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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
第3部 12章 天の守り人
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15. 魂の振動音

歪曲(アトル)!」


 簡易的な空魔術を行使する。

 空魔術は風魔術と少し違う。世代的には風よりもずっと後に出現した属性。

 風はこう……バーッと衝撃を起こす感じで、空はじわりと現象を起こす感じ?


 でも、現象は発生しない。私の適正属性は水なんだから当然だけど。

 後ろで見守っているフェルンネ師匠は命令を飛ばしてくる。


「意識を集中させて、あるべきものだけを視ようとすること。魔力は何にも変換できるけれど、基本的には適正属性以外への変換を許さない。創世法則を無視できるとすれば、それこそ魂の力のみ」


 最初は何を言っているのかよく分からなかった。

 魂とか言われても、掴めないし触れないから。でも、実際魔族は邪気のみで構成されているから、その核となるものがある筈だし……。

 最近は少し感覚を掴めてきた気がする。便宜上『魂』と呼ばれてるけど、これはきっと──


「あ、れ……?」


 視界が一瞬セピア色になって、すぐに戻る。

 その一瞬の間、あらゆる気の流れを見れた気がする。僅かな時間だったので確証はないけど。

 もう一回やってみよう。


歪曲(アトル)


 魔力行使と同時に自分の内側へ意識を向ける。

 あるべきものだけを視ようとする……


「……!」


 今度は視界がセピア色になる現象がずっと続く。

 見えるのは魔力の流れ、邪気の流れ……魔術を行使するには私が繰っている魔力をこうやって動かして……発動形式自体は他の属性も同じだから……


「えいっ!」


 ──何かが嵌まるような感覚。

 同時に中空に歪みが生じた。これってもしかして、成功?


「……それはあなたの魂の力、『魔眼(ナーレ)』。やっぱり私と同じ……【真理】の魂だったみたいね」


「真理……」


 真理?

 うーん……真理?

 私、別にそこまで研究者肌じゃないんだけど。


「まあいっか。とにかく、これで魔力をどう動かせば良いのか見えるようになりました! ありがとうございます!」


「大変なのはここからなんだけどね……」


 たしかに。ここから色々な魔術を練習しないといけないし、精度も上げないと。

 流石に全属性を使えるとは思えないけど、初歩的な魔術なら色々な属性を扱えるかも?

 初歩でも複合することで効果を発揮できるだろうし。

 なんだか楽しみになってきたな。


 ~・~・~


「はっ!」


 鋭利な剣先がルカに迫る。


「甘いッ!」


 素手で剣先を受け流したルカは、ゼロに蹴りを叩き込む。

 大きく後退したゼロは踵で土を削り、その場に踏みとどまった。そして呼吸を整える。


「ほう……以前の貴様であれば、すかさず特攻を続けていたが。冷静さを得たか?」


「おう。フェルンネ師匠から、あなたはもう何も考えるなって言われたんです! そしたら逆に考えられるようになった! 今までの俺は、とにかく攻撃することばっかり考えてたから……思考に余裕ができたんです!」


「無為が有為を生むか……光と闇は表裏一体! 意志なき力があればこそ、意志ありき!」


 再びゼロは駆け出す。

 十分に身体強化を調整し、今後の作戦を立てながら。

 

 大上段の振り下ろし。ルカは回避。

 そのままの勢いで突き立てた剣を軸として、背後へ回り込んだルカへ回し蹴りを放つ。

 即座に剣を引き抜いて横一文字に斬撃を飛ばす。


「無駄だ!」


 ルカは斬撃を拳で打ち砕き、更にゼロへ追撃。

 再び彼は地面を転がってしまう。


「へへっ……」


「ぬ? それはどういう感情の笑いだ?」


 地に伏しながらも笑うゼロを訝しむルカ。

 彼は再び立ち上がって歯を光らせる。


「なんか最近さ……ルカ師匠みたいな強い人に立ち向かう時、ゾクゾクするんです! 俺はこんなもんじゃないって、その人たちを超えてやりたいって……そう思うと楽しくなる!」


「我にも昔、そのような時期があったものだ。その頃から自己肯定感が高まりつつも、強者に畏敬の念を払うようになり……やがて今代の強さまで至ったのだ。心境の変化は大きな兆し。その心、ゆめゆめ忘れるでないぞ!」


「はいっ!」


 ゼロは返事しながら再び斬り込む。

 彼の速度と反応は一層向上し、戦えば戦うほどに高まっていく。苦戦が、苦悶が、苦境が彼を奮い立たせる。

 斬り込みの隙を突いて、ルカの拳が彼の目前に迫る。刹那、


「しいっ!」


 ゼロの全身を冷ややかな快感が包み込む。

 昂っていた高揚が頂点に達し、糸が途切れたかのように身体が軽くなる。五感全てが研ぎ澄まされ……彼の世界は一段上へと昇り詰める。

 爆発的な加速。拳を躱し、研ぎ澄まされた一閃が孤を描く。


「ぬうっ!?」


 動きが格段に強化されたゼロの攻撃。

 ルカは思わず飛び退くが、腹部に斬撃が走った。


 彼我の距離が開くと共に、ゼロを包み込んでいた高揚はクールダウンしていく。


「フハハッ! 貴様の『挑戦』はそこまで至ったか! これは我もうかうかしていられんな!」


「今、なんか……すごい気分でした。一体何が……」


「貴様の魂が【不敵】であるからこその力の発現だ。その感覚、決して忘れるなよ。深淵より生み出されし万能たる感覚は、常に強者という壁があってこその代物。常に己が才覚を深化させ続けるのだ!」


「は、はい!」


 実力、思考、勇気。

 全てのピースが揃ったからこその力の発現。

 ゼロは今しがた自分の身に起こった変化を決して忘れないよう、心に刻み付けた。


 ~・~・~

 

 その夜、イージアの携帯に連絡が入った。


『やあイージア。良い朝だね』


「こちらは夜だ。おはよう」


 レアの間延びした声が電話越しに響く。

 寝起きの声だ。


『君から頼まれていたリフォル教について……知ってそうな人を見つけたよ』


「そうか。誰だ?」


『あー……ルフィアレムで孤児院を経営してるらしい。今度会いに行きたまえ……私は二度寝する』


「おい……」


 一方的に通話を切られる。

 イージアは溜息を吐きながら電話をしまった。

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