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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
13章 ラストミッション
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幕間1. これからの歩み

 薄暮の光に照らされ、イージアは目を覚ます。

 気だるげに開けた瞳に映ったのは、窓から渡り鳥を見つめる黄金の少女の姿。彼女はイージアの目覚めを感じ取り、絹糸のような髪を揺らして振り返った。


 彼女は少し気まずそうに目を逸らしてから、再び窓の外を眺めた。

 茜色の空の下には、災厄によって壊された街並みが広がっている。帝国兵たちが駆け回って復興に勤しんでいるようだ。

 イージアは起き上がって彼女の隣に並び立つ。


「これで終わりかな。イージアの歩みは」


 レアの言葉に彼は俯く。

 全ての目的を果たした彼に、もはやこの時代を生きる意味はないのかもしれない。

 しかし、


「歩みは続けるよ。帰る場所があるから。待っている人たちが居るから」


 もはや未来に帰る場所は存在しない。

 だからと言って、今に帰る場所がないわけではない。今まで歩んできた軌跡に、イージアは確かな居場所を作ることができた。


「私もその『待っている人』の中の一人だということ……忘れないでほしい。このリンヴァルスは君の故郷だと思ってくれていいよ。いつでも帰って……ううん。いつでも私と過ごしに来ていいから」


「そうだな。また一緒にお菓子を食べよう」


 イージアは笑う。

 今と昔では、笑い方は違う。それでも心からの感情を湛えて。

 彼は在るべき場所へと帰還した。


 ~・~・~

 

 その夜。

 楽園、創造神の神殿へと帰還したイージアを、六花の将たちが出迎えた。

 彼の姿を見とがめたリグスがからかうように言う。


「お、リンヴァルス神様が来たぞ」


「…………」


 イージアはどう答えて良いものか困ったが、さらにウジンが追撃をかける。


「いやあ、リンヴァルス神はかっこよかったな? あの言葉は感動したぜ」


「……やめてくれ」


 彼は世界へと向けて放った言葉を思い出し、少し恥じらいを覚える。

 本音を紡いだだけだったが、世界に伝えた言葉は理想語り過ぎて臭かったかもしれない。


「でも、リンヴァルス神様が居なければ世界は救われませんでした。みんなで感謝を捧げなければいけませんね?」


 アリスまでもが追従してイージアを『リンヴァルス神様』と呼んだ。


「だから、その呼び方はやめてくれ……」


「はは、じゃあどう呼んで欲しいのかな?」


 創造神は悪戯な音を含んで彼に問いかける。

 彼は即座に答えた。


「いつも通りで良いのさ……イージア。それが私の名前だ」


「ああ……お帰り、イージア」


 長い長い旅路の果て。

 憎悪と憤激に囚われた時間の果て。

 イージアが辿り着いた帰るべき場所。


 彼はまだ、未来を見据え続ける。


 ~・~・~


 明くる日、イージアは創造神の命を受けてリンヴァルスの復興に向かっていた。

 大きな材木を運ぶダイリードを、周囲の人々が圧巻の声を上げて眺めている。


「おお、鳴帝様!」

「リンヴァルス神様だ!」


 その一方で、イージアはリンヴァルスの民に囲まれて作業どころではなかった。

 仮面がトレードマークの『鳴帝』。彼の正体がリンヴァルス神だったと世界中に知れ渡り、特にリンヴァルス帝国の人々からは絶大な人気を得てしまった。


「おいダイリード。身動きが取れない」


 子供たちにじゃれつかれて彼は復興作業に取り掛かれないようだ。

 ダイリードは知らぬ存ぜぬといったように黙々と材木を積み上げる。もしかしたら創造神はイージアを復興ではなく、人々の心を激励するために向かわせたのかもしれない。


 その光景を遠くから眺めていたレアは密かに笑う。

 始祖は人前に姿を現していなかったため、彼女が何者か気付かれることはない。対してイージアは国の守護神として大人気だ。まさに彼女の計画通り。

 これを機にイージア関連のグッズを作って売り出すのだ。世界を守った神となれば、経済効果は測り知れない。そしてリンヴァルスの経済はますます潤い……


「ふむ……まさか本当にリンヴァルス神が存在し、それがイージアだったとはな……」


 煩悩に塗れた思考を遮って、彼女の傍に一人の男が降り立つ。


「魔族王じゃないか。君の国からの復興支援、感謝するよ」


 普段は獅子の姿を取っている魔族王ルトだが、今は人ごみに紛れて人の姿に転身している。

 魔国ディアの王である彼は、被害を受けたリンヴァルスに復興の手を差し伸べた。


「基本的にわが国は他国へ干渉せぬが……お主らには恩がある。今こそ借りを返すべき時だと判断したまで」


 歴史上で危機に陥ったことのないリンヴァルス。ルトもリンヴァルスがこのような事態を迎えるとは思わなかったが、国を救ってもらった恩を返す機会になった。


「国を守るは易きに非ず……しかし始祖よ。お主がいればリンヴァルスは安泰であろうな」


「いやいや、私は国政に干渉しないし。こうして見守って行くだけさ」


 レアは未だに囲まれるイージアを見つめながら微笑んだ。


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