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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
第3部 12章 天の守り人
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1. 四光

挿絵(By みてみん)



 レアは紅茶を注ぎながら呟いた。


「そういえば、一年後は魔神戦役が起こる年だね」


 現在、五千百六十九年を迎えたばかり。

 一年後には魔神リグト・リフォルが顕現する。本来の歴史ではそうだった。


「そうか。四英雄の誕生だな」


 イージアは自らの祖先と、その仲間である四英雄の顔を思い浮かべる。

 どのような人物なのだろうか。


 既に魔神の精神体はこの世に降臨しており、ちょうど一年後に受肉する。

 しかし、災厄レベルの規模ではないので、放置していても問題ないはずだ。


「私たちが出る幕はないだろう。本来の歴史通り、四英雄が倒してくれるはずだ」


 イージアに協力できることと言えば、活性化した魔物の討伐くらいだろうか。

 それも六花の将の務めだ。


 彼は注がれた紅茶を飲み、これからの歴史を思い描いた。


 ~・~・~


 楽園にとある一行が訪れた。

 彼らは船から降り、創造神へと謁見する。六花の将は集い、訪問者たちを見定めた。


 金髪の勝気な男。水色の髪の静かな乙女。

 赤髪の快活な少女。黒髪の少年。


「お初にお目にかかります! 創造神様。我ら、龍神様より神能を授かり、魔神の討伐を任じられた者でございます。私の名はローヴル・ミトロン、以後お見知りおきを」


 金髪の男……ローヴルが恭しく頭を下げる。

 背後の三人も同様に跪いた。


 噂をすれば、四英雄が楽園へ訪れたようだ。

 イージアが目をつけたのは、黒天と思わしき男。実在すら疑われる黒天を目にすることができて、彼は内心興奮していた。

 そして、自分の祖先……スフィル・ホワイト。彼女はどこかマリーの面影があった。

 ローヴルは他の三名も紹介する。


「左から順にスフィル・ホワイト、カシーネ・ナージェント、オズと申します」


 彼の言葉を聞いたイージアは強烈な違和感を覚える。

 黒髪の男はオズと呼ばれた。しかし、黒天の名はマーキス・ティズであったはず。

 彼は黒天ではないのだろうか。


「よく来たね。君たちの噂は聞いているよ。魔神討伐に向けて、より精進してほしい」


「はっ、ありがとうございます! 一つ、助言をいただきたく訪れさせていただきました」


 そして創造神は彼らに助言を授け、旅の助けとした。

 これが本来の神々の仕事なのだ。人々に導を示し、知啓を授けること。彼らもまた、魔神を討つ為に必要な道具を得るために旅をしているようだった。



「……ところで、そちらの方々は高名な『六花の将』ではありませんか?」


 スフィルが周囲の者を見て尋ねる。

 高名とはいったものの、まだそこまで有名になっているわけではない。


「そうだよ。何か我が子らに尋ねたいことがあるなら聞いてみるといい」


「いえ、お会いできて光栄だと思っただけです。今後とも、世界をお守りください」


 スフィルから尊敬のような、或いは敵意のような視線を向けられたイージア。

 彼女の剣呑な視線に気が付いたのは彼だけのようだった。


「それでは、失礼いたします!」


 突然の訪問者たちは、嵐のように去って行く。

 英雄となる彼らの背を見守り、イージアは歴史のはじまりに思いを馳せた。


 ~・~・~


「なんか、あいつら……強そうだったな! 戦っとけばよかった……」


 ゼロは機会を逃したことに意気消沈していた。

 イージアはゼロと剣を交えつつ彼の言葉に応える。


「なら、サーラと飛んで船を追いかけてみたらどうだ? 今ならまだ間に合うだろう」


「うーん……たぶん、今のサーラはそんなことじゃ飛んでくれない。最近アイツさ、小難しい話ばっかりして反りが合わないんだよなあ」


 イージアは特段、彼女と話していて齟齬は感じない。

 しかし振り返ってみると、彼女は最近学術書ばかり読んでいる気がする。難解な魔術書や哲学書を図書館で読んでいる姿を頻繁に目にする。


「ゼロが何も学ばなすぎなんじゃないか? もう少し本を読んでみては?」


 夢の中のタナンも本を読んでいたな……そうイージアは思い返し、思わず笑ってしまう。


「えー……小さい文字読むと、頭がイライラするんだよ。剣を振るしか俺は能がないんだ」


「歴代の強者は、みな博識だと聞く。強さにはある程度の知恵も必要なんだよ」


「うぐ……」


 答えに窮したゼロの剣を弾き、イージアは一本取る。

 まだまだ彼とゼロには剣術の力量差がかなりある。この差を埋める為にも、知恵が求められるのかもしれない。


「まあ、午後の任務を終えてから考えてみればいい。今日はルイム国での討伐任務だったな」


「おう……そうだな。まずは目の前の目標を片付けちまおう」


 午後は魔物の討伐が控えている。

 イージアとゼロ、サーラで向かう予定になっていた。ひとまずは今日の任務を終えることが最優先である。



 午後。三人はレヴィーに乗り込み、目的地であるルイム国へ向かう。

 事前の情報によると、白雷種の大地獣が出現したらしい。きわめて危険な魔物であり、天災に匹敵する破壊力を持つ。

 一行は湿原のフロンティアに降り立ち、目標を探し始めた。


「うわ、足がびちゃびちゃに濡れる……」


「湿原なんだから防水性の靴くらい履いてきなさいよ……ほら、対水(ゼ・メリア)


 サーラは呆れつつもゼロに防水の魔法をかける。

 イージアは弟の面倒を見る姉を見て、少し微笑ましい気分になった。ゼロが賢くなりすぎても、この関係性は崩れてしまうのではないだろうか。そう考えると、ゼロはいつまでも脳筋で良い気がしてきた。


「魔力反応は……イージア、こっちで合ってる?」


「ああ。しかし……妙な魔力の波及の仕方だな。魔物と誰かが交戦しているのか?」


「急いだ方がよさそうだね」


 三者は駆け出し、魔力が激しく廻る場所を目指した。




「……これは」


 イージアの視界に飛び込んだのは、想定外の光景だった。

 白雷種の大地獣が倒れている。邪気となって霧散しつつある骸の傍には、一人の男。


「ハッハッハッ! 貴様の雷こそが、己を縛る鎖となったのだ! 我に相対したが最後、この破滅の力により貴様は跡形もなく消し飛ばされたな!」


「ねえ、あの人なに……? 近付かない方がいいよね」


「そ、そうだな……触れないでおこう」


 見覚えのある顔だった。

 そして、聞き覚えのある口調と声だった。

 サーラは近付かない方がいいと言ったが、慧眼である。彼は面倒な人だ。


「うおお……すげえ! アイツ、一人で倒したのか!?」


 しかし現実は非情である。

 傍にいた脳筋が声を上げてしまった。


「ちょっとゼロ! 声出さないでよ!」


「うん? なんだ、貴様らは! 斯様な場所に訪れし者ども……なるほど、運命に導かれし大いなる使徒といったところか……」


 ゼロの叫び声により、気付かれてしまった。もっとも、男……ルカは三人の存在をとうに察知していたと思うが。

 ああ、面倒なことになったとイージアは頭を抱える。ルカは第一線級の関わってはいけない人物である。彼の弟子であったイージアだからこそ、それは嫌というほど分かっていた。


「我が名はルカ! 破滅を宿せし宿運の魔族である! 貴様らは!」


「俺はゼロ! 六花の将だ!」


「……! そうか、貴様らが……ゼロということは、『守天』だな? そっちが仮面を被っているから、『鳴帝』! なるほど……予言の巡りは今日この時であったか……」


 意味深なことを言っているが、その実ルカは何も考えていない。

 彼の言葉を翻訳可能なイージアだが、翻訳する気はさらさらなかった。


「……さて、目標はこの人が倒してくれたみたいだ。ゼロ、サーラ。帰るぞ」


「あ、あはは……そうだね! それじゃ、失礼しまー……」


「待つが良い! ここで巡り合ったのも何かの縁。運命に導かれた者同士、語り明かそうではないか!」


 これ以上引き留められると本当に面倒な事態になる。

 ゼロはルカの強さに興味津々なようで、中々足を動かそうとしない。

 隣を歩くサーラは助けを求めるようにイージアを見上げる。


「ねえ、どうすんの……? 完全にヤバい人だよね?」


「危なくはないが、ヤバい人だな。はあ……」


 そしてイージアは残酷な決断を下す。

 ……サーラにとって残酷な決断を。


「サーラ、ゼロと一緒に彼に挑むんだ」


「……は?」



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