と仲直りして、絆を得られて……本当に良かった! 私の憎悪は、君が消してくれた! だから……私は君を忘れない! 君も、私を忘れるな! たとえ暗闇の中でも……私の心は君と共にある!」





 彼の言葉を受けて、ラウアは困ったように──いや、心から嬉しそうに笑った。

 一筋の涙が、彼の頬を伝う。


「うん……僕と君は、友だちだね。ありがとう、僕を信じてくれて」


『やめろ……! やめろ! よせ、ラウア! やめろぉおおおおッ!』


 絶叫するルミナと共に、暗黒が収縮していく。

 やがて闇は跡形もなく掻き消え──そこにラウアとルミナの姿はなかった。

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