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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
第3部 12章 天の守り人
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2. 蠢く意志

 一度戦い、圧倒的な力の差を実感すればゼロは諦めるだろう。

 一度戦い、適当にあしらってやればルカも飽きるだろう。


 イージアはそう思って、ゼロとサーラを戦わせたのだが……


「ふっ……この程度か? どうやら、『守天』の名もまだ完全なる力を解放していないようだな……」


「く、くそっ! もう一回!」


 一度敗北して離脱したサーラとは裏腹に、ゼロは何度も何度もルカに挑んでいた。

 一瞬で吹き飛ばされては、立ち上がり。全身を泥だらけにして立ち上がり。


「ゼロ、いつになったら止めるんだろう……あのルカって人が強いのは分かったけどさ」


「さあな。見守ってやるしかないだろう」


「ああいうところで見切りをつけられないから、ゼロは進歩しないんだよね。妥協もたまには大切だよ。というか、人生なんて八割妥協だよ。早く終わって欲しいなあ……」


 サーラは嘆き、気だるげに目を閉じた。

 イージアとサーラはひたすらその光景を眺めている。イージアもルカから戦おうと誘われたが、断固として拒否した。

 早く飽きてくれないかな……と、二人の心は一つになっている。そんな思いも虚しく、ゼロは日が暮れるまでルカに挑み続けたのだった。




「く……くそおっ! どうして勝てないんだっ!」


「フハハ! 絶対的な差があるのだよ! まあ、精進することだな!」


 ゼロは立ち上がり、そしてルカに頭を下げる。


「頼むっ! 俺に強さの秘訣を教えてくれ……いや、教えてください!」


 また面倒な流れになった、とイージアは溜息を吐く。


「ふん……いいだろう、と言ってやりたいところだがっ! 我が深奥は一夜にしてならず。そして、我が秘奥はとある地に封じられし……貴様が力を得たくば、伝説の地へ来ることだ!」


「で、伝説の地……!?」


 伝説の地。

 恐らくイージアが幼少期に修行した場所を提示されるのだろう。


「──龍島! 我はそこに滞在している……我が秘奥を得たくば、彼の地を目指し、弟子となるのだっ! 島暮らしのを用意するべし……!」


 彼はそれだけ告げると、高らかに笑いながら去って行った。

 この後の展開がイージアには嫌というほど読めてしまっている。自分は一切関与しない……そう決心し、後のことは創造神に丸投げしようという魂胆だった。


 ~・~・~


「……というわけで、俺は修行に行く! 駄目とは言わせないぜ!」


「うん、いいんじゃないかな。じゃあイージア、ゼロと一緒に……」


「断る。私は関与しない」


 イージアは即答して創造神の頼みを拒否。これ以上、自分の負担は増やしたくない。

 ただでさえラウンアクロードを探すという目的があるのに、保護者まがいの行為などできたものか。


「そっか……任務については、調整するから安心するといいよ。サーラは行くかい?」


「え、行かないよ。めんどくさいし」


「でも、いつもと違った日々を送れるだろう。僕は君たちに一度くらいは誰かに師事して欲しいと思っているんだ。どうかな?」


 創造神の意図は不明。

 そこまで深く考えていないのかもしれないが、ゼロの頼みをあっさり認めた。

 となると、サーラも同行するのではないかと思われるが……


「強くなれるのは魅力的だけど……楽園が快適すぎてさ……」


 彼女は悩んでいるようだった。

 たしかに、楽園には全てが揃っていると言っても過言ではないだろう。

 戦闘の専門的な知識を学ぶとなると、流石にルカの教えの方に分があるのだが……それを差し引いても、楽園を長期間離れるのは辛いものがあった。


「俺は絶対行く! サーラも考えてくれよな!」


「……わかった。考えてみる」


 彼女は渋々頷き、今後の方針を検討するのだった。


 ~・~・~


 その頃、楽園からはるか遠くの地にて。


 アラームの音で目を覚ます。

 少年はいつも通り起床し、いつも通り着替え、いつも通り朝食を作る。

 彼はすっかりこの生活スタイルに慣れ切っていた。一年前からリンヴァルス帝国学園で学び始め、あっという間に年月は過ぎ去って行った。

 彼の視界に、リビングに置かれた写真立てが入ってくる。そこには彼の姿と、もう一人……白い髪の男が写っている。白い男は少年の父親のようなものだ。


 その時、携帯が鳴る。

 電話をかけてきたのは、写真に写っていたその男だった。


「はい、ラウアです」


『ATだ。おはよう……今、忙しいかな?』


「ああ、大丈夫だよ。今朝食を用意してたんだ」


 リフォル教教皇、AT。

 現在はどこで何をしているのかもよく分からないが、こうして時折電話越しに声を聞いていた。


『最近、忙しくてね。なかなか君に電話する時間がなかったんだ』


「はは……ATはいつも忙しそうだからね。それで、大事な用事?」


『いや。ただ元気か確かめようと思って。何も悩みとかはないかな?』


 彼は随分と心配症なのだ。

 ことある毎にラウアを気遣い、そして気に掛けてくれる。

 家族として、ラウアはそんな優しいATを誇りに思っていた。そして、見習いたいとも。


「うん、大丈夫。もうすぐ二年生になるんだ。去年は忙しかったし、大変だったけど……すごく充実してた。友達もたくさんできたしね」


『そうか……それはよかった。僕は君をあまり外に出してあげられなくて、碌に友人も作ってあげられなかったから』


 ラウアがあまり外部と接触できなかったのは、リフォル教の活動が忙しかったからだと聞いている。

 AT曰く、彼は世界を守る活動をしているらしい。

 リフォル教の評判はすこぶる悪く、ラウアもあの組織は信用していないが……頂点に立つATだけは信じていた。彼だけは違うと、そう思っていた。


「そんなに気負わなくても、僕は充分幸せだよ。今が良ければいいんだ」


『まあ、変わりなさそうで安心したよ。また折を見て連絡させてもらう。それじゃ、失礼する』


 ATはそう告げて電話を切った。

 ラウアは久々に家族の声を聞けて安心した。

 自分が何者なのか、どこで生まれたのか……それすらも知らないラウアは、自分を拾ってくれた彼に感謝している。こうして日々を送らせてもらっていることにも。


「さて、今日も頑張ろう!」


 彼は気合を入れ、いつもの日々に戻るのだった。

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