22. 世界はこれより、煉獄へ。因果は赫焉せり
一行は迎えに来たレヴィーに乗って、帰還の時を迎えていた。
「ルカ師匠、お世話になりました! また来るからな!」
「ロキシアもまたね。今度は一緒にお出かけでもしようね」
ゼロとサーラは元気に手を振って、龍島で過ごした皆に別れを告げる。
「六花の将としての活躍、我は見守っているぞ! 我の指導を受けたからには、獅子奮迅たる戦果を挙げるのだ! イージアとフェルンネも至強たる者、努々遅れを取るなよ!」
イージアは真摯に、フェルンネはうんざりとルカの言葉に頷く。
「サーラちゃんとゼロ君の活躍、私も注目してるからね。あと、イージア師匠……師匠のおかげで私は変われたと思います。私は故郷に帰って自分にできることを探しますから……応援しててくださいね」
「ああ。君なら正しく力を扱えるはずだ。頑張ってくれ」
そして四人はレヴィーへと乗り込み、空を見上げるルカとロキシアと別れた。
迎えに来たダイリードは『守天』の二人を見て納得したように目を細めた。
「二人とも強くなったようだな。放つ気が前と違う」
「お、分かるか? なんたって神能を覚醒させたからな!」
「ほう……どのような能力だ?」
「えへへ……それは帰ってからのお楽しみね! アタシもゼロも、すっごい力を手に入れたんだから!」
レヴィーには二人の溌剌とした声が響く。
かくして六花の将は全員が神能を手に入れ、ますます名声を高めていくこととなる。
~・~・~
『覚えておけよ。我が名は壊世主ゼーレルミナスクスフィス。秩序の因果のプレイヤーさ』
暗黒を纏った男が嗤う。
『お別れだな。異なるお前に期待しよう。さあ、それでは世界よ聞くがいいッ!
今ここに、『共鳴アヴェンジホワイト』の幕が上がるッ!』
霧散していく神気。
高らかに嗤う壊世主。
とある英雄の末路が其処にはあった。彼の名はイージア。
「やはり、このままでは……」
ノアは観測した結末を読み解き、オッドアイを揺らす。
虚無の光が満ちる空間で彼女は一人。
「盤面を進めるか、千日手に持ち込むか。前者を採れば破滅が。後者を採れば永遠の停滞が。アテルの思い通りにも、Tの思い通りにもさせたくはありません。しかし……畜生ルミナの思い通りになるのは、もっと最悪な道筋です。在るべき世界の姿、行くべき道の果て。そんなものは誰にだって分かりませんが……」
彼女は世界を見下ろす。
盤上世界アテルトキア。五千年以上の人類史を紡ぐ世界に、間も無く大きな分岐点が訪れる。
もはや混沌と秩序が相克する、単純な世界ではない。どの道を往けども過酷は待ち受けている。故にこそ、救済がなくてはならない。
誰かの心の小さな支えになれば、それは救済なのだろう。
『……怜悧なる調停者よ。何故世界を望むか』
「アテル……何度も言っていますよ。私は心の為に在るのです」
『蒙昧。迷夢。汝が意志、我が身と馴染まず』
白き茨がノアに迫る。
しかし、其は彼女に届くことなく霧散する。
「だから、私は第三因果ですから。攻撃は無駄だって言ってますよね。まあ……あなたの言いたいことも分かりますし、少し同情もしますよ。あなたに心が無いなんて嘘ですし、すごく世界を大切にしてることも分かります。でも……心を無視しちゃいけません。あなたが悲しむように、あなたの行いで悲しむ人々も居るということ……どうか忘れないでください」
『…………』
アテルは無言のまま、その領域から消滅していった。
ノアは溜息を吐いて再び世界を見下ろす。
「私も動かないといけませんね。次はTに負けないように……可能な限り、皆が笑える未来を創れるように。積み重なった全てのXugeが無駄とならないように」
救済の少女の決意。
救済の共鳴者の決意。
混沌の意志。
秩序の意志。
災厄の心。
守護者の心。
──全てが今、交錯する。
12章完結です




