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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
醒章 アルス≠ホワイト
273/581

幕間

「『創造』」


 創世主と災厄の攻防によって消し炭となったソレイユ離島。

 その大地が再び形成される。

 植生は戻らない上に、邪気の循環によって魔物の生息も変化することだろう。


「創造神……」


 二人の下へやって来た神は、安堵する。


「よかった。二人とも無事だった」


 死した筈のイージア。

 しかし、彼はそこに立っている。ただその事実を噛みしめて、創造神は頬を綻ばせた。


「創造神……私は、君に謝らないといけない。そして、これからの話も君としたいんだ……私と口を聞いてくれるか?」


 自らが災厄となってしまったことで、世界に与えた被害は測り知れない。

 それでも、世界の守護者たる創造神はイージアを許してくれるのか。

 彼の不安は杞憂に終わることとなる。


「言うまでもないさ。……おかえり、イージア」


「ああ……ただいま」


 世界はまだ、彼を祝福してくれている。

 救世者に訪れた、救済。

 かくしてイージアは目醒めを終えた。


 ~・~・~


 楽園へ、創造神とイージアは降り立った。

 イージアには未だ気掛かりなことがあった。


「……ナリア」


 彼女は生きているのか。

 災厄アルスの魔術改編は、ソレイユ離島周辺の範囲に限定されていた。つまり、ラズアースを倒した時点で楽園の魔術改編は終わったはずだが、はたして。


 神殿の入り口で、二人を出迎える者が三人。


「主よ。よくぞご無事で」

「おうイージア! ま、お前さんなら生き残ると思ったぜ!」

「はあ……よかった」


 ダイリード、ウジン、フェルンネが二人を出迎えた。

 しかし、肝心の少女の姿が見当たらない。


「ナリアは……」


 ──間に合わなかったのか。

 彼が俯いたその時だった。


「イージア!」


「……!」


 扉の奥から、探していた少女が姿を現した。

 彼女はイージアの下へと駆け寄り、いつもと変わらぬ様子で言い放った。


「まったく……あれくらいで私が死ぬと思ったか? お前は少し心配し過ぎだ」


「そ、そうだったのか……だが、後悔はしていない」


「……まあ、一応感謝はしてる。ありがとう」


 素直になり切れない彼女の様子に、イージアと創造神は笑う。

 誰一人として、欠けることなく。

 楽園の日常は取り戻された。


 ~・~・~


 青空の下、レアはイージアと共にリンヴァルスを歩いていた。

 創世主に殺される心配もなくなった彼女は、大手を振って外へ出れるようになったのだ。


「二つのアルスの融合……というわけで、α世界線の影響で槍が一番の得意武器になった」


「なるほど。君が槍使い相手に不敗を誇っていたのは、騎士アルスの魂が眠っていたからなんだね。たしかに、彼は剣よりも槍の扱いを得意としていて……それはもう、化け物じみた強さだったよ」


 イージアは槍術と、戦神の技を会得した。

 α世界のアルスから継承したものだ。正直、今までのイージアの剣術よりもずっと練度が高い。だからといって、剣の扱いを辞めるわけではないが。


「記憶によれば、戦神を倒すまで力を求め続けていたようだからな。我ながら末恐ろしい」


 狂気的なまでの力への執着に、イージアは自分の過去に苦笑いする。

 ロールへの依存が消えてしまって、箍が外れた結果があれだ。


「ああ、今日もリンヴァルスは平和だな。心から我が国を守れてよかったと思う」


 レアは自分が築いた国の平和を眺める。

 隣を歩くイージアは恥ずかしそうに言った。


「しかし、リンヴ=アルス帝国とは……今からでも改名してくれないか?」


「ぜったい嫌だね。もう君はアルスじゃなくてイージアなんだから、恥ずかしがることはないさ」


「ま、まあ……それもそうか……」


 再びアルスを名乗る時が来るとすれば、為すべきことを全て終えてからだろう。

 まずは、ラウンアクロード。たとえ別の人格が入り混じってイージアの人格が中和されたとしても、奴への憎悪が消えた訳ではない。

 今後とも奴を探さなければならないのは事実だった。


「はあ……」


「お、どうした溜息なんか吐いて。私が癒してあげようか?」


「結構だ」


 冷たく彼女を突き放し、イージアは広場のベンチに腰を下ろす。

 レアもまた隣に座り、仮面越しに彼を覗き込んだ。


「なあなあ、一応愛を伝えあった過去を思い出したんだからさ? もう少し優しくしようよ。泣くよ?」


「再三言っているが……あくまで私の恋人は別にいるんだ。君は友人……親友にとどまる」


 レアは頭を抱える。

 そう、この男……レアを愛する気がないのだった。

 いや、愛してはいるのだろうが。騎士ではない方の過去と混ざり合うことにより、愛は微妙な塩梅に割けてしまったのだ。


「はあ~……溜息を吐きたいのは私だよ。あー、私かわいそう。普通メインヒロインポジだよね」


 イージアは困った様に黙りこくってしまう。

 たしかに、彼女の境遇を考えると可哀そうではあるが……レーシャがやはり好きなのだ。

 別れ話を切り出したカップルのような、気まずい雰囲気が流れる。この会話をする度に淀んだ空気になるので、若干慣れてしまっている。


「……そこの店で菓子を買って来る。食べたいものは?」


 彼はご機嫌取りにお菓子を買いに行こうとする。


「チョコレートパフェとカスタードプリンとエクレアとバタークッキー。あとモンブランとストロベリーケーキと……」


「この女……」


 財布に打撃を与えようと必死である。

 そもそも、そんなに大量に食べ切れないだろう。


「甘い物ばかり食べてるのに、君はよく苛立つようだな。少しは抑えたらどうだ?」


「はあ? そもそも君が買って来ると言い出したんじゃないか! そうやって君はいつも他人を騙すような真似をして! 胡散臭い仮面だってそうだ、どれだけ他人を騙せば気が済むんだ?」


「この仮面は君が作ったものだ。というか、君が大量に注文をするのが悪い。私はせっかく機嫌を取ろうと思ってやったのに、そうやって当てつけのように……」




 喧嘩は夕刻まで続く。

 そして、夜には仲良く食事を囲む二人の姿があったのだった。 

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