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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
第3部 12章 天の守り人
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20. 対抗・継承・信義

「それでは、これより戦神直前対策講座を始める」


 ルカとフェルンネ、そしてロキシアもこの話題には興味があるようで、三人は遠巻きにイージアの講義を眺めていた。

 ゼロとサーラは彼に向かい合い、集中して説明に耳を傾けている。


「戦神が扱う神定法則は【不敗の王】。自らの戦意を力へと変換する能力だ。神定法則に勝るのは創世法則のみ。つまり君たちではどうしようもない」


 イージア曰く、神定法則は覆せないとのこと。しかしそれは大した問題ではない。

 戦神の性格を鑑みるに、格下相手に戦意は沸き立たないとのこと。


「そして戦神の神器は『究極神装グラネア』。本気は出さないと思うので、グラネアを使ってくる可能性も低いだろう。使ってくる武器が槍なのは確実だ」


「槍……そういえば『白鳳星』って、とある神様が投げた槍が刺さってるから、ずっと強く輝いてるんだったよね? もしかしてその神様って……」


「ああ、戦神だ」


 イージアの言葉にサーラが引き攣った表情を浮かべる。対してゼロは興奮していた。

 いくら神族といえども、そこまで馬鹿げた神話を持つ者はいない。歴史では語られぬ戦の神……その底力は未知数だ。


「戦神が使う槍技は大まかに三つ。『穿魔』・『穿神』・『穿象』。魔と神と概念を穿つ槍技で……いずれも不死性を貫通する。君たちでも魂が砕かれれば蘇生は不可能だ」


 ルカは眉を顰める。蘇生不可能の必滅の技。

 オハーツもまた、戦神に貫かれて死したのではないか……そんな思いが頭を過る。しかしイージアは彼の憂慮を否定するように言葉を継いだ。


「しかし、戦神が無闇に命を奪うとはどうしても思えない。過去の試練で死した者があったとしても、それは何かしらの異変が発生したのではないかと思うのだが……気を付けるに越したことはない。君たちが無事に帰って来ることを祈るばかりだ」


 イージアの記憶によれば、戦神は粗雑な性格ではあるものの、妄りに人の命を奪うような神ではない。彼が共鳴者だから丁重に扱われたという可能性もなくはないが……


「なるほどな。で、イージア師匠は戦神の技を再現できるんだよな?」


「ああ、グラネアの再現以外は。早速だが模擬線をしてみようか」


 イージアは土槍を生み出し、ゼロとサーラに模擬線の指導を始めるのだった。


 ~・~・~


 数日後、晴天の試練へと向かう前日。

 二人はルカの小屋に呼び出された。


「よくぞ来た! 至大なる神に挑む貴様らへ、我からの餞別がある……しばし待て!」


 ルカは小屋の中へと入り、二つの物を手に抱えて戻ってきた。

 一つは剣。鏡面のように透き通った剣身と、獅子を模った柄。

 一つは書物。濃紫色の表紙に、斜めに掛けられた金色の紐。


「なんですか、それ?」


「我の弟子がかつて扱っていたものだ。『天剣カートゥナ』、『天魔書ニブルゲ』。これを貴様らに託そうと思うのだ」


 ゼロは『天剣カートゥナ』を受け取る。ずっしりとした重さがありながらも、羽の様に軽い。

 かつて使われていたものだと言うが、まるで打ちたての剣のように輝いている。


「すげえ……こんなに立派な剣、俺は持ったことがない。本当に貰ってもいいんですか?」


「うむ。かつて世界最高峰の剣士と謳われた騎士の剣……存分に使いこなすが良い! そして、サーラにはこれだ」


 サーラは『天魔書ニブルゲ』を受け取る。金色の紐を解くと、中には無数の魔法陣が何百頁にもわたって描かれている。

 魔導書は魔術補助のために作られる高価な武器だ。杖と違って重量はあるが、魔術の威力は桁違いに跳ね上がる。


「嬉しいけど……ニブルゲって名前かわいくないね。強そうではあるけど」


「戦いに可愛さなど不要! まあ我は魔術に詳しくないので、その魔導書の使い方はフェルンネにでも聞くが良い」


 二つの武器の譲渡は、ルカにとっても過去との決別を意味した。

 かつてフィリとオハーツと過ごした過去を自らの手元から放棄し、次なる世代へと託す。いつまでも憑いて離れない追憶の亡骸を、彼は決意と共に切り離したのだった。


 今や全ては遠い過去。

 自らもまた、世界の隅にて破滅し果てる。ルカに根付く自己認識が、彼の過去との決別を促した。


 ~・~・~


「それじゃ、行ってくるぜ!」

「必ず帰って来るからね!」


 飛翔する二人を見送り、師たちとロキシアは空を見上げる。

 晴天の試練は第三者が関与することはできない。創世主でさえも盗み見ることはできない、完全秘匿の試練。

 だからこそ、イージアも不安に駆られていた。万が一ということもある。


「……後は座して待つのみ、か。我が力を叩き込んだ以上、試練を乗り越えると信じたいが」


 眉を顰めるルカ。一方でフェルンネは何も心配していないかのように呑気に構えていた。


「どうかしらね。神族は碌でもない性格だって聞くし。戦神も平気で人を殺すかもしれない」


「それは私も碌でもない性格だと言われているみたいだな」


「よく分かってるじゃない」


「…………」


 最近、イージアに対してフェルンネの当たりが強い気がする。

 イージアも文句を言えた立場ではないのだが。


「きっと大丈夫ですよ。サーラちゃんとゼロ君なら、必ず試練を超えてくれます」


「うむ……そうだな。弟子を信ずるも師の務め、か……」


 ルカの瞳に晴天が広がる。

 かつてのように、この晴天が曇ることなきよう。二人の弟子を信じるのだった。

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